TMA(血栓性微小血管症)フォーカス遺伝子パネル検査|ミネルバクリニック
血栓性微小血管症(TMA)とは
血栓性微小血管症(Thrombotic Microangiopathy: TMA)は、全身の微小血管内に血小板血栓が形成される結果、血小板減少、微小血管障害性溶血性貧血、血栓性臓器障害を特徴とする疾患群の総称です。微小血管が障害されることで、腎臓、脳、消化管などの臓器に血流が行き渡らなくなり、多臓器不全を引き起こすことがあります。
TMAは病因によって分類され、主に以下の病型が含まれます:血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、志賀毒素産生性大腸菌による溶血性尿毒症症候群(STEC-HUS)、および二次性TMAです。これらは臨床症状が類似しているため、正確な診断には遺伝学的検査が重要となります。
TMAの診断には、微小血管障害性溶血性貧血(破砕赤血球の出現、LDH上昇、ハプトグロビン低下)、血小板減少、臓器障害の3つの所見が重要です。早期診断と適切な治療により、重篤な合併症を予防し、予後を改善することが可能です。
症状と病態
TMAの主要症状は、血小板減少、微小血管障害性溶血性貧血、臓器障害の3つです。全身の微小血管に血小板血栓が形成されることで、血小板が消費されて減少し、閉塞した血管を通過する赤血球が破壊されて貧血が生じます。
主要症状
- 血小板減少による出血傾向(点状出血、紫斑、鼻出血など)
- 溶血性貧血による症状(全身倦怠感、息切れ、動悸、黄疸)
- 急性腎障害(浮腫、尿量減少、食欲低下、悪心・嘔吐)
- 神経症状(頭痛、意識障害、痙攣、麻痺)
- 消化器症状(腹痛、下痢、血便)
- 発熱
- 心血管症状(胸痛、不整脈)
病型による特徴
TMAの病型によって、症状の出現パターンや重症度が異なります:
- 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP):ADAMTS13酵素の活性が著しく低下することで発症します。古典的には5徴候(発熱、血小板減少、溶血性貧血、腎機能障害、精神神経症状)を呈しますが、必ずしもすべての症状が揃うわけではありません。神経症状が比較的目立つことが特徴です。
- 非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS):補体制御因子の異常により発症します。Gasserの3徴候(血小板減少、溶血性貧血、急性腎不全)を特徴とし、腎障害が特に強く現れます。患者の約60%に補体制御因子の遺伝子変異が認められます。
- 志賀毒素産生性大腸菌による溶血性尿毒症症候群(STEC-HUS):O157などの腸管出血性大腸菌感染後に発症し、血性下痢が先行することが特徴です。小児に多く、多くは自然に回復しますが、重症例では透析が必要となることがあります。
- 二次性TMA:妊娠、悪性高血圧、膠原病、薬剤、臓器移植、造血幹細胞移植などに関連して発症します。基礎疾患の管理が重要です。
臓器障害のパターン
TMAでは、以下のような臓器障害が認められます:
- 腎臓:最も頻度の高い臓器障害で、aHUSでは約半数が血液透析を必要とする高度の腎不全に至ります。急性腎障害から慢性腎臓病、末期腎不全に進行することがあります。
- 中枢神経系:TTPで特に多く、頭痛、意識障害、痙攣、麻痺、失語などの多彩な神経症状を呈します。
- 消化管:腹痛、下痢、血便、膵炎などを呈することがあります。
- 心血管系:心筋虚血、心不全、不整脈を引き起こすことがあります。
予後
TMAの予後は病型と治療開始のタイミングによって大きく異なります。TTPは適切な血漿交換療法により致死率が大幅に改善しました。aHUSは従来致死率が約25%と予後不良でしたが、抗補体療法の登場により予後が著しく改善しています。STEC-HUSは小児では比較的予後良好ですが、重症例では後遺症を残すことがあります。
遺伝形式と原因遺伝子
TMAは遺伝学的に非常に多様性が高く、特にaHUSでは多くの原因遺伝子が同定されています。遺伝形式は常染色体優性(顕性)遺伝、常染色体劣性(潜性)遺伝のいずれの形式でも発症します。
補体制御因子の異常(aHUS)
aHUS患者の約60~70%に補体制御因子の遺伝子変異が認められます。補体は体内に侵入した病原体を攻撃する免疫システムの一つですが、通常は補体制御因子によって厳密にコントロールされています。これらの遺伝子に変異があると、補体の異常な活性化が起こり、自己の血管内皮細胞が攻撃されてTMAが発症します。
補体活性化を抑制する因子(機能低下型)
- CFH遺伝子(H因子):aHUSの原因として最も頻度が高く、患者の20~30%に変異が認められます。補体の第二経路を抑制する重要な因子です。
- CFI遺伝子(I因子):患者の5~12%に変異が認められます。H因子と協働して補体を抑制します。
- CD46遺伝子(MCP):患者の10~13%に変異が認められます。細胞膜上の補体制御因子として機能します。
- THBD遺伝子(トロンボモジュリン):凝固系と補体系の両方を制御する因子です。
