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結節性硬化症NGSパネル遺伝子検査|ミネルバクリニック

結節性硬化症NGSパネル遺伝子検査|ミネルバクリニック

結節性硬化症とは

結節性硬化症(Tuberous Sclerosis Complex: TSC)は、皮膚、脳、腎臓、肺、心臓など全身のさまざまな臓器に良性腫瘍(過誤腫)が発生する遺伝性疾患です。TSC1遺伝子またはTSC2遺伝子の変異により、細胞増殖の制御機構であるmTORC1(mammalian target of rapamycin complex 1)の抑制が外れ、過剰な細胞増殖が生じることが原因です。

本疾患は臨床症状が非常に多様で、皮膚症状(低色素斑、顔面血管線維腫、シャグリンパッチ)、神経症状(てんかん、知的障害、自閉スペクトラム症)、腎症状(腎血管筋脂肪腫)、肺症状(リンパ脈管筋腫症)など、年齢や個人によって症状の現れ方が大きく異なります。

結節性硬化症は指定難病158として認定されており、日本での患者数は推定約15,000人とされています。世界的には約6,000人に1人の頻度で発症すると報告されており、人種差はありません。臨床症状の重症度には個人差が大きく、軽症例では成人になるまで診断されないこともある一方、重症例では乳幼児期から複数の症状が認められます。

症状と病態

結節性硬化症の症状は全身の多臓器にわたり、年齢によって現れる症状が異なることが特徴です。胎児期・新生児期から成人期まで、それぞれの時期に特徴的な症状が認められます。

皮膚症状

  • 低色素斑(白斑):出生時から認められる脱色素斑で、患者の90%以上に見られます。葉状白斑が特徴的で、紫外線(ウッド灯)下で確認しやすくなります
  • 顔面血管線維腫:幼児期から学童期に出現する顔面の隆起性病変で、鼻や頬に分布します。患者の75%程度に認められます
  • シャグリンパッチ:腰背部に生じる皮膚の肥厚で、革のような質感を呈します
  • 爪囲線維腫(Koenen腫瘍):思春期以降に爪の周囲や爪下に生じる線維腫で、成人の約20%に認められます

神経症状

結節性硬化症の患者の80~90%がてんかんを合併し、神経症状は本疾患の障害と死亡の主要な原因となります。

  • てんかん:乳児期に発症するWest症候群(点頭てんかん)が特徴的で、生後3~6ヶ月頃に発症することが多いです。その後、複雑部分発作や全般性発作が認められることもあります
  • 皮質結節:大脳皮質の異常で、てんかんの原因となります
  • 上衣下結節:脳室の壁に沿って形成される結節です
  • 上衣下巨細胞性星細胞腫(SEGA):幼児期から思春期にかけて発症する脳腫瘍で、水頭症の原因となることがあります
  • 結節性硬化症関連神経精神障害(TAND):知的障害(患者の約50~60%)、自閉スペクトラム症、注意欠如多動症(ADHD)、学習障害、行動障害などが含まれます

腎症状

腎病変は結節性硬化症の主要な死因の一つであり、特に10歳以上の患者で重要です。

  • 腎血管筋脂肪腫(AML):患者の70~90%に認められ、10歳代半ばから35歳頃に発症しやすく、女性に多い傾向があります。腫瘍が大きくなると出血や腎機能障害のリスクが高まります
  • 腎嚢胞:多発性腎嚢胞を形成することがあります
  • 腎細胞癌:稀ですが、悪性腫瘍が発生することもあります

心臓症状

  • 心横紋筋腫:胎児期・新生児期・乳幼児期に高頻度(約50%)に認められます。多くは無症状ですが、心不全や不整脈を引き起こすこともあります。加齢とともに自然に縮小・消退することが多いです

肺症状

  • リンパ脈管筋腫症(LAM):主に成人女性(20~40歳代)に発症する肺の嚢胞性疾患で、呼吸困難や気胸を引き起こします。結節性硬化症の女性患者の約30~40%に認められます

その他の症状

  • 網膜過誤腫:眼底に認められる良性腫瘍で、通常は視力に影響しません
  • 歯エナメル質のくぼみ:永久歯に小さなくぼみが認められることがあります

進行と予後

結節性硬化症の予後は症状の重症度によって大きく異なります。軽症例では正常な生活を送ることができますが、重症例では重度の知的障害やてんかん、腎不全などにより生活の質が大きく低下することがあります。主な死因は腎不全、脳腫瘍、心不全の順に多く、年齢によって異なります。10歳未満では心血管系異常、10代では脳腫瘍(SEGA)、10歳以上では腎病変、40歳以上の女性では肺のLAMが主な死因となります。

遺伝形式と原因遺伝子

結節性硬化症は常染色体優性(顕性)遺伝の遺伝形式をとり、TSC1遺伝子(9番染色体:9q34)またはTSC2遺伝子(16番染色体:16p13.3)のいずれかの変異により発症します。両親のいずれかが本疾患を有する場合、子どもが発症するリスクは50%です。

