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血管奇形NGSパネル|ミネルバクリニック

血管奇形NGSパネル|ミネルバクリニック

血管奇形とは

血管奇形(Vascular Malformations)は、先天性の血管の形成異常により引き起こされる疾患群です。血管内皮細胞は正常ですが、胎生期の血管発生過程で異常が起こり、出生前から存在します。血管腫とは異なり、自然退縮することはなく、成長とともに徐々に増大する特徴があります。

血管奇形は、異常を起こす血管の種類によって毛細血管奇形、静脈奇形、リンパ管奇形、動静脈奇形などに分類されます。また、血液やリンパ液の流速により、低流速血管奇形(毛細血管、静脈、リンパ管)と高流速血管奇形(動脈性)に大別されます。

血管奇形は全身のあらゆる部位に発生する可能性があり、皮膚、粘膜、脳、肺、肝臓、消化管など多臓器にわたります。症状は発生部位や大きさによって異なり、外見上の問題から重篤な機能障害まで多岐にわたります。多くの血管奇形は孤発性(その患者さんだけ)ですが、一部は遺伝性であり、家族内で複数の患者が発生することがあります。

主な血管奇形疾患

血管奇形にはさまざまな疾患が含まれますが、遺伝的原因が明らかになっているものを中心にご紹介します。

遺伝性出血性毛細血管拡張症(HHT/オスラー病)

遺伝性出血性毛細血管拡張症(Hereditary Hemorrhagic Telangiectasia: HHT)は、オスラー病とも呼ばれ、全身の血管に異常が生じる常染色体優性遺伝性疾患です。毛細血管が介在せずに動脈と静脈が直接結合する多発性動静脈奇形を特徴とします。

主な症状:
・反復する鼻出血(最も多い症状で約95%に出現、平均12歳で発症)
・皮膚・粘膜の毛細血管拡張(唇、舌、指、顔面などに赤い点状病変)
・肺動静脈瘻(15~50%、女性に多い傾向)
・脳血管奇形(脳出血のリスク)
・肝動静脈奇形
・消化管出血(通常50歳以降、約25%に出現)

原因遺伝子:ENG(HHT1型)、ACVRL1(HHT2型)、SMAD4(若年性ポリポーシス合併型)、GDF2など

頻度:日本では5,000~8,000人に1人が遺伝子変異を持つと推定されており、実際の患者数は約10,000人と考えられています。

脳海綿状血管腫(CCM)

脳海綿状血管腫(Cerebral Cavernous Malformation: CCM)は、中枢神経系に発生する血管奇形で、スポンジ状に拡張した異常血管の集合体です。約80%は孤発性ですが、約20%は家族性で常染色体優性遺伝の形式をとります。

主な症状:
・てんかん発作(最も多い症状で11~80%)
・脳内出血(年間出血率:未出血例0.7~1.5%、出血歴ある例4.5~6.0%)
・頭痛
・局所神経症状(発生部位による)
・約20%は無症候性

原因遺伝子:KRIT1(CCM1、家族性の53~65%)、CCM2(20%)、PDCD10(CCM3、10~16%)

特徴:家族性CCMでは脳内に多発することが多く、しばしば脊髄にも病変を認めます。また、家族性CCMの約9%に皮膚病変(毛細血管奇形、静脈奇形など)を伴います。

PIK3CA関連過成長症候群(PROS)

PIK3CA遺伝子の体細胞モザイク変異により引き起こされる疾患群で、組織の過剰成長と血管奇形を特徴とします。CLOVES症候群、巨指症、血管奇形合併四肢過成長などが含まれます。

主な症状:
・四肢や体幹の非対称性過成長
・脂肪組織の過剰増殖
・血管奇形(毛細血管奇形、静脈奇形、リンパ管奇形)
・皮膚病変(母斑など)
・脊椎・骨格異常

原因遺伝子:PIK3CA(体細胞モザイク変異)、AKT1、AKT3なども関連

重要な注意点:PIK3CAの病的変異の大部分は出生後に生じた体細胞モザイク変異であるため、複数の組織からの検体採取が必要な場合があります。血液検査で変異が検出されなくても、疾患を否定することはできません。

