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ウルリッヒ型筋ジストロフィー・ベスレムミオパチー遺伝子検査(NGSパネル検査)|ミネルバクリニック

ウルリッヒ型筋ジストロフィー・ベスレムミオパチー遺伝子検査(NGSパネル検査)|ミネルバクリニック

ウルリッヒ型筋ジストロフィー・ベスレムミオパチーとは

ウルリッヒ型筋ジストロフィーとベスレムミオパチーは、コラーゲンVI遺伝子の異常によって引き起こされる遺伝性筋疾患であり、重症度の異なるスペクトラムを形成する疾患群です。両疾患とも骨格筋を支えるコラーゲンVIタンパク質の産生に関わる遺伝子の病的変異が原因となります。

ウルリッヒ型筋ジストロフィー(Ullrich Congenital Muscular Dystrophy: UCMD)は、このスペクトラムの重症側に位置し、生下時または乳児早期から全般性の筋力低下と筋萎縮を来します。1930年にドイツのOtto Ullrichによって最初に報告され、近位関節(股関節、膝関節、肘関節など)の拘縮と遠位関節(手首、足首、指の関節など)の過伸展という特徴的な所見を呈します。

ベスレムミオパチー(Bethlem Myopathy)は、スペクトラムの軽症側に位置し、乳幼児期から成人期にかけて発症する、より緩徐に進行する疾患です。1976年にオランダのJaap BethlemとGeorge K. van Wijngaardenによって報告され、近位筋優位の筋力低下と筋萎縮に加え、比較的早期から手指・肘関節・足関節などの屈曲拘縮を伴うことが特徴です。

両疾患は同じCOL6A1、COL6A2、COL6A3遺伝子の変異によって引き起こされ、変異の種類や位置によって重症度が決まります。日本では福山型先天性筋ジストロフィーに次いで頻度の高い先天性筋ジストロフィーとされています。これらの疾患は一連のスペクトラムを形成しており、中間型とも言える症状を呈する患者さんも存在します。

症状と病態

ウルリッヒ型筋ジストロフィーとベスレムミオパチーは、同じ遺伝子異常によって引き起こされますが、重症度が異なるため症状も異なります。

ウルリッヒ型筋ジストロフィーの主要症状

  • 生下時または乳児早期からの顔面筋を含む全般性筋力低下
  • 筋緊張低下(フロッピーインファント)
  • 運動発達遅滞(お座り、歩行の遅れ)
  • 近位関節(股関節、膝関節、肘関節、脊柱)の拘縮
  • 遠位関節(手関節、足関節、手指)の過伸展(著しい柔軟性)
  • 股関節脱臼
  • 踵の突出(ハンマー様変形)
  • 高口蓋
  • 進行性の呼吸筋障害(人工呼吸器が必要となることがある)
  • 側弯症や脊柱の変形

ベスレムミオパチーの主要症状

  • 乳幼児期から成人期にかけて発症する近位筋優位の筋力低下
  • 筋萎縮(特に近位筋)
  • 手指・肘関節の屈曲拘縮(ベスレムサイン)
  • 足関節の伸展拘縮(アキレス腱拘縮)
  • 軽度の顔面筋罹患
  • 皮膚異常(毛孔性角化症など)
  • 緩徐進行性の経過
  • 50歳以上の患者の3分の2以上が車椅子を使用
  • 軽度から中等度の呼吸機能障害(成人期)

血清CK値と画像所見

血清クレアチンキナーゼ(CK)値は、ウルリッヒ型筋ジストロフィーでは正常から軽度上昇(正常値の10倍以下)、ベスレムミオパチーでは正常または軽度上昇を示すことが多いです。これは他の筋ジストロフィーと比較して上昇が軽度であることが特徴です。

筋MRIでは特徴的な脂肪浸潤パターンが認められることがあり、診断に有用です。ベスレムミオパチーでは、下腿の腓腹筋とヒラメ筋の間に「リム状」の脂肪浸潤、大腿部の広筋群では「外側から内側」へのパターン、大腿直筋では「中央の雲状」パターンなどの特徴的所見が見られます。

