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肺サーファクタント機能不全症NGS遺伝子パネル検査|ミネルバクリニック

肺サーファクタント機能不全症NGS遺伝子パネル検査|ミネルバクリニック

肺サーファクタント機能不全症とは

肺サーファクタント機能不全症(Surfactant dysfunction)は、肺胞の表面張力を低下させる役割を持つ肺サーファクタントが正常に機能しないことにより、呼吸困難を引き起こす遺伝性肺疾患です。肺サーファクタントは脂質とタンパク質の複合体で、これが異常であると肺胞が虚脱し、酸素と二酸化炭素の交換が十分に行えなくなります。

本疾患は臨床的に幅広いスペクトラムを示し、最も重症な形態は新生児期に発症し、直ちに集中治療を必要とします。一方、軽症型は徐々に進行し、多くの患者さんは小児期に呼吸器症状を発症しますが、成人期に初めて症状が現れることもあります。

肺サーファクタント機能不全症は、先天性肺サーファクタント代謝異常症、遺伝性間質性肺疾患とも呼ばれます。新生児呼吸窮迫症候群(RDS)や小児間質性肺疾患(chILD)の原因となり、適切な診断と管理が患者さんの予後を大きく左右します。遺伝子変異の種類により、症状の重症度や発症時期が異なるため、遺伝学的診断が治療方針の決定に重要な役割を果たします。

症状と病態

肺サーファクタント機能不全症の主な症状は、呼吸困難、頻呼吸、チアノーゼ(皮膚や粘膜が青紫色になる)、酸素飽和度の低下などの呼吸器症状です。症状の重症度は原因遺伝子や変異の種類によって大きく異なります。

主要症状

  • 呼吸困難・呼吸窮迫
  • 頻呼吸(呼吸数の増加)
  • チアノーゼ(酸素不足による皮膚の青紫色化)
  • 陥没呼吸(呼吸時の胸壁陥没)
  • 酸素飽和度の低下
  • 慢性咳嗽
  • 喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューという呼吸音)
  • 体重増加不良(乳幼児期)
  • 運動耐容能の低下
  • 反復性呼吸器感染症

重症度による分類

肺サーファクタント機能不全症は、発症時期と重症度により大きく3つに分類されます:

  • 新生児期発症重症型:出生直後から重度の呼吸窮迫症候群を呈し、人工呼吸管理を含む集中治療が必要です。SFTPB遺伝子変異やABCA3遺伝子の重症型変異が原因となることが多く、予後不良の場合があります。肺移植が必要となることもあります。
  • 乳幼児期発症中等症型:生後数ヶ月から数年の間に徐々に呼吸器症状が出現します。慢性咳嗽、頻呼吸、運動時の息切れなどが主症状です。SFTPC遺伝子変異やABCA3遺伝子の中等症型変異が原因となることが多く、適切な管理により症状をコントロールできることがあります。
  • 小児期~成人期発症軽症型:徐々に進行する間質性肺疾患として発症します。慢性咳嗽、労作時呼吸困難、易疲労性などが主症状です。SFTPC遺伝子変異やNKX2-1遺伝子変異が原因となることが多く、長期間にわたって比較的安定した経過をたどることがあります。

合併症

肺サーファクタント機能不全症では、以下のような合併症が認められることがあります:

  • 肺高血圧症:慢性的な低酸素状態により肺動脈圧が上昇し、右心不全を引き起こすことがあります
  • 気胸:肺組織の脆弱性により、自然気胸を繰り返すことがあります
  • 肺線維化:慢性的な炎症により肺組織が硬くなり、呼吸機能がさらに低下します
  • 甲状腺機能異常:NKX2-1遺伝子変異では、甲状腺機能低下症を合併することがあります
  • 神経学的異常:NKX2-1遺伝子変異では、舞踏病様運動や発達遅滞を伴うことがあります(Brain-Lung-Thyroid症候群)
  • 成長障害:慢性的な呼吸器疾患により、体重増加不良や低身長を呈することがあります

