中隔視神経形成異常症(ドモルシア症候群)NGS遺伝子検査|ミネルバクリニック
中隔視神経形成異常症(ドモルシア症候群)とは
中隔視神経形成異常症(Septo-optic Dysplasia: SOD)は、ドモルシア症候群(De Morsier syndrome)とも呼ばれる、脳の早期発育段階における先天性の発達異常です。視神経低形成、脳の正中構造の異常、下垂体機能低下症の3つの特徴的な症状を呈する疾患として定義されます。
この疾患は指定難病134として認定されており、症状の組み合わせや重症度は患者さんによって大きく異なります。3つの主要症状すべてを呈する典型例は約30%のみで、多くの患者さんは2つ以上の症状の組み合わせで診断されます。
中隔視神経形成異常症は、胎生期の脳の正中部の発育過程に問題が生じることで発症します。有病率は出生10,000人あたり約1人と推定されており、比較的稀な疾患です。発症には遺伝的要因と環境要因の両方が関与すると考えられていますが、多くは孤発例(家族歴のない単発症例)として発症します。
症状と病態
中隔視神経形成異常症は、視神経、脳の正中構造、下垂体の3つの領域に異常が生じることで、多様な症状を引き起こします。これらの症状は出生時から存在しますが、一部の症状は生後数ヶ月から数年経過してから明らかになることもあります。
主要な3徴候
- 視神経低形成:視神経が正常より小さく発育不全の状態。片側または両側に発症し、75~80%の症例に認められます。視力障害の程度は軽度から重度まで様々で、眼振(不随意な眼球運動)を伴うことが多いです
- 脳正中構造の異常:透明中隔欠損が28~60%の症例に認められます。透明中隔は左右の脳室を分ける膜状の構造で、この欠損に加えて脳梁の形成不全や視交叉の低形成などが見られることもあります
- 下垂体機能低下症:44~81%の症例に認められ、視床下部性の機能低下と考えられています。成長ホルモン分泌不全による低身長が最も多く、甲状腺刺激ホルモン、副腎皮質刺激ホルモンの分泌不全も認められます
視覚に関する症状
視神経低形成による視力障害は、中隔視神経形成異常症で最も早期に気づかれる症状の一つです。
- 視力低下(軽度から失明まで様々)
- 眼振(眼球が不随意に揺れ動く)
- 斜視(目の位置のずれ)
- 視野障害
- 色覚異常
- まぶしさへの過敏性
内分泌(ホルモン)に関する症状
下垂体機能低下症により、複数のホルモン分泌が障害されることがあります。
- 成長ホルモン分泌不全:低身長、成長速度の遅延
- 甲状腺刺激ホルモン分泌不全:倦怠感、寒がり、便秘、成長・発達の遅れ
- 副腎皮質刺激ホルモン分泌不全:低血糖、低血圧、易疲労感。発熱時に突然死のリスクがあるため特に注意が必要
- 性腺刺激ホルモン分泌不全:思春期の遅延、性器の発育不全
- 抗利尿ホルモン分泌不全:尿崩症による多飲多尿
神経発達に関する症状
脳の正中構造の異常により、様々な神経学的症状が認められることがあります。
- 精神発達遅滞(知能は正常から重度低下まで様々)
- てんかん発作
- 脳性麻痺
- 発達の遅れ(運動発達、言語発達)
- 自閉スペクトラム症
- 学習障害
- 睡眠障害
その他の合併症状
- 新生児期の低血糖
- 新生児黄疸の遷延
- 体温調節障害
- 嗅覚障害
- 感音性難聴
- 心奇形
- 口唇口蓋裂などの顔面奇形
進行と予後
中隔視神経形成異常症の予後は、症状の組み合わせと重症度によって大きく異なります。早期診断と適切なホルモン補充療法により、特に副腎皮質刺激ホルモン分泌不全による急性副腎不全などの生命を脅かす合併症を予防することが可能です。視覚障害や発達遅滞に対する早期からの療育・リハビリテーションも、患者さんの生活の質向上に重要です。
遺伝形式と原因遺伝子
中隔視神経形成異常症の大部分(約90%以上)は孤発例で、家族歴を伴わない散発性の発症です。しかし、一部の症例では遺伝子変異が同定されており、遺伝的要因が発症に関与することが明らかになっています。
同定されている原因遺伝子
現在までに、以下の遺伝子が中隔視神経形成異常症の原因として報告されています:
- HESX1遺伝子:最初に同定された原因遺伝子で、ホメオボックス転写因子をコードします。常染色体劣性遺伝形式が多いですが、優性遺伝の報告もあります。HESX1変異による中隔視神経形成異常症は、重度の下垂体機能低下症を伴うことが特徴です
- SOX2遺伝子:転写因子をコードする遺伝子で、常染色体優性遺伝形式をとります。SOX2変異は、視神経低形成に加えて小眼球症や無眼球症を伴うことがあり、性腺発育不全や難聴も合併することがあります
- SOX3遺伝子:X連鎖遺伝形式をとる遺伝子で、下垂体発育に重要な役割を果たします。SOX3遺伝子領域の重複や三塩基リピート伸長が原因となることがあります
- OTX2遺伝子:眼と脳の発育に関与する転写因子をコードします。常染色体優性遺伝形式で、視神経低形成、下垂体機能低下症に加えて、小眼球症や網膜異常を伴うことがあります
- PAX6遺伝子:眼の発育に重要な転写因子をコードします。常染色体優性遺伝形式で、無虹彩症、視神経低形成、脳の異常などを引き起こします