認知機能と心機能

ウルリッヒ型筋ジストロフィーの患者さんは知的に優れているといわれており、中枢神経症状を伴わないことが福山型先天性筋ジストロフィーとの重要な鑑別点です。心臓はあまり侵されないといわれていますが、定期的な心機能評価が推奨されます。

進行と予後

ウルリッヒ型筋ジストロフィーでは、約半数の患者さんがお座りまで可能となり、約半数が歩行可能となりますが、多くの場合10歳までに歩行能力を失います。進行は停止しているか、進行しても緩徐です。呼吸筋が侵されやすいため、人工呼吸器を必要とすることがあります。

ベスレムミオパチーは緩徐進行性で、発症から数十年かけて徐々に症状が進行します。50歳以上の患者さんの3分の2以上が外出時には補助器具を用いていますが、適切な管理により多くの患者さんは長期間にわたって歩行可能な状態を維持できます。生命予後は比較的良好です。

遺伝形式と原因遺伝子

ウルリッヒ型筋ジストロフィーとベスレムミオパチーは、いずれもコラーゲンVI(collagen VI)をコードする3つの遺伝子のいずれかの変異によって引き起こされます。

原因遺伝子

コラーゲンVIは、筋肉、皮膚、腱、血管などの様々な細胞外マトリックスに存在する微細線維状コラーゲンです。3つのα鎖から構成され、それぞれ独立した遺伝子によってコードされています:

  • COL6A1遺伝子(21番染色体):コラーゲンVIのα1鎖をコードします
  • COL6A2遺伝子(21番染色体):コラーゲンVIのα2鎖をコードします
  • COL6A3遺伝子(2番染色体):コラーゲンVIのα3鎖をコードします

遺伝形式

ウルリッヒ型筋ジストロフィーは主に常染色体劣性(潜性)遺伝形式をとりますが、まれに常染色体優性(顕性)遺伝の症例も報告されています。大半が孤発例(家族歴のない症例)です。劣性遺伝の場合、両親がともに保因者(変異遺伝子を1つ持つ)である場合、子どもが発症する確率は25%です。

ベスレムミオパチーは通常、常染色体優性(顕性)遺伝形式をとります。患者さんの子どもが発症するリスクは50%です。最近、常染色体劣性遺伝形式をとる例も報告されています。

遺伝子型と表現型の関連

変異の種類や位置によって重症度が異なります。一般的に、コラーゲンVIが完全に欠損する変異ではウルリッヒ型筋ジストロフィーのような重症型となり、コラーゲンVIが部分的に機能している変異ではベスレムミオパチーのような軽症型となる傾向があります。

しかし、典型的なウルリッヒ型筋ジストロフィーやベスレムミオパチーの臨床的特徴を持つ患者さんの中にも、これら3つのコラーゲンVI遺伝子に変異が検出されない症例があり、遺伝学的異質性が示唆されています。

当検査パネルでは、これら3つのコラーゲンVI遺伝子(COL6A1、COL6A2、COL6A3)を対象としています。これにより、ウルリッヒ型筋ジストロフィーおよびベスレムミオパチーの遺伝的原因を効率的に特定することが可能です。

ミネルバクリニックのウルリッヒ型筋ジストロフィー・ベスレムミオパチー遺伝子パネル検査の特徴

「ウルリッヒ型筋ジストロフィー・ベスレムミオパチー NGSパネル検査」とは、現在ウルリッヒ型筋ジストロフィーおよびベスレムミオパチーの原因として知られている3つのコラーゲンVI遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。

従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。

何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、ウルリッヒ型筋ジストロフィー・ベスレムミオパチーに関連する3つのコラーゲンVI遺伝子を一度に調べられる「ウルリッヒ型筋ジストロフィー・ベスレムミオパチー NGSパネル検査」を採用しています。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.費用がリーズナブル

一般的な医療機関でウルリッヒ型筋ジストロフィー・ベスレムミオパチーの遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。

当院では、ウルリッヒ型筋ジストロフィー・ベスレムミオパチーに関係する3つのコラーゲンVI遺伝子を一度に調べられる「ウルリッヒ型筋ジストロフィー・ベスレムミオパチー NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)

2.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行えるウルリッヒ型筋ジストロフィー・ベスレムミオパチーの遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。

