血栓性疾患遺伝子パネル検査(18遺伝子)|ミネルバクリニック
血栓性疾患(遺伝性血栓症)とは
血栓性疾患(遺伝性血栓症)は、生まれつきの遺伝子の異常により血液凝固制御因子が体内で欠乏し、血栓ができやすい体質となる疾患の総称です。治療を受けないでいると40歳以下の若年齢で重篤な血栓症を発症する可能性があります。指定難病327「特発性血栓症(遺伝性血栓性素因によるものに限る)」として認定されています。
血液の中には、出血した時に血を固める働きを持つ「血液凝固因子」と、血液が過剰に固まらないために働く「血液凝固制御因子」があります。主な血液凝固制御因子は、プロテインC、プロテインS、アンチトロンビンの3つです。これらの遺伝子に異常がある場合、先天性プロテインC欠乏症、先天性プロテインS欠乏症、先天性アンチトロンビン欠乏症などが主な遺伝性血栓症として挙げられます。
健常者では、血液凝固を促進する力と凝固を阻止する力および線維素を溶解する力との間で恒常性が保たれています。しかし、多くの遺伝的因子により、凝固の方向にバランスが傾き、病的な血栓が静脈(深部静脈血栓症など)、動脈(心筋梗塞、虚血性脳卒中など)、または心腔内に形成されることがあります。血栓は、形成された部位で血流閉塞を起こしたり、引き離されて遠隔の血管をふさぐ塞栓となったりすることがあります(肺塞栓症、塞栓性脳卒中など)。
症状と病態
血栓性疾患の症状は、発症年齢や血栓ができる部位によって異なります。新生児期から乳幼児期に重篤な症状が現れることもあれば、小児期から成人期にかけて徐々に症状が現れることもあります。
新生児期~乳幼児期の症状
プロテインC遺伝子変異のホモ接合体または複合ヘテロ接合体(異なる病的変異を父母からそれぞれ受け継いだ方)で、体内でプロテインCが著しく欠乏している場合、重篤な症状が現れることがあります:
- 脳出血・梗塞、脳静脈洞血栓症(頭痛、嘔吐、発熱、けいれん、四肢の麻痺、意識障害)
- 電撃性紫斑病(手足や臀部、腹部の皮膚の出血性壊死が急激に進行し、命に関わる重篤な病態)
- 硝子体出血(眼球内の硝子体に血液がたまり、視力低下や失明の恐れ)
- 胎児脳室拡大(水頭症)
- 皮膚の出血斑、血尿
小児期~成人期の症状
プロテインC、プロテインS、アンチトロンビンの欠乏により、再発性の静脈血栓塞栓症を発症します。大半の遺伝性疾患では、若年成人期まで血栓リスクが高まり始めることはありませんが、血栓形成はあらゆる年齢で生じる可能性があります。
主要症状
- 深部静脈血栓症:長時間足を動かさずに同じ姿勢でいると、足の深部にある静脈に血栓ができ、大腿から下腿に発赤、むくみ、腫れ、痛みが出現します
- 肺血栓塞栓症:足にできた血栓の一部が血流にのって肺に流れて肺の血管を閉塞してしまう状態で、胸痛、呼吸困難、失神などが出現し、大変危険な状態になります(エコノミークラス症候群)
- 慢性静脈不全症:深部静脈血栓症が慢性化して静脈弁の働きがそこなわれると、下肢静脈瘤や静脈うっ滞性下腿潰瘍を発症することがあります(下肢のむくみ、腫れ、痛み、しこり、湿疹、色素沈着、潰瘍)
- 稀な血栓症:脳静脈洞血栓症や上腸間膜静脈血栓症(腹痛、むかつき、嘔吐、排便回数増加、血便)
- 動脈血栓症:一部の遺伝子変異では、脳卒中や腸間膜虚血を引き起こす動脈血栓症のリスクが高まります
- 複数回の自然流産:複数回の自然流産の既往を有する女性もいます
症状の個人差
体内の血液凝固制御因子が同程度に欠乏している場合でも、人によって症状の程度は異なります。また、新生児期と成人期では症状が異なることがあります。これらの違いが生じる理由はまだ十分には解明されていませんが、遺伝子変異の種類や、他の危険因子(妊娠、ホルモン療法、がん、骨折、長時間の不動など)の影響が関与していると考えられています。
遺伝形式と原因遺伝子
血栓性疾患の原因となる遺伝子変異は、主に常染色体優性(顕性)遺伝または常染色体劣性(潜性)遺伝の形式をとります。現在までに多数の原因遺伝子が同定されており、遺伝学的に非常に多様性が高い疾患です。
主要な原因遺伝子
血液凝固制御因子の欠乏症
- SERPINC1遺伝子(アンチトロンビン欠乏症):最も強い遺伝的リスク因子の一つで、ヘテロ接合体保因者では血栓症のリスクが約10倍に増加します
- PROC遺伝子(プロテインC欠乏症):常染色体優性遺伝形式をとり、ホモ接合体では新生児期に重篤な症状を呈することがあります
- PROS1遺伝子(プロテインS欠乏症):日本人に特異的な変異(p.K196E)が知られており、アンチトロンビン欠乏症やプロテインC欠乏症との合併も報告されています
凝固因子の異常
- F5遺伝子(第V因子ライデン変異):活性化プロテインC(APC)抵抗性の原因となり、欧米では最も頻度の高い遺伝的リスク因子ですが、日本人では稀です
- F2遺伝子(プロトロンビンG20210A変異):プロトロンビンの血中濃度を上昇させ、血栓リスクを高めます。欧米に多く、日本人では稀です
