(更新日:2025/10/05)
トリーチャーコリンズ症候群関連遺伝子パネル検査(NGS法)|ミネルバクリニック
トリーチャーコリンズ症候群とは
トリーチャーコリンズ症候群(Treacher Collins syndrome: TCS)は、頭蓋顔面の発育障害による両側対称性の頬骨・上顎骨・下顎骨の低形成を特徴とする先天性疾患です。別名「下顎顔面異骨症(Mandibulofacial dysostosis)」とも呼ばれます。
本疾患は出生5万人から10万人に1人の頻度で発症し、人種差はありません。発生学的には第1・第2鰓弓の発生異常によって生じる疾患で、眼瞼裂の下方傾斜(外眼角が下がる)、頬骨の低形成、小下顎症、外耳の異常などが特徴的な症状として現れます。
トリーチャーコリンズ症候群は、1900年にイギリスの眼科医Edward Treacher Collinsによって初めて詳細に報告され、その後1949年にFranceschettiとKleinによって「下顎顔面異骨症」として包括的に記述されました。知能は通常正常範囲内ですが、難聴や呼吸・摂食障害などの機能的な問題を伴うことがあり、多職種による長期的な医療ケアが必要となる疾患です。
症状と病態
トリーチャーコリンズ症候群の主な症状は、頭蓋顔面領域の対称性の骨格異常です。重症度は個人差が大きく、軽症例では診断が見逃されることもあれば、重症例では生命を脅かす呼吸障害を伴うこともあります。
主要症状
眼瞼裂の下方傾斜(外眼角が下がる)
下眼瞼の外側3分の1に睫毛の欠如またはコロボーマ(切痕形成)
頬骨弓と眼窩側縁の低形成による頬骨隆起の低形成
小下顎症・下顎後退症(下顎骨の低形成)
外耳の異常(無耳症、小耳症、耳介の形態異常、外耳道の閉鎖・狭窄)
耳前部毛髪線の異常(毛髪の生え際が耳前部から頬骨の横にまで延びる)
鼻の突出(頬骨低形成による相対的な鼻の突出)
口蓋裂(一部の症例)
後鼻孔閉鎖・狭窄(片側性または両側性)
機能的問題
トリーチャーコリンズ症候群では、顔面骨格の異常に伴って以下のような機能的な問題が生じることがあります:
難聴: 罹患者の約40~50%に伝音性難聴が認められます。耳小骨の奇形や中耳腔の低形成が主な原因ですが、内耳構造は通常正常です
呼吸障害: 乳児期に小下顎症や後鼻孔狭窄・閉鎖により、重大な呼吸障害を呈することがあります。重症例では気管切開が必要となる場合もあります
摂食障害: 新生児期から乳児期にかけて、小下顎症や口蓋裂により哺乳困難や嚥下障害を示すことがあります
睡眠時無呼吸: 上気道の狭窄により閉塞性睡眠時無呼吸症候群を発症することがあります
視覚障害: 眼瞼のコロボーマや涙道の異常により、眼の保護機能や涙液の排出に問題が生じることがあります
言語発達の遅れ: 難聴や口蓋裂により言語発達に影響が出ることがあります
関連疾患
このパネル検査では、トリーチャーコリンズ症候群に加えて、以下の関連疾患も対象としています:
ミラー症候群(軸後性先端顔面異骨症): DHODH遺伝子変異によって引き起こされる疾患で、トリーチャーコリンズ症候群と類似した頭蓋顔面の特徴に加えて、手足の軸後性(第5指側)の欠損を伴います。小下顎症、口蓋裂、頬骨低形成に加え、第5指の欠如や上肢の短縮が特徴的です
下顎顔面異骨症・小頭症型: EFTUD2遺伝子変異によって引き起こされ、下顎顔面異骨症の特徴に加えて小頭症と知的障害を伴います
その他の先端顔面異骨症: 類似した頭蓋顔面異常を呈する一群の疾患
予後
知能は通常正常範囲内であり、適切な医療ケアとサポートにより、多くの患者さんは自立した生活を送ることができます。ただし、難聴、呼吸・摂食障害、言語発達の問題などに対しては、小児期から成人期まで継続的な多職種によるケアが必要です。形成外科的治療、耳鼻咽喉科的治療、歯科矯正治療などにより、機能的・整容的な改善が可能です。
遺伝形式と原因遺伝子
トリーチャーコリンズ症候群および関連疾患は遺伝学的に多様性があり、常染色体優性(顕性)遺伝、常染色体劣性(潜性)遺伝のいずれの形式でも発症します。
トリーチャーコリンズ症候群の原因遺伝子
古典的なトリーチャーコリンズ症候群は、主に4つの遺伝子の変異によって引き起こされます:
TCOF1遺伝子(最も頻度が高い): 常染色体優性遺伝形式。トリーチャーコリンズ症候群の約80~90%がこの遺伝子変異によるものです。トリークルをコードし、リボソーム生合成に関与します
POLR1B遺伝子: 常染色体優性遺伝形式。RNAポリメラーゼIのサブユニットをコードします
