ワーデンブルグ症候群NGS遺伝子パネル検査|ミネルバクリニック
ワーデンブルグ症候群とは
ワーデンブルグ症候群(Waardenburg症候群、WS)は、先天性の感音難聴、目・毛髪・皮膚の色素異常を特徴とする遺伝性疾患です。1951年にオランダの眼科医ペトルス・ヨハネス・ワーデンブルフによって詳細が報告され、その名が付けられました。神経堤由来細胞の発達異常が原因で、メラノサイト(色素細胞)や蝸牛(内耳)の異常を引き起こします。
本疾患は臨床症状や遺伝学的特徴によって4つの型(WS1〜WS4)に分類されます。日本における発症頻度は推定5万人に1人とされ、常染色体優性遺伝形式をとる症候群性難聴の中では最も頻度の高い疾患の一つです。難聴児童の2〜4%にワーデンブルグ症候群が見られると報告されています。
ワーデンブルグ症候群は、症状の現れ方に個人差が大きいことが特徴です。同じ家族内でも、同じ遺伝子変異を持っていながら異なる症状を呈することがあり、これを「不完全浸透」と呼びます。そのため、遺伝子検査により正確な診断を行うことが非常に重要です。
症状と病態
ワーデンブルグ症候群の主な症状は、先天性感音難聴と色素異常です。これらの症状は神経堤由来のメラノサイトの異常によって引き起こされます。メラノサイトは色素を産生する細胞で、内耳の蝸牛にも存在しており、正常な聴覚機能に重要な役割を果たしています。
主要症状
- 先天性感音難聴(片側性または両側性)
- 虹彩異色症(青い目、オッドアイ、1つの虹彩に2色含まれるなど)
- 白い前髪(white forelock)
- 若年性白髪化(30歳未満)
- 先天性皮膚白斑
- 内眼角開離(目頭が離れている顔貌、WS1型の特徴)
- 鼻根部の過形成(WS1型)
難聴について
ワーデンブルグ症候群における難聴は、先天性で通常は非進行性の感音難聴です。片側性のこともあれば両側性のこともあります。WS1型では罹患者の約60%に難聴が認められますが、WS2型ではより高い頻度(約80〜90%)で難聴が見られます。
最も一般的なパターンは、両側性で高度から重度(>100dB)の難聴です。難聴の程度は個人によって異なり、軽度から重度まで幅広く、補聴器や人工内耳による治療が有効です。これまでにワーデンブルグ症候群罹患者に対する人工内耳手術の良好な成果が報告されています。
色素異常について
色素異常の現れ方も個人によって異なります:
- 虹彩異色症:全部性虹彩異色症(両目の色が異なる)、部分性虹彩異色症(1つの虹彩に2色含まれる)、低形成性ないし鮮輝性青色虹彩などがあります
- 毛髪の色素異常:典型的なwhite forelock(前頭部を中心にまとまった形で白毛が生じる状態)が罹患者の約45%に見られ、最も一般的な毛髪色素異常です。30歳未満の若年性白髪化も多く見られます
- 皮膚の色素異常:先天性皮膚白斑が顔、体幹、四肢にしばしば現れます
型による特徴
ワーデンブルグ症候群は臨床症状により4つの型に分類されます:
- WS1型:内眼角開離と鼻根部過形成が見られます。難聴の頻度は約60%です
- WS2型:WS1型で見られる内眼角開離と鼻根部過形成がありません。難聴の頻度はWS1型より高く(約80〜90%)、虹彩異色症もより高頻度に見られます
- WS3型:クライン・ワーデンブルグ症候群とも呼ばれます。WS1型の症状に加え、上肢の筋骨格異常(関節拘縮、合指症など)を伴います
- WS4型:ワーデンブルグ・シャー症候群とも呼ばれます。WS2型の症状に加え、ヒルシュスプルング病(腸管の神経節細胞欠損による重度の便秘や腸閉塞)を合併します
その他の合併症
一部の症例では、腸や脊髄の欠陥、先天性肩甲骨高位、口唇口蓋裂などの他の先天性障害を伴うことがあります。また、精神運動発達遅滞を呈する症例も報告されています。
遺伝形式と原因遺伝子
ワーデンブルグ症候群は主に常染色体優性遺伝形式をとりますが、一部の型では常染色体劣性遺伝形式もあります。罹患者の約60%は突然変異(de novo変異)によるもので、残りの40%が家族性(親から子へ遺伝)です。
遺伝形式
常染色体優性遺伝の場合、罹患者の子どもが病的変異を受け継ぐ可能性は50%です。常染色体劣性遺伝の場合(主にWS2型の一部とWS4型)、両親がともに保因者の場合、子どもが発症する確率は25%、保因者となる確率は50%、非保因者となる確率は25%です。
原因遺伝子