- F11遺伝子(第XI因子):静脈血栓塞栓症のリスク因子として知られています
- F13A1、F13B遺伝子(第XIII因子):血栓安定化に関与します
- F9遺伝子(第IX因子):血液凝固カスケードに関与します
- FGG遺伝子(フィブリノゲン):血栓形成の基質となるタンパク質をコードします
- VWF遺伝子(フォン・ヴィレブランド因子):第VIII因子と複合体を形成し、血小板機能に関与します
その他の関連遺伝子
- MTHFR遺伝子:メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素をコードし、ホモシステイン代謝に関与します。※注意:MTHFR遺伝子のc.665C>T(p.Ala222Val)とc.1286A>C(p.Glu429Ala)の2つの一般的な多型は、ACMGの推奨により臨床的有用性が不十分であるため、本検査では報告されません。
- SERPINE1遺伝子(PAI-1):プラスミノゲンアクチベーター阻害因子-1をコードし、線溶系の調節に関与します
- SERPIND1遺伝子(ヘパリンコファクターII):トロンビン阻害因子として機能します
- PLAT遺伝子(組織プラスミノゲンアクチベーター):線溶系の活性化に関与します
- THBD遺伝子(トロンボモジュリン):血管内皮細胞に存在し、プロテインCの活性化に関与します
- HRG遺伝子(ヒスチジンリッチ糖タンパク質):血液凝固制御に関与します
- MPL遺伝子(トロンボポエチン受容体):血小板産生の調節に関与します
遺伝形式
遺伝性血栓症は常染色体優性(顕性)遺伝の遺伝形式で遺伝します。私たちの遺伝子は、父親由来と母親由来の2つが一組となってできていますが、この両方の遺伝子に変異がある場合を「ホモ接合体ないし複合ヘテロ接合体」、いずれか一方にのみ変異がある場合を「ヘテロ接合体」といいます。
- 患者さんが「ホモ接合体ないし複合ヘテロ接合体」の場合、お子さんはすべて「ヘテロ接合体」となり血液凝固制御因子が生まれつき欠乏します
- 患者さんが「ヘテロ接合体」の場合、お子さんは1/2の確率で「ヘテロ接合体」となり、患者さんと同程度に血液凝固制御因子が欠乏します
しかしながら、実際に症状が起こるかについては、遺伝子の変異を含めたさまざまな要因が関連しますので、遺伝子に変異があることで実際に発症する可能性(浸透率)は判明していません。
ミネルバクリニックの血栓性疾患遺伝子パネル検査の特徴
「血栓性疾患 NGSパネル検査」とは、現在血栓性疾患(遺伝性血栓症)の原因として報告されている18の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。
従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。
何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、血栓性疾患に関連する18遺伝子を一度に調べられる「血栓性疾患 NGSパネル検査」を採用しています。
一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。
1.費用がリーズナブル
一般的な医療機関で血栓性疾患の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。
当院では、血栓性疾患に関係するとされる18の遺伝子を一度に調べられる「血栓性疾患 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)
2.結果が出るまでがはやい
一般的な医療機関で行える血栓性疾患の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。
当院で行う「血栓性疾患 NGSパネル検査」の場合、18の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。
3.一気にまとめてできる
臨床症状から血栓性疾患を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。
当院で行う「血栓性疾患 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な18の原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。
オプション
塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)
検査内容
