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TCA回路異常症遺伝子パネル検査|ミネルバクリニック

TCA回路異常症遺伝子パネル検査|ミネルバクリニック

TCA回路異常症とは

TCA回路異常症(トリカルボン酸回路異常症)は、ミトコンドリア内で行われるエネルギー産生の中心的代謝経路であるTCA回路(クエン酸回路、クレブス回路とも呼ばれます)を構成する酵素の遺伝的欠損により発症する先天性代謝異常症です。ミトコンドリア病の一種として位置づけられます。

TCA回路は、糖・脂肪酸・アミノ酸から得られるアセチルCoAを酸化分解し、ATP(アデノシン三リン酸)というエネルギー物質を産生するための還元型補酵素(NADH、FADH2)を生成する重要な代謝経路です。この回路に関与する酵素に異常があると、細胞のエネルギー産生が障害され、特にエネルギー要求量の高い臓器(脳、筋肉、心臓など)に様々な症状が現れます。

TCA回路異常症は非常に稀な疾患群であり、個々の疾患の発症頻度は極めて低いですが、早期診断により適切な治療・管理が可能となる場合があります。ミトコンドリア病全体としては指定難病21として認定されており、TCA回路異常症もその一部を構成しています。

症状と病態

TCA回路異常症の症状は、障害される酵素の種類や欠損の程度によって大きく異なりますが、共通してエネルギー代謝障害による多彩な臨床症状を呈します。発症年齢も新生児期から成人期まで幅広く、病型によって症状の重篤度が異なります。

主要症状

  • 精神運動発達遅滞・知的能力障害
  • 筋力低下・筋緊張低下
  • けいれん発作
  • 脳症(意識障害、嘔吐など)
  • 乳酸アシドーシス(血中・髄液中の乳酸値上昇)
  • 呼吸障害
  • 心筋症
  • 肝機能障害
  • 視力障害・視神経萎縮
  • 難聴
  • 成長障害・発育不良

病型による特徴

重症新生児型・乳児型

新生児期から乳児早期に発症し、重症高乳酸血症、多呼吸、けいれん、意識障害、嘔吐などの症状で発病します。脳室拡大や脳奇形を伴うことがあり、いわゆる乳児致死型ミトコンドリア病(LIMD)の主要な原因の一つです。予後は不良で、適切な治療が行われなければ生命に関わることがあります。

乳幼児型

乳幼児期に精神運動発達遅滞、けいれん、筋緊張低下、中枢神経奇形などの症状と高乳酸血症で発病します。頭部MRI検査でLeigh脳症(リー脳症)の特徴的な画像所見を呈する患者さんも多く見られます。Leigh脳症は基底核や脳幹に特徴的な病変を認める進行性の神経変性疾患です。

遅発型・軽症型

幼児期から学童期、あるいは成人期に発症し、比較的軽い筋緊張低下、運動失調、疲労感などの症状を呈します。乳酸値の上昇は軽度から中等度のことが多く、症状の進行も緩徐です。

主な酵素欠損症とその特徴

ピルビン酸脱水素酵素複合体(PDHC)欠損症

TCA回路に入る前段階の酵素であるピルビン酸脱水素酵素複合体の欠損により発症します。最も頻度の高いTCA回路関連疾患の一つです。重症型では新生児期から乳児期に発症し、精神運動発達遅滞、けいれん、乳酸アシドーシスを呈します。画像検査で脳梁欠損や脳室拡大などの中枢神経奇形を認めることがあります。

フマラーゼ欠損症

TCA回路の主要構成酵素であるフマラーゼ(フマル酸をリンゴ酸に変換する酵素)の欠損により発症します。脳奇形、精神運動発達遅滞、けいれんなどの重篤な中枢神経症状と、尿中フマル酸排泄増加を特徴とします。世界で約50例程度しか報告されていない極めて稀な疾患です。

コハク酸脱水素酵素(SDH)欠損症

TCA回路の酵素であるコハク酸脱水素酵素の欠損により発症します。Leigh脳症を呈することが多く、精神運動発達遅滞、筋力低下、視神経萎縮などの症状が見られます。また、家族性パラガングリオーマ・褐色細胞腫の原因遺伝子としても知られており、腫瘍の発症リスクがあります。

