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血栓症・血小板障害・凝固因子欠乏症 包括的遺伝子検査パネル|ミネルバクリニック

血栓症・血小板障害・凝固因子欠乏症 包括的遺伝子検査パネル|ミネルバクリニック

血栓症・血小板障害・凝固因子欠乏症とは

血栓症、血小板障害、凝固因子欠乏症(出血性疾患)は、身体の血液凝固機能に異常をきたす一連の疾患群です。これらの疾患は、血栓が過剰に形成されやすくなる状態と、逆に出血が止まりにくくなる状態の両極端な症状を引き起こします。遺伝的要因がこれらの疾患のリスクを高めることがあり、いずれの年齢でも発症する可能性があります。

血液には、出血を止めるために血液を凝固させる働き(血液凝固因子)と、血液凝固が過剰にならないようにする働き(血液凝固制御因子)の2つの重要な機能が備わっています。この微妙なバランスが崩れると、重篤な健康問題を引き起こす可能性があります。

血栓症では血栓が過剰に形成され、脳卒中や肺塞栓症などの命に関わる合併症を引き起こす可能性があります。一方、血小板障害や凝固因子欠乏症では、軽微な外傷でも過度の出血が生じる可能性があります。このパネル検査は、血小板機能異常、血小板減少症、凝固因子欠乏症に関連する遺伝子を包括的に評価することで、疾患の早期診断と個別化された治療の実施を可能にします。

血栓症(遺伝性血栓性素因)

遺伝性血栓症は、生まれつきの遺伝子異常により、血液凝固制御因子が体内で欠乏して血栓ができやすい体質となる疾患群です。治療を受けないでいると、40歳以下の若年で重篤な血栓症を発症する可能性があります。主な血液凝固制御因子は、プロテインC、プロテインS、アンチトロンビンの3つです。

主な遺伝性血栓性素因

  • 先天性プロテインC欠乏症:プロテインCは血液凝固を抑制するタンパク質で、その欠乏により血栓形成傾向が生じます
  • 先天性プロテインS欠乏症:プロテインSはプロテインCの補酵素として働き、欠乏すると血栓症のリスクが高まります。日本人では1〜2%が保因者とされ、比較的頻度の高い遺伝性血栓性素因です
  • 先天性アンチトロンビン欠乏症:アンチトロンビンは凝固因子の活性を抑制し、欠乏すると重篤な血栓症を発症します

症状

遺伝性血栓症の主な症状は以下の通りです:

  • 深部静脈血栓症:足の深部にある静脈に血栓ができ、下肢の発赤、むくみ、腫れ、痛みなどが出現します
  • 肺血栓塞栓症:足にできた血栓の一部が血流に乗って肺に到達し、肺の血管を閉塞します。胸痛、呼吸困難、失神などが起こり、命に関わる危険な状態です
  • 脳静脈洞血栓症:頭痛、嘔吐、発熱、痙攣や四肢の麻痺、意識障害などが見られます
  • 電撃性紫斑病:ホモ接合体やホモ接合体型では、新生児期から乳幼児期に急激に手足や臀部、腹部の皮膚の出血性壊死が進行する重篤な病態です

これらの症状は、感染症、脱水、外傷、手術、長時間の不動、妊娠・出産、女性ホルモン剤の服用などがきっかけで発症することがあります。

血小板障害

血小板障害には、血小板の数が減少する血小板減少症と、血小板の機能に異常がある血小板機能異常症があります。いずれも出血傾向を引き起こします。

血小板減少症

血小板減少症は、血液中の血小板数が異常に少ない状態を特徴とする病態です。血小板数の正常値は150,000~450,000/μLですが、50,000/μL以下になると出血リスクが高まり、20,000/μL以下では頭蓋内出血などの重篤な出血のリスクが上昇します。

遺伝性血小板減少症の原因:

  • 骨髄での血小板産生低下
  • 末梢での血小板破壊亢進
  • 脾臓への血小板の補捉
  • 遺伝子異常による巨核球の機能異常

血小板機能異常症

血小板機能異常症は、血小板数は正常であるにもかかわらず、血小板の機能に障害があるため出血傾向を来たす疾患群です。先天性血小板機能異常症の代表的な疾患には以下があります:

血小板無力症(Glanzmann血小板無力症)

血小板膜糖蛋白GPⅡb/Ⅲa(インテグリンαⅡb/β3)の欠損または機能異常による常染色体劣性遺伝性疾患です。GPⅡb/Ⅲaは血小板凝集に必須のフィブリノゲン受容体であり、その欠損により血小板凝集が著しく障害されます。

主な症状:

  • 幼少時からの紫斑、点状出血などの皮膚症状
  • 鼻出血、歯肉出血などの粘膜出血
  • 女性では月経過多
  • 出血時間の著明な延長(15分以上)
  • 血小板数は正常

Bernard-Soulier症候群

血小板膜糖蛋白GPⅠb/Ⅸ/Ⅴ複合体の欠損による常染色体劣性遺伝性疾患です。GPⅠb/Ⅸ/Ⅴ複合体はvon Willebrand因子の受容体であり、その欠損により血小板粘着能が障害されます。

特徴的所見:

  • 巨大血小板の出現
  • 血小板減少症
  • 出血時間の延長
  • リストセチンによる血小板凝集の欠如
  • 重篤な出血症状

凝固因子欠乏症

凝固因子欠乏症は、血液凝固に必要な凝固因子の量的または質的異常により出血傾向を来たす疾患群です。代表的な疾患は血友病です。

血友病

血友病は、X染色体連鎖劣性遺伝形式をとる先天性凝固障害症で、主に男性に発症します。血友病Aは血液凝固第Ⅷ因子の異常、血友病Bは第Ⅸ因子の異常が原因です。

血友病Aと血友病Bの比較:

  • 血友病A:第Ⅷ因子欠乏症。血友病全体の約80%を占め、日本では約5,700人の患者が報告されています
  • 血友病B:第Ⅸ因子欠乏症。血友病全体の約20%を占め、日本では約1,300人の患者が報告されています

重症度分類

凝固因子活性値によって重症度が分類されます:

  • 重症型:凝固因子活性1%未満(血友病全体の50~60%)
  • 中等症:凝固因子活性1~5%(約20%)
  • 軽症:凝固因子活性5~40%(約20%)

主な症状

  • 関節内出血:最も特徴的な症状で、繰り返すと血友病性関節症を引き起こします
  • 筋肉内出血:強い痛みと腫脹を伴います
  • 頭蓋内出血:生命に関わる重篤な合併症です
  • 口腔内出血、消化管出血、血尿:様々な部位での出血が見られます
  • 皮下出血:軽い打撲でも大きなあざができます

その他の凝固因子欠乏症

このパネル検査では、第Ⅷ因子・第Ⅸ因子以外にも、第Ⅱ因子、第Ⅴ因子、第Ⅶ因子、第Ⅹ因子、第ⅩⅠ因子、第ⅩⅡ因子、第ⅩⅢ因子などの凝固因子をコードする遺伝子も包括的に評価します。

ミネルバクリニックの血栓症・血小板障害・凝固因子欠乏症 遺伝子パネル検査の特徴

「血栓症・血小板障害・凝固因子欠乏症 NGSパネル検査」とは、血栓症、血小板障害、凝固因子欠乏症の原因として報告されている82の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。

従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。

何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、血栓症・血小板障害・凝固因子欠乏症に関連する82遺伝子を一度に調べられる「血栓症・血小板障害・凝固因子欠乏症 NGSパネル検査」を採用しています。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.費用がリーズナブル

一般的な医療機関で血栓症や凝固因子欠乏症の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。

当院では、血栓症・血小板障害・凝固因子欠乏症に関係するとされる82の遺伝子を一度に調べられる「血栓症・血小板障害・凝固因子欠乏症 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)

2.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行える血栓症や凝固因子欠乏症の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。