当院で行う「ウルリッヒ型筋ジストロフィー・ベスレムミオパチー NGSパネル検査」の場合、3つのコラーゲンVI遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。

3.一気にまとめてできる

臨床症状からウルリッヒ型筋ジストロフィーやベスレムミオパチーを疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。

当院で行う「ウルリッヒ型筋ジストロフィー・ベスレムミオパチー NGSパネル検査」ならば、3つのコラーゲンVI遺伝子を同時に検査できるという利点があります。

オプション

塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)

検査内容

「ウルリッヒ型筋ジストロフィー・ベスレムミオパチー NGSパネル検査」では、ウルリッヒ型筋ジストロフィーおよびベスレムミオパチーの原因となる3つのコラーゲンVI遺伝子(COL6A1、COL6A2、COL6A3)をまとめて検査します。

「ウルリッヒ型筋ジストロフィー・ベスレムミオパチー NGSパネル検査」は、これらの疾患の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。

どんな人が受けたらいいの?

【ウルリッヒ型筋ジストロフィーまたはベスレムミオパチーの個人歴または家族歴のある方】に
「ウルリッヒ型筋ジストロフィー・ベスレムミオパチー NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。

この検査は以下のような方に適しています:
・乳児期から筋緊張低下がある方
・運動発達遅滞(お座り、歩行の遅れ)がある方
・近位関節の拘縮と遠位関節の過伸展がある方
・進行性の筋力低下と筋萎縮がある方
・手指・肘関節・足関節の拘縮がある方
・凹足などの足の変形がある方
・呼吸機能障害がある方
・側弯症や脊柱変形がある方
・血清CK値が正常または軽度上昇の方
・先天性筋ジストロフィーまたはコラーゲンVI関連疾患の家族歴がある方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方

このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

遺伝子検査により原因が判明すると、ウルリッヒ型筋ジストロフィーまたはベスレムミオパチーの診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切なリハビリテーション、呼吸管理、心機能モニタリング、装具療法を行うことができます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・他の筋ジストロフィーや神経筋疾患との鑑別
・適切なリハビリテーションプログラムの立案
・呼吸機能モニタリングと呼吸管理の適応判断
・心機能評価と管理
・側弯症の早期発見と対応
・装具療法や整形外科的治療の適応判断
・疾患の進行予測と長期的な管理計画の立案
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供

患者さんで病原性変異が同定された場合、遺伝形式に応じて家族の発症リスクが異なります。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症するリスクは50%、常染色体劣性遺伝の場合は兄弟姉妹が発症するリスクは25%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。

対象遺伝子

詳しくはこちら

COL6A1, COL6A2, COL6A3 ( 3遺伝子 )

各遺伝子の詳細:
・COL6A1遺伝子(21番染色体):
コラーゲンVIのα1鎖をコードする遺伝子。コラーゲンVIは筋肉、皮膚、腱、血管などの細胞外マトリックスに存在する微細線維状コラーゲンで、組織の構造維持と細胞接着に重要な役割を果たします。COL6A1遺伝子の変異は、ウルリッヒ型筋ジストロフィーおよびベスレムミオパチーの原因となります。

・COL6A2遺伝子(21番染色体):
コラーゲンVIのα2鎖をコードする遺伝子。α1鎖と同様に、筋肉の基底膜や細胞外マトリックスの構造維持に不可欠です。COL6A2遺伝子の変異もウルリッヒ型筋ジストロフィーおよびベスレムミオパチーを引き起こします。常染色体劣性遺伝形式の筋硬化性ミオパチーの原因遺伝子としても知られています。

・COL6A3遺伝子(2番染色体):
コラーゲンVIのα3鎖をコードする遺伝子。他の2つのα鎖とともに三量体を形成し、機能的なコラーゲンVI分子となります。COL6A3遺伝子の変異は、ウルリッヒ型筋ジストロフィーとベスレムミオパチーの両方の原因となり、重症型から軽症型まで幅広い表現型を示します。変異の種類や位置によって重症度が決まる傾向があります。

