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ツェルウェガー症候群NGS遺伝子パネル検査|ミネルバクリニック

ツェルウェガー症候群NGS遺伝子パネル検査|ミネルバクリニック

ツェルウェガー症候群とは

ツェルウェガー症候群(Zellweger Syndrome)は、ペルオキシソーム形成異常症(Peroxisome Biogenesis Disorders: PBD)の中で最も重篤な臨床型の一種です。ペルオキシソームとは、細胞内に存在する小器官で、極長鎖脂肪酸の分解、プラスマローゲンなどのエーテルリン脂質の合成、胆汁酸の生合成など、多岐にわたる代謝反応を担っています。

ツェルウェガー症候群では、PEX遺伝子群の異常により、このペルオキシソームが正常に形成されない、またはペルオキシソームが完全に消失してしまうため、これらの代謝機能が広範に障害されます。その結果、新生児期から重篤な多臓器障害を呈し、多くは乳児期早期(数週から1年未満)に死亡する予後不良の疾患です。

ツェルウェガー症候群は、指定難病234「ペルオキシソーム病(副腎白質ジストロフィーを除く)」に含まれる疾患です。近年では、ツェルウェガー症候群、新生児型副腎白質ジストロフィー、乳児型レフサム病を含めて「ツェルウェガースペクトラム(Zellweger Spectrum Disorder: ZSD)」として、重症度により分類されています。国内での診断例は年間2~3例程度と推定され、数十万人に1人程度の非常に稀な疾患です。

症状と病態

ツェルウェガー症候群の主な症状は、新生児期から認められる重篤な多臓器障害です。ペルオキシソーム機能不全により、極長鎖脂肪酸の蓄積、プラスマローゲンの減少、胆汁酸中間代謝産物の増加などの生化学的異常が生じ、これらが様々な臓器障害を引き起こします。

主要症状

  • 特徴的な顔貌異常(額が広い、両眼が離れている、鼻が低い、顎が小さい)
  • 重度の筋緊張低下(フロッピーインファント)
  • 哺乳不良、乳を飲まない
  • 精神運動発達遅滞
  • 新生児期からの痙攣
  • 肝腫大、肝機能障害
  • 腎嚢胞
  • 点状骨端症を伴う骨格異常
  • 白内障
  • 網膜症、視力障害
  • 聴力低下、難聴
  • 中枢神経系形成異常(脳回形成異常など)
  • 脱髄性病変

中枢神経系の障害

ツェルウェガー症候群では、中枢神経系の形態異常が重要な特徴の一つです。脳の形成異常、特に小脳における形態異常が認められます。画像診断では、脳回形成異常、大脳白質の脱髄性変化、小脳低形成などが観察されます。これらの中枢神経系の障害が、重度の発達遅滞、痙攣、筋緊張低下などの神経症状の原因となります。

代謝異常

ペルオキシソーム機能不全により、以下のような生化学的異常が認められます:

  • 極長鎖脂肪酸の蓄積:ペルオキシソームでのβ酸化が障害され、血液中の極長鎖脂肪酸(C26:0など)が著明に増加します
  • プラスマローゲンの減少:エーテルリン脂質であるプラスマローゲンの合成が障害され、赤血球プラスマローゲン値が低下します
  • 胆汁酸中間代謝産物の増加:胆汁酸の生合成異常により、中間代謝産物が蓄積します
  • フィタン酸、ピペコリン酸の高値:これらの代謝も障害されます

進行と予後

ツェルウェガー症候群の予後は非常に不良で、多くの患者さんは乳児期早期(数週から1年未満)に亡くなられます。国内症例の生存期間は2~14ヶ月という報告がありますが、近年の医療技術の進歩に伴い、生存期間も長くなる傾向にあります。より軽症の乳児型レフサム病では成人生存例や肝移植を施行された症例も報告されています。

