症候性先天性筋ジストロフィー遺伝子検査(NGSパネル)|ミネルバクリニック
症候性先天性筋ジストロフィーとは
症候性先天性筋ジストロフィー(Syndromic Congenital Muscular Dystrophy)は、筋力低下・筋萎縮に加えて、脳・眼・心臓などの多臓器に症状を呈する遺伝性の筋疾患です。出生時または乳児期早期から筋緊張低下(筋肉が柔らかい)が認められ、運動発達の遅れ、脳形成異常、知的発達遅滞、眼の異常などを伴うことが特徴です。
本疾患群は、αジストログリカンという筋肉細胞膜を安定化させるタンパク質の糖鎖修飾異常により発症します。αジストログリカンは、筋肉だけでなく脳や眼の発達にも重要な役割を果たしているため、これらの臓器に広範な症状が現れます。
症候性先天性筋ジストロフィーには、福山型先天性筋ジストロフィー(FCMD)、Walker-Warburg症候群(WWS)、Muscle-Eye-Brain病(MEB)などが含まれます。これらは臨床的重症度や脳・眼の異常の程度により区別されますが、いずれも常染色体劣性(潜性)遺伝の形式をとり、αジストログリカンの糖鎖修飾に関わる遺伝子の変異が原因となります。
症状と病態
症候性先天性筋ジストロフィーの症状は、筋症状と中枢神経・眼症状の2つに大きく分けられます。重症度は原因遺伝子や変異の種類によって異なり、比較的軽症のものから生命予後に関わる重症型まで幅広いスペクトラムを呈します。
筋症状
- 新生児期・乳児期早期からの筋緊張低下(フロッピーインファント)
- 哺乳力低下、弱い泣き声
- 運動発達の遅れ(首のすわり、寝返り、お座り、歩行の遅れ)
- 全身の筋力低下と筋萎縮
- 関節拘縮(特に肘、膝、足首、股関節)
- 仮性肥大(ふくらはぎや舌の筋肉が見かけ上太くなる)
- 高クレアチンキナーゼ(CK)血症(血液検査で筋肉の破壊を示す酵素が上昇)
- 進行性の筋力低下
脳の異常
症候性先天性筋ジストロフィーでは、神経細胞の移動(遊走)障害により特徴的な脳形成異常が認められます:
- 滑脳症(無脳回・厚脳回・多小脳回):脳の表面のしわ(脳回)が正常に形成されず、平滑化したり凹凸が不規則になる
- 敷石状滑脳症(cobblestone lissencephaly):脳表面が敷石を敷き詰めたような凹凸不整な外観を呈する
- 小脳の形成異常:小脳低形成、小脳嚢胞
- 脳室拡大・水頭症
- 脳幹・橋の低形成
- 脳梁の形成不全または欠損
- 大脳白質の髄鞘化遅延
これらの脳の異常により、以下のような症状が現れます:
- 重度から中等度の知的発達遅滞
- 言語発達の遅れ(言葉が出ない、語彙が限られる)
- てんかん発作(患者の50%以上で認められる)
- 運動機能の著しい制限(重症例では首が座らない、座位保持困難)
眼の異常
- 近視:進行性で高度の近視が多い
- 網膜異常:網膜変性、網膜剥離
- 白内障:先天性または若年性白内障
- 緑内障
- 小眼球症:眼球が小さい
- 視神経乳頭の蒼白化
- Peter奇形:角膜混濁などの前眼部異常
- 第1次硝子体過形成遺残
その他の症状
- 心症状:拡張型心筋症、心機能低下(特に10歳代以降)
- 呼吸障害:呼吸筋の筋力低下による呼吸不全
- 嚥下障害:誤嚥のリスク増加
- 特徴的な顔貌:目が完全に閉じない、頬がふっくらしている、まつげが長い、よだれが多い
疾患別の特徴
福山型先天性筋ジストロフィー(FCMD):
日本人に特有の疾患で、日本における先天性筋ジストロフィーの中で最も頻度が高い。約90人に1人が保因者とされる。患者の約70%は座位までは獲得できるが歩行は困難。てんかんの合併が多く、多くの患者は10~20歳代で呼吸不全や心不全により死亡するが、近年は医療の進歩により予後が改善傾向。
Walker-Warburg症候群(WWS):
最も重症型で、重度の脳奇形(II型滑脳症)、水頭症、重度の眼奇形(小眼球、先天性白内障、網膜異常)を呈する。経口栄養が困難で胃瘻が必要となることが多く、多くの患者は乳幼児期に死亡する。
Muscle-Eye-Brain病(MEB):
中間的な重症度で、筋症状、脳形成異常、眼症状を呈するが、一部の患者では数年間歩行可能な場合もある。進行性近視、進行性網膜萎縮、若年性白内障、緑内障が特徴的。
進行と予後
症候性先天性筋ジストロフィーは進行性疾患であり、乳幼児期にゆるやかな発達を示すこともありますが、その後筋力低下が進行し、関節拘縮が進み、運動機能が低下します。呼吸機能や心機能の低下も進行し、感染症(特に肺炎)のリスクが高まります。予後は疾患のタイプと重症度により大きく異なります。
遺伝形式と原因遺伝子
症候性先天性筋ジストロフィーは常染色体劣性(潜性)遺伝の形式をとります。これは、両親がともに変異遺伝子を1つずつ持つ保因者である場合、子どもが発症するリスクが25%、保因者となるリスクが50%、正常となるリスクが25%であることを意味します。
病態メカニズム