コラーゲンVIの機能:
コラーゲンVIは3つのα鎖(α1、α2、α3)が三量体を形成し、さらに複数の三量体が集合して微細線維を形成します。筋肉では筋線維の基底膜に存在し、筋細胞と周囲の細胞外マトリックスとの接着に重要な役割を果たします。また、筋線維の機械的安定性の維持、細胞の生存シグナル伝達、筋再生の調節などにも関与しています。コラーゲンVIの異常により、筋線維が破壊されやすくなり、筋力低下や筋萎縮が生じると考えられています。

カバレッジ

カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。

≥99% at 20x(読み取り深度20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
 検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

検査の限界

詳しくはこちら

すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。

低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。

この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。

※典型的なウルリッヒ型筋ジストロフィーやベスレムミオパチーの臨床的特徴を持つ患者さんの中にも、これら3つのコラーゲンVI遺伝子に変異が検出されない症例があり、遺伝学的異質性が示唆されています。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。

結果が出るまでの期間

2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。

料金

税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
乳児期からの筋緊張低下(フロッピーインファント)、運動発達遅滞、近位関節の拘縮と遠位関節の過伸展、進行性の筋力低下と筋萎縮、手指・肘関節・足関節の拘縮などの症状がある方におすすめします。また、家族に同様の症状やコラーゲンVI関連疾患の方がいる場合も検査をご検討ください。血清CK値が正常または軽度上昇の場合も特徴的です。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
ウルリッヒ型筋ジストロフィーとベスレムミオパチーの違いは何ですか?
両疾患は同じコラーゲンVI遺伝子の変異によって引き起こされますが、重症度が異なります。ウルリッヒ型筋ジストロフィーは重症型で生下時または乳児早期から発症し、多くの患者さんが10歳までに歩行能力を失います。ベスレムミオパチーは軽症型で、乳幼児期から成人期にかけて発症し、緩徐に進行します。両疾患はスペクトラムを形成しており、中間型も存在します。
家族も検査を受ける必要がありますか?
遺伝形式によって家族の発症リスクが異なります。ベスレムミオパチーは通常常染色体優性遺伝で、患者さんのお子さんが発症するリスクは50%です。ウルリッヒ型筋ジストロフィーは主に常染色体劣性遺伝で、兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
典型的な臨床的特徴を持つ患者さんの中にも、これら3つのコラーゲンVI遺伝子に変異が検出されない症例があります。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。臨床症状、筋生検所見、筋MRIなどに基づいた診断と管理が引き続き重要です。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
遺伝形式によって子どもへの影響が異なります。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症する確率は50%、常染色体劣性遺伝の場合は保因者同士のカップルで子どもが発症する確率は25%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
ウルリッヒ型筋ジストロフィー・ベスレムミオパチーの治療はどのように行われますか?
現在のところ根本的な治療法はありませんが、理学療法、作業療法などのリハビリテーション、呼吸管理(非侵襲的または侵襲的人工呼吸)、心機能モニタリング、装具療法、必要に応じてアキレス腱延長術などの整形外科的治療が行われます。適切な管理により、患者さんのQOL(生活の質)を維持・改善できます。
予後はどうですか?
ウルリッヒ型筋ジストロフィーは重症型で、多くの患者さんが10歳までに歩行能力を失いますが、約半数はお座りや歩行が可能となります。呼吸筋障害のため人工呼吸器が必要となることがあります。ベスレムミオパチーは緩徐進行性で、50歳以上の患者さんの3分の2以上が車椅子を使用しますが、生命予後は比較的良好です。適切な呼吸管理と心機能モニタリングにより、長期的な管理が可能です。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では3つのコラーゲンVI遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。
福山型先天性筋ジストロフィーとの違いは何ですか?
福山型先天性筋ジストロフィーは重度の知的発達遅滞やてんかんなどの中枢神経症状を合併することが特徴的ですが、ウルリッヒ型筋ジストロフィーやベスレムミオパチーでは中枢神経症状を伴いません。ウルリッヒ型の患者さんは知的に優れているといわれています。また、原因遺伝子も異なり、福山型はフクチン遺伝子、ウルリッヒ型・ベスレム型はコラーゲンVI遺伝子の異常が原因です。


プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

仲田洋美のプロフィールはこちら