毛細血管奇形-動静脈奇形症候群(CM-AVM)

多発性の小さな毛細血管奇形(赤あざ)と、脳や脊髄、顔面、四肢の動静脈奇形を特徴とする疾患です。RASA1遺伝子やEPHB4遺伝子の変異が原因となります。

リンパ管奇形症候群

リンパ管の発達異常により、リンパ液の貯留や流出障害を引き起こします。原発性リンパ浮腫、Milroy病、リンパ管腫症などが含まれます。FLT4、FOXC2、SOX18、CCBE1、VEGFC遺伝子などの変異が原因となります。

その他の血管奇形症候群

Klippel-Trenaunay症候群、Sturge-Weber症候群、青色ゴムまり様母斑症候群など、さまざまな血管奇形症候群があります。

原因遺伝子と遺伝形式

血管奇形の原因遺伝子は多岐にわたり、遺伝形式も常染色体優性(顕性)遺伝、常染色体劣性(潜性)遺伝、X連鎖遺伝、体細胞モザイクなどさまざまです。

常染色体優性(顕性)遺伝

最も多い遺伝形式で、親から子へ50%の確率で遺伝します。遺伝性出血性毛細血管拡張症(HHT)や家族性脳海綿状血管腫(CCM)がこの遺伝形式をとります。ただし、同じ遺伝子変異を持っていても、症状の出方や重症度は個人によって大きく異なります(浸透率や表現度の違い)。

主な原因遺伝子:
ENG、ACVRL1、SMAD4、GDF2(HHT関連)
KRIT1、CCM2、PDCD10(CCM関連)
RASA1、EPHB4(CM-AVM関連)
TEK、GLMN(静脈奇形関連)
FLT4、FOXC2(リンパ浮腫関連)

体細胞モザイク

受精後の発生過程で生じた遺伝子変異により、体の一部の細胞のみが変異を持つ状態です。PIK3CA関連過成長症候群の多くがこのパターンです。親から子への遺伝はまれですが、変異を持つ細胞が生殖細胞にも存在する場合は遺伝する可能性があります。

主な原因遺伝子:
PIK3CA、GNAQ、GNA11、AKT1、AKT3など

その他の遺伝形式

常染色体劣性遺伝や、遺伝形式が完全には解明されていない疾患も存在します。

ミネルバクリニックの血管奇形遺伝子パネル検査の特徴

「血管奇形 NGSパネル検査」とは、現在血管奇形の原因として報告されている44の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。

従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。

何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、血管奇形に関連する44遺伝子を一度に調べられる「血管奇形 NGSパネル検査」を採用しています。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.費用がリーズナブル

一般的な医療機関で血管奇形の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。

当院では、血管奇形に関係するとされる44の遺伝子を一度に調べられる「血管奇形 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)

2.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行える血管奇形の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。

当院で行う「血管奇形 NGSパネル検査」の場合、44の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。

3.一気にまとめてできる

臨床症状から血管奇形を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。

当院で行う「血管奇形 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な44の原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。

オプション

塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)

検査内容

「血管奇形 NGSパネル検査」では、血管奇形に関係するとされる44種類の遺伝子(ACVRL1、AKT1、AKT3、BMPR2、BRAF、CAMK2G、CAV1、CCBE1、CCM2、EIF2AK4、ELMO2、ENG、EPHB4、FAT4、FLT4、FOXC2、FOXF1、GATA2、GDF2、GJC2、GLMN、GNA11、GNA14、GNAQ、HOXA1、HRAS、KCNK3、KDR、KRAS、KRIT1、MAP2K1、NOTCH1、NRAS、PDCD10、PIEZO1、PIK3CA、PTEN、RASA1、SMAD4、SMAD9、SOX18、STAMBP、TEK、VEGFC)をまとめて検査します。

「血管奇形 NGSパネル検査」は、血管奇形の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。

どんな人が受けたらいいの?