症候性先天性筋ジストロフィーは、「ジストログリカノパチー(dystroglycanopathy)」とも呼ばれ、αジストログリカンの糖鎖修飾異常が共通の病態です。αジストログリカンは、筋肉細胞膜と細胞外基質(ラミニンなど)を結びつける重要なタンパク質であり、筋肉の収縮時に筋細胞を安定化させる役割を果たします。
正常なαジストログリカンの機能には、タンパク質合成後にO型マンノース糖鎖が適切に付加されることが必須です。症候性先天性筋ジストロフィーの原因遺伝子は、いずれもこの糖鎖修飾に関わる糖転移酵素をコードしており、これらの遺伝子に変異が生じると、αジストログリカンへの糖鎖付加が不完全となり、細胞外基質との結合能が低下します。
αジストログリカンは骨格筋だけでなく、脳発達における神経細胞の移動、網膜や視神経の形成、心筋の機能維持にも重要な役割を果たしています。そのため、糖鎖修飾異常により、筋肉だけでなく脳・眼・心臓にも広範な症状が現れるのです。
原因遺伝子
現在、19種類以上の遺伝子がαジストログリカンの糖鎖修飾に関わることが知られており、これらの遺伝子の変異により症候性先天性筋ジストロフィーが発症します。当検査パネルでは、臨床的に重要な以下の5つの遺伝子を対象としています:
- FKTN遺伝子(フクチン):福山型先天性筋ジストロフィーの原因遺伝子。リビトール-5-リン酸転移酵素として機能する。日本人患者の約90%に3kbのレトロトランスポゾン挿入変異が認められる。
- POMT1遺伝子:O型マンノース転移酵素1をコードし、Walker-Warburg症候群の主要な原因遺伝子の一つ。
- POMT2遺伝子:O型マンノース転移酵素2をコードし、Walker-Warburg症候群やMuscle-Eye-Brain病の原因となる。
- POMGNT1遺伝子:O型マンノース糖鎖にN-アセチルグルコサミンを転移する酵素をコードし、Muscle-Eye-Brain病の原因遺伝子として知られる。
- LARGE1遺伝子:αジストログリカンのグリコシル化に関与する糖転移酵素をコードする。
ミネルバクリニックの症候性先天性筋ジストロフィー遺伝子パネル検査の特徴
「症候性先天性筋ジストロフィー NGSパネル検査」とは、現在症候性先天性筋ジストロフィーの原因として報告されている5つの主要遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。
従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。
何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、症候性先天性筋ジストロフィーに関連する5遺伝子を一度に調べられる「症候性先天性筋ジストロフィー NGSパネル検査」を採用しています。
一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。
1.費用がリーズナブル
一般的な医療機関で症候性先天性筋ジストロフィーの遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。
当院では、症候性先天性筋ジストロフィーに関係するとされる5つの遺伝子を一度に調べられる「症候性先天性筋ジストロフィー NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)
2.結果が出るまでがはやい
一般的な医療機関で行える症候性先天性筋ジストロフィーの遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。
当院で行う「症候性先天性筋ジストロフィー NGSパネル検査」の場合、5つの遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。
3.一気にまとめてできる
臨床症状から症候性先天性筋ジストロフィーを疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。
当院で行う「症候性先天性筋ジストロフィー NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な5つの原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。
オプション
塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・重複 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)
検査内容
「症候性先天性筋ジストロフィー NGSパネル検査」では、症候性先天性筋ジストロフィーに関係するとされる5種類の遺伝子(FKTN、LARGE1、POMGNT1、POMT1、POMT2)をまとめて検査します。
「症候性先天性筋ジストロフィー NGSパネル検査」は、症候性先天性筋ジストロフィーの遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。
どんな人が受けたらいいの?