その他、PROKR2、PROP1、TAX1BP3遺伝子も中隔視神経形成異常症または関連症状の原因として報告されています。
遺伝学的検査の診断率
遺伝学的検査により原因遺伝子変異が同定されるのは、中隔視神経形成異常症症例全体の約1%未満です。多くの症例では既知の遺伝子に変異が見つからず、未同定の遺伝的要因や環境要因の関与が示唆されています。
環境要因
遺伝的要因に加えて、以下の環境要因が中隔視神経形成異常症の発症リスクを高めることが報告されています:
- 若年妊娠(特に初産婦)
- 妊娠中の母体の薬物使用(抗けいれん薬、抗うつ薬など)
- 妊娠中の母体のアルコール摂取
- 妊娠中の母体のウイルス感染
- 妊娠中の胎児への血流障害
当検査パネルでは、中隔視神経形成異常症に関連する主要な8遺伝子を対象としています。遺伝子変異が同定された場合、より正確な診断、予後予測、家族へのリスク評価、将来の家族計画に有用な情報を提供することができます。
ミネルバクリニックの中隔視神経形成異常症(ドモルシア症候群)遺伝子パネル検査の特徴
「中隔視神経形成異常症(ドモルシア症候群)NGSパネル検査」とは、現在中隔視神経形成異常症の原因として報告されている8の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。
従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。
何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、中隔視神経形成異常症に関連する8遺伝子を一度に調べられる「中隔視神経形成異常症(ドモルシア症候群)NGSパネル検査」を採用しています。
一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。
1.費用がリーズナブル
一般的な医療機関で中隔視神経形成異常症の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。
当院では、中隔視神経形成異常症に関係するとされる8の遺伝子を一度に調べられる「中隔視神経形成異常症(ドモルシア症候群)NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)
2.結果が出るまでがはやい
一般的な医療機関で行える中隔視神経形成異常症の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。
当院で行う「中隔視神経形成異常症(ドモルシア症候群)NGSパネル検査」の場合、8の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。
3.一気にまとめてできる
臨床症状から中隔視神経形成異常症を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。
当院で行う「中隔視神経形成異常症(ドモルシア症候群)NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な8の原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。
オプション
塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・重複 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)
検査内容
「中隔視神経形成異常症(ドモルシア症候群)NGSパネル検査」では、中隔視神経形成異常症に関係するとされる8種類の遺伝子(HESX1、OTX2、PAX6、PROKR2、PROP1、SOX2、SOX3、TAX1BP3)をまとめて検査します。
「中隔視神経形成異常症(ドモルシア症候群)NGSパネル検査」は、中隔視神経形成異常症の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。
どんな人が受けたらいいの?
【中隔視神経形成異常症の個人歴または家族歴のある方】に
「中隔視神経形成異常症(ドモルシア症候群)NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。
この検査は以下のような方に適しています:
・視神経低形成と診断された方
・視力障害や眼振がある方
・透明中隔欠損やその他の脳正中構造異常が認められる方
・下垂体機能低下症(成長ホルモン、甲状腺ホルモン、副腎皮質ホルモン分泌不全など)がある方
・低身長や成長障害がある方
・新生児期の低血糖や黄疸の遷延があった方
・精神発達遅滞やてんかんを伴う方
・小眼球症や無眼球症がある方
・中隔視神経形成異常症と診断された方のご家族
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方
このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。
検査で得られる患者さんの潜在的利益は?