【血管奇形の個人歴または家族歴のある方】に
「血管奇形 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。

この検査は以下のような方に適しています:
・反復する鼻出血がある方
・皮膚や粘膜に毛細血管拡張(赤い点状病変)がある方
・脳、肺、肝臓などに血管奇形を指摘された方
・繰り返す消化管出血がある方
・脳出血やけいれん発作の既往がある方
・四肢や体幹の過成長や非対称性がある方
・リンパ浮腫や血管性の腫れがある方
・血管奇形症候群(HHT、CCM、PROS、CM-AVMなど)と診断または疑われる方
・血管奇形の家族歴がある方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方

このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

遺伝子検査により原因が判明すると、血管奇形の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切な予防的処置、定期的なスクリーニング、生活習慣の改善、定期的なモニタリングを行うことができます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・疾患の亜型や重症度の評価
・合併症のリスク評価(肺動静脈瘻、脳出血など)
・定期的なスクリーニングの計画立案
・適切な予防的治療の実施(塞栓術など)
・血管奇形の進行予測と長期的な管理計画の立案
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供

患者さんで病原性変異が同定された場合、遺伝形式に応じて家族の発症リスクが異なります。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症するリスクは50%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。

PIK3CA遺伝子検査についての重要な注意点

PIK3CAの病的変異の大部分は出生後に生じた体細胞モザイク変異であるため、複数の組織を検査する必要がある場合があります。血液検査でPIK3CA変異が検出されなくても、臨床的にPIK3CA関連過成長症候群が疑われる場合、疾患を完全に否定することはできません(PubMed: 23946963)。

対象遺伝子

詳しくはこちら

ACVRL1, AKT1, AKT3, BMPR2, BRAF, CAMK2G, CAV1, CCBE1, CCM2, EIF2AK4, ELMO2, ENG, EPHB4, FAT4, FLT4, FOXC2, FOXF1, GATA2, GDF2, GJC2, GLMN, GNA11, GNA14, GNAQ, HOXA1, HRAS, KCNK3, KDR, KRAS, KRIT1, MAP2K1, NOTCH1, NRAS, PDCD10, PIEZO1, PIK3CA, PTEN, RASA1, SMAD4, SMAD9, SOX18, STAMBP, TEK, VEGFC ( 44遺伝子 )

各遺伝子の詳細:

・ACVRL1遺伝子(ALK1):
TGF-β受容体ファミリーに属するⅠ型受容体をコードする遺伝子。遺伝性出血性毛細血管拡張症2型(HHT2)の原因遺伝子。肝動静脈奇形の頻度が高い傾向があります。

・AKT1遺伝子:
細胞増殖・生存に関わるセリン/スレオニンキナーゼをコードする遺伝子。PI3K/AKT/mTOR経路に関与し、体細胞モザイク変異がProteus症候群やPIK3CA関連過成長症候群の原因となります。

・AKT3遺伝子:
AKT1と同様にPI3K/AKT/mTOR経路に関与するキナーゼをコードする遺伝子。体細胞モザイク変異が巨脳症や過成長症候群の原因となります。

・BMPR2遺伝子:
骨形成タンパク質受容体2型をコードする遺伝子。TGF-βシグナル経路に関与し、特発性肺動脈性肺高血圧症の主要な原因遺伝子です。

・BRAF遺伝子:
RAS/MAPK経路のセリン/スレオニンキナーゼをコードする遺伝子。体細胞変異が動静脈奇形の原因となることがあります。

・CAMK2G遺伝子:
カルシウム/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼIIγをコードする遺伝子。血管平滑筋の収縮に関与します。

・CAV1遺伝子:
カベオリン1をコードする遺伝子。細胞膜のカベオラ形成に関与し、血管内皮細胞の機能に重要です。

・CCBE1遺伝子:
コラーゲンおよびカルシウム結合EGF様ドメイン1をコードする遺伝子。Hennekam症候群(リンパ浮腫・リンパ管腫症を伴う症候群)の原因遺伝子です。

・CCM2遺伝子(MGC4607、Malcavernin):
CCM複合体の構成タンパク質をコードする遺伝子。家族性脳海綿状血管腫2型の原因遺伝子で、約20%を占めます。