POLR1C遺伝子: 常染色体劣性遺伝形式(一部は優性遺伝)。RNAポリメラーゼIおよびIIIの共通サブユニットをコードします
POLR1D遺伝子: 常染色体優性遺伝形式または常染色体劣性遺伝形式。RNAポリメラーゼIおよびIIIのサブユニットをコードします
関連疾患の原因遺伝子
DHODH遺伝子: 常染色体劣性遺伝形式。ミラー症候群(軸後性先端顔面異骨症)の原因遺伝子で、ジヒドロオロト酸脱水素酵素をコードし、ピリミジン生合成経路に関与します
EFTUD2遺伝子: 常染色体優性遺伝形式。下顎顔面異骨症・小頭症型の原因遺伝子で、スプライセオソームのGTPアーゼをコードします
EDNRA遺伝子: エンドセリン受容体Aをコードし、先端顔面異骨症の原因となることがあります
SF3B4遺伝子: スプライシング因子をコードし、先端顔面異骨症に関連します
遺伝形式と家族への影響
常染色体優性遺伝の場合: 患者さんのお子さんが疾患を発症する確率は50%です。ただし、トリーチャーコリンズ症候群の約60%は新生突然変異(de novo変異)によるもので、家族歴がない場合も多くあります。
常染色体劣性遺伝の場合: 両親が保因者の場合、お子さんが疾患を発症する確率は25%、保因者となる確率は50%、影響を受けない確率は25%です。
ミネルバクリニックのトリーチャーコリンズ症候群関連遺伝子パネル検査の特徴
「トリーチャーコリンズ症候群関連 NGSパネル検査」とは、現在トリーチャーコリンズ症候群および関連疾患の原因として報告されている9つの遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。
従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。
何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、トリーチャーコリンズ症候群および関連疾患に関連する9遺伝子を一度に調べられる「トリーチャーコリンズ症候群関連 NGSパネル検査」を採用しています。
一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページ をご覧ください。
1.費用がリーズナブル
一般的な医療機関でトリーチャーコリンズ症候群の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。
当院では、トリーチャーコリンズ症候群および関連疾患に関係するとされる9つの遺伝子を一度に調べられる「トリーチャーコリンズ症候群関連 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)
2.結果が出るまでがはやい
一般的な医療機関で行えるトリーチャーコリンズ症候群の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。
当院で行う「トリーチャーコリンズ症候群関連 NGSパネル検査」の場合、9つの遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。
3.一気にまとめてできる
臨床症状からトリーチャーコリンズ症候群を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。
当院で行う「トリーチャーコリンズ症候群関連 NGSパネル検査」ならば、古典的なトリーチャーコリンズ症候群の4つの原因遺伝子と、関連疾患の5つの原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。
オプション
塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)
検査内容
「トリーチャーコリンズ症候群関連 NGSパネル検査」では、トリーチャーコリンズ症候群および関連疾患に関係するとされる9種類の遺伝子(DHODH、EDNRA、EFTUD2、POLR1A、POLR1B、POLR1C、POLR1D、SF3B4、TCOF1)をまとめて検査します。
「トリーチャーコリンズ症候群関連 NGSパネル検査」は、トリーチャーコリンズ症候群および関連疾患の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。
どんな人が受けたらいいの?
