(更新日:2025/10/05)
スティックラー症候群NGS遺伝子パネル検査|ミネルバクリニック
スティックラー症候群とは
スティックラー症候群(Stickler syndrome)は、結合組織を構成するコラーゲンタンパク質の形成異常を原因とする遺伝性の結合組織疾患です。皮膚や骨、筋肉、内臓などの各器官を結びつけ、支持している結合組織に先天異常を認めます。主に眼、耳、顔面、骨格系に症状が現れ、近視・白内障・網膜剥離などの眼症状、難聴、顔面中部の劣成長と口蓋裂、軽度の脊椎骨端異形成ないし早発性関節症が特徴です。
1967年にGunnar B. Sticklerらによって最初に報告され、本疾患は臨床的にも遺伝学的にも多様性が高く、家系内および家系間で大きな表現型の幅を示します。発症頻度は1/10,000人と推定されており、比較的稀な疾患ですが、Robin sequence(小下顎に起因する舌の後方転位による口蓋形成異常や上気道閉塞)をきたす原因の約1/3程度が本症候群です。
スティックラー症候群は、コラーゲン遺伝子(COL2A1、COL11A1、COL11A2、COL9A1、COL9A2、COL9A3)の異常によって引き起こされ、常染色体優性(顕性)遺伝または常染色体劣性(潜性)遺伝の形式をとります。両親のいずれかが罹患者の場合、その子どもは50%の頻度でスティックラー症候群を発症する可能性があります。ただし、遺伝子の突然変異により家族歴がなく発症する例もあります。
症状と病態
スティックラー症候群の症状は多彩で、眼、耳、顔面、骨格系など複数の臓器に及びます。症状の有無や発症時期、重症度は患者さんによって様々で、コラーゲン異常のタイプにより症状の出方が異なります。症状がない人から、特徴の一部またはすべてを備えている人まで幅広く存在します。
眼の症状
スティックラー症候群の最も重要な症状の一つが眼の異常です。眼に障害のある人は、様々な合併症のリスクが高く、専門の眼科医への定期的な受診が推奨されます。
高度近視: 眼の形のために非常に強い近視(-6ジオプター以上)を呈します。若年性に発症することが多いです。
硝子体の異常: 眼の中にあるゼリー状の硝子体が障害されます。COL2A1およびCOL11A1遺伝子に関連するタイプでは、硝子体液が特徴的な外観(「膜状」または「optically empty vitreous」と表現される)を呈します。
網膜剥離: 眼の敏感な網膜の裂傷または剥離を起こしやすく、失明のリスクがあります。網膜円孔や格子状変性も認められます。
白内障: 若年性に白内障を発症することがあります。
緑内障: 眼内の圧力が高くなりやすく(高眼圧症)、緑内障を引き起こす可能性があります。
網脈絡膜萎縮: 進行性の脈絡網膜萎縮に伴う種々の程度の夜盲が現れることがあります。
※COL11A2遺伝子に関連するスティックラー症候群のタイプは、眼に影響を与えません。
聴覚の症状
スティックラー症候群のもう一つの重要な徴候は難聴です。軽度から重度まで幅広く、一部の人にとっては進行性である可能性があります。
感音難聴: STL1(COL2A1遺伝子変異)患者の52%に難聴を認め、その大多数が感音難聴で、高音域にのみ軽度の聴覚障害を認めます。外有毛細胞の機能不全による感音難聴であることが示唆されています。
伝音難聴・混合難聴: 少数ですが、主に幼小児に認められ、口蓋裂合併例や耳管機能不全症例に認めやすく、中耳の状態による影響も示唆されています。
進行性難聴: STL2(COL11A1)とSTL3(COL11A2)の難聴有病率は69%から83%と推定され、低周波および中周波で軽度から中等度、高周波で中等度から重度の難聴を呈します。蓋膜の異常による進行性難聴です。
中耳炎: 中耳炎などの感染症が多く、聴覚障害の進行がみられます。
顔面の特徴
平坦な顔面中央部(頰骨低形成)
広く平坦な鼻梁
小下顎または下顎後退
突出した眼
小さい鼻
上向きの鼻孔
口腔の症状
口蓋裂: 通常の口蓋裂、粘膜下口蓋裂、口蓋垂裂など様々な形態があります。高口蓋を認めることもあります。
歯列の発達異常
呼吸および摂食の障害: 顎が小さい場合に舌の発達不良や動きの制限を伴うことが多いです。
Robin sequence: 小下顎に起因する舌の後方転位による口蓋形成異常や上気道閉塞を呈することがあります。
骨格系・関節の症状
関節の過伸展(超可動性): 罹患した小児および若年成人の関節は非常に柔軟である可能性があります。
早発性関節症・関節炎: 幼少期に現れ、人が年をとるにつれて悪化します。
脊椎骨端異形成: 軽度の脊椎骨端異形成を認めます。
脊柱側弯症: 成長期に背骨が曲がることがあります。
指の異常: 指が長く節が太いことがあります。
軽度の低身長: 一部のタイプで認められます(STL1の一部やSTL3)。マルファン様体型を呈することもあります。
その他の症状
僧帽弁逸脱症: 心臓の僧帽弁逸脱の発生率が増加すると考えられていますが、すべての罹患者はルーチンの内科的診査を通じてスクリーニングを受けるべきです。
学習の困難: 知能の不足によるものではなく、聴覚および視覚障害のために発生する可能性があります。
タイプ別の特徴
原因遺伝子によって、特徴的な症状パターンが認められます:
スティックラー症候群1型(STL1・COL2A1遺伝子変異): スティックラー症候群の75%を占めます。特徴は平坦な顔面中央部、口蓋裂、網膜剥離を伴う高度近視、難聴(52%)、脊椎骨端異形成に伴う関節症、軽度の低身長や一部マルファン様体型です。膜状の硝子体異常を示します。
スティックラー症候群2型(STL2・COL11A1遺伝子変異): 約25%を占めます。顔面中央低形成、上向きの鼻孔、下顎低形成、感音難聴(69-83%)、関節痛、軽度近視を認め、低身長は伴いません。難聴がSTL1に比べ顕著です。