α-ケトグルタル酸脱水素酵素複合体欠損症

TCA回路の重要な酵素であるα-ケトグルタル酸脱水素酵素複合体の欠損により発症します。Leigh脳症を呈することが多く、精神運動発達遅滞、けいれん、筋力低下などの症状が見られます。

診断の重要性

TCA回路異常症は臨床症状が多彩で非特異的なため、診断が困難な場合があります。しかし、早期診断により以下のメリットがあります:

  • 適切な食事療法(ケトン食、低炭水化物食など)の導入
  • ビタミン補充療法(ビタミンB1、ビオチン、コエンザイムQ10など)
  • 乳酸アシドーシスの適切な管理
  • 合併症の早期発見と治療
  • 家族への遺伝カウンセリング
  • 出生前診断・着床前診断の選択肢提供

遺伝形式と原因遺伝子

TCA回路異常症は、主に常染色体劣性(潜性)遺伝形式をとります。一部の疾患ではX連鎖遺伝やミトコンドリア遺伝の形式もあります。TCA回路を構成する酵素やその調節因子をコードする遺伝子に変異が生じることで発症します。

常染色体劣性遺伝形式

多くのTCA回路異常症は常染色体劣性遺伝形式をとります。両親がともに変異遺伝子の保因者(キャリア)である場合、子どもが発症する確率は25%、保因者となる確率は50%、正常である確率は25%です。保因者は通常無症状です。

X連鎖遺伝形式

ピルビン酸脱水素酵素複合体のE1α サブユニットをコードするPDHA1遺伝子の変異によるPDHC欠損症は、X連鎖遺伝形式をとります。男児により重症に発症し、女児では軽症のことが多いですが、X染色体の不活化パターンによって症状の程度が異なります。

主な原因遺伝子

ピルビン酸脱水素酵素複合体関連遺伝子

  • PDHA1遺伝子:ピルビン酸脱水素酵素E1αサブユニットをコードする遺伝子。X連鎖遺伝形式。
  • PDHB遺伝子:ピルビン酸脱水素酵素E1βサブユニットをコードする遺伝子。
  • DLAT遺伝子:ジヒドロリポアミドS-アセチルトランスフェラーゼ(E2サブユニット)をコードする遺伝子。
  • PDHX遺伝子:ピルビン酸脱水素酵素複合体のE3結合タンパク質をコードする遺伝子。
  • PDP1遺伝子:ピルビン酸脱水素酵素ホスファターゼ触媒サブユニット1をコードする遺伝子。

TCA回路酵素遺伝子

  • PC遺伝子:ピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子。
  • ACO2遺伝子:ミトコンドリア型アコニターゼをコードする遺伝子。
  • IDH1遺伝子:細胞質型イソクエン酸脱水素酵素1をコードする遺伝子。
  • IDH2遺伝子:ミトコンドリア型イソクエン酸脱水素酵素2をコードする遺伝子。
  • IDH3B遺伝子:イソクエン酸脱水素酵素3βサブユニットをコードする遺伝子。
  • SUCLA2遺伝子:コハク酸-CoAリガーゼADP形成βサブユニットをコードする遺伝子。
  • SUCLG1遺伝子:コハク酸-CoAリガーゼαサブユニットをコードする遺伝子。
  • FH遺伝子:フマラーゼをコードする遺伝子。
  • MDH1遺伝子:細胞質型リンゴ酸脱水素酵素1をコードする遺伝子。
  • PCK2遺伝子:ミトコンドリア型ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼをコードする遺伝子。

当検査パネルでは、これらの原因遺伝子15種類を対象としています。これにより、TCA回路異常症の主要な原因を効率的にスクリーニングすることが可能です。

ミネルバクリニックのTCA回路異常症遺伝子パネル検査の特徴

「TCA回路異常症 NGSパネル検査」とは、現在TCA回路異常症の原因として報告されている15の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。

従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。

何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、TCA回路異常症に関連する15遺伝子を一度に調べられる「TCA回路異常症 NGSパネル検査」を採用しています。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.費用がリーズナブル

一般的な医療機関でTCA回路異常症の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。

当院では、TCA回路異常症に関係するとされる15の遺伝子を一度に調べられる「TCA回路異常症 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)

2.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行えるTCA回路異常症の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。

当院で行う「TCA回路異常症 NGSパネル検査」の場合、15の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。

3.一気にまとめてできる

臨床症状からTCA回路異常症を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。

当院で行う「TCA回路異常症 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な15の原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。

オプション

塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)

検査内容

「TCA回路異常症 NGSパネル検査」では、TCA回路異常症に関係するとされる15種類の遺伝子(ACO2、DLAT、FH、IDH1、IDH2、IDH3B、MDH1、PC、PCK2、PDHA1、PDHB、PDHX、PDP1、SUCLA2、SUCLG1)をまとめて検査します。

「TCA回路異常症 NGSパネル検査」は、TCA回路異常症の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。

どんな人が受けたらいいの?

