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Walker-Warburg症候群NGS遺伝子検査|ミネルバクリニック

Walker-Warburg症候群NGS遺伝子検査|ミネルバクリニック

Walker-Warburg症候群とは

Walker-Warburg症候群(ウォーカー・ワーバーグ症候群:WWS)は、II型滑脳症、先天性眼疾患、先天性筋ジストロフィーを主徴とする常染色体劣性遺伝の稀な重症疾患です。1942年にWalkerが滑脳症、水頭症、小眼球症と網膜異常を持つ症例を、1971年にWarburgが先天性水頭症、小眼球症、網膜剥離を伴う例を報告し、本症候群の概念が確立しました。

本疾患は、αジストログリカンのグリコシル化(糖鎖付加)障害により引き起こされる先天性筋ジストロフィーの一型で、脳・眼・筋肉の3つの臓器に重篤な異常をきたすことが特徴です。筋ジストロフィー関連糖タンパク質異常症(dystroglycanopathy)の最重症型として位置づけられています。

Walker-Warburg症候群は、福山型先天性筋ジストロフィー(FCMD)やmuscle-eye-brain disease(MEB)と同じαジストログリカン異常症のスペクトラムに含まれますが、これらの中で最も重症な病型です。本症候群の患者さんは、重度の脳構造異常のため経口栄養が困難で、しばしば胃瘻からの経管栄養が必要となります。予後は不良で、多くの患者さんは幼児期に死亡します。

症状と病態

Walker-Warburg症候群の症状は出生時または新生児期から明らかになります。脳・眼・筋肉の3つの臓器に重篤な異常が認められ、重度の発達遅滞と筋緊張低下が特徴的です。

主要症状

  • 重度の筋緊張低下(生後早期から顕著)
  • 最重度の精神運動発達遅滞(定頸不能、座位不能)
  • 哺乳障害・嚥下障害
  • 呼吸障害
  • けいれん発作(点頭てんかんなど)
  • 高CK血症(クレアチンキナーゼの上昇)

脳の異常

Walker-Warburg症候群における脳の異常は、神経細胞の遊走障害により引き起こされます。以下のような特徴的な脳構造異常が認められます:

  • II型滑脳症:脳表面の溝(脳回)が未発達で平滑になる重度の脳形成異常です。神経細胞が正常な位置まで移動できないことが原因です
  • 著明な脳室拡大:脳脊髄液が溜まる脳室が異常に拡大し、水頭症を呈します
  • 小脳奇形:小脳の発育不全や構造異常が認められます
  • 後頭部髄膜瘤:頭蓋骨の欠損部から脳組織や髄膜が突出します
  • 大脳半球癒合:左右の大脳半球が異常に癒合することがあります
  • 脳梁欠損:左右の大脳半球をつなぐ脳梁が形成されないことがあります

眼の異常

Walker-Warburg症候群では、様々な重篤な先天性眼疾患を合併します:

  • 網膜異常:網膜剥離、網膜形成不全、進行性網膜萎縮が認められます
  • 小眼球症:眼球が異常に小さく形成されます
  • 先天性白内障:出生時から水晶体の混濁が認められます
  • 先天性緑内障(牛眼):眼圧上昇により眼球が拡大します
  • Peter奇形:角膜と水晶体の癒着を特徴とする先天異常です
  • 第1次硝子体過形成遺残:胎生期の硝子体が残存する異常です

これらの眼疾患により、患者さんは重度の視覚障害を呈します。

筋肉の異常

先天性筋ジストロフィーの症状として、以下の所見が認められます:

  • 重度の筋緊張低下(フロッピーインファント)
  • 筋力低下
  • 高CK血症(血清クレアチンキナーゼの著明な上昇)
  • 筋CT・筋MRIでの筋萎縮・脂肪置換所見

病態メカニズム

Walker-Warburg症候群は、αジストログリカンのO型糖鎖グリコシル化(特にマンノシル化)の異常により発症します。αジストログリカンは、細胞膜と細胞外基質(ラミニンなど)を結合させる重要なタンパク質です。