遺伝子検査により原因が判明すると、中隔視神経形成異常症の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切なホルモン補充療法、視覚支援、療育・リハビリテーション、定期的なモニタリングを行うことができます。
遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・他の類似疾患との鑑別
・適切なホルモン補充療法の早期開始
・副腎不全などの生命を脅かす合併症の予防
・視覚障害に対する早期介入と支援
・適切な療育・リハビリテーションプログラムの立案
・てんかんや発達障害の早期発見と治療
・疾患の進行予測と長期的な管理計画の立案
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供
患者さんで病原性変異が同定された場合、遺伝形式に応じて家族の発症リスクが異なります。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症するリスクは50%、常染色体劣性遺伝の場合は兄弟姉妹が発症するリスクは25%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。
対象遺伝子
- 詳しくはこちら
-
HESX1, OTX2, PAX6, PROKR2, PROP1, SOX2, SOX3, TAX1BP3 ( 8遺伝子 )
各遺伝子の詳細:
・HESX1遺伝子:
ホメオボックス転写因子をコードする遺伝子。最初に同定された中隔視神経形成異常症の原因遺伝子です。常染色体劣性遺伝が多いですが、優性遺伝の報告もあります。HESX1変異は重度の下垂体機能低下症(汎下垂体機能低下症)を伴うことが特徴です。視神経低形成、透明中隔欠損、下垂体低形成の典型的な三徴候を呈します。
・OTX2遺伝子:
眼と脳の発育に関与する転写因子をコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式をとります。視神経低形成、下垂体機能低下症に加えて、小眼球症、網膜異常、脳構造異常を伴うことがあります。OTX2変異は、中隔視神経形成異常症の中でも比較的重症な表現型を示すことが多いです。
・PAX6遺伝子:
眼の発育に重要な転写因子をコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式をとります。無虹彩症の主要原因遺伝子として知られていますが、視神経低形成、透明中隔欠損、下垂体機能低下症を伴う中隔視神経形成異常症の原因ともなります。PAX6変異による症例では、角膜混濁、白内障、緑内障などの眼合併症を伴うことがあります。
・PROKR2遺伝子:
プロキネティシン受容体2をコードする遺伝子。常染色体優性または劣性遺伝形式をとります。主に視床下部-下垂体系の発育に関与し、カルマン症候群(低ゴナドトロピン性性腺機能低下症と嗅覚障害を伴う疾患)の原因遺伝子としても知られています。PROKR2変異による中隔視神経形成異常症では、嗅覚障害を伴うことがあります。
・PROP1遺伝子:
下垂体特異的転写因子をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式をとります。主に下垂体機能低下症の原因遺伝子として知られ、成長ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、プロラクチン、副腎皮質刺激ホルモン、性腺刺激ホルモンの複合的な欠損を引き起こします。一部の症例で視神経低形成や脳構造異常を伴うことがあります。
・SOX2遺伝子:
転写因子をコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式をとります。視神経低形成に加えて、小眼球症や無眼球症を伴うことが特徴的です。また、性腺発育不全(低ゴナドトロピン性性腺機能低下症)、感音性難聴、食道閉鎖などを合併することがあります。SOX2変異は、中隔視神経形成異常症関連遺伝子の中で比較的頻度が高い原因の一つです。
・SOX3遺伝子:
転写因子をコードする遺伝子。X連鎖遺伝形式をとります。下垂体発育に重要な役割を果たし、SOX3遺伝子領域の重複や三塩基リピート伸長が原因となることがあります。主に下垂体機能低下症を引き起こし、知的障害を伴うことがあります。視神経低形成や透明中隔欠損を伴う典型的な中隔視神経形成異常症の症例も報告されています。
・TAX1BP3遺伝子:
タックス1結合タンパク質3をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式をとります。細胞分裂や細胞内シグナル伝達に関与します。TAX1BP3変異は、視神経低形成と脳構造異常を伴う中隔視神経形成異常症の原因として近年報告されています。
遺伝子特有の注意事項
SOX3遺伝子について:
現在の検査方法では、SOX3遺伝子の三塩基リピート伸長は評価できません。SOX3遺伝子の塩基配列変異や欠失・重複は検出可能ですが、リピート伸長が疑われる場合は、別途専門的な検査が必要となります。
カバレッジ
カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。
≥99% at 20x(読み取り深度20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。
検体
血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)
※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。
検査の限界
- 詳しくはこちら
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すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。