【TCA回路異常症・ミトコンドリア病の個人歴または家族歴のある方】に
「TCA回路異常症 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。

この検査は以下のような方に適しています:
・精神運動発達遅滞がある方
・原因不明のけいれん発作がある方
・筋力低下・筋緊張低下がある方
・高乳酸血症・乳酸アシドーシスが認められる方
・頭部MRI検査でLeigh脳症の所見がある方
・脳奇形(脳梁欠損、脳室拡大など)がある方
・心筋症がある方
・視力障害・視神経萎縮がある方
・原因不明の肝機能障害がある方
・成長障害・発育不良がある方
・ミトコンドリア病またはTCA回路異常症の家族歴がある方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方

このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

遺伝子検査により原因が判明すると、TCA回路異常症の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切な食事療法、ビタミン補充療法、合併症の予防、定期的なモニタリングを行うことができます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・他のミトコンドリア病や代謝異常症との鑑別
・適切な食事療法(ケトン食、低炭水化物食など)の導入
・ビタミン補充療法(ビタミンB1、ビオチン、コエンザイムQ10など)の最適化
・乳酸アシドーシスの適切な管理
・心筋症、肝機能障害などの合併症の早期発見と治療
・脳症発作の予防と管理
・疾患の進行予測と長期的な管理計画の立案
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供

患者さんで病原性変異が同定された場合、遺伝形式に応じて家族の発症リスクが異なります。常染色体劣性遺伝の場合は兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。X連鎖遺伝の場合は男児が発症するリスクが高くなります。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。

対象遺伝子

詳しくはこちら

ACO2, DLAT, FH, IDH1, IDH2, IDH3B, MDH1, PC, PCK2, PDHA1, PDHB, PDHX, PDP1, SUCLA2, SUCLG1 ( 15遺伝子 )

各遺伝子の詳細:
・ACO2遺伝子:
ミトコンドリア型アコニターゼをコードする遺伝子。TCA回路においてクエン酸をイソクエン酸に変換する酵素です。この遺伝子の変異により、乳児期発症の重症ミトコンドリア脳症や視神経萎縮を呈することがあります。

・DLAT遺伝子:
ジヒドロリポアミドS-アセチルトランスフェラーゼ(ピルビン酸脱水素酵素複合体E2サブユニット)をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、Leigh脳症や乳酸アシドーシスを呈します。

・FH遺伝子:
フマラーゼをコードする遺伝子。TCA回路においてフマル酸をリンゴ酸に変換する酵素です。常染色体劣性遺伝形式で、フマラーゼ欠損症の原因となります。脳奇形、精神運動発達遅滞、けいれん、尿中フマル酸排泄増加を特徴とします。

・IDH1遺伝子:
細胞質型イソクエン酸脱水素酵素1をコードする遺伝子。

・IDH2遺伝子:
ミトコンドリア型イソクエン酸脱水素酵素2をコードする遺伝子。TCA回路においてイソクエン酸をα-ケトグルタル酸に変換する酵素です。

・IDH3B遺伝子:
イソクエン酸脱水素酵素3βサブユニットをコードする遺伝子。NAD+依存性のイソクエン酸脱水素酵素の構成成分です。

・MDH1遺伝子:
細胞質型リンゴ酸脱水素酵素1をコードする遺伝子。

・PC遺伝子:
ピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子。ピルビン酸をオキサロ酢酸に変換し、TCA回路への補充経路(アナプレロティック経路)に関与します。常染色体劣性遺伝形式で、ピルビン酸カルボキシラーゼ欠損症の原因となります。

・PCK2遺伝子:
ミトコンドリア型ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼをコードする遺伝子。糖新生に関与します。