遺伝形式と原因遺伝子

ツェルウェガー症候群は、常染色体劣性(潜性)遺伝形式をとる遺伝性疾患です。ペルオキシソームの形成または蛋白質輸入に関与するPEX遺伝子群の異常が原因となります。現在までに、ペルオキシソーム形成に関わる13種類のPEX遺伝子が同定されており、これらの遺伝子のいずれか1つに機能異常が生じると、ペルオキシソーム全般の代謝機能が低下して発症します。

常染色体劣性(潜性)遺伝について

常染色体劣性遺伝では、両親がともに変異遺伝子を1コピーずつ持つ保因者(キャリア)である場合、その子どもが発症するリスクは25%です。保因者となるリスクは50%、正常である確率は25%です。保因者は通常、症状を示しませんが、子どもに変異遺伝子を伝える可能性があります。

PEX遺伝子の役割

PEX遺伝子は、ペルオキシソームの膜の生合成や、ペルオキシソームへの蛋白質の輸送(局在)に関わる重要な遺伝子群です。PEXタンパク質(ペルオキシン)は、以下のようなペルオキシソーム形成の各段階に関与しています:

  • ペルオキシソーム膜の形成:PEX3、PEX16、PEX19など
  • 蛋白質輸入機構:PEX5、PEX7(輸送受容体)、PEX1、PEX6(輸送後のリサイクル)など
  • ペルオキシソーム分裂:PEX11など
  • ドッキング複合体:PEX13、PEX14など

遺伝子型と表現型の関係

PEX遺伝子の変異の種類(ミスセンス変異、ナンセンス変異、欠失など)により、残存するペルオキシソーム機能の程度が異なり、これが臨床的な重症度に影響します。完全な機能喪失型の変異では最重症型のツェルウェガー症候群となり、部分的に機能が残存する変異では、より軽症の新生児型副腎白質ジストロフィーや乳児型レフサム病として発症します。

当検査パネルでは、ツェルウェガー症候群を含むツェルウェガースペクトラムの原因となる12個のPEX遺伝子を対象としています。これにより、ペルオキシソーム形成異常症の主要な原因を効率的にスクリーニングすることが可能です。

ミネルバクリニックのツェルウェガー症候群遺伝子パネル検査の特徴

「ツェルウェガー症候群 NGSパネル検査」とは、現在ツェルウェガー症候群の原因として報告されている12の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。

従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。

何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、ツェルウェガー症候群に関連する12遺伝子を一度に調べられる「ツェルウェガー症候群 NGSパネル検査」を採用しています。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.費用がリーズナブル

一般的な医療機関でツェルウェガー症候群の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。

当院では、ツェルウェガー症候群に関係するとされる12の遺伝子を一度に調べられる「ツェルウェガー症候群 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)

2.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行えるツェルウェガー症候群の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。

当院で行う「ツェルウェガー症候群 NGSパネル検査」の場合、12の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。

3.一気にまとめてできる

臨床症状からツェルウェガー症候群を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。

当院で行う「ツェルウェガー症候群 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な12の原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。

オプション

塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・重複 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)

検査内容

「ツェルウェガー症候群 NGSパネル検査」では、ツェルウェガー症候群に関係するとされる12種類の遺伝子(PEX1、PEX10、PEX12、PEX13、PEX14、PEX16、PEX19、PEX2、PEX26、PEX3、PEX5、PEX6)をまとめて検査します。

「ツェルウェガー症候群 NGSパネル検査」は、ツェルウェガー症候群の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。

どんな人が受けたらいいの?