低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。
この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:SOX3遺伝子の三塩基リピート伸長)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。
※この検査パネルでは、8の原因遺伝子のみを対象としています。約99%の中隔視神経形成異常症症例では、既知の遺伝子に変異が見つかりません。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。中隔視神経形成異常症の診断は主に臨床症状とMRI所見に基づいて行われます。
結果が出るまでの期間
2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。
料金
税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)
よくあるご質問
- どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
- 視神経低形成と診断された方、視力障害や眼振がある方、透明中隔欠損などの脳構造異常が認められる方、下垂体機能低下症(成長ホルモン、甲状腺ホルモン、副腎皮質ホルモン分泌不全など)がある方におすすめします。また、新生児期の低血糖や黄疸の遷延、精神発達遅滞やてんかんを伴う方、家族に同様の症状がある場合も検査をご検討ください。
- 検査はどのように行いますか?
- 血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
- 中隔視神経形成異常症の治療はどのように行われますか?
- 根本的な治療法は現在のところ存在しておらず、症状に応じた支持療法が中心となります。下垂体機能低下症に対してはホルモン補充療法(成長ホルモン、甲状腺ホルモン、副腎皮質ホルモンなど)が行われます。視覚障害や発達遅滞に対しては早期からの療育・リハビリテーションが重要です。てんかんがある場合は抗てんかん薬が使用されます。複数の専門家(小児眼科、小児内分泌科、小児神経科など)による包括的な医療が必要です。
- 家族も検査を受ける必要がありますか?
- 中隔視神経形成異常症の大部分は孤発例(家族歴のない散発性発症)ですが、遺伝子変異が同定された場合は遺伝形式によって家族の発症リスクが異なります。常染色体優性遺伝の場合、患者さんのお子さんが発症するリスクは50%です。常染色体劣性遺伝の場合、兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。X連鎖遺伝の場合は、男児が発症するリスクや女児が保因者となるリスクがあります。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
- 検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
- 約99%の中隔視神経形成異常症症例では、既知の遺伝子に変異が見つかりません。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。中隔視神経形成異常症の診断は主に臨床症状(視神経低形成、透明中隔欠損、下垂体機能低下症)とMRI所見に基づいて行われます。遺伝子検査は診断の補助であり、臨床診断と適切な管理が引き続き重要です。
- 保険は適用されますか?
- 当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
- 結果はどのように説明されますか?
- 検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
- 子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
- 遺伝形式によって子どもへの影響が異なります。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症する確率は50%、常染色体劣性遺伝の場合は保因者同士のカップルで子どもが発症する確率は25%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
- 予後はどうですか?
- 予後は症状の組み合わせと重症度によって大きく異なります。早期診断と適切なホルモン補充療法により、副腎不全などの生命を脅かす合併症を予防できます。視覚障害の程度は様々で、一部の患者さんは正常に近い視力を維持できますが、重度の視力障害を呈する方もいます。知能は正常から重度低下まで幅広く、早期からの療育・リハビリテーションにより発達を促すことが重要です。多くの患者さんは適切な管理により、学校生活や社会生活を送ることが可能です。
- 他の医療機関での検査との違いは何ですか?
- 当院では臨床的に重要な8の原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。
- 副腎不全のリスクについて教えてください
- 中隔視神経形成異常症で副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)分泌不全がある場合、発熱や感染症、外傷などのストレス時に急性副腎不全を起こすリスクがあります。急性副腎不全は生命を脅かす緊急事態であり、低血糖、低血圧、意識障害を引き起こします。ACTH分泌不全が診断された場合は、ストレス時のステロイドホルモン増量や緊急時のヒドロコルチゾン注射について医師から指導を受ける必要があります。適切なホルモン補充療法により、このリスクは大幅に軽減できます。
プロフィール
この記事の筆者:仲田洋美(医師)
ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。
仲田洋美のプロフィールはこちら