【症候性先天性筋ジストロフィーの個人歴または家族歴のある方】に
「症候性先天性筋ジストロフィー NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。
この検査は以下のような方に適しています:
・新生児期・乳児期から筋緊張低下がある方
・運動発達の遅れ(首のすわり、お座り、歩行の遅れ)がある方
・全身の筋力低下と筋萎縮が認められる方
・高クレアチンキナーゼ(CK)血症がある方
・脳形成異常(滑脳症、多小脳回、小脳嚢胞など)が認められる方
・知的発達遅滞またはてんかんがある方
・眼の異常(近視、白内障、網膜異常など)がある方
・症候性先天性筋ジストロフィーまたは福山型筋ジストロフィーの家族歴がある方
・保因者診断を希望される方(家族に患者がいる場合)
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方
このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。
検査で得られる患者さんの潜在的利益は?
遺伝子検査により原因が判明すると、症候性先天性筋ジストロフィーの診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切なリハビリテーション、呼吸管理、心機能管理、栄養管理、てんかん治療、眼科的管理などを計画的に行うことができます。
遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・他の先天性筋ジストロフィーや神経筋疾患との鑑別
・疾患の重症度予測と長期的な管理計画の立案
・適切なリハビリテーションプログラムの立案
・呼吸機能障害のリスク評価と呼吸管理の計画
・心機能障害のリスク評価と心保護治療の開始時期の判断
・てんかん発作のリスク評価と抗てんかん薬治療の計画
・眼科的合併症の早期発見と管理
・栄養管理(胃瘻の必要性など)の判断
・感染症予防の重要性の認識
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供
患者さんで病原性変異が同定された場合、常染色体劣性遺伝のため、兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。両親は通常無症状の保因者です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。特に福山型先天性筋ジストロフィーは日本人に特有の疾患で、約90人に1人が保因者とされるため、家族計画において遺伝カウンセリングが重要です。
対象遺伝子
- 詳しくはこちら
-
FKTN, LARGE1, POMGNT1, POMT1, POMT2 ( 5遺伝子 )
各遺伝子の詳細:
・FKTN遺伝子(フクチン遺伝子):
第9番染色体長腕31領域(9q31)に位置する遺伝子で、461アミノ酸からなるフクチンタンパク質をコードします。フクチンは糖転移酵素として機能し、αジストログリカンのO型マンノース糖鎖にリビトール-5-リン酸を転移する役割を果たします。福山型先天性筋ジストロフィーの原因遺伝子として1998年に同定されました。日本人患者の約87~90%に、3’非翻訳領域への約3kbのレトロトランスポゾン(SVA型)挿入変異が認められます。この変異は約2000~2500年前(弥生時代)に日本人の祖先に生じたと推定されており、創始者効果により日本人集団に広まったと考えられています。その他の変異としては、エキソン3のナンセンス変異、エキソン4の2塩基欠失によるフレームシフト変異などが報告されています。レトロトランスポゾン挿入変異と点変異の複合ヘテロ接合体では重症化する傾向があります。
・POMT1遺伝子(protein O-mannosyltransferase 1):
第9番染色体q34.13に位置し、O型マンノース転移酵素1をコードする遺伝子です。この酵素はαジストログリカンへのO型マンノース糖鎖の付加の最初のステップを担います。POMT1遺伝子の変異は、Walker-Warburg症候群患者の約20%に認められ、最も重症な表現型を示すことが多いです。変異により酵素活性が完全に失われると、重度の脳奇形、眼奇形を伴い、生後数ヶ月から数年で死亡することが多いです。
・POMT2遺伝子(protein O-mannosyltransferase 2):
第14番染色体q24.3に位置し、O型マンノース転移酵素2をコードします。POMT1とヘテロ二量体を形成してO型マンノース転移酵素として機能します。POMT2遺伝子の変異はWalker-Warburg症候群やMuscle-Eye-Brain病の原因となります。変異の種類と位置により表現型の重症度が異なり、軽症例では歩行可能な場合もあります。
・POMGNT1遺伝子(protein O-mannose beta-1,2-N-acetylglucosaminyltransferase 1):
第1番染色体p34.1に位置し、O型マンノース糖鎖にN-アセチルグルコサミンを転移する酵素をコードします。POMGNT1遺伝子の変異はMuscle-Eye-Brain病の主要な原因遺伝子として知られており、フィンランド人集団で特に頻度が高いです。変異により、特徴的な眼症状(進行性近視、網膜萎縮、緑内障、若年性白内障)と脳形成異常(主に小脳嚢胞と大脳基底核の扁平化)を呈します。表現型は比較的多様で、一部の患者では数年間歩行可能な場合もあります。
・LARGE1遺伝子(like-acetylglucosaminyltransferase 1):
第22番染色体q12.3に位置し、糖転移酵素様タンパク質をコードします。αジストログリカンへの糖鎖修飾の後期段階に関与し、キシロース-グルクロン酸の反復構造の形成に重要な役割を果たします。LARGE1遺伝子の変異は稀ですが、先天性筋ジストロフィー1D型(MDC1D)の原因となります。変異により高度にグリコシル化されたαジストログリカンが欠損し、筋症状と脳・眼症状を呈します。
カバレッジ
カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。
≥99% at 20x(読み取り深度20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。
検体
血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)