「血栓性疾患 NGSパネル検査」では、血栓性疾患(遺伝性血栓症)に関係するとされる18種類の遺伝子(F11、F13A1、F13B、F2、F5、F9、FGG、HRG、MPL、MTHFR、PLAT、PROC、PROS1、SERPINC1、SERPIND1、SERPINE1、THBD、VWF)をまとめて検査します。
「血栓性疾患 NGSパネル検査」は、血栓性疾患の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。
どんな人が受けたらいいの?
【血栓性疾患(遺伝性血栓症)の個人歴または家族歴のある方】に
「血栓性疾患 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。
この検査は以下のような方に適しています:
・原因不明の深部静脈血栓症や肺血栓塞栓症を発症した方
・40歳以下の若年で血栓症を発症した方
・再発性の静脈血栓塞栓症がある方
・表在性血栓性静脈炎を繰り返す方
・稀な部位の血栓症(脳静脈洞血栓症、上腸間膜静脈血栓症など)がある方
・複数回の自然流産の既往がある方
・血栓症の家族歴がある方
・血液凝固制御因子(プロテインC、プロテインS、アンチトロンビン)の活性低下が認められる方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方
・妊娠、ホルモン療法、手術などの危険因子を有する方で、血栓症のリスク評価を希望される方
このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。
検査で得られる患者さんの潜在的利益は?
遺伝子検査により原因が判明すると、血栓性疾患の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切な抗凝固療法、生活習慣の改善、危険因子の回避、定期的なモニタリングを行うことができます。
遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・血栓症のリスク評価と予防的対策の立案
・適切な抗凝固療法(ヘパリン、ワルファリン、DOAC)の選択
・アンチトロンビン製剤、活性化プロテインC製剤などの補充療法の適応判断
・妊娠・分娩時の管理計画の立案
・手術や外傷時の血栓予防対策
・長時間の不動(長距離フライト、車中泊など)時の予防対策
・危険因子(経口避妊薬、ホルモン補充療法など)の回避
・重症化予防と早期治療介入
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供
患者さんで病原性変異が同定された場合、遺伝形式に応じて家族の発症リスクが異なります。常染色体優性遺伝の場合は子どもが変異を受け継ぐリスクは50%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。
対象遺伝子
- 詳しくはこちら
-
F11, F13A1, F13B, F2, F5, F9, FGG, HRG, MPL, MTHFR, PLAT, PROC, PROS1, SERPINC1, SERPIND1, SERPINE1, THBD, VWF ( 18遺伝子 )
各遺伝子の詳細:
・F11遺伝子(第XI因子):
第XI因子をコードする遺伝子。血液凝固カスケードに関与し、変異により静脈血栓塞栓症のリスクが高まることが知られています。
・F13A1遺伝子、F13B遺伝子(第XIII因子):
第XIII因子のA鎖およびB鎖をコードする遺伝子。血栓の安定化に関与し、変異により血栓リスクに影響を与える可能性があります。
・F2遺伝子(プロトロンビン、第II因子):
プロトロンビン(第II因子)をコードする遺伝子。G20210A変異により血中プロトロンビン濃度が上昇し、静脈血栓塞栓症のリスクが約3倍に増加します。欧米人に多く、日本人では稀な変異です。
・F5遺伝子(第V因子):
第V因子をコードする遺伝子。ライデン変異(G1691A)により活性化プロテインC(APC)抵抗性を引き起こし、欧米では最も頻度の高い遺伝的血栓リスク因子ですが、日本人ではほとんど認められません。
・F9遺伝子(第IX因子):
第IX因子をコードする遺伝子。血液凝固カスケードに関与します。
・FGG遺伝子(フィブリノゲン):
フィブリノゲンのγ鎖をコードする遺伝子。血栓形成の基質となるタンパク質で、変異により血栓リスクに影響を与える可能性があります。
・HRG遺伝子(ヒスチジンリッチ糖タンパク質):
ヒスチジンリッチ糖タンパク質をコードする遺伝子。血液凝固制御に関与します。
・MPL遺伝子(トロンボポエチン受容体):
トロンボポエチン受容体をコードする遺伝子。血小板産生の調節に関与し、変異により血小板数に影響を与える可能性があります。
・MTHFR遺伝子(メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素):
メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素をコードする遺伝子。ホモシステイン代謝に関与します。
※重要:ACMGの推奨により、c.665C>T(p.Ala222Val、別名c.677C>T)とc.1286A>C(p.Glu429Ala、別名c.1298A>C)の2つの一般的な多型は、臨床的有用性が不十分であるため報告されません(PubMed: 23288205)。
・PLAT遺伝子(組織プラスミノゲンアクチベーター):
組織プラスミノゲンアクチベーター(t-PA)をコードする遺伝子。線溶系の活性化に関与し、血栓の溶解を促進します。
・PROC遺伝子(プロテインC):
プロテインCをコードする遺伝子。最も重要な血液凝固制御因子の一つで、常染色体優性遺伝形式をとります。ホモ接合体では新生児期に電撃性紫斑病などの重篤な症状を呈することがあります。ヘテロ接合体では静脈血栓塞栓症のリスクが約7倍に増加します。
・PROS1遺伝子(プロテインS):
プロテインSをコードする遺伝子。プロテインCの補因子として機能し、常染色体優性遺伝形式をとります。日本人に特異的なp.K196E変異が知られており、アンチトロンビン欠乏症やプロテインC欠乏症との合併も報告されています。
・SERPINC1遺伝子(アンチトロンビン):
アンチトロンビン(以前はアンチトロンビンIIIと呼ばれていました)をコードする遺伝子。最も強い遺伝的血栓リスク因子の一つで、常染色体優性遺伝形式をとります。ヘテロ接合体保因者では血栓症のリスクが約10倍に増加します。ホモ接合体は胎生致死となります。遺伝子は多型性が低く、変異に対して高い感受性を示します。
・SERPIND1遺伝子(ヘパリンコファクターII):
ヘパリンコファクターIIをコードする遺伝子。セリンプロテアーゼ阻害因子ファミリーに属し、トロンビン阻害因子として機能します。
・SERPINE1遺伝子(PAI-1):
プラスミノゲンアクチベーター阻害因子-1(PAI-1)をコードする遺伝子。セリンプロテアーゼ阻害因子ファミリーに属し、線溶系の調節に関与します。
・THBD遺伝子(トロンボモジュリン):
トロンボモジュリンをコードする遺伝子。血管内皮細胞に存在する膜タンパク質で、トロンビンと結合してプロテインCを活性化し、抗凝固作用を発揮します。
・VWF遺伝子(フォン・ヴィレブランド因子):
フォン・ヴィレブランド因子をコードする遺伝子。第VIII因子と複合体を形成して安定化させ、血小板の粘着・凝集に関与します。変異により血栓リスクに影響を与える可能性があります。
カバレッジ
カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。
≥99% at 20x(読み取り深度平均20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。
検体
血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)
※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。
検査の限界
- 詳しくはこちら
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すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。
低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。
この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。
※この検査パネルでは、18の原因遺伝子のみを対象としています。血栓性疾患の遺伝的原因は多様であり、この検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。また、MTHFR遺伝子のc.665C>TとC.1286A>Cの一般的な多型は報告されません。
結果が出るまでの期間
2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。
料金
税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)
よくあるご質問
- どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
- 原因不明の深部静脈血栓症や肺血栓塞栓症を発症した方、40歳以下の若年で血栓症を発症した方、再発性の静脈血栓塞栓症がある方におすすめします。また、複数回の自然流産の既往がある方、血栓症の家族歴がある方、血液凝固制御因子の活性低下が認められる方も検査をご検討ください。
- 検査はどのように行いますか?