スティックラー症候群3型(STL3・COL11A2遺伝子変異): 顔面中央低形成が高度で低身長、大きな骨端を特徴とします。眼症状は認めません。難聴は69-83%に認められます。
スティックラー症候群4型、5型、6型(COL9A1、COL9A2、COL9A3遺伝子変異): これらのタイプも報告されており、難聴は低周波で軽度から中等度、高周波で重度の難聴を示し、蓋膜の異常による進行性難聴を呈します。
遺伝形式と原因遺伝子
スティックラー症候群は遺伝学的に多様性が高く、常染色体優性(顕性)遺伝または常染色体劣性(潜性)遺伝の形式をとります。現在までに6つの原因遺伝子(COL2A1、COL11A1、COL11A2、COL9A1、COL9A2、COL9A3)が同定されていますが、これら6つの座位に連鎖しないスティックラー症候群家系もいくつかみられることから、これら以外の遺伝子の病的バリアントも本症候群の原因として関与している可能性が考えられます。
常染色体優性(顕性)遺伝形式
最も頻度の高い遺伝形式です。COL2A1、COL11A1、COL11A2遺伝子の病的バリアントのヘテロ接合(片方の親から受け継いだ1つの遺伝子変異)によって発症します。
COL2A1遺伝子: II型コラーゲンのα1鎖をコードする遺伝子。スティックラー症候群1型の原因となり、全症例の75%を占めます。II型コラーゲンは、硝子体、軟骨、椎間板などの結合組織の主要な構成成分です。
COL11A1遺伝子: XI型コラーゲンのα1鎖をコードする遺伝子。スティックラー症候群2型の原因となります。XI型コラーゲンは軟骨や硝子体の構造に重要な役割を果たします。
COL11A2遺伝子: XI型コラーゲンのα2鎖をコードする遺伝子。スティックラー症候群3型の原因となります。このタイプは眼症状を伴わないことが特徴です。
常染色体劣性(潜性)遺伝形式
COL9A1、COL9A2、COL9A3遺伝子の両アレルに生じた病的バリアント(両親からそれぞれ受け継いだ2つの遺伝子変異)によって発症します。
COL9A1遺伝子: IX型コラーゲンのα1鎖をコードする遺伝子。スティックラー症候群4型の原因となります。
COL9A2遺伝子: IX型コラーゲンのα2鎖をコードする遺伝子。スティックラー症候群5型の原因となります。
COL9A3遺伝子: IX型コラーゲンのα3鎖をコードする遺伝子。スティックラー症候群6型の原因となります。
コラーゲンの役割
これらの遺伝子は、II型、IX型、XI型コラーゲンの産生に関与しています。コラーゲンは、結合組織(体の関節や臓器を支える組織)に構造と強度を提供する複雑な分子です。これらの遺伝子のいずれかの変異は、II型、IX型、またはXI型コラーゲンの産生、プロセッシング、またはアセンブリを破壊します。コラーゲン分子の欠陥またはコラーゲンの量の減少は、骨や他の結合組織の発達に影響を及ぼし、スティックラー症候群の特徴的な特徴につながります。
当検査パネルでは、これらの原因遺伝子6つすべて(COL11A1、COL11A2、COL2A1、COL9A1、COL9A2、COL9A3)を対象としています。これにより、スティックラー症候群の既知の遺伝的原因を包括的にスクリーニングすることが可能です。
ミネルバクリニックのスティックラー症候群遺伝子パネル検査の特徴
「スティックラー症候群 NGSパネル検査」とは、現在スティックラー症候群の原因として報告されている6つの遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。
従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。
何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、スティックラー症候群に関連する6遺伝子を一度に調べられる「スティックラー症候群 NGSパネル検査」を採用しています。
一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページ をご覧ください。
1.費用がリーズナブル
一般的な医療機関でスティックラー症候群の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。
当院では、スティックラー症候群に関係するとされる6つの遺伝子を一度に調べられる「スティックラー症候群 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)
2.結果が出るまでがはやい
一般的な医療機関で行えるスティックラー症候群の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。
当院で行う「スティックラー症候群 NGSパネル検査」の場合、6つの遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。
3.一気にまとめてできる
臨床症状からスティックラー症候群を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。
当院で行う「スティックラー症候群 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な6つの原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。
オプション
塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)