※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。
検査の限界
- 詳しくはこちら
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すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。
低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。
この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。
※この検査パネルでは、5つの主要原因遺伝子のみを対象としています。症候性先天性筋ジストロフィーの原因遺伝子は19種類以上知られており、この検査で対象としていない遺伝子(FKRP、ISPD、B3GALNT2、GMPPB、B3GNT1など)の変異による症例も存在します。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。
※福山型先天性筋ジストロフィーで最も頻度の高い3kbレトロトランスポゾン挿入変異は、標準的なNGS解析では検出が困難な場合があります。FKTN遺伝子の解析には特別な注意が必要であり、必要に応じて確認検査が推奨されます。
結果が出るまでの期間
2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。
料金
税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)
よくあるご質問
- どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
- 新生児期・乳児期から筋緊張低下(フロッピーインファント)がある方、運動発達の遅れがある方、高クレアチンキナーゼ血症がある方におすすめします。特に、脳のMRI検査で滑脳症や多小脳回などの脳形成異常が認められる場合、眼の異常(近視、白内障、網膜異常など)がある場合、てんかんを合併している場合は、症候性先天性筋ジストロフィーの可能性が高くなります。また、家族に同様の症状がある場合も検査をご検討ください。
- 検査はどのように行いますか?
- 血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
- 福山型先天性筋ジストロフィーとはどのような病気ですか?
- 福山型先天性筋ジストロフィー(FCMD)は日本人に特有の疾患で、日本における先天性筋ジストロフィーの中で最も頻度が高い病気です。FKTN遺伝子の変異により発症し、筋力低下、脳形成異常(滑脳症など)、知的発達遅滞、てんかん、眼症状を呈します。約90人に1人が保因者とされています。
- 家族も検査を受ける必要がありますか?
- 症候性先天性筋ジストロフィーは常染色体劣性遺伝のため、患者さんの兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。両親は通常無症状の保因者です。特に福山型先天性筋ジストロフィーは日本人に高頻度(約90人に1人が保因者)であるため、ご家族の検査により将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
- 検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
- この検査パネルでは5つの主要遺伝子のみを対象としています。症候性先天性筋ジストロフィーの原因遺伝子は19種類以上知られており、この検査で対象としていない遺伝子の変異による症例も存在します。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。臨床症状と画像検査に基づいた診断と管理が引き続き重要です。
- 保因者診断は可能ですか?
- はい、可能です。家族に症候性先天性筋ジストロフィーの患者さんがいる場合、ご自身が保因者かどうかを調べることができます。特に福山型先天性筋ジストロフィーは日本人に高頻度であるため、将来子どもを持つことを考えている方にとって保因者診断は重要な情報となります。
- 保険は適用されますか?
- 当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
- 結果はどのように説明されますか?
- 検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢、出生前診断・着床前診断などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
- 子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
- 常染色体劣性遺伝のため、両親がともに保因者の場合、子どもが発症する確率は25%、保因者となる確率は50%、正常である確率は25%です。患者さんで病原性変異が同定された場合、出生前診断や着床前診断などの選択肢についてもご相談いただけます。
- 症候性先天性筋ジストロフィーの治療はどのように行われますか?
- 現在のところ根本的な治療法はありませんが、リハビリテーション、呼吸管理(非侵襲的陽圧換気療法など)、心保護治療、抗てんかん薬治療、栄養管理(必要に応じて胃瘻造設)、眼科的管理などの対症療法が行われます。福山型先天性筋ジストロフィーに対しては、アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いた治療法の開発が進められており、治験が開始されています。
- 予後はどうですか?
- 予後は疾患のタイプと重症度により大きく異なります。Walker-Warburg症候群は最も重症で多くの患者は乳幼児期に死亡します。福山型先天性筋ジストロフィーは中等度の重症度で、多くの患者は10~20歳代で呼吸不全や心不全により死亡しますが、近年は医療の進歩により予後が改善傾向にあります。Muscle-Eye-Brain病は比較的軽症で、一部の患者では歩行可能な場合もあります。
- 他の医療機関での検査との違いは何ですか?
- 当院では臨床的に重要な5つの原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。
プロフィール
この記事の筆者:仲田洋美(医師)
ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。
仲田洋美のプロフィールはこちら