- CFHR1、CFHR2、CFHR3、CFHR4、CFHR5遺伝子:H因子関連タンパク質をコードし、補体制御に関与します。欠失や重複が報告されています。
補体活性化を促進する因子(機能亢進型)
- C3遺伝子:補体の中心的な分子で、変異により活性化が亢進します。
- CFB遺伝子(B因子):補体の第二経路を活性化する因子で、変異により活性が亢進します。
- CFD遺伝子(D因子):補体の第二経路の開始に関与します。
補体系以外の原因遺伝子
- DGKE遺伝子:常染色体劣性遺伝形式で、血小板活性化に関与するシグナル伝達経路を制御します。主に小児期発症のaHUSの原因となります。
- MMACHC遺伝子:ビタミンB12代謝に関与し、コバラミン代謝異常によるTMAの原因となります。
- INF2遺伝子:足細胞のアクチン細胞骨格を制御し、腎障害を伴うTMAの原因となることがあります。
ADAMTS13遺伝子(TTP)
ADAMTS13は、止血因子であるフォンビルブランド因子(VWF)を切断する酵素をコードする遺伝子です。先天性TTPでは、ADAMTS13遺伝子の両アレルに変異があり(常染色体劣性遺伝)、酵素活性が著しく低下(5~10%未満)します。後天性TTPでは、自己抗体によりADAMTS13の機能が阻害されます。
その他の凝固・線溶系遺伝子
- PLG遺伝子(プラスミノーゲン):線溶系の中心的な因子で、変異により線溶能が低下し血栓傾向が増加します。
- F12遺伝子(第XII因子):凝固系の接触活性化経路に関与します。
補体調節膜タンパク質
- CD55遺伝子(DAF):細胞膜上で補体の活性化を制御します。
- CD59遺伝子:補体の膜侵襲複合体形成を阻害します。
- C9遺伝子:補体の膜侵襲複合体の構成要素です。
糖鎖関連遺伝子
- ST3GAL1遺伝子:シアル酸転移酵素をコードし、糖鎖修飾を介して血小板機能に影響を与えます。
当検査パネルでは、これらの原因遺伝子のうち、臨床的に重要な22遺伝子を対象としています。これにより、TMAの主要な原因を効率的にスクリーニングすることが可能です。ただし、約30~40%の患者では既知の遺伝子に変異が見つからず、まだ発見されていない原因遺伝子の存在が示唆されています。
ミネルバクリニックのTMA(血栓性微小血管症)フォーカス遺伝子パネル検査の特徴
「TMA(血栓性微小血管症)フォーカス遺伝子パネル検査」とは、現在TMAの原因として報告されている22の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。
従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。
何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、TMAに関連する22遺伝子を一度に調べられる「TMA(血栓性微小血管症)フォーカス遺伝子パネル検査」を採用しています。
一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。
1.費用がリーズナブル
一般的な医療機関でTMAの遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。
当院では、TMAに関係するとされる22の遺伝子を一度に調べられる「TMA(血栓性微小血管症)フォーカス遺伝子パネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)
2.結果が出るまでがはやい
一般的な医療機関で行えるTMAの遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。
当院で行う「TMA(血栓性微小血管症)フォーカス遺伝子パネル検査」の場合、22の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。
3.一気にまとめてできる
臨床症状からTMAを疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。
当院で行う「TMA(血栓性微小血管症)フォーカス遺伝子パネル検査」ならば、臨床的に重要な22の原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。
オプション
塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)
検査内容
「TMA(血栓性微小血管症)フォーカス遺伝子パネル検査」では、TMAに関係するとされる22種類の遺伝子(ADAMTS13、C3、C9、CD46、CD55、CD59、CFB、CFD、CFH、CFHR1、CFHR2、CFHR3、CFHR4、CFHR5、CFI、DGKE、F12、INF2、MMACHC、PLG、ST3GAL1、THBD)をまとめて検査します。
「TMA(血栓性微小血管症)フォーカス遺伝子パネル検査」は、TMAの遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。
どんな人が受けたらいいの?