検査内容
「スティックラー症候群 NGSパネル検査」では、スティックラー症候群に関係するとされる6種類の遺伝子(COL11A1、COL11A2、COL2A1、COL9A1、COL9A2、COL9A3)をまとめて検査します。
「スティックラー症候群 NGSパネル検査」は、スティックラー症候群の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。
どんな人が受けたらいいの?
【スティックラー症候群の個人歴または家族歴のある方】に
「スティックラー症候群 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。
この検査は以下のような方に適しています:
・高度近視(-6ジオプター以上)がある方
・網膜剥離、網膜円孔、または格子状変性の既往がある方
・若年性白内障または緑内障がある方
・硝子体の異常を指摘された方
・感音難聴または進行性難聴がある方
・口蓋裂(通常の口蓋裂・粘膜下口蓋裂・口蓋垂裂)がある方
・特徴的な顔貌(頰骨低形成、広く平坦な鼻梁、小下顎または下顎後退)がある方
・関節の過伸展(超可動性)がある方
・若年性関節炎または早発性関節症がある方
・Robin sequenceと診断された方
・スティックラー症候群の家族歴がある方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方
このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。
検査で得られる患者さんの潜在的利益は?
遺伝子検査により原因が判明すると、スティックラー症候群の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切な眼科管理、聴覚管理、整形外科的治療、定期的なモニタリングを行うことができます。
遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・他の結合組織疾患や眼疾患との鑑別
・網膜剥離予防のための定期的な眼科検査の実施
・外傷性網膜剥離をきたす可能性のある活動(身体接触を伴うスポーツなど)の回避指導
・難聴の早期発見と補聴器等の適切な介入
・聴覚の追跡評価(5歳までは6ヵ月ごと、その後は年に1度)
・関節症状の適切な管理(理学療法、作業療法、必要に応じた整形外科的治療)
・僧帽弁逸脱症のスクリーニングと管理
・Robin sequenceに対する適切な呼吸・摂食管理
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供
患者さんで病原性変異が同定された場合、遺伝形式に応じて家族の発症リスクが異なります。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症するリスクは50%、常染色体劣性遺伝の場合は兄弟姉妹が発症するリスクは25%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。
対象遺伝子
詳しくはこちら
COL11A1, COL11A2, COL2A1, COL9A1, COL9A2, COL9A3 ( 6遺伝子 )
各遺伝子の詳細:
・COL2A1遺伝子:
II型コラーゲンのα1鎖をコードする遺伝子。スティックラー症候群1型(STL1)の原因となり、全症例の約75%を占めます。II型コラーゲンは、硝子体、軟骨、椎間板などの結合組織の主要な構成成分です。常染色体優性(顕性)遺伝形式をとり、特徴は平坦な顔面中央部、口蓋裂、網膜剥離を伴う高度近視、難聴(52%)、脊椎骨端異形成に伴う関節症、軽度の低身長や一部マルファン様体型です。膜状の硝子体異常を示します。
・COL11A1遺伝子:
XI型コラーゲンのα1鎖をコードする遺伝子。スティックラー症候群2型(STL2)の原因となり、約25%を占めます。XI型コラーゲンは軟骨や硝子体の構造に重要な役割を果たします。常染色体優性(顕性)遺伝形式をとり、特徴は顔面中央低形成、上向きの鼻孔、下顎低形成、感音難聴(69-83%)、関節痛、軽度近視です。低身長は伴いません。難聴がSTL1に比べ顕著で、低周波および中周波で軽度から中等度、高周波で中等度から重度の難聴を呈します。
・COL11A2遺伝子:
XI型コラーゲンのα2鎖をコードする遺伝子。スティックラー症候群3型(STL3)の原因となります。常染色体優性(顕性)遺伝形式をとり、特徴は顔面中央低形成が高度で低身長、大きな骨端です。このタイプは眼症状を伴わないことが特徴的です。難聴は69-83%に認められ、低周波および中周波で軽度から中等度、高周波で中等度から重度の難聴を呈します。
・COL9A1遺伝子:
IX型コラーゲンのα1鎖をコードする遺伝子。スティックラー症候群4型(STL4)の原因となります。常染色体劣性(潜性)遺伝形式をとり、両親からそれぞれ受け継いだ2つの遺伝子変異によって発症します。IX型コラーゲンは軟骨の構造維持に重要です。難聴は低周波で軽度から中等度、高周波で重度の難聴を示し、蓋膜の異常による進行性難聴を呈します。
・COL9A2遺伝子:
IX型コラーゲンのα2鎖をコードする遺伝子。スティックラー症候群5型(STL5)の原因となります。常染色体劣性(潜性)遺伝形式をとります。難聴は低周波で軽度から中等度、高周波で重度の難聴を示し、蓋膜の異常による進行性難聴を呈します。
・COL9A3遺伝子:
IX型コラーゲンのα3鎖をコードする遺伝子。スティックラー症候群6型(STL6)の原因となります。常染色体劣性(潜性)遺伝形式をとります。難聴は低周波で軽度から中等度、高周波で重度の難聴を示し、蓋膜の異常による進行性難聴を呈します。