孤発例の頻度

結節性硬化症の約60~70%は新規変異(de novo変異)による孤発例であり、家族歴が明らかな症例は40%以下です。これは受精時の精子または卵子の遺伝子に突然変異が生じたことを意味します。

TSC1遺伝子とTSC2遺伝子

TSC1遺伝子:
9番染色体(9q34)に位置し、ハマルチン(hamartin)と呼ばれる130kDaのタンパク質をコードします。ハマルチンは腫瘍抑制因子として機能し、細胞の接着や増殖制御に関与します。TSC1遺伝子変異は結節性硬化症患者の約26%に認められます。

TSC2遺伝子:
16番染色体(16p13.3)に位置し、チュベリン(tuberin)と呼ばれる198kDaのタンパク質をコードします。チュベリンはGTPase活性化タンパク質(GAP)として機能し、細胞分裂、神経の分化、細胞増殖の制御に重要な役割を果たします。TSC2遺伝子変異は結節性硬化症患者の約74%に認められ、TSC1変異よりも重症となる傾向があります。

ハマルチン・チュベリン複合体とmTORC1

ハマルチンとチュベリンは複合体を形成し、Rheb(Ras homolog enriched in brain)のGTPase活性化タンパク質(GAP)として作用します。この複合体はRheb-GTPを不活性化することで、mTORC1(mammalian target of rapamycin complex 1)を抑制し、その下流のS6K1やribosomal protein S6、4E-BP1に作用して、細胞の増殖や細胞の大きさを制御します。

TSC1またはTSC2遺伝子に変異が生じると、ハマルチン・チュベリン複合体の機能が失われ、mTORC1の抑制が外れて過剰に活性化されます。この結果、全身の様々な臓器に過誤腫が形成されると考えられています。

体細胞モザイク

結節性硬化症患者の約1~5%は体細胞モザイクであると推定されています。体細胞モザイクの場合、臨床症状が軽度であることが多く、通常の遺伝子検査では変異が検出されないこともあります。

当検査では、結節性硬化症の原因となるTSC1遺伝子とTSC2遺伝子の両方を同時に検査します。これにより、結節性硬化症の主要な原因を効率的にスクリーニングすることが可能です。ただし、約10~25%の患者では、現在の検査技術では変異を検出できない場合があります。

ミネルバクリニックの結節性硬化症遺伝子パネル検査の特徴

「結節性硬化症 NGSパネル検査」とは、結節性硬化症の原因として報告されている2つの遺伝子(TSC1、TSC2)に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。

従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、TSC1遺伝子の検査をして異常がなければ次にTSC2遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。

何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、結節性硬化症に関連する2遺伝子を一度に調べられる「結節性硬化症 NGSパネル検査」を採用しています。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.費用がリーズナブル

一般的な医療機関で結節性硬化症の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。

当院では、結節性硬化症に関係するとされる2つの遺伝子を一度に調べられる「結節性硬化症 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)

2.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行える結節性硬化症の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。

当院で行う「結節性硬化症 NGSパネル検査」の場合、2つの遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。

3.一気にまとめてできる

臨床症状から結節性硬化症を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。

当院で行う「結節性硬化症 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な2つの原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。

オプション

塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)

検査内容

「結節性硬化症 NGSパネル検査」では、結節性硬化症に関係するとされる2種類の遺伝子(TSC1、TSC2)をまとめて検査します。

「結節性硬化症 NGSパネル検査」は、結節性硬化症の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。

どんな人が受けたらいいの?

【結節性硬化症の個人歴または家族歴のある方】に
「結節性硬化症 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。

この検査は以下のような方に適しています:
・皮膚に低色素斑(白斑)がある方
・顔面に血管線維腫がある方
・てんかん発作がある方、特に乳児期にWest症候群と診断された方
・知的障害や発達遅滞がある方
・自閉スペクトラム症と診断されている方
・腎血管筋脂肪腫が認められる方
・心横紋筋腫が認められる方(特に胎児期・新生児期)
・上衣下巨細胞性星細胞腫(SEGA)が認められる方
・網膜過誤腫が認められる方
・リンパ脈管筋腫症(LAM)と診断された方
・結節性硬化症の家族歴がある方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方

このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

遺伝子検査により原因が判明すると、結節性硬化症の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切な定期的モニタリング、mTOR阻害薬による治療、てんかん治療、生活習慣の改善を行うことができます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・他の疾患との鑑別診断
・mTOR阻害薬(エベロリムス)による治療適応の判断
・てんかんに対する適切な治療法の選択(ビガバトリンなど)
・腎血管筋脂肪腫の定期的なモニタリングと治療計画の立案
・上衣下巨細胞性星細胞腫(SEGA)の早期発見と治療
・リンパ脈管筋腫症(LAM)のリスク評価と管理
・心横紋筋腫の経過観察と治療方針の決定
・神経精神症状(TAND)に対する適切な療育・訓練の実施
・疾患の進行予測と長期的な管理計画の立案
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供

患者さんで病原性変異が同定された場合、常染色体優性遺伝のため子どもが発症するリスクは50%です。ただし、約60~70%は新規変異による孤発例であるため、患者さんの両親に変異が認められないこともあります。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。