グリコシル化が正常に行われないと、αジストログリカンはラミニン、ニューレキシン、アグリンなどとの結合能が低下します。これにより、以下のような異常が生じます:

  • 筋組織:筋細胞膜の安定性が失われ、筋収縮や弛緩の際に筋細胞が損傷を受けやすくなります
  • 中枢神経系:神経細胞の遊走、シナプス形成、基底膜の構築が障害され、脳の構造異常が生じます
  • 眼組織:網膜や水晶体の発生過程が障害され、重度の眼疾患が生じます

進行と予後

Walker-Warburg症候群は先天性筋ジストロフィーの中で最も重症な病型であり、予後は極めて不良です。重度の脳構造異常のため、経口栄養が困難で胃瘻が必要となることが多く、呼吸障害も重篤です。多くの患者さんは、生後数ヶ月から数年以内に死亡します。muscle-eye-brain diseaseや福山型先天性筋ジストロフィーと比較して、明らかに重症な経過をとります。

遺伝形式と原因遺伝子

Walker-Warburg症候群は常染色体劣性遺伝形式をとります。つまり、両親がともに変異遺伝子の保因者(ヘテロ接合体)である場合、子どもが本症候群を発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%、非保因者かつ非罹患者となるリスクは25%です。保因者(ヘテロ接合体)は通常無症状です。

原因遺伝子

Walker-Warburg症候群は、αジストログリカンのグリコシル化に関与する遺伝子の変異により発症します。現在までに以下の遺伝子が原因遺伝子として同定されています:

  • POMT1遺伝子:protein O-mannosyltransferase 1をコードします。臨床的にWalker-Warburg症候群と診断された患者さんの約20%にこの遺伝子変異が認められます
  • POMT2遺伝子:protein O-mannosyltransferase 2をコードします。POMT1と協調してO-マンノース型糖鎖の初期段階を担います
  • POMGNT1遺伝子:protein O-mannose beta-1,2-N-acetylglucosaminyltransferase 1をコードします。O-マンノース型糖鎖の伸長に関与します
  • FKTN遺伝子:fukutin(フクチン)をコードします。福山型先天性筋ジストロフィーの原因遺伝子としても知られています
  • FKRP遺伝子:fukutin related proteinをコードします。αジストログリカンのグリコシル化に関与します
  • ISPD遺伝子:isoprenoid synthase domain containingをコードします。糖鎖合成の初期段階に関与します
  • LARGE1遺伝子:like-acetylglucosaminyltransferase 1をコードします。αジストログリカンのグリコシル化に重要な役割を果たします

これらの遺伝子はいずれもαジストログリカンのO型糖鎖のグリコシル化、特にマンノシル化に関与する酵素をコードしています。しかし、臨床的にWalker-Warburg症候群と診断された患者さんの約半数では、既知の遺伝子に変異が見つかりません。これは、まだ同定されていない他の原因遺伝子が存在することを示唆しています。

血族結婚との関連

Walker-Warburg症候群は常染色体劣性遺伝のため、両親が血族結婚である場合に発症リスクが高まります。実際、報告された症例の中には血族結婚の家系が少なくありません。

ミネルバクリニックのWalker-Warburg症候群遺伝子パネル検査の特徴

「Walker-Warburg症候群 NGSパネル検査」とは、現在Walker-Warburg症候群の原因として報告されている7つの遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。

従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。

何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、Walker-Warburg症候群に関連する7遺伝子を一度に調べられる「Walker-Warburg症候群 NGSパネル検査」を採用しています。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.費用がリーズナブル

一般的な医療機関でWalker-Warburg症候群の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。

当院では、Walker-Warburg症候群に関係するとされる7つの遺伝子を一度に調べられる「Walker-Warburg症候群 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)

2.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行えるWalker-Warburg症候群の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。

当院で行う「Walker-Warburg症候群 NGSパネル検査」の場合、7つの遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。

3.一気にまとめてできる

臨床症状からWalker-Warburg症候群を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。

当院で行う「Walker-Warburg症候群 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な7つの原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。

オプション

塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)

検査内容

「Walker-Warburg症候群 NGSパネル検査」では、Walker-Warburg症候群に関係するとされる7種類の遺伝子(FKRP、FKTN、ISPD、LARGE1、POMGNT1、POMT1、POMT2)をまとめて検査します。

「Walker-Warburg症候群 NGSパネル検査」は、Walker-Warburg症候群の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。

どんな人が受けたらいいの?