【トリーチャーコリンズ症候群または関連疾患の個人歴または家族歴のある方】に
「トリーチャーコリンズ症候群関連 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。
この検査は以下のような方に適しています:
・眼瞼裂の下方傾斜(外眼角が下がる)がある方
・頬骨の低形成がある方
・小下顎症(下顎が小さい)がある方
・外耳の異常(小耳症、耳介の形態異常、外耳道閉鎖など)がある方
・伝音性難聴がある方
・口蓋裂がある方
・乳児期に呼吸障害や摂食障害があった方
・下眼瞼のコロボーマや睫毛の欠如がある方
・手足の第5指側(軸後性)の欠損や形態異常がある方(ミラー症候群の疑い)
・小頭症と頭蓋顔面異常を併せ持つ方(下顎顔面異骨症・小頭症型の疑い)
・トリーチャーコリンズ症候群または関連疾患の家族歴がある方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方
このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。
検査で得られる患者さんの潜在的利益は?
遺伝子検査により原因が判明すると、トリーチャーコリンズ症候群または関連疾患の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切な医療介入、定期的なモニタリングを行うことができます。
遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・他の頭蓋顔面異常症との鑑別
・聴覚評価と補聴器などの介入の適切なタイミング決定
・呼吸・摂食障害のリスク評価と早期介入
・睡眠時無呼吸のスクリーニングと管理
・口蓋裂や後鼻孔閉鎖などの合併症の早期発見
・形成外科的治療の計画立案
・言語発達のサポート
・疾患の進行予測と長期的な管理計画の立案
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートグループへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供
患者さんで病原性変異が同定された場合、遺伝形式に応じて家族の発症リスクが異なります。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症するリスクは50%、常染色体劣性遺伝の場合は兄弟姉妹が発症するリスクは25%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。
対象遺伝子
詳しくはこちら
DHODH, EDNRA, EFTUD2, POLR1A, POLR1B, POLR1C, POLR1D, SF3B4, TCOF1 ( 9遺伝子 )
各遺伝子の詳細:
・TCOF1遺伝子:
トリークル(treacle)をコードする遺伝子。トリーチャーコリンズ症候群の最も頻度の高い原因遺伝子で、約80~90%の症例がこの遺伝子変異によります。常染色体優性遺伝形式をとり、リボソーム生合成に関与します。新生突然変異が多く、家族歴のない孤発例も頻繁に見られます。
・POLR1A遺伝子:
RNAポリメラーゼIの最大サブユニットをコードする遺伝子。リボソームRNA転写に関与します。
・POLR1B遺伝子:
RNAポリメラーゼIのサブユニットをコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式をとります。TCOF1変異に次いで頻度の高い原因遺伝子の一つです。
・POLR1C遺伝子:
RNAポリメラーゼIおよびIIIの共通サブユニットをコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式が主ですが、一部は優性遺伝形式もとります。
・POLR1D遺伝子:
RNAポリメラーゼIおよびIIIのサブユニットをコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式または常染色体劣性遺伝形式をとります。
・DHODH遺伝子:
ジヒドロオロト酸脱水素酵素をコードする遺伝子。ミラー症候群(軸後性先端顔面異骨症)の原因遺伝子です。常染色体劣性遺伝形式をとり、ピリミジン生合成経路の第4段階を触媒します。トリーチャーコリンズ症候群と類似した頭蓋顔面の特徴に加えて、手足の第5指側(軸後性)の欠損が特徴的です。
・EFTUD2遺伝子:
スプライセオソームのGTPアーゼをコードする遺伝子。下顎顔面異骨症・小頭症型(Mandibulofacial dysostosis with microcephaly)の原因遺伝子です。常染色体優性遺伝形式をとり、mRNAスプライシングに関与します。下顎顔面異骨症の特徴に加えて、小頭症と知的障害を伴うことが特徴的です。
・EDNRA遺伝子:
エンドセリン受容体Aをコードする遺伝子。神経堤細胞の発生と頭蓋顔面の形成に重要な役割を果たします。先端顔面異骨症の原因となることがあります。
・SF3B4遺伝子:
スプライシング因子3Bサブユニット4をコードする遺伝子。mRNAスプライシングに関与し、先端顔面異骨症に関連します。
カバレッジ
カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。
≥99% at 20x(読み取り深度20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。
検体
血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)
※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能 です。
ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。
検査の限界
詳しくはこちら
すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。
低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。
この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。
※この検査パネルでは、9つの原因遺伝子のみを対象としています。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。また、臨床診断はあくまでも身体所見、画像検査、臨床経過などを総合的に判断して行われるべきものです。
結果が出るまでの期間
2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。
料金
税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)
よくあるご質問
どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
眼瞼裂の下方傾斜、頬骨の低形成、小下顎症、外耳の異常(小耳症、外耳道閉鎖など)、伝音性難聴などの症状がある方におすすめします。また、乳児期に呼吸障害や摂食障害があった場合、口蓋裂がある場合も検査をご検討ください。ミラー症候群を疑う場合は、これらの症状に加えて手足の第5指側の欠損がないか確認します。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
トリーチャーコリンズ症候群とミラー症候群の違いは何ですか?