現在までに主要な6種類の原因遺伝子が報告されており、遺伝子型と表現型の相関があることが知られています。さらに、最近の研究では新たに13の遺伝子変異も見つかっています。
- PAX3遺伝子:WS1型およびWS3型の主要な原因遺伝子。転写因子をコードし、神経堤細胞の発達に重要な役割を果たします。内眼角開離の原因となります
- MITF遺伝子:WS2型の主要な原因遺伝子の一つ。メラノサイト発達の主要な調節因子をコードします
- SNAI2遺伝子:WS2型の原因遺伝子。神経堤細胞の遊走に関与する転写因子をコードします
- EDNRB遺伝子:WS4型の原因遺伝子。エンドセリンB受容体をコードし、腸管神経系の発達に重要です
- EDN3遺伝子:WS4型の原因遺伝子。エンドセリン3をコードし、EDNRB受容体のリガンドとして機能します
- SOX10遺伝子:WS2型およびWS4型の原因遺伝子。神経堤由来細胞の発達に重要な転写因子をコードします
- KIT遺伝子:メラノサイトの発達と遊走に関与する受容体型チロシンキナーゼをコードします
- KITLG遺伝子:KIT受容体のリガンドをコードし、メラノサイトの生存と増殖に重要です
遺伝子型と表現型の相関
一般的に以下のような遺伝子型と表現型の相関が知られていますが、同一の遺伝子変異を持つ家系内でも症状の現れ方は多様です:
- PAX3遺伝子変異:WS1型(内眼角開離を伴う)、一部の変異はWS3型(上肢異常を伴う)の原因となります
- MITF、SNAI2、SOX10遺伝子変異:WS2型(内眼角開離を伴わない)の原因となります
- EDNRB、EDN3、SOX10遺伝子変異:WS4型(ヒルシュスプルング病を合併)の原因となります
ミネルバクリニックのワーデンブルグ症候群遺伝子パネル検査の特徴
「ワーデンブルグ症候群 NGSパネル検査」とは、現在ワーデンブルグ症候群の原因として報告されている8の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。
従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。
何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、ワーデンブルグ症候群に関連する8遺伝子を一度に調べられる「ワーデンブルグ症候群 NGSパネル検査」を採用しています。
一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。
1.費用がリーズナブル
一般的な医療機関でワーデンブルグ症候群の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。
当院では、ワーデンブルグ症候群に関係するとされる8の遺伝子を一度に調べられる「ワーデンブルグ症候群 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)
2.結果が出るまでがはやい
一般的な医療機関で行えるワーデンブルグ症候群の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。
当院で行う「ワーデンブルグ症候群 NGSパネル検査」の場合、8の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。
3.一気にまとめてできる
臨床症状からワーデンブルグ症候群を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。
当院で行う「ワーデンブルグ症候群 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な8の原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。
オプション
塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)
検査内容
「ワーデンブルグ症候群 NGSパネル検査」では、ワーデンブルグ症候群に関係するとされる8種類の遺伝子(EDN3、EDNRB、KIT、KITLG、MITF、PAX3、SNAI2、SOX10)をまとめて検査します。
「ワーデンブルグ症候群 NGSパネル検査」は、ワーデンブルグ症候群の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。
どんな人が受けたらいいの?