カバレッジ
カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。
≥99% at 20x(読み取り深度20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。
検体
血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)
※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能 です。
ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。
検査の限界
詳しくはこちら
すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。
低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。
この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。
※この検査パネルでは、既知の6つの原因遺伝子のみを対象としています。これら6つの座位に連鎖しないスティックラー症候群家系もいくつかみられることから、これら以外の遺伝子の病的バリアントも本症候群の原因として関与している可能性があります。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。
結果が出るまでの期間
2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。
料金
税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)
よくあるご質問
どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
高度近視(-6ジオプター以上)、網膜剥離の既往、若年性白内障や緑内障、感音難聴、口蓋裂、特徴的な顔貌(頰骨低形成、広く平坦な鼻梁、小下顎)、関節の過伸展、若年性関節炎などの症状がある方におすすめします。また、Robin sequenceと診断された方や、家族にスティックラー症候群の診断を受けた方がいる場合も検査をご検討ください。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
スティックラー症候群のタイプによって症状は異なりますか?
はい、原因遺伝子によって症状パターンが異なります。1型(COL2A1)は高度近視と網膜剥離が特徴的で、2型(COL11A1)と3型(COL11A2)は難聴がより顕著です。3型は眼症状を伴いません。4型、5型、6型(COL9A遺伝子)は常染色体劣性遺伝形式をとります。当検査により原因遺伝子を特定することで、より正確な予後予測と管理が可能になります。
家族も検査を受ける必要がありますか?
遺伝形式によって家族の発症リスクが異なります。常染色体優性遺伝の場合(1型、2型、3型)、患者さんのお子さんが発症するリスクは50%です。常染色体劣性遺伝の場合(4型、5型、6型)、兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
現在知られている6つの原因遺伝子以外にも、未同定の遺伝子が関与している可能性があります。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。臨床症状に基づいた診断と管理が引き続き重要です。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
遺伝形式によって子どもへの影響が異なります。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症する確率は50%、常染色体劣性遺伝の場合は保因者同士のカップルで子どもが発症する確率は25%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
スティックラー症候群の治療はどのように行われますか?
現在のところ根本的な治療法はありませんが、症状に応じた対症療法が行われます。定期的な眼科検査による網膜剥離の早期発見と治療、難聴に対する補聴器等の適応、関節症状に対する理学療法や作業療法、必要に応じた整形外科的治療などが行われます。外傷性網膜剥離を防ぐため、身体接触を伴うスポーツは避けることが推奨されます。
予後はどうですか?
適切な管理により、多くの患者さんは良好な生活の質を維持できます。最も重要なのは網膜剥離の予防と早期発見で、定期的な眼科検査が必須です。難聴は進行性のことがあるため、聴覚の追跡評価(5歳までは6ヵ月ごと、その後は年に1度)が推奨されます。関節症状は年齢とともに進行することがありますが、適切なリハビリテーションにより対応可能です。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では臨床的に重要な6つの原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。
プロフィール
この記事の筆者:仲田洋美(医師)
ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得 して以来、のべ10万人以上 のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。
仲田洋美のプロフィールはこちら