・EIF2AK4遺伝子:
真核生物翻訳開始因子2αキナーゼ4をコードする遺伝子。肺静脈閉塞症/肺毛細血管腫症の原因遺伝子です。

・ELMO2遺伝子:
細胞移動に関与するタンパク質をコードする遺伝子。血管形成に関与します。

・ENG遺伝子(Endoglin):
TGF-β受容体複合体の補助受容体をコードする遺伝子。遺伝性出血性毛細血管拡張症1型(HHT1)の原因遺伝子で、最も頻度が高い型です。肺・脳の動静脈奇形が多く、HHT2より若年で発症する傾向があります。

・EPHB4遺伝子:
エフリン受容体チロシンキナーゼをコードする遺伝子。毛細血管奇形-動静脈奇形症候群2型(CM-AVM2)の原因遺伝子です。

・FAT4遺伝子:
カドヘリンファミリーの細胞接着分子をコードする遺伝子。Van Maldergem症候群2型の原因遺伝子で、血管奇形を伴うことがあります。

・FLT4遺伝子(VEGFR3):
血管内皮増殖因子受容体3をコードする遺伝子。Milroy病(遺伝性リンパ浮腫1型)の原因遺伝子です。

・FOXC2遺伝子:
フォークヘッド転写因子をコードする遺伝子。リンパ浮腫-distichias症候群(遺伝性リンパ浮腫2型)の原因遺伝子です。

・FOXF1遺伝子:
フォークヘッド転写因子をコードする遺伝子。肺胞毛細血管形成不全の原因遺伝子です。

・GATA2遺伝子:
GATA結合転写因子をコードする遺伝子。Emberger症候群(リンパ浮腫と骨髄異形成症候群を伴う)の原因遺伝子です。

・GDF2遺伝子(BMP9):
TGF-βスーパーファミリーの成長分化因子2をコードする遺伝子。遺伝性出血性毛細血管拡張症5型(HHT5)の原因遺伝子です。

・GJC2遺伝子:
ギャップ結合タンパク質コネキシン47をコードする遺伝子。

・GLMN遺伝子(Glomulin):
球状血管平滑筋腫に関連するタンパク質をコードする遺伝子。糸球体静脈奇形の原因遺伝子です。

・GNA11遺伝子:
Gタンパク質α11サブユニットをコードする遺伝子。体細胞モザイク変異がSturge-Weber症候群や青色母斑の原因となります。

・GNA14遺伝子:
Gタンパク質α14サブユニットをコードする遺伝子。体細胞変異が毛細血管奇形の原因となります。

・GNAQ遺伝子:
Gタンパク質αqサブユニットをコードする遺伝子。体細胞モザイク変異がSturge-Weber症候群や毛細血管奇形の原因となります。

・HOXA1遺伝子:
ホメオボックス転写因子をコードする遺伝子。血管形成に関与します。

・HRAS遺伝子:
RASファミリーの低分子量GTPアーゼをコードする遺伝子。体細胞変異が動静脈奇形の原因となることがあります。

・KCNK3遺伝子:
2ポアドメインカリウムチャネルをコードする遺伝子。特発性肺動脈性肺高血圧症の原因遺伝子です。

・KDR遺伝子(VEGFR2):
血管内皮増殖因子受容体2をコードする遺伝子。血管新生に重要な役割を果たします。

・KRAS遺伝子:
RASファミリーの低分子量GTPアーゼをコードする遺伝子。体細胞変異が動静脈奇形の原因となることがあります。

・KRIT1遺伝子(CCM1):
CCM複合体の構成タンパク質をコードする遺伝子。家族性脳海綿状血管腫1型の原因遺伝子で、家族性CCMの53~65%を占めます。皮膚病変を伴うことが多いです。

・MAP2K1遺伝子(MEK1):
RAS/MAPK経路のキナーゼをコードする遺伝子。体細胞変異が動静脈奇形の原因となることがあります。

・NOTCH1遺伝子:
Notchシグナル伝達経路の受容体をコードする遺伝子。血管形成と血管安定化に関与します。

・NRAS遺伝子:
RASファミリーの低分子量GTPアーゼをコードする遺伝子。体細胞変異が動静脈奇形の原因となることがあります。

・PDCD10遺伝子(CCM3):
CCM複合体の構成タンパク質をコードする遺伝子。家族性脳海綿状血管腫3型の原因遺伝子で、家族性CCMの10~16%を占めます。