【ワーデンブルグ症候群の個人歴または家族歴のある方】に
「ワーデンブルグ症候群 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。
この検査は以下のような方に適しています:
・先天性感音難聴がある方(特に片側性または両側性の高度難聴)
・虹彩異色症がある方(青い目、オッドアイ、1つの目に2色含まれるなど)
・白い前髪(white forelock)がある方
・若年性白髪化(30歳未満)がある方
・先天性皮膚白斑がある方
・内眼角開離(目頭が離れている)がある方
・難聴と色素異常の両方がある方
・ワーデンブルグ症候群の家族歴がある方
・原因不明の先天性感音難聴がある方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方
このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。
検査で得られる患者さんの潜在的利益は?
遺伝子検査により原因が判明すると、ワーデンブルグ症候群の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切な聴覚リハビリテーション、補聴器や人工内耳の適応判断、定期的なモニタリングを行うことができます。
遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・難聴の型(WS1〜WS4)の判別
・補聴器や人工内耳の適応判断
・ヒルシュスプルング病(WS4型)などの合併症のリスク評価
・上肢異常(WS3型)の早期発見と対応
・疾患の進行予測と長期的な管理計画の立案
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供
患者さんで病原性変異が同定された場合、常染色体優性遺伝の場合は子どもが病的変異を受け継ぐリスクは50%です。常染色体劣性遺伝の場合は両親がともに保因者の場合、子どもが発症するリスクは25%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。
対象遺伝子
- 詳しくはこちら
-
EDN3, EDNRB, KIT, KITLG, MITF, PAX3, SNAI2, SOX10 ( 8遺伝子 )
各遺伝子の詳細:
・EDN3遺伝子:
エンドセリン3をコードする遺伝子。EDNRB受容体のリガンドとして機能し、神経堤由来細胞の発達と遊走に重要な役割を果たします。変異はWS4型(ワーデンブルグ・シャー症候群)の原因となり、ヒルシュスプルング病を合併します。常染色体劣性遺伝または常染色体優性遺伝の形式をとります。
・EDNRB遺伝子:
エンドセリンB受容体をコードする遺伝子。腸管神経系とメラノサイトの発達に重要です。変異はWS4型の原因となり、ヒルシュスプルング病と色素異常、難聴を合併します。常染色体劣性遺伝または常染色体優性遺伝の形式をとります。
・KIT遺伝子:
受容体型チロシンキナーゼをコードする遺伝子。メラノサイトの発達、遊走、増殖、生存に重要な役割を果たします。変異は主に色素異常を引き起こし、難聴を伴うこともあります。WS2型の一部の原因となることがあります。
・KITLG遺伝子:
KIT受容体のリガンド(幹細胞因子)をコードする遺伝子。メラノサイトの生存と増殖に重要です。変異は色素異常の原因となり、白髪や皮膚白斑を引き起こします。難聴を伴うこともあります。
・MITF遺伝子:
メラノサイト発達の主要な調節因子である転写因子(microphthalmia-associated transcription factor)をコードする遺伝子。WS2型の最も頻度の高い原因遺伝子の一つです。常染色体優性遺伝形式をとり、難聴と色素異常を引き起こします。内眼角開離は伴いません。
・PAX3遺伝子:
ペアードボックス転写因子3をコードする遺伝子。神経堤細胞の発達に重要な役割を果たします。WS1型(内眼角開離を伴う)およびWS3型(上肢異常を伴う)の主要な原因遺伝子です。常染色体優性遺伝形式をとります。ペアードドメインやホメオドメインの変異により、色素異常のパターンが異なることがあります。
・SNAI2遺伝子:
転写因子SNAIL2(SLUG)をコードする遺伝子。神経堤細胞の遊走に関与します。WS2型の原因遺伝子の一つで、常染色体優性遺伝形式をとります。難聴と色素異常を引き起こしますが、内眼角開離は伴いません。
・SOX10遺伝子:
SRY関連HMGボックス転写因子10をコードする遺伝子。神経堤由来細胞の発達に重要な役割を果たします。WS2型およびWS4型の原因遺伝子です。常染色体優性遺伝形式をとり、難聴と色素異常に加え、一部の症例ではヒルシュスプルング病や中枢神経系の異常(PCW症候群:末梢神経障害、中枢神経障害、ワーデンブルグ症候群、ヒルシュスプルング病の複合)を合併することがあります。
カバレッジ
カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。
≥99% at 20x(読み取り深度20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。
検体
血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)