対象遺伝子

詳しくはこちら

TSC1, TSC2 ( 2遺伝子 )

各遺伝子の詳細:
・TSC1遺伝子:
9番染色体(9q34)に位置し、ハマルチン(hamartin)と呼ばれる130kDaのタンパク質をコードします。ハマルチンは腫瘍抑制因子として機能し、細胞の接着や増殖制御に関与します。TSC1遺伝子変異は結節性硬化症患者の約26%に認められます。変異により、ハマルチン・チュベリン複合体の機能が失われ、mTORC1の過剰な活性化が生じます。TSC1変異による結節性硬化症は、一般的にTSC2変異よりも症状が軽度である傾向があります。

・TSC2遺伝子:
16番染色体(16p13.3)に位置し、チュベリン(tuberin)と呼ばれる198kDaのタンパク質をコードします。チュベリンはGTPase活性化タンパク質(GAP)として機能し、Rhebの不活性化を介してmTORC1を抑制します。また、細胞分裂、神経の分化、エンドサイトーシスなど多岐にわたる細胞機能に重要な役割を果たします。TSC2遺伝子変異は結節性硬化症患者の約74%に認められ、最も頻度の高い原因遺伝子です。TSC2変異による結節性硬化症は、TSC1変異よりも重症となる傾向があり、より早期発症、重度のてんかん、知的障害の頻度が高いことが知られています。

カバレッジ

カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。

≥99% at 20x(読み取り深度20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
 検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

検査の限界

詳しくはこちら

すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。

低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。

この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。

※結節性硬化症患者の約10~25%では、現在の検査技術では病原性変異が検出されません。検査で病原性変異が検出されなくても、臨床診断基準を満たす場合は結節性硬化症と診断されることがあります。また、体細胞モザイクの場合は検出が困難なことがあります。

結果が出るまでの期間

2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。

料金

税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
皮膚に低色素斑(白斑)や顔面血管線維腫がある方、てんかん発作がある方、特に乳児期にWest症候群(点頭てんかん)と診断された方におすすめします。また、知的障害や自閉スペクトラム症、腎血管筋脂肪腫、心横紋筋腫、上衣下巨細胞性星細胞腫(SEGA)などが認められる場合、結節性硬化症の可能性が高くなります。家族に結節性硬化症の方がいる場合も検査をご検討ください。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
結節性硬化症は遺伝しますか?
結節性硬化症は常染色体優性(顕性)遺伝の遺伝形式をとります。患者さんのお子さんが発症するリスクは50%です。ただし、約60~70%は新規変異による孤発例であり、患者さんの両親に変異が認められないこともあります。
家族も検査を受ける必要がありますか?
患者さんで病原性変異が同定された場合、お子さんが発症するリスクは50%です。また、軽症例では成人になるまで診断されないこともあるため、ご家族に軽度の症状がある場合は検査をご検討ください。家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
約10~25%の結節性硬化症患者では、現在の検査技術では病原性変異が検出されません。検査で病原性変異が検出されなくても、臨床診断基準(大症状2つ、または大症状1つと小症状2つ以上)を満たす場合は結節性硬化症と診断されます。体細胞モザイクの場合も検出が困難なことがあります。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。なお、結節性硬化症は指定難病158として認定されており、診断が確定した場合は医療費助成の対象となる可能性があります。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
常染色体優性遺伝のため、患者さんのお子さんが発症する確率は50%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。また、軽症例も多いため、遺伝カウンセリングにより適切な情報提供を行います。
結節性硬化症の治療はどのように行われますか?
症状に応じた対症療法が中心となります。てんかんに対しては抗てんかん薬(ビガバトリンなど)、上衣下巨細胞性星細胞腫(SEGA)や腎血管筋脂肪腫に対してはmTOR阻害薬(エベロリムス)、顔面血管線維腫に対しては外用mTOR阻害薬(シロリムス)などが使用されます。また、定期的な画像検査によるモニタリングも重要です。
予後はどうですか?
結節性硬化症の予後は症状の重症度によって大きく異なります。軽症例では正常な生活を送ることができますが、重症例では重度のてんかんや知的障害、腎不全などにより生活の質が低下することがあります。適切な定期的モニタリングと治療により、多くの患者さんは良好な生活の質を維持できます。
臨床診断基準とは何ですか?
結節性硬化症の診断基準には大症状と小症状があります。大症状には顔面血管線維腫、爪囲線維腫、低色素斑(3つ以上)、シャグリンパッチ、多発性網膜過誤腫、皮質異形成、上衣下結節、上衣下巨細胞性星細胞腫(SEGA)、心横紋筋腫、リンパ脈管筋腫症(LAM)、腎血管筋脂肪腫が含まれます。大症状2つ、または大症状1つと小症状2つ以上で結節性硬化症と確定診断されます。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では結節性硬化症の原因となる2つの遺伝子(TSC1、TSC2)を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。


プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

仲田洋美のプロフィールはこちら