【ツェルウェガー症候群またはペルオキシソーム形成異常症の個人歴または家族歴のある方】に
「ツェルウェガー症候群 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。

この検査は以下のような方に適しています:
・新生児期から重度の筋緊張低下がある方
・特徴的な顔貌異常(額が広い、両眼が離れている、鼻が低い、顎が小さい)がある方
・哺乳不良、乳を飲まない方
・新生児期からの痙攣がある方
・肝腫大、肝機能障害が認められる方
・腎嚢胞がある方
・点状骨端症などの骨格異常がある方
・白内障、網膜症などの眼の異常がある方
・血液検査で極長鎖脂肪酸の高値、プラスマローゲンの低値が認められる方
・画像検査で脳形成異常、脱髄性変化が認められる方
・ツェルウェガー症候群またはペルオキシソーム形成異常症の家族歴がある方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方

このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

遺伝子検査により原因が判明すると、ツェルウェガー症候群の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切な対症療法、生活習慣の改善、定期的なモニタリングを行うことができます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・他の代謝性疾患や神経筋疾患との鑑別
・適切な対症療法の立案(栄養管理、痙攣のコントロールなど)
・肝機能障害、腎機能障害などの合併症の早期発見と管理
・視力障害、聴力障害への適切な対応
・疾患の進行予測と長期的な管理計画の立案
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供

患者さんで病原性変異が同定された場合、常染色体劣性遺伝形式であるため、両親はともに保因者(キャリア)であり、次の子どもが発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。また、患者さんの兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。

対象遺伝子

詳しくはこちら

PEX1, PEX10, PEX12, PEX13, PEX14, PEX16, PEX19, PEX2, PEX26, PEX3, PEX5, PEX6 ( 12遺伝子 )

各遺伝子の詳細:
・PEX1遺伝子:
ペルオキシソーム生合成因子1をコードする遺伝子。AAA ATPアーゼファミリーに属し、PEX6とともに複合体を形成して、ペルオキシソーム膜からPEX5受容体をリサイクルする役割を担います。PEX1遺伝子の変異は、ツェルウェガースペクトラムの最も頻度の高い原因の一つです。

・PEX2遺伝子:
ペルオキシソーム生合成因子2をコードする遺伝子。ペルオキシソーム膜に局在し、マトリックス蛋白質の輸入に必要なドッキング複合体を形成します。日本において世界に先駆けてツェルウェガー症候群の原因遺伝子として同定されました。

・PEX3遺伝子:
ペルオキシソーム生合成因子3をコードする遺伝子。ペルオキシソーム膜の初期形成に必須の蛋白質で、小胞体からペルオキシソーム前駆体小胞が出芽する際に重要な役割を果たします。

・PEX5遺伝子:
ペルオキシソーム生合成因子5をコードする遺伝子。PTS1(ペルオキシソームターゲティングシグナル1)を認識する輸送受容体として機能し、細胞質で合成された蛋白質をペルオキシソーム内に輸送します。

・PEX6遺伝子:
ペルオキシソーム生合成因子6をコードする遺伝子。PEX1とともにAAA ATPアーゼ複合体を形成し、ペルオキシソーム膜からPEX5受容体をリサイクルします。PEX6遺伝子の変異も、ツェルウェガースペクトラムの頻度の高い原因の一つです。

・PEX10遺伝子:
ペルオキシソーム生合成因子10をコードする遺伝子。ペルオキシソーム膜に局在する亜鉛フィンガー蛋白質で、PEX12と同様にE3ユビキチンリガーゼ活性を持ち、受容体のリサイクルに関与します。

・PEX12遺伝子:
ペルオキシソーム生合成因子12をコードする遺伝子。ペルオキシソーム膜に局在する亜鉛フィンガー蛋白質で、E3ユビキチンリガーゼ活性を持ち、PEX5受容体のユビキチン化とリサイクルに関与します。

・PEX13遺伝子:
ペルオキシソーム生合成因子13をコードする遺伝子。ペルオキシソーム膜に局在し、PEX14とともにドッキング複合体を形成します。PEX5およびPEX7受容体の結合部位として機能します。

・PEX14遺伝子:
ペルオキシソーム生合成因子14をコードする遺伝子。ペルオキシソーム膜に局在し、ドッキング複合体の中心的な構成要素として機能します。PEX5受容体の主要な結合部位です。