・PIEZO1遺伝子:
機械感受性イオンチャネルをコードする遺伝子。血管内皮細胞の機械刺激応答に関与します。

・PIK3CA遺伝子:
ホスファチジルイノシトール3-キナーゼの触媒サブユニットαをコードする遺伝子。体細胞モザイク変異がPIK3CA関連過成長症候群(PROS)の原因となります。CLOVES症候群、巨指症、血管奇形合併四肢過成長などが含まれます。
※PIK3CAの病的変異の大部分は体細胞モザイクであるため、複数の組織を検査する必要がある場合があります。血液検査で変異が検出されなくても疾患を否定できません。

・PTEN遺伝子:
ホスファチジルイノシトール3,4,5-三リン酸ホスファターゼをコードする遺伝子。PTEN過誤腫症候群の原因遺伝子で、血管奇形を伴うことがあります。

・RASA1遺伝子:
RAS p21タンパク質活性化因子1をコードする遺伝子。毛細血管奇形-動静脈奇形症候群(CM-AVM)の原因遺伝子です。

・SMAD4遺伝子:
TGF-βシグナル伝達経路の細胞内メディエーターをコードする遺伝子。若年性ポリポーシス/遺伝性出血性毛細血管拡張症重複症候群の原因遺伝子です。

・SMAD9遺伝子(SMAD8):
TGF-βシグナル伝達経路に関与するタンパク質をコードする遺伝子。

・SOX18遺伝子:
SRY関連HMGボックス転写因子をコードする遺伝子。リンパ浮腫・Hypotrichosis・毛細血管拡張症候群の原因遺伝子です。

・STAMBP遺伝子:
ユビキチンプロテアーゼをコードする遺伝子。小頭症-毛細血管奇形症候群の原因遺伝子です。

・TEK遺伝子(TIE2):
アンジオポエチン受容体チロシンキナーゼをコードする遺伝子。遺伝性皮膚粘膜静脈奇形や孤発性静脈奇形の原因遺伝子です。血管の安定化に重要な役割を果たします。

・VEGFC遺伝子:
血管内皮増殖因子Cをコードする遺伝子。Milroy様リンパ浮腫の原因遺伝子です。

カバレッジ

カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。

≥99% at 20x(読み取り深度平均20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
 検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

※PIK3CA遺伝子検査について:
PIK3CAの病的変異は体細胞モザイクであることが多いため、病変組織からの検体採取が最も有用です。血液検査のみでは変異が検出されない可能性があります。臨床的にPIK3CA関連疾患が強く疑われる場合は、複数の組織からの検体採取をご検討ください。

検査の限界

詳しくはこちら

すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。

低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。

この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。

※PIK3CA遺伝子について特別な注意:
PIK3CAの病的変異の大部分は出生後に生じた体細胞モザイク変異です。そのため、血液検査で変異が検出されなくても、病変組織には変異が存在する可能性があります。PIK3CA関連疾患が臨床的に強く疑われる場合は、複数の組織(特に病変組織)からの検体採取を検討する必要があります(PubMed: 23946963)。

※この検査パネルでは、44の原因遺伝子のみを対象としています。血管奇形は遺伝的に非常に多様であり、検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。