当院で行う「血栓症・血小板障害・凝固因子欠乏症 NGSパネル検査」の場合、82の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。

3.一気にまとめてできる

臨床症状から血栓症や出血性疾患を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。

当院で行う「血栓症・血小板障害・凝固因子欠乏症 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な82の原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。このパネルにはF8遺伝子のイントロン1/イントロン22逆位の検出も含まれます。

オプション

塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)

検査内容

「血栓症・血小板障害・凝固因子欠乏症 NGSパネル検査」では、血栓症、血小板障害、凝固因子欠乏症に関係するとされる82種類の遺伝子をまとめて検査します。

このパネルには、血小板機能異常、血小板減少症、凝固因子欠乏症に関連する遺伝子が包括的に含まれており、多様な原因による疾患の効率的な評価が可能です。F8遺伝子のイントロン1/イントロン22逆位の検出も含まれます。

「血栓症・血小板障害・凝固因子欠乏症 NGSパネル検査」は、これらの疾患の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。

どんな人が受けたらいいの?

【血栓症、血小板障害、凝固因子欠乏症の個人歴または家族歴のある方】に
「血栓症・血小板障害・凝固因子欠乏症 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。

この検査は以下のような方に適しています:
・原因不明の出血傾向がある方
・若年性(40歳以下)の血栓症の既往がある方
・深部静脈血栓症や肺血栓塞栓症の既往がある方
・反復性の血栓症がある方
・関節内出血や筋肉内出血を繰り返す方
・軽微な外傷でも過度の出血が生じる方
・血小板減少症または血小板機能異常が疑われる方
・家族に血友病や血栓症の方がいる方
・妊娠中または妊娠を計画している保因者の方
・血栓症または出血性疾患の家族歴がある方で、リスク評価を希望される方

このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

遺伝子検査により原因が判明すると、血栓症や出血性疾患の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・個別化された治療計画の立案
・血栓予防または止血療法の最適化
・妊娠・出産時の管理計画の策定
・手術前の適切な準備と管理
・予防的抗凝固療法または補充療法の適応判断
・疾患の進行予測と長期的な管理計画の立案
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供

患者さんで病原性変異が同定された場合、遺伝形式に応じて家族の発症リスクが異なります。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。

対象遺伝子

詳しくはこちら

ABCG8, ACTN1, ADAMTS13, ANKRD26, ANO6, AP3B1, BLOC1S3, BLOC1S6, CD36, CYCS, DTNBP1, EGLN1, EPAS1, ETV6, F10, F11, F12, F13A1, F13B, F2, F5, F7, F8, F9, FERMT3, FGA, FGB, FGG, FLI1, FLNA, FYB1, GATA1, GATA2, GFI1B, GGCX, GP1BA, GP1BB, GP6, GP9, HOXA11, HPS1, HPS3, HPS4, HPS5, HPS6, HRG, ITGA2B, ITGB3, KLKB1, KNG1, LMAN1, LYST, MASTL, MCFD2, MPL, MYH9, NBEA, NBEAL2, P2RY12, PLA2G4A, PLAT, PLAU, PLG, PROC, PROS1, RASGRP2, RBM8A, RUNX1, SERPINC1, SERPIND1, SERPINE1, SERPINF2, SLFN14, TBXA2R, TBXAS1, THBD, THPO, TUBB1, VKORC1, VWF, WAS, WIPF1 (82遺伝子)

血栓症関連遺伝子:

・PROC遺伝子(プロテインC):
血液凝固制御因子であるプロテインCをコードする遺伝子。活性化プロテインCは第Ⅴa因子と第Ⅷa因子を失活化し、血液凝固を抑制します。欠乏すると血栓形成傾向が生じます。

・PROS1遺伝子(プロテインS):
血液凝固制御因子であるプロテインSをコードする遺伝子。活性化プロテインCの補酵素として働き、凝固反応を制御します。日本人では1~2%が保因者とされ、血栓性素因の中でも頻度が高い遺伝子です。