画像所見

胸部X線検査やCT検査では、びまん性のすりガラス陰影、網状影、嚢胞性変化などが認められます。これらの画像所見は間質性肺疾患に特徴的ですが、原因遺伝子によって異なるパターンを示すことがあります。

遺伝形式と原因遺伝子

肺サーファクタント機能不全症は遺伝学的に多様性があり、常染色体優性(顕性)遺伝、常染色体劣性(潜性)遺伝のいずれの形式でも発症します。現在までに複数の原因遺伝子が同定されており、それぞれ異なる臨床的特徴を示します。

常染色体劣性(潜性)遺伝形式

最も重症な形態を示すことが多い遺伝形式です:

  • SFTPB遺伝子:サーファクタントプロテインB(SP-B)をコードする遺伝子です。両アレル性変異(ホモ接合体または複合ヘテロ接合体)により、新生児期に致死的な呼吸窮迫症候群を引き起こします。SP-Bは肺サーファクタントの機能に必須のタンパク質であり、完全欠損では肺移植以外に根本的治療法がありません。
  • ABCA3遺伝子:ATP結合カセットサブファミリーAメンバー3(ABCA3)をコードする遺伝子です。ABCA3はII型肺胞上皮細胞の層板小体への脂質輸送を担っています。両アレル性の重症変異では新生児期に重度の呼吸窮迫症候群を、軽症変異では小児期から成人期にかけて間質性肺疾患を呈します。本遺伝子変異は肺サーファクタント機能不全症の最も頻度の高い原因の一つです。

常染色体優性(顕性)遺伝形式

比較的軽症から中等症の経過をたどることが多い遺伝形式です:

  • SFTPC遺伝子:サーファクタントプロテインC(SP-C)をコードする遺伝子です。ヘテロ接合性変異により、小児期から成人期にかけて徐々に進行する間質性肺疾患を引き起こします。変異により異常な折りたたみタンパク質が産生され、小胞体ストレスを介して細胞障害を引き起こすと考えられています。家族性間質性肺炎の原因としても知られています。
  • NKX2-1遺伝子:NK2ホメオボックス1(別名TTF-1: thyroid transcription factor-1)をコードする遺伝子です。ヘテロ接合性変異により、肺疾患、甲状腺機能低下症、神経学的異常(舞踏病様運動、発達遅滞)の三徴を呈するBrain-Lung-Thyroid症候群を引き起こします。NKX2-1は肺、甲状腺、脳の発生に重要な転写因子です。

その他の関連遺伝子

  • FOXF1遺伝子:フォークヘッドボックスF1をコードする遺伝子です。ヘテロ接合性変異または欠失により、肺胞毛細血管異形成症(Alveolar capillary dysplasia with misalignment of pulmonary veins: ACD/MPV)を引き起こします。新生児期に重度の肺高血圧症と呼吸不全を呈し、予後不良です。

当検査パネルでは、これらの原因遺伝子のうち、臨床的に重要な5遺伝子(ABCA3、FOXF1、NKX2-1、SFTPB、SFTPC)を対象としています。これにより、肺サーファクタント機能不全症の主要な原因を効率的にスクリーニングすることが可能です。

ミネルバクリニックの肺サーファクタント機能不全症遺伝子パネル検査の特徴

「肺サーファクタント機能不全症 NGSパネル検査」とは、現在肺サーファクタント機能不全症の原因として報告されている5の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。

従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。

何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、肺サーファクタント機能不全症に関連する5遺伝子を一度に調べられる「肺サーファクタント機能不全症 NGSパネル検査」を採用しています。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.費用がリーズナブル

一般的な医療機関で肺サーファクタント機能不全症の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。

当院では、肺サーファクタント機能不全症に関係するとされる5の遺伝子を一度に調べられる「肺サーファクタント機能不全症 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)

2.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行える肺サーファクタント機能不全症の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。

当院で行う「肺サーファクタント機能不全症 NGSパネル検査」の場合、5の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。

3.一気にまとめてできる

臨床症状から肺サーファクタント機能不全症を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。

当院で行う「肺サーファクタント機能不全症 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な5の原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。

オプション

塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)

検査内容

「肺サーファクタント機能不全症 NGSパネル検査」では、肺サーファクタント機能不全症に関係するとされる5種類の遺伝子(ABCA3、FOXF1、NKX2-1、SFTPB、SFTPC)をまとめて検査します。

「肺サーファクタント機能不全症 NGSパネル検査」は、肺サーファクタント機能不全症の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。

どんな人が受けたらいいの?