トリーチャーコリンズ症候群は主に頭蓋顔面の異常を特徴としますが、ミラー症候群は頭蓋顔面の異常に加えて、手足の第5指側(軸後性)の欠損や形態異常を伴います。また、原因遺伝子も異なり、トリーチャーコリンズ症候群はTCOF1、POLR1B、POLR1C、POLR1D遺伝子が主な原因ですが、ミラー症候群はDHODH遺伝子の変異によって引き起こされます。遺伝形式も異なり、ミラー症候群は常染色体劣性遺伝です。
家族も検査を受ける必要がありますか?
遺伝形式によって家族の発症リスクが異なります。常染色体優性遺伝(TCOF1、POLR1B、POLR1Dなど)の場合、患者さんのお子さんが発症するリスクは50%です。ただし、約60%は新生突然変異によるもので、この場合は家族への影響は限定的です。常染色体劣性遺伝(DHODH、POLR1Cの一部)の場合、兄弟姉妹が発症するリスクは25%です。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
検査で病原性変異が検出されなくても、臨床的にトリーチャーコリンズ症候群または関連疾患と診断される場合があります。この検査パネルでは9つの既知の原因遺伝子のみを対象としており、まだ同定されていない原因遺伝子が存在する可能性があります。臨床症状、画像検査、家族歴などを総合的に判断した診断が引き続き重要です。
難聴への対応はどうすればよいですか?
トリーチャーコリンズ症候群の約40~50%に伝音性難聴が認められます。早期の聴覚評価が重要で、必要に応じて補聴器や骨導補聴器の使用を検討します。外耳道閉鎖がある場合は形成外科的治療も選択肢となります。難聴が言語発達に影響することがあるため、言語療法のサポートも重要です。
呼吸障害への対応はどうすればよいですか?
小下顎症や後鼻孔閉鎖により、新生児期から乳児期にかけて重大な呼吸障害を呈することがあります。重症例では気管切開が必要となる場合もあります。睡眠時無呼吸症候群のリスクもあるため、定期的な睡眠評価が推奨されます。顎の成長に伴って呼吸状態が改善することもあります。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
遺伝形式によって子どもへの影響が異なります。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症する確率は50%、常染色体劣性遺伝の場合は保因者同士のカップルで子どもが発症する確率は25%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
トリーチャーコリンズ症候群の治療はどのように行われますか?
多職種による包括的な治療が必要です。形成外科的治療(顔面骨の再建、外耳形成など)、耳鼻咽喉科的治療(補聴器、気道管理など)、歯科矯正治療、言語療法などが含まれます。治療は段階的に行われ、小児期から成人期まで継続的なサポートが必要です。
予後はどうですか?
知能は通常正常範囲内であり、適切な医療ケアとサポートにより、多くの患者さんは自立した生活を送ることができます。難聴、呼吸・摂食障害などに対しては継続的なケアが必要ですが、形成外科的治療などにより機能的・整容的な改善が可能です。生命予後は一般的に良好です。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では臨床的に重要な9つの原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。
プロフィール
この記事の筆者:仲田洋美(医師)
ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得 して以来、のべ10万人以上 のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。
仲田洋美のプロフィールはこちら