・SERPINC1遺伝子(アンチトロンビン):
アンチトロンビンをコードする遺伝子。トロンビンや第Ⅹa因子などの凝固因子の活性を抑制する重要な血液凝固制御因子です。

・F2遺伝子(第Ⅱ因子/プロトロンビン):
プロトロンビンをコードする遺伝子。活性化されるとトロンビンとなり、フィブリノゲンをフィブリンに変換します。

・F5遺伝子(第Ⅴ因子):
第Ⅴ因子をコードする遺伝子。プロトロンビンをトロンビンに変換する過程で補酵素として働きます。

血小板障害関連遺伝子:

・ITGA2B遺伝子(GPⅡb/インテグリンαⅡb):
血小板膜糖蛋白GPⅡbをコードする遺伝子。GPⅡb/Ⅲa複合体を形成し、フィブリノゲン受容体として血小板凝集に必須の役割を果たします。変異は血小板無力症の原因となります。

・ITGB3遺伝子(GPⅢa/インテグリンβ3):
血小板膜糖蛋白GPⅢaをコードする遺伝子。GPⅡbと複合体を形成します。変異は血小板無力症の原因となります。

・GP1BA遺伝子(GPⅠbα):
血小板膜糖蛋白GPⅠbαをコードする遺伝子。von Willebrand因子受容体であるGPⅠb/Ⅸ/Ⅴ複合体の主要構成要素です。変異はBernard-Soulier症候群の原因となります。

・GP1BB遺伝子(GPⅠbβ):
血小板膜糖蛋白GPⅠbβをコードする遺伝子。GPⅠb/Ⅸ/Ⅴ複合体の構成要素です。

・GP9遺伝子(GPⅨ):
血小板膜糖蛋白GPⅨをコードする遺伝子。GPⅠb/Ⅸ/Ⅴ複合体の構成要素です。

・VWF遺伝子(von Willebrand因子):
von Willebrand因子をコードする遺伝子。血小板粘着と第Ⅷ因子の安定化に重要な役割を果たします。

・MYH9遺伝子(非筋ミオシン重鎖ⅡA):
非筋ミオシン重鎖ⅡAをコードする遺伝子。変異はMYH9異常症を引き起こし、巨大血小板性血小板減少症の原因となります。

・RUNX1遺伝子:
転写因子RUNX1をコードする遺伝子。造血と血小板の分化に重要な役割を果たします。変異は家族性血小板異常症の原因となります。

・ANKRD26遺伝子:
アンキリンリピート含有タンパク質26をコードする遺伝子。変異は遺伝性血小板減少症の原因となります。

・ETV6遺伝子:
ETS転写因子ファミリーのメンバーをコードする遺伝子。変異は遺伝性血小板減少症の原因となります。

凝固因子欠乏症関連遺伝子:

・F8遺伝子(第Ⅷ因子):
血液凝固第Ⅷ因子をコードする遺伝子。X染色体上に位置し、変異は血友病Aの原因となります。重症血友病Aの約40~50%にイントロン22逆位が認められます。本検査ではイントロン1/イントロン22逆位の検出も含まれます。