【肺サーファクタント機能不全症の個人歴または家族歴のある方】に
「肺サーファクタント機能不全症 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。

この検査は以下のような方に適しています:
・新生児期から乳幼児期に原因不明の呼吸窮迫症候群を呈した方
・慢性的な呼吸困難や頻呼吸がある方
・小児期から成人期にかけて徐々に進行する間質性肺疾患と診断された方
・胸部画像検査でびまん性のすりガラス陰影や網状影が認められる方
・反復性の呼吸器感染症を繰り返す方
・原因不明の慢性咳嗽が続く方
・運動耐容能の低下や労作時呼吸困難がある方
・肺サーファクタント機能不全症または家族性間質性肺炎の家族歴がある方
・Brain-Lung-Thyroid症候群(肺疾患、甲状腺機能低下症、神経学的異常)の症状がある方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方

このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

遺伝子検査により原因が判明すると、肺サーファクタント機能不全症の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切な呼吸管理、薬物療法、定期的なモニタリングを行うことができます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・他の間質性肺疾患や呼吸器疾患との鑑別
・重症度の予測と長期的な管理計画の立案
・適切な呼吸管理(酸素療法、人工呼吸管理など)の決定
・薬物療法(ステロイド、hydroxychloroquineなど)の適応判断
・肺移植の適応とタイミングの検討
・合併症(肺高血圧症、気胸など)の早期発見と管理
・NKX2-1遺伝子変異の場合、甲状腺機能や神経学的評価の必要性の判断
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供

患者さんで病原性変異が同定された場合、遺伝形式に応じて家族の発症リスクが異なります。常染色体劣性遺伝(SFTPB、ABCA3の重症型)の場合は兄弟姉妹が発症するリスクは25%、常染色体優性遺伝(SFTPC、NKX2-1など)の場合は子どもが発症するリスクは50%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。

対象遺伝子

詳しくはこちら

ABCA3, FOXF1, NKX2-1, SFTPB, SFTPC ( 5遺伝子 )

各遺伝子の詳細:
・ABCA3遺伝子:
ATP結合カセットサブファミリーAメンバー3(ABCA3)をコードする遺伝子。ABCA3は肺胞II型上皮細胞の層板小体への脂質輸送を担う膜輸送タンパク質です。両アレル性変異により、重症型では新生児期に致死的な呼吸窮迫症候群を、軽症型では小児期から成人期にかけて徐々に進行する間質性肺疾患を引き起こします。肺サーファクタント機能不全症の最も頻度の高い原因遺伝子の一つです。

・FOXF1遺伝子:
フォークヘッドボックスF1をコードする遺伝子。FOXF1は肺血管の発生に重要な転写因子です。ヘテロ接合性変異または欠失により、肺胞毛細血管異形成症(ACD/MPV)を引き起こします。新生児期に重度の肺高血圧症と呼吸不全を呈し、予後不良です。肺静脈の異常配置を伴うことが特徴的です。

・NKX2-1遺伝子:
NK2ホメオボックス1(別名TTF-1: thyroid transcription factor-1)をコードする遺伝子。NKX2-1は肺、甲状腺、脳の発生と分化に重要な転写因子です。ヘテロ接合性変異により、肺疾患(間質性肺疾患)、甲状腺機能低下症、神経学的異常(舞踏病様運動、発達遅滞)の三徴を呈するBrain-Lung-Thyroid症候群を引き起こします。肺病変は比較的軽症であることが多いです。