【Walker-Warburg症候群の個人歴または家族歴のある方】に
「Walker-Warburg症候群 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。

この検査は以下のような方に適しています:
・新生児期または乳児期早期から重度の筋緊張低下がある方
・II型滑脳症などの重度の脳構造異常が認められる方
・著明な脳室拡大や水頭症がある方
・小脳奇形が認められる方
・重度の眼疾患(小眼球症、網膜剥離、先天性白内障など)がある方
・最重度の精神運動発達遅滞がある方
・高CK血症(クレアチンキナーゼの上昇)がある方
・けいれん発作(点頭てんかんなど)がある方
・Walker-Warburg症候群、福山型先天性筋ジストロフィー、またはmuscle-eye-brain diseaseの家族歴がある方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方
・血族結婚のカップルで、これから妊娠を考えている方

このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

遺伝子検査により原因が判明すると、Walker-Warburg症候群の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切な支持療法、栄養管理、呼吸管理、けいれんのコントロールなどを行うことができます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・福山型先天性筋ジストロフィー、muscle-eye-brain disease、他の先天性筋ジストロフィーとの鑑別
・適切な栄養管理(経管栄養、胃瘻など)の計画
・呼吸管理(人工呼吸器など)の適応判断
・けいれん発作の管理と治療
・眼科的合併症の早期発見と管理
・疾患の進行予測と長期的な管理計画の立案
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供

患者さんで病原性変異が同定された場合、常染色体劣性遺伝のため兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。保因者同士のカップルが次の妊娠を考える場合、出生前診断や着床前診断の選択肢があります。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。

対象遺伝子

詳しくはこちら

FKRP, FKTN, ISPD, LARGE1, POMGNT1, POMT1, POMT2 ( 7遺伝子 )

各遺伝子の詳細:
・FKRP遺伝子:
fukutin related proteinをコードする遺伝子。19q13.3に位置し、αジストログリカンのグリコシル化に関与します。FKRP遺伝子変異は、Walker-Warburg症候群のほか、MDC1C型先天性筋ジストロフィーやLGMD2I型肢帯型筋ジストロフィーの原因にもなります。変異のタイプと位置により、症状の重症度が大きく異なります。

・FKTN遺伝子:
fukutin(フクチン)をコードする遺伝子。9q31に位置します。この遺伝子の変異は、福山型先天性筋ジストロフィー(FCMD)の主要な原因遺伝子として知られていますが、Walker-Warburg症候群の原因にもなります。フクチンはαジストログリカンのO型糖鎖の伸長に関与すると考えられています。

・ISPD遺伝子:
isoprenoid synthase domain containingをコードする遺伝子。7p21.2に位置します。この遺伝子はαジストログリカンのグリコシル化の初期段階、特にリビトールリン酸の合成に関与します。ISPD遺伝子変異は、Walker-Warburg症候群のほか、様々な重症度の先天性筋ジストロフィーを引き起こします。

・LARGE1遺伝子:
like-acetylglucosaminyltransferase 1(以前はLARGEと呼ばれていました)をコードする遺伝子。22q12.3に位置します。LARGE1はαジストログリカンのグリコシル化において、リビトールリン酸骨格への糖鎖の付加に重要な役割を果たします。この遺伝子の変異は、MDC1D型先天性筋ジストロフィーやWalker-Warburg症候群の原因となります。

・POMGNT1遺伝子:
protein O-mannose beta-1,2-N-acetylglucosaminyltransferase 1をコードする遺伝子。1p34.1に位置します。POMGNT1は、O-マンノース型糖鎖の伸長において、マンノースにN-アセチルグルコサミンを付加する酵素です。この遺伝子の変異は、muscle-eye-brain disease(MEB)の主要な原因ですが、Walker-Warburg症候群の原因にもなります。