・F9遺伝子(第Ⅸ因子):
血液凝固第Ⅸ因子をコードする遺伝子。X染色体上に位置し、変異は血友病Bの原因となります。変異の約90%は点変異です。

・F7遺伝子(第Ⅶ因子):
血液凝固第Ⅶ因子をコードする遺伝子。外因系凝固経路の開始に重要な役割を果たします。

・F10遺伝子(第Ⅹ因子):
血液凝固第Ⅹ因子をコードする遺伝子。内因系と外因系凝固経路が合流する共通凝固経路で中心的な役割を果たします。

・F11遺伝子(第ⅩⅠ因子):
血液凝固第ⅩⅠ因子をコードする遺伝子。内因系凝固経路で重要な役割を果たします。

・F12遺伝子(第ⅩⅡ因子):
血液凝固第ⅩⅡ因子をコードする遺伝子。接触活性化経路の開始因子です。

・F13A1遺伝子(第ⅩⅢ因子Aサブユニット):
血液凝固第ⅩⅢ因子のAサブユニットをコードする遺伝子。フィブリンを架橋し、血栓を安定化させます。

・F13B遺伝子(第ⅩⅢ因子Bサブユニット):
血液凝固第ⅩⅢ因子のBサブユニットをコードする遺伝子。

・FGA, FGB, FGG遺伝子(フィブリノゲン):
フィブリノゲンのα鎖、β鎖、γ鎖をそれぞれコードする遺伝子。トロンビンによって切断されフィブリンとなり、血栓の骨格を形成します。

その他の重要な遺伝子:

・ADAMTS13遺伝子:
von Willebrand因子切断プロテアーゼをコードする遺伝子。欠損は血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の原因となります。

・VKORC1遺伝子:
ビタミンK エポキシド還元酵素複合体サブユニット1をコードする遺伝子。ビタミンK依存性凝固因子の活性化に必要です。

・GGCX遺伝子:
γグルタミルカルボキシラーゼをコードする遺伝子。ビタミンK依存性凝固因子の翻訳後修飾に必要です。

その他、血小板の顆粒形成、シグナル伝達、血栓形成・線溶系に関連する多数の遺伝子が含まれます。

カバレッジ

カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。

≥99% at 20x(読み取り深度平均20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
 検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

検査の限界

詳しくはこちら

すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。

低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。

この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位(F8遺伝子のイントロン1/イントロン22逆位を除く)、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。

※この検査パネルでは、82の原因遺伝子のみを対象としています。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。また、F8遺伝子のイントロン1/イントロン22逆位以外の大きな構造異常は検出されない場合があります。

結果が出るまでの期間

2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。

料金

税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
原因不明の出血傾向がある方、若年性の血栓症の既往がある方、関節内出血や筋肉内出血を繰り返す方、家族に血友病や血栓症の方がいる方におすすめします。また、妊娠を計画している保因者の方で、リスク評価を希望される場合にも有用です。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
血友病と診断された場合、家族にも影響はありますか?
血友病はX連鎖劣性遺伝形式をとるため、母親が保因者の場合、男児が血友病を発症する確率は50%、女児が保因者となる確率は50%です。遺伝カウンセリングでは、家族の遺伝的リスクについて詳しくご説明します。
遺伝性血栓症と診断された場合、どのような治療が必要ですか?
プロテインCやプロテインS、アンチトロンビン欠乏症と診断された場合、血栓形成のリスクが高い状況(手術、妊娠、長時間の不動など)では予防的抗凝固療法が推奨されます。また、生活習慣の改善や定期的なモニタリングも重要です。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
この検査パネルでは82の遺伝子を対象としていますが、既知の遺伝子に変異が見つからない場合もあります。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。臨床症状と血液検査に基づいた診断と管理が引き続き重要です。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
遺伝形式によって子どもへの影響が異なります。X連鎖劣性遺伝の血友病では、保因者の母親から男児に遺伝する確率は50%です。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症する確率は50%、常染色体劣性遺伝の場合は保因者同士のカップルで子どもが発症する確率は25%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
血友病の治療はどのように行われますか?
血友病の基本的な治療は、不足している凝固因子製剤の補充療法です。血友病Aには第Ⅷ因子製剤、血友病Bには第Ⅸ因子製剤を使用します。定期的に製剤を投与する定期補充療法により、出血を予防し、血友病性関節症の進行を抑えることができます。
F8遺伝子のイントロン22逆位とは何ですか?
F8遺伝子のイントロン22逆位は、重症血友病Aの約40~50%に認められる遺伝子の構造異常です。F8遺伝子内の大きなDNA断片が逆向きに組み込まれることで、第Ⅷ因子の産生が著しく障害されます。本検査パネルでは、このイントロン1/イントロン22逆位の検出も含まれています。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では臨床的に重要な82の原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。


プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

仲田洋美のプロフィールはこちら