・SFTPB遺伝子:
サーファクタントプロテインB(SP-B)をコードする遺伝子。SP-Bは肺サーファクタントの機能に必須の疎水性タンパク質で、サーファクタントの表面張力低下作用と広がりに不可欠です。両アレル性変異により完全欠損すると、新生児期に致死的な呼吸窮迫症候群を引き起こします。肺移植以外に根本的治療法がありません。

・SFTPC遺伝子:
サーファクタントプロテインC(SP-C)をコードする遺伝子。SP-Cは肺胞II型上皮細胞で特異的に産生される疎水性タンパク質です。ヘテロ接合性変異により、異常な折りたたみタンパク質が産生され、小胞体ストレスを介して細胞障害を引き起こします。小児期から成人期にかけて徐々に進行する間質性肺疾患を呈します。家族性間質性肺炎の原因としても知られています。

カバレッジ

カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。

≥99% at 20x(読み取り深度平均20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
 検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

検査の限界

詳しくはこちら

すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。

低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。

この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。

※この検査パネルでは、5の原因遺伝子のみを対象としています。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。また、他の未知の原因遺伝子や、この検査では検出できない変異タイプが存在する可能性があります。

結果が出るまでの期間

2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。

料金

税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
新生児期から乳幼児期の原因不明の呼吸窮迫症候群、慢性的な呼吸困難や頻呼吸、徐々に進行する間質性肺疾患と診断された方におすすめします。胸部画像検査でびまん性のすりガラス陰影や網状影が認められる場合も検査をご検討ください。また、肺疾患に加えて甲状腺機能低下症や神経学的異常(舞踏病様運動など)がある場合は、NKX2-1遺伝子変異の可能性があります。家族に同様の症状や家族性間質性肺炎の方がいる場合も検査が推奨されます。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
新生児呼吸窮迫症候群との違いは何ですか?
一般的な新生児呼吸窮迫症候群(RDS)は未熟児に多く、肺の未熟性によるサーファクタント産生不足が原因で、通常はサーファクタント補充療法により改善します。一方、遺伝性の肺サーファクタント機能不全症は、正期産児でも発症し、サーファクタント補充療法に反応しにくいことが特徴です。当検査により原因遺伝子を特定することで、より正確な診断と適切な管理が可能になります。
家族も検査を受ける必要がありますか?
遺伝形式によって家族の発症リスクが異なります。常染色体劣性遺伝(SFTPB、ABCA3の重症型)の場合、兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。常染色体優性遺伝(SFTPC、NKX2-1など)の場合、患者さんのお子さんが発症するリスクは50%です。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。他の未知の原因遺伝子が存在する可能性や、この検査では検出できない変異タイプが存在する可能性があります。臨床症状と画像所見、呼吸機能検査に基づいた診断と管理が引き続き重要です。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
遺伝形式によって子どもへの影響が異なります。常染色体劣性遺伝の場合は保因者同士のカップルで子どもが発症する確率は25%、常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症する確率は50%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
肺サーファクタント機能不全症の治療はどのように行われますか?
重症度と原因遺伝子により治療方針が異なります。新生児期発症の重症例では人工呼吸管理や体外式膜型人工肺(ECMO)などの集中治療が必要です。SFTPB遺伝子変異による完全欠損症では肺移植が唯一の根本的治療となります。軽症から中等症の場合は、酸素療法、ステロイドやhydroxychloroquineなどの薬物療法、呼吸リハビリテーション、感染予防などが行われます。
予後はどうですか?
予後は原因遺伝子と変異の種類によって大きく異なります。SFTPB遺伝子の両アレル性変異による完全欠損症は予後不良で、肺移植が必要となります。ABCA3遺伝子の重症型変異も新生児期に重篤な経過をたどることがあります。一方、SFTPC遺伝子変異やNKX2-1遺伝子変異では、適切な管理により比較的長期間安定した経過をたどることが多いです。個々の症例により予後は異なるため、遺伝カウンセリングで詳しくご説明いたします。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では臨床的に重要な5の原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。


プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

仲田洋美のプロフィールはこちら