結果が出るまでの期間

2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。

料金

税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
反復する鼻出血、皮膚や粘膜の毛細血管拡張(赤い点状病変)、脳・肺・肝臓などに血管奇形が見つかった方、繰り返す消化管出血、脳出血やけいれん発作の既往がある方、四肢や体幹の過成長や非対称性、リンパ浮腫などがある方におすすめします。また、血管奇形症候群(HHT、CCM、PROSなど)と診断または疑われる方、家族に同様の症状がある場合も検査をご検討ください。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。ただし、PIK3CA関連疾患が疑われる場合は、病変組織からの検体採取が最も有用です。
オスラー病(HHT)はどのような病気ですか?
遺伝性出血性毛細血管拡張症(HHT)は、全身の血管に異常が生じる常染色体優性遺伝性疾患です。反復する鼻出血(約95%に出現)、皮膚・粘膜の毛細血管拡張、肺・脳・肝臓などの動静脈奇形を特徴とします。原因遺伝子はENG(HHT1型)、ACVRL1(HHT2型)、SMAD4などです。日本では5,000~8,000人に1人が遺伝子変異を持つと推定されています。
脳海綿状血管腫(CCM)はどのような病気ですか?
脳海綿状血管腫は、中枢神経系に発生する血管奇形で、スポンジ状に拡張した異常血管の集合体です。約80%は孤発性ですが、約20%は家族性で常染色体優性遺伝です。主な症状はてんかん発作(11~80%)、脳内出血、頭痛などです。原因遺伝子はKRIT1(CCM1)、CCM2、PDCD10(CCM3)です。家族性CCMでは多発することが多く、皮膚病変を伴うこともあります。
PIK3CA関連過成長症候群(PROS)とは何ですか?
PIK3CA遺伝子の体細胞モザイク変異により引き起こされる疾患群で、組織の過剰成長と血管奇形を特徴とします。CLOVES症候群、巨指症、血管奇形合併四肢過成長などが含まれます。症状として、四肢や体幹の非対称性過成長、脂肪組織の過剰増殖、血管奇形、皮膚病変、脊椎・骨格異常などがあります。
家族も検査を受ける必要がありますか?
遺伝形式によって家族の発症リスクが異なります。常染色体優性遺伝(HHT、家族性CCMなど)の場合、患者さんのお子さんが発症するリスクは50%です。ただし、遺伝子変異を持っていても必ずしも発症するとは限りません(浸透率)。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
PIK3CA遺伝子検査で血液検査が陰性でも病気の可能性はありますか?
はい、可能性があります。PIK3CAの病的変異は体細胞モザイクであることが多いため、血液中には変異が存在せず、病変組織のみに変異が存在する場合があります。臨床的にPIK3CA関連疾患が強く疑われる場合は、病変組織からの検体採取を検討する必要があります。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
血管奇形は遺伝的に非常に多様であり、この検査パネルで検査できる44遺伝子以外にも原因遺伝子が存在する可能性があります。また、体細胞モザイク変異の場合、検体の種類によっては検出できないこともあります。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。臨床症状と画像検査に基づいた診断と管理が引き続き重要です。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢、定期的なスクリーニングの必要性などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
遺伝形式によって子どもへの影響が異なります。常染色体優性遺伝の場合は子どもが変異を受け継ぐ確率は50%です。体細胞モザイク変異の場合、通常は遺伝しませんが、変異を持つ細胞が生殖細胞にも存在する場合は低い確率で遺伝する可能性があります。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
血管奇形の治療はどのように行われますか?
血管奇形の治療は、疾患の種類、発生部位、大きさ、症状により異なります。治療法には、血管塞栓術、硬化療法、レーザー治療、外科的切除、薬物療法(シロリムスなどのmTOR阻害薬)などがあります。HHTの鼻出血に対してはレーザー治療、肺動静脈瘻に対しては塞栓術が行われます。近年、PIK3CA関連疾患に対するPI3K阻害薬の臨床試験も進んでいます。
予後はどうですか?
予後は疾患の種類と重症度によって大きく異なります。HHTは適切な管理により比較的良好な予後が期待できますが、肺動静脈瘻や脳動静脈奇形の合併症(脳膿瘍、敗血症、脳出血など)には注意が必要です。家族性CCMも多くの場合良好な予後が期待できますが、定期的なフォローアップが重要です。PROS は重症度により予後が異なりますが、近年の治療法の進歩により管理が改善しています。
オスラー病(HHT)で気をつけることはありますか?
肺動静脈瘻がある場合、細菌や血栓が脳に達しやすくなるため、歯科治療時の予防的抗生物質投与が推奨されます。また、静脈注射時の気泡混入に注意が必要です。定期的なスクリーニング(肺・脳・肝臓の画像検査、血液検査)により、合併症の早期発見と予防的治療が可能です。鼻出血がひどい場合は、鼻粘膜の保湿や適切な止血法について医師に相談してください。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では臨床的に重要な44の原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。


プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

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