※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。
検査の限界
- 詳しくはこちら
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すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。
低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。
この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。
※この検査パネルでは、主要な8の原因遺伝子のみを対象としています。最近の研究では新たに13の遺伝子変異も見つかっており、これらは本検査パネルには含まれていません。また、同一の遺伝子変異を持っていても症状の現れ方は個人によって大きく異なり(不完全浸透)、検査で病原性変異が検出されなくても、臨床症状からワーデンブルグ症候群と診断されることもあります。
結果が出るまでの期間
2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。
料金
税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)
よくあるご質問
- どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
- 先天性感音難聴がある方、特に虹彩異色症(青い目、オッドアイなど)や白い前髪、若年性白髪、皮膚白斑などの色素異常を伴う場合は、ワーデンブルグ症候群の可能性があります。また、家族に同様の症状がある場合も検査をご検討ください。内眼角開離(目頭が離れている)がある場合はWS1型の可能性が高くなります。
- 検査はどのように行いますか?
- 血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
- 難聴の治療はできますか?
- ワーデンブルグ症候群における難聴は通常非進行性の感音難聴です。補聴器や人工内耳による治療が有効で、これまでにワーデンブルグ症候群罹患者に対する人工内耳手術の良好な成果が報告されています。遺伝子検査により診断が確定することで、適切な聴覚リハビリテーションの計画を立てることができます。
- 家族も検査を受ける必要がありますか?
- 常染色体優性遺伝の場合、患者さんのお子さんが病的変異を受け継ぐ可能性は50%です。常染色体劣性遺伝の場合、両親がともに保因者の場合、子どもが発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。リスクを有する血縁者については、難聴の早期発見を目的として評価を行うことが望ましいです。
- 検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
- この検査パネルでは主要な8の原因遺伝子のみを対象としており、最近の研究で見つかった新たな13の遺伝子変異は含まれていません。また、同一の遺伝子変異を持っていても症状の現れ方は個人によって大きく異なります(不完全浸透)。検査で病原性変異が検出されなくても、臨床症状からワーデンブルグ症候群と診断されることもあります。
- 保険は適用されますか?
- 当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
- 結果はどのように説明されますか?
- 検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
- 子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
- 常染色体優性遺伝の場合は子どもが病的変異を受け継ぐ確率は50%、常染色体劣性遺伝の場合は両親がともに保因者の場合に子どもが発症する確率は25%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
- ワーデンブルグ症候群の型によって治療は異なりますか?
- はい、型によって対応が異なります。WS4型ではヒルシュスプルング病を合併するため、腸管の評価と管理が必要です。WS3型では上肢異常に対する整形外科的対応が必要になることがあります。遺伝子検査により型が判明することで、適切な管理計画を立てることができます。
- 予後はどうですか?
- ワーデンブルグ症候群における難聴は通常非進行性で、補聴器や人工内耳により良好なコミュニケーション能力を獲得できることが多いです。色素異常は主に美容的な問題ですが、皮膚白斑がある場合は日焼けや皮膚がんのリスクに注意が必要です。WS4型でヒルシュスプルング病を合併する場合は、適切な管理が重要です。全体的な生命予後は良好です。
- 他の医療機関での検査との違いは何ですか?
- 当院では臨床的に重要な8の原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。
プロフィール
この記事の筆者:仲田洋美(医師)
ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。
仲田洋美のプロフィールはこちら