・POMT1遺伝子:
protein O-mannosyltransferase 1をコードする遺伝子。9q34.13に位置します。POMT1はPOMT2と協調して、αジストログリカンのセリンまたはトレオニン残基にマンノースを付加する最初の段階を担います。臨床的にWalker-Warburg症候群と診断された患者さんの約20%にこの遺伝子変異が認められます。POMT1変異は、重症のWalker-Warburg症候群から軽症の肢帯型筋ジストロフィーまで、幅広い表現型を引き起こします。

・POMT2遺伝子:
protein O-mannosyltransferase 2をコードする遺伝子。14q24.3に位置します。POMT2はPOMT1と複合体を形成し、O-マンノース型糖鎖の初期段階を担います。この遺伝子の変異もWalker-Warburg症候群の原因となることが報告されており、POMT1と同様に重要な役割を果たします。

カバレッジ

カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。

≥99% at 20x(読み取り深度20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
 検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

検査の限界

詳しくはこちら

すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。

低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。

この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。

※この検査パネルでは、7つの原因遺伝子のみを対象としています。臨床的にWalker-Warburg症候群と診断された患者さんの約半数では、既知の遺伝子に変異が見つかりません。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。また、福山型先天性筋ジストロフィーに特徴的なFKTN遺伝子のレトロトランスポゾン挿入変異(日本人に多い変異)は、この検査では検出が困難な場合があります。

結果が出るまでの期間

2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。

料金

税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
新生児期または乳児期早期から重度の筋緊張低下がある方、重度の脳構造異常(II型滑脳症、著明な脳室拡大など)が認められる方、重度の眼疾患(小眼球症、網膜剥離、先天性白内障など)がある方におすすめします。また、最重度の精神運動発達遅滞、高CK血症、けいれん発作などがある場合も検査をご検討ください。Walker-Warburg症候群や福山型先天性筋ジストロフィーの家族歴がある場合も重要です。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
福山型先天性筋ジストロフィーとの違いは何ですか?
Walker-Warburg症候群と福山型先天性筋ジストロフィー(FCMD)は、ともにαジストログリカンのグリコシル化障害により生じる疾患ですが、Walker-Warburg症候群はより重症な病型です。Walker-Warburg症候群では、II型滑脳症などのより重度の脳構造異常、重篤な眼疾患、より重度の筋症状が認められ、予後も不良です。遺伝子検査により、どの遺伝子に変異があるかを特定することで、より正確な診断と予後予測が可能になります。
家族も検査を受ける必要がありますか?
Walker-Warburg症候群は常染色体劣性遺伝のため、患者さんのご両親はともに保因者です。兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。将来子どもを持つ予定がある兄弟姉妹は、保因者かどうかを知ることで、家族計画に重要な情報を得ることができます。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
臨床的にWalker-Warburg症候群と診断された患者さんの約半数では、既知の遺伝子に変異が見つかりません。これは、まだ同定されていない他の原因遺伝子が存在することを示唆しています。検査で病原性変異が検出されなくても、臨床症状に基づいた診断と管理が引き続き重要です。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
保因者同士のカップルでは、子どもがWalker-Warburg症候群を発症する確率は25%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。血族結婚を予定しているカップルでは、結婚前に保因者検査を受けることも検討できます。
Walker-Warburg症候群の治療はどのように行われますか?
現在のところ根本的な治療法はありませんが、支持療法が中心となります。栄養管理(経管栄養、胃瘻造設)、呼吸管理(必要に応じて人工呼吸器)、けいれん発作の管理、眼科的ケア、理学療法などが行われます。多職種チームによる包括的なケアが重要です。
予後はどうですか?
Walker-Warburg症候群は先天性筋ジストロフィーの中で最も重症な病型であり、予後は極めて不良です。重度の脳構造異常のため、多くの患者さんは定頸不能、座位不能の状態で、経口栄養も困難です。多くの患者さんは生後数ヶ月から数年以内に死亡します。ただし、個々の症例により経過は異なりますので、詳しくは主治医にご相談ください。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では臨床的に重要な7つの原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。


プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

仲田洋美のプロフィールはこちら