【TMAの個人歴または家族歴のある方】に
「TMA(血栓性微小血管症)フォーカス遺伝子パネル検査」を受けることをおすすめします。
この検査は以下のような方に適しています:
・血小板減少と溶血性貧血が同時に認められる方
・破砕赤血球が末梢血で確認される方
・急性腎障害を伴う方
・原因不明の血小板減少や溶血性貧血がある方
・神経症状(頭痛、意識障害、痙攣など)を伴う方
・感染症、妊娠、手術などをきっかけに上記症状が出現した方
・TMA、aHUS、TTPの診断を受けた方
・TMAまたはaHUSの家族歴がある方
・再発性のTMA症状がある方
・腎移植後にTMAを発症した方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方
このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。
検査で得られる患者さんの潜在的利益は?
遺伝子検査により原因が判明すると、TMAの診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切な予防的介入、早期治療、定期的なモニタリングを行うことができます。
遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認(TTP、aHUS、STEC-HUSなどの鑑別)
・病型に応じた最適な治療法の選択(血漿交換療法、抗補体療法など)
・疾患の予後予測と長期的な管理計画の立案
・再発リスクの評価と予防的介入
・腎移植時のリスク評価と適切な管理
・妊娠時のリスク評価と周産期管理
・感染症などのトリガーに対する注意喚起
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供
患者さんで病原性変異が同定された場合、遺伝形式に応じて家族の発症リスクが異なります。常染色体優性遺伝の場合は子どもが変異を受け継ぐリスクは50%、常染色体劣性遺伝の場合は兄弟姉妹が発症するリスクは25%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。
対象遺伝子
- 詳しくはこちら
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ADAMTS13, C3, C9, CD46, CD55, CD59, CFB, CFD, CFH, CFHR1, CFHR2, CFHR3, CFHR4, CFHR5, CFI, DGKE, F12, INF2, MMACHC, PLG, ST3GAL1, THBD ( 22遺伝子 )
各遺伝子の詳細:
・ADAMTS13遺伝子:
フォンビルブランド因子(VWF)切断酵素をコードする遺伝子。先天性TTPの原因遺伝子で、両アレルに変異がある場合(常染色体劣性遺伝)、酵素活性が著しく低下します。
・C3遺伝子:
補体系の中心的な分子である補体C3をコードする遺伝子。変異により補体の活性化が亢進し、aHUSの原因となります。
・C9遺伝子:
補体の膜侵襲複合体(MAC)の構成要素である補体C9をコードする遺伝子。MACの形成に関与します。
・CD46遺伝子(MCP):
膜補因子蛋白(membrane cofactor protein)をコードする遺伝子。細胞膜上で補体の活性化を抑制する重要な制御因子で、aHUS患者の10~13%に変異が認められます。
・CD55遺伝子(DAF):
崩壊促進因子(decay accelerating factor)をコードする遺伝子。細胞膜上で補体の活性化を制御します。
・CD59遺伝子:
補体制御因子CD59をコードする遺伝子。補体の膜侵襲複合体(MAC)の形成を阻害し、細胞を補体による溶解から保護します。
・CFB遺伝子(B因子):
補体B因子をコードする遺伝子。補体の第二経路(alternative pathway)を活性化する因子で、変異により活性が亢進しaHUSの原因となります。
・CFD遺伝子(D因子):
補体D因子をコードする遺伝子。補体の第二経路の開始に関与するセリンプロテアーゼです。
・CFH遺伝子(H因子):
補体H因子をコードする遺伝子。aHUSの原因として最も頻度が高く、患者の20~30%に変異が認められます。補体の第二経路を抑制する最も重要な制御因子です。
・CFHR1、CFHR2、CFHR3、CFHR4、CFHR5遺伝子:
補体H因子関連タンパク質(complement factor H-related protein)をコードする遺伝子群。H因子と構造が類似しており、補体制御に関与します。これらの遺伝子の欠失や重複がaHUSと関連することが報告されています。
・CFI遺伝子(I因子):
補体I因子をコードする遺伝子。H因子と協働して補体C3bを不活性化する重要な制御因子で、aHUS患者の5~12%に変異が認められます。
・DGKE遺伝子:
ジアシルグリセロールキナーゼイプシロンをコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、血小板活性化に関与するアラキドン酸代謝経路のシグナル伝達を制御します。主に小児期発症のaHUSの原因となります。
・F12遺伝子(第XII因子):
凝固第XII因子(Hageman因子)をコードする遺伝子。凝固系の接触活性化経路に関与し、血栓形成に影響を与えます。
・INF2遺伝子:
インビテッド・フォルミン2をコードする遺伝子。足細胞のアクチン細胞骨格を制御し、腎障害を伴うTMAの原因となることがあります。
・MMACHC遺伝子:
メチルマロン酸尿症とホモシステイン尿症の原因遺伝子で、ビタミンB12(コバラミン)代謝に関与します。コバラミン代謝異常によるTMAを引き起こします。生後6か月未満の発症が多く、高ホモシステイン血症と低メチオニン血症を伴います。
・PLG遺伝子:
プラスミノーゲンをコードする遺伝子。線溶系の中心的な因子で、変異により線溶能が低下し血栓傾向が増加します。
・ST3GAL1遺伝子:
シアル酸転移酵素をコードする遺伝子。糖鎖修飾を介して血小板機能に影響を与え、TMAの発症に関与する可能性があります。
・THBD遺伝子:
トロンボモジュリンをコードする遺伝子。血管内皮細胞上に存在し、凝固系と補体系の両方を制御する重要な因子です。aHUSの原因遺伝子の一つとして知られています。
カバレッジ
カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。
≥99% at 20x(読み取り深度平均20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。
検体
血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)
※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。
検査の限界
- 詳しくはこちら
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すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。
低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。
この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。
※この検査パネルでは、22の原因遺伝子のみを対象としています。約30~40%のTMA症例では、既知の遺伝子に変異が見つかりません。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。また、後天性の自己抗体によるTTP(抗ADAMTS13抗体)やaHUS(抗H因子抗体)は遺伝子検査では検出できないため、必要に応じて抗体検査も併せて実施することが推奨されます。
結果が出るまでの期間
2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。
料金
税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)
よくあるご質問
- どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
- 血小板減少と溶血性貧血が同時に認められる方、破砕赤血球が確認される方、急性腎障害を伴う方におすすめします。特に、感染症、妊娠、手術などをきっかけにこれらの症状が出現した場合や、原因不明の血小板減少や溶血性貧血がある場合は、TMAの可能性があります。また、家族に同様の症状がある場合も検査をご検討ください。
- 検査はどのように行いますか?
- 血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
- TTPとaHUSの違いは何ですか?
- TTP(血栓性血小板減少性紫斑病)はADAMTS13酵素の活性著減により発症し、神経症状が比較的目立ちます。一方、aHUS(非典型溶血性尿毒症症候群)は補体制御因子の異常により発症し、腎障害が特に強く現れます。当検査により原因遺伝子を特定することで、より正確な診断と適切な治療法の選択が可能になります。
- 家族も検査を受ける必要がありますか?
- 遺伝形式によって家族の発症リスクが異なります。常染色体優性遺伝の場合、患者さんのお子さんが変異を受け継ぐリスクは50%です。常染色体劣性遺伝の場合、兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
- 検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
- 約30~40%のTMA症例では、既知の遺伝子に変異が見つかりません。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。また、後天性の自己抗体によるTTPやaHUSは遺伝子検査では検出できないため、必要に応じて抗体検査(抗ADAMTS13抗体、抗H因子抗体)を実施することが推奨されます。臨床症状と各種検査に基づいた診断と管理が引き続き重要です。
- 保険は適用されますか?
- 当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
- 結果はどのように説明されますか?
- 検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
- 子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
- 遺伝形式によって子どもへの影響が異なります。常染色体優性遺伝の場合は子どもが変異を受け継ぐ確率は50%、常染色体劣性遺伝の場合は保因者同士のカップルで子どもが発症する確率は25%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。aHUSの女性では妊娠が発症や再発のトリガーとなることがあるため、妊娠前のリスク評価が重要です。
- TMAの治療はどのように行われますか?
- TMAの治療は病型によって異なります。TTPでは血漿交換療法が基本となり、必要に応じて免疫抑制療法を行います。aHUSでは抗補体療法(エクリズマブなど)が著効を示し、予後が劇的に改善しています。STEC-HUSでは支持療法が中心となります。適切な診断により、病型に応じた最適な治療を選択できます。
- 予後はどうですか?
- TMAの予後は病型と治療開始のタイミングによって大きく異なります。TTPは適切な血漿交換療法により致死率が大幅に改善しました。aHUSは従来致死率が約25%と予後不良でしたが、抗補体療法の登場により予後が著しく改善しています。早期診断と適切な治療により、腎機能の維持や生命予後の改善が期待できます。
- 腎移植を予定していますが、検査は必要ですか?
- aHUSの患者さんでは腎移植後の再発リスクが高いため、移植前の遺伝子検査が推奨されます。原因遺伝子によって再発リスクが異なり、CFH、CFI、C3変異では高リスク、CD46変異では低リスクとされています。検査結果により、移植前後の適切な管理や抗補体療法の予防投与を検討できます。
- 他の医療機関での検査との違いは何ですか?
- 当院では臨床的に重要な22の原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。
プロフィール
この記事の筆者:仲田洋美(医師)
ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。
仲田洋美のプロフィールはこちら