・PEX16遺伝子:
ペルオキシソーム生合成因子16をコードする遺伝子。ペルオキシソーム膜の初期形成に関与し、小胞体からペルオキシソーム前駆体が形成される際に重要です。PEX3のペルオキシソーム膜への局在を促進します。

・PEX19遺伝子:
ペルオキシソーム生合成因子19をコードする遺伝子。ペルオキシソーム膜蛋白質(PMP)のシャペロンおよび輸送受容体として機能し、細胞質で合成されたPMPをペルオキシソーム膜に輸送します。

・PEX26遺伝子:
ペルオキシソーム生合成因子26をコードする遺伝子。ペルオキシソーム膜に局在し、PEX1-PEX6複合体のペルオキシソーム膜へのリクルートに関与します。PEX26の変異は比較的稀です。

カバレッジ

カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。

≥99% at 20x(読み取り深度20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
 検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

検査の限界

詳しくはこちら

すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。

低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。

この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。

※この検査パネルでは、12のPEX遺伝子のみを対象としています。ツェルウェガースペクトラムの原因となるPEX7遺伝子(根性点状軟骨異形成症1型の原因)は本パネルには含まれていません。また、稀に他の未同定の遺伝子が原因となる場合もあります。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。

結果が出るまでの期間

2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。

料金

税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
新生児期から重度の筋緊張低下がある方、特徴的な顔貌異常(額が広い、両眼が離れている、鼻が低い、顎が小さい)がある方、哺乳不良や新生児期からの痙攣がある方におすすめします。また、血液検査で極長鎖脂肪酸の高値やプラスマローゲンの低値が認められる場合、画像検査で脳形成異常や脱髄性変化が認められる場合も、ツェルウェガー症候群の可能性が高くなります。家族に同様の疾患がある場合も検査をご検討ください。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
ツェルウェガー症候群の診断には他にどのような検査が必要ですか?
遺伝子検査に加えて、生化学的検査が重要です。血液中の極長鎖脂肪酸(C26:0など)の測定、赤血球プラスマローゲン値の測定、尿中の胆汁酸中間代謝産物の測定などが行われます。また、画像診断(頭部MRIなど)により、脳形成異常や脱髄性変化を評価します。これらの検査を組み合わせることで、より確実な診断が可能になります。
家族も検査を受ける必要がありますか?
常染色体劣性遺伝形式であるため、患者さんのご両親はともに保因者(キャリア)です。次の子どもが発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。また、患者さんの兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
本パネル検査では12のPEX遺伝子を対象としていますが、稀に他の遺伝子が原因となる場合や、検出が困難な変異が存在する場合があります。検査で病原性変異が検出されなくても、臨床症状と生化学的検査所見からツェルウェガー症候群と診断される場合があります。臨床症状と各種検査所見に基づいた診断と管理が引き続き重要です。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
常染色体劣性遺伝形式であるため、両親がともに保因者の場合、次の子どもが発症する確率は25%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。保因者診断により、リスクを正確に評価することが可能です。
ツェルウェガー症候群の治療はどのように行われますか?
現在のところ根本的な治療法はなく、対症療法が中心となります。栄養管理、痙攣のコントロール、肝機能障害や腎機能障害への対応、視力障害や聴力障害への適切な対応などが行われます。より軽症の乳児型レフサム病では、肝移植が行われた報告例もあります。
予後はどうですか?
ツェルウェガー症候群の予後は非常に不良で、多くの患者さんは乳児期早期(数週から1年未満)に亡くなられます。ただし、近年の医療技術の進歩により生存期間も長くなる傾向にあります。より軽症のツェルウェガースペクトラム(新生児型副腎白質ジストロフィー、乳児型レフサム病)では、より長期の生存が期待できます。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では臨床的に重要な12のPEX遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。


プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

仲田洋美のプロフィールはこちら