・PDHA1遺伝子:
ピルビン酸脱水素酵素E1αサブユニットをコードする遺伝子。X連鎖遺伝形式で、ピルビン酸脱水素酵素複合体欠損症の最も頻度の高い原因遺伝子です。男児により重症に発症し、精神運動発達遅滞、けいれん、乳酸アシドーシス、脳奇形を呈します。

・PDHB遺伝子:
ピルビン酸脱水素酵素E1βサブユニットをコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、ピルビン酸脱水素酵素複合体欠損症の原因となります。

・PDHX遺伝子:
ピルビン酸脱水素酵素複合体のE3結合タンパク質をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、Leigh脳症や乳酸アシドーシスを呈します。

・PDP1遺伝子:
ピルビン酸脱水素酵素ホスファターゼ触媒サブユニット1をコードする遺伝子。ピルビン酸脱水素酵素複合体の活性調節に関与します。常染色体劣性遺伝形式で、ピルビン酸脱水素酵素ホスファターゼ欠損症の原因となります。

・SUCLA2遺伝子:
コハク酸-CoAリガーゼADP形成βサブユニットをコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、Leigh脳症、精神運動発達遅滞、筋緊張低下、難聴を呈することがあります。

・SUCLG1遺伝子:
コハク酸-CoAリガーゼαサブユニットをコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、Leigh脳症や乳酸アシドーシスを呈します。

カバレッジ

カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。

≥99% at 20x(読み取り深度平均20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
 検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

検査の限界

詳しくはこちら

すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。

低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。

この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。

※この検査パネルでは、15の原因遺伝子のみを対象としています。TCA回路異常症には他にも稀な原因遺伝子が存在する可能性があり、検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。また、ミトコンドリアDNAの変異による類似の病態は、この検査では検出されません。

結果が出るまでの期間

2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。

料金

税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
精神運動発達遅滞、原因不明のけいれん発作、筋力低下・筋緊張低下、高乳酸血症・乳酸アシドーシスがある方におすすめします。特に、頭部MRI検査でLeigh脳症の所見がある場合や、脳奇形(脳梁欠損、脳室拡大など)がある場合は、TCA回路異常症の可能性が高くなります。また、家族に同様の症状やミトコンドリア病の方がいる場合も検査をご検討ください。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
ミトコンドリア病とTCA回路異常症の違いは何ですか?
ミトコンドリア病は、ミトコンドリアの機能障害により発症する疾患群の総称です。TCA回路異常症は、ミトコンドリア病の一種であり、特にTCA回路(クエン酸回路)を構成する酵素の欠損により発症します。ミトコンドリア病には、TCA回路異常症以外にも、呼吸鎖複合体欠損症、脂肪酸代謝異常症など様々な病型があります。
家族も検査を受ける必要がありますか?
遺伝形式によって家族の発症リスクが異なります。常染色体劣性遺伝の場合、患者さんの兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。保因者の方が将来子どもを持つ場合、パートナーも保因者であれば子どもが発症するリスクは25%となります。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
この検査パネルでは15の主要な原因遺伝子を対象としていますが、TCA回路異常症には他にも稀な原因遺伝子が存在する可能性があります。また、ミトコンドリアDNAの変異による類似の病態は、この検査では検出されません。検査で病原性変異が検出されなくても、臨床症状と生化学検査に基づいた診断と管理が引き続き重要です。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
遺伝形式によって子どもへの影響が異なります。常染色体劣性遺伝の場合、保因者同士のカップルで子どもが発症する確率は25%です。X連鎖遺伝の場合は男児が発症するリスクが高くなります。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
TCA回路異常症の治療はどのように行われますか?
現在のところ根本的な治療法はありませんが、食事療法(ケトン食、低炭水化物食など)、ビタミン補充療法(ビタミンB1、ビオチン、コエンザイムQ10など)、乳酸アシドーシスの管理、合併症の治療などが行われます。原因遺伝子が特定されることで、より個別化された治療・管理が可能になります。
予後はどうですか?
疾患の重症度や発症時期、原因遺伝子によって予後は大きく異なります。重症新生児型では予後不良のことが多いですが、遅発型・軽症型では適切な治療・管理により比較的良好な経過をたどることもあります。早期診断により適切な治療を開始することで、予後の改善が期待できます。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では臨床的に重要な15の原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。


プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

仲田洋美のプロフィールはこちら