1p36欠失症候群
染色体は大きな順に番号が振られていて,中心があり,短い腕を短腕(フランス語のpettiからPと表記します),長いほうを長腕(q)と表記します.
サブテロメアは染色体最末端のテロメアに隣接して存在するドメインです.
概念
1p36.1欠失は,1番染色体短腕の末端部であるp36の微細欠失を原因とする比較的新しい概念の疾患で, サブテロメア欠失疾患では最も頻度が高くなっています.
発達遅滞、特徴的的顔貌,てんかん,心奇形が特徴です.
臨床像が明らかにされたのは2000年以降となっています.
1p36欠失症候群の診断は、特徴的な顔貌,筋緊張低下,精神運動遅延,および発語が乏しいまたは発語が全くないことによって示唆され,1番染色体短腕の最も遠位のバンド(1p36)の欠失が検出されることによって確定します.
さまざまな程度の発達遅滞/知的障害は全例に認められます
全身性の筋緊張低下も罹患者の95%で観察される頻度の高いものです
症状
典型的な顔の特徴 新先天奇形症候群アトラスより引用
【顔貌】まっすぐな眉毛、奥まった眼球、顔面正中の低形成,広く低い鼻根,長い人中、尖った頤(オトガイ).
他の頭蓋顔面の特徴には小頭症・短頭・内眼角贅皮・出生時に3cmより大きい大泉門・大泉門閉鎖遅延・および後方に傾いた低位で形態異常の耳介があげられます.
[骨格]短い指趾
[神経・精神]知的障害, 筋緊張低下.痙攣(44~58%).
[心臓]心奇形(43~71%) 心筋擁(27%).
[その他]靴聴,甲状腺機能低下,肥満
頻度
染色体末端部欠失では最も頻度が高くなっています.
5千~1万人に一人で,知的障害例の1%を占めると推定されています.
遺伝形式・病因
52%が新生突然変異の端部欠失、29%が中間部欠失,12%が染色体複雑再構成, 7%が派生染色体と報告されています.
神経発達に関与する遺伝子としてGABRD), 口蓋裂に対してSKIが関係があるのではないかと考えれられています.
診断
細胞遺伝学的分析(FISH)
診断はlp36のサブテロメアプローブを用いたFISHで行います.
中間部欠失は見落とされる可能性があり,注意が必要です.
1.明らかに「純粋な」端部欠失
2.中間部欠失
3.2つ以上の欠失または重複、三重複、挿入、および/もしくは逆位を伴う欠失を含む、より複雑な再配列
4.不均衡型転座に起因する派生1番染色体
が見つかっています.
また
(1)1p36欠失を持つ罹患者に共通の切断点または欠失の大きさはありません
(2)細胞遺伝学的に目に見える欠失が真の端部欠失であるか、それともより複雑な再配列であるかを決定するには、特殊な分子細胞遺伝学的手法を用いなければわからないかもしれません.
1p36領域の5-Mbより大きい欠失 : 4 ~25%
FISH5 1p36領域の100-kbより大きい欠失 : >95%
マイクロアレイ染色体検査による欠失/重複分析 : >95%
Mb = 106 DNA塩基対;kb = 103DNA塩基対
治療
筋緊張低下による哺乳不良は約1/3の症例で新生児期から目立ち,経管栄養を要することもあります.88%は重度の発達遅滞を認め, 12%は軽度から中等度. 自傷ややかんしゃくなどの行動異常も目立つ.療育等による早期からの介入が必要です.けいれん発作の発症は7か月ごろとはやいです.
鑑別診断
Angelman症候群,Prader-Willi症候群と混同されることがしばしばある.他にRett症候群などが鑑別疾患としてあがります.