- 血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
- 血栓症を発症したことがありますが、検査を受けるべきですか?
- はい。特に40歳以下の若年での発症、再発性の血栓症、稀な部位の血栓症(脳静脈洞血栓症など)、家族歴がある場合は、遺伝的要因が関与している可能性が高いため、検査をお勧めします。遺伝的原因が判明することで、適切な予防と治療方針を立てることができます。
- 家族も検査を受ける必要がありますか?
- 患者さんに病原性変異が見つかった場合、常染色体優性遺伝のため、お子さんが変異を受け継ぐ確率は50%です。ご家族の検査により、将来の血栓症リスクを評価し、適切な予防対策を講じることができます。また、妊娠・分娩や手術の際の管理計画にも重要な情報となります。
- 検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
- この検査では18の主要な原因遺伝子を対象としていますが、血栓性疾患の遺伝的原因は多様です。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。臨床症状と血液検査(凝固因子活性など)に基づいた診断と管理が引き続き重要です。
- 保険は適用されますか?
- 当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
- 結果はどのように説明されますか?
- 検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・予防選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
- 子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
- 常染色体優性遺伝のため、お子さんが変異を受け継ぐ確率は50%です。また、妊娠中は血栓症のリスクが高まるため、遺伝的リスクがある場合は特に注意が必要です。検査結果により、妊娠中の抗凝固療法や分娩時の管理計画を立てることができます。出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
- 血栓性疾患の治療はどのように行われますか?
- 主な治療は抗凝固療法で、ヘパリン、ワルファリン、直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)などが使用されます。アンチトロンビン欠乏症やプロテインC欠乏症では、血栓症発症時にそれぞれの製剤による補充療法が行われることがあります。電撃性紫斑病では活性化プロテインC製剤による治療が必要です。また、予防的な抗凝固療法、危険因子の回避、生活習慣の改善も重要です。
- 予後はどうですか?
- 適切な抗凝固療法と予防対策により、多くの患者さんは血栓症の再発を防ぎ、通常の生活を送ることができます。ただし、ホモ接合体または複合ヘテロ接合体で重症型の場合は、新生児期から重篤な症状を呈することがあります。遺伝的リスクを把握し、適切な管理を行うことが予後の改善につながります。
- MTHFRの一般的な多型が報告されないのはなぜですか?
- MTHFR遺伝子のc.665C>T(c.677C>T)とc.1286A>C(c.1298A>C)の2つの多型は、一般集団でも高頻度に認められ、臨床的有用性が不十分であるため、米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)の推奨により報告されません。これらの多型と血栓症リスクとの関連は明確ではなく、検査結果による不必要な不安を避けるためです。
- 他の医療機関での検査との違いは何ですか?
- 当院では臨床的に重要な18の原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。
プロフィール
この記事の筆者:仲田洋美(医師)
ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。
仲田洋美のプロフィールはこちら