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網膜症・視神経萎縮遺伝子パネル検査|ミネルバクリニック

網膜症・視神経萎縮遺伝子パネル検査|ミネルバクリニック

遺伝性網膜症・視神経萎縮症とは

遺伝性網膜症および視神経萎縮症は、眼の網膜や視神経に異常が生じる遺伝性の疾患群です。これらの疾患は、視力低下、視野狭窄、夜盲、色覚異常など、さまざまな視覚障害を引き起こします。原因となる遺伝子は多岐にわたり、現在までに278以上の遺伝子が同定されています。

網膜は眼球の内側にあり、カメラでいえばフィルムに相当する組織です。光を感じる視細胞(杆体細胞と錐体細胞)や、視細胞を支える網膜色素上皮細胞などで構成されています。視神経は、網膜で受け取った視覚情報を脳に伝える神経線維の束です。これらの組織に遺伝的な異常が生じると、進行性の視機能障害が起こります。

遺伝性網膜症・視神経萎縮症は、臨床症状、発症年齢、進行速度、遺伝形式などが非常に多様です。最も頻度の高い網膜色素変性症は約4,000~8,000人に1人の割合で発症し、わが国には約4万人の患者さんがいると推定されています。レーベル遺伝性視神経症は10万人に2~3人程度の頻度で発症します。これらの疾患の多くは厚生労働省の指定難病に指定されており、医療費助成の対象となっています。

主な疾患と症状

網膜色素変性症

網膜色素変性症は、視細胞および網膜色素上皮が原発性・進行性に障害される遺伝性疾患で、遺伝性網膜疾患の中で最も頻度が高い疾患です。

主要症状

  • 夜盲(暗いところでものが見えにくい)
  • 視野狭窄(視野が徐々に狭くなる)
  • 視力低下
  • 色覚異常
  • 羞明(まぶしく感じる)

多くの場合、杆体細胞から障害が始まるため、最初に夜盲の症状が現れます。進行すると周辺の視野が狭くなり、さらに進行すると錐体細胞も障害され、視力低下が起こります。ただし、症状の順番や進行速度には個人差が大きく、最初に視力低下から始まる方もいます。

レーベル遺伝性視神経症

レーベル遺伝性視神経症は、ミトコンドリアDNAの変異によって起こる母系遺伝性の視神経変性疾患です。主に若年男性に好発し、急性から亜急性の視力低下を特徴とします。

主要症状

  • 急性~亜急性の両眼性視力低下
  • 中心暗点(視野の中心が見えにくい)
  • 色覚異常(特に赤緑色覚異常)
  • 無痛性の視力障害

典型的には15~35歳の若年男性に発症し、片眼の視力低下で始まり、数週間から数ヶ月後に反対眼も発症します。数ヶ月のうちに両眼の高度視神経萎縮に至り、矯正視力0.1以下となることが多いです。発症のきっかけとして、過度の飲酒・喫煙、頭部外傷、糖尿病、ストレスなどが関与することがあります。

その他の遺伝性網膜疾患

  • 錐体杆体ジストロフィ:錐体細胞が主に障害される疾患で、視力低下と色覚異常が初期から出現します
  • 黄斑ジストロフィ:網膜の中心部(黄斑)が障害される疾患群で、中心視力の低下が特徴です
  • 先天夜盲:生まれつき夜盲があり、進行しないタイプと進行するタイプがあります
  • バルデー・ビードル症候群:網膜色素変性症に多指症、肥満、腎臓の異常などを伴う症候群です
  • アッシャー症候群:網膜色素変性症に難聴を伴う症候群です
  • 優性遺伝性視神経萎縮:常染色体優性遺伝形式で、小児期から緩徐に進行する視神経萎縮です

症状の進行と予後

多くの遺伝性網膜症は進行性ですが、進行速度には個人差が大きく、数年から数十年かけてゆっくりと進行します。網膜色素変性症では、長い経過の後に矯正視力0.1以下になる方は多いですが、完全に失明する(光がわからなくなる)方はむしろ少ないとされています。レーベル遺伝性視神経症では、一部の患者さんで自然回復がみられることもありますが、多くは視力障害が残ります。

遺伝形式と原因遺伝子

遺伝性網膜症・視神経萎縮症は遺伝学的に非常に多様性が高く、常染色体優性(顕性)遺伝、常染色体劣性(潜性)遺伝、X連鎖遺伝、ミトコンドリア遺伝のいずれの形式でも発症します。現在までに278以上の原因遺伝子が同定されていますが、家系内で唯一の発症者である孤発例も多くみられます。

網膜色素変性症の遺伝形式

網膜色素変性症の遺伝形式は多様で、以下のような主要な原因遺伝子が知られています:

常染色体劣性(潜性)遺伝形式

日本人患者の約50%を占め、最も頻度の高い遺伝形式です:

  • EYS遺伝子:日本人患者で最も頻度が高い原因遺伝子です
  • PDE6A、PDE6B遺伝子:杆体cGMP-フォスフォジエステラーゼをコードします
  • CNGA1、CNGB1遺伝子:杆体サイクリックヌクレオチド感受性陽イオンチャネルをコードします
  • GUCY2D遺伝子:網膜グアニルシクラーゼをコードします
  • RPE65遺伝子:網膜色素上皮特異的65kDaタンパク質をコードし、遺伝子治療の対象となっています
  • RLBP1遺伝子:細胞性レチニルアルデヒド結合蛋白質をコードします
  • SAG遺伝子:アレスチンをコードします
  • USH2A遺伝子:アッシャリンをコードし、アッシャー症候群2型の原因遺伝子でもあります

常染色体優性(顕性)遺伝形式

約30%を占めます:

  • RHO遺伝子:ロドプシンをコードし、欧米では最も頻度が高い原因遺伝子です
  • PRPH2(RDS)遺伝子:ペリフェリンをコードします
  • RP1遺伝子:光受容体特異的タンパク質をコードします
  • IMPDH1遺伝子:イノシン一リン酸脱水素酵素1をコードします

X連鎖遺伝形式

約10~15%を占め、男性に発症し、女性は保因者となります:

  • RPGR遺伝子:網膜色素変性症GTPase調節因子をコードし、X連鎖型の約70%を占めます
  • RP2遺伝子:X連鎖型の約20%を占めます

レーベル遺伝性視神経症の遺伝形式

ミトコンドリアDNA変異による母系遺伝で、以下の3つの主要変異が全体の90~95%を占めます:

  • 11778変異:最も頻度が高く、予後が比較的不良です
  • 14484変異:予後が比較的良好で、自然回復率が高いです
  • 3460変異:中間的な予後を示します

母系遺伝のため、罹患男性の子孫には患者は現れず、変異をもつ女性保因者の子孫全員が変異を受け継ぎます。ただし、男性の発症率は女性の約9倍と、男性に圧倒的に多いという不完全浸透の特徴があります。

優性遺伝性視神経萎縮

常染色体優性遺伝形式で、以下の遺伝子が主な原因です:

  • OPA1遺伝子:最も頻度が高く、ミトコンドリアのダイナミクスに関与します
  • OPA3遺伝子:ミトコンドリア機能に関与します

当検査パネルでは、これらの原因遺伝子を含む278遺伝子を対象としています。これにより、遺伝性網膜症・視神経萎縮症の主要な原因を包括的にスクリーニングすることが可能です。

ミネルバクリニックの網膜症・視神経萎縮遺伝子パネル検査の特徴

「網膜症・視神経萎縮 NGSパネル検査」とは、現在遺伝性網膜症・視神経萎縮症の原因として報告されている278の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。

従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。

何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、遺伝性網膜症・視神経萎縮症に関連する278遺伝子を一度に調べられる「網膜症・視神経萎縮 NGSパネル検査」を採用しています。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.費用がリーズナブル

一般的な医療機関で遺伝性網膜症・視神経萎縮症の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。

当院では、遺伝性網膜症・視神経萎縮症に関係するとされる278の遺伝子を一度に調べられる「網膜症・視神経萎縮 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)

2.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行える遺伝性網膜症・視神経萎縮症の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。

当院で行う「網膜症・視神経萎縮 NGSパネル検査」の場合、278の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。

3.一気にまとめてできる

臨床症状から遺伝性網膜症・視神経萎縮症を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。

当院で行う「網膜症・視神経萎縮 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な278の原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。

オプション

塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)

検査内容

「網膜症・視神経萎縮 NGSパネル検査」では、遺伝性網膜症・視神経萎縮症に関係するとされる278種類の遺伝子をまとめて検査します。対象遺伝子には、網膜色素変性症の主要原因遺伝子(EYS、RHO、RPGR、RP2、PDE6A、PDE6B、GUCY2D、RPE65など)、レーベル遺伝性視神経症の診断に重要なミトコンドリア遺伝子関連検査、優性遺伝性視神経萎縮の原因遺伝子(OPA1、OPA3など)が含まれます。

「網膜症・視神経萎縮 NGSパネル検査」は、遺伝性網膜症・視神経萎縮症の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。

どんな人が受けたらいいの?

【遺伝性網膜症・視神経萎縮症の個人歴または家族歴のある方】に
「網膜症・視神経萎縮 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。

この検査は以下のような方に適しています:
・夜盲(暗いところでものが見えにくい)がある方
・視野狭窄(視野が徐々に狭くなる)がある方
・進行性の視力低下がある方
・色覚異常がある方
・羞明(まぶしく感じる)がある方
・若年で急性または亜急性の視力低下が起こった方
・中心暗点(視野の中心が見えにくい)がある方
・眼底検査で網膜色素沈着や視神経萎縮が認められる方
・網膜電図(ERG)で異常が認められる方
・網膜色素変性症、レーベル遺伝性視神経症、または他の遺伝性眼疾患の家族歴がある方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方
・難聴や多指症など、他の症状を伴う視覚障害がある方

このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

遺伝子検査により原因が判明すると、遺伝性網膜症・視神経萎縮症の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切なロービジョンケア、生活習慣の改善、定期的なモニタリングを行うことができます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・他の眼疾患(加齢黄斑変性、緑内障など)との鑑別
・疾患の進行予測と長期的な管理計画の立案
・RPE65遺伝子変異が確認された場合、遺伝子治療の適応判断
・ロービジョンケア(拡大読書器、遮光眼鏡など)の適切な導入
・白内障、緑内障などの合併症の早期発見と治療
・身体障害者手帳や特定疾患医療費助成制度の申請サポート
・追加の関連症状のリスクの特定(レーベル遺伝性視神経症における心伝導障害など)
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供

患者さんで病原性変異が同定された場合、遺伝形式に応じて家族の発症リスクが異なります。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症するリスクは50%、常染色体劣性遺伝の場合は兄弟姉妹が発症するリスクは25%です。レーベル遺伝性視神経症の場合、変異をもつ女性の子ども全員が変異を受け継ぎますが、発症するのは主に男性です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。

対象遺伝子

詳しくはこちら

ABCA4, ABCC6, ABHD12, ACBD5, ACO2, ADAM9, ADAMTS18, ADGRV1, AFG3L2, AGBL5, AHR, AIPL1, ALMS1, ALPK1, AMACR, ARHGEF18, ARL2BP, ARL3, ARL6, ATF6, ATOH7, BBIP1, BBS1, BBS10, BBS12, BBS2, BBS4, BBS5, BBS7, BBS9, BCOR, BEST1, BTK, C12orf65, C1QTNF5, C21orf2, C2orf71, C8orf37, CA2, CA4, CABP4, CACNA1F, CACNA2D4, CAPN5, CDH23, CDH3, CDHR1, CEP250, CEP290, CERKL, CFH, CHM, CIB2, CISD2, CLCC1, CLN3, CLN5, CLN6, CLN8, CLRN1, CNGA1, CNGA3, CNGB1, CNGB3, CNNM4, COL11A1, COL18A1, COL2A1, COL9A1, COL9A2, CRB1, CRX, CTC1, CTNNA1, CTNNB1, CTSD, CTSF, CWC27, CYP1B1, CYP4V2, DGKQ, DHDDS, DHX38, DNAJC30, DNAJC5, DNM1L, DRAM2, DTHD1, EFEMP1, ELOVL4, EMC1, EXOSC2, EYS, FAM161A, FDX2, FDXR, FLVCR1, FOXC1, FSCN2, FZD4, GDF6, GNAT1, GNAT2, GNB3, GPR179, GRK1, GRM6, GRN, GUCA1A, GUCA1B, GUCY2D, HARS, HCN1, HGSNAT, HK1, HMCN1, HMX1, IDH3A, IDH3B, IFT140, IFT172, IFT27, IFT43, IFT81, IMPDH1, IMPG1, IMPG2, INPP5E, IQCB1, ISPD, ITM2B, KCNJ13, KCNV2, KCTD7, KIAA1549, KIF11, KIZ, KLC2, KLHL7, LAMA1, LCA5, LRAT, LRIT3, LRP5, LZTFL1, MAK, MECR, MERTK, MFN2, MFRP, MFSD8, MKKS, MKS1, MMACHC, MYO7A, MYOC, NDP, NEK2, NEUROD1, NMNAT1, NPHP1, NPHP4, NR2E3, NR2F1, NRL, NYX, OAT, OFD1, OPA1, OPA3, OPTN, OR2W3, OTX2, P3H2, PANK2, PAX2, PAX6, PCDH15, PDE6A, PDE6B, PDE6C, PDE6G, PDE6H, PDSS1, PDZD7, PEX7, PGK1, PHYH, PITPNM3, PITX2, PLA2G5, PLK4, PNPLA6, POC1B, POMGNT1, PPT1, PRCD, PROM1, PRPF3, PRPF31, PRPF4, PRPF6, PRPF8, PRPH2, PRPS1, RAB28, RAX2, RB1, RBP3, RBP4, RCBTB1, RD3, RDH11, RDH12, RDH5, REEP6, RGR, RGS9, RGS9BP, RHO, RIMS1, RLBP1, ROM1, RP1, RP1L1, RP2, RP9, RPE65, RPGR, RPGRIP1, RS1, RTN4IP1, SAG, SCAPER, SDCCAG8, SEMA4A, SIX6, SLC24A1, SLC25A46, SLC4A7, SLC7A14, SNF8, SNRNP200, SOX2, SPATA7, SPP2, SSBP1, TCTN3, TEAD1, TIMM8A, TIMP3, TMEM126A, TMEM216, TOPORS, TPP1, TRIM32, TRNT1, TRPM1, TSPAN12, TTC21B, TTC8, TTLL5, TTPA, TUB, TUBGCP4, TUBGCP6, TULP1, UNC119, USH1C, USH1G, USH2A, VCAN, VSX2, WDPCP, WDR19, WHRN, ZNF408, ZNF513 ( 278 遺伝子 )

主要遺伝子の詳細:

網膜色素変性症関連遺伝子

・EYS遺伝子:
日本人患者で最も頻度が高い常染色体劣性遺伝の原因遺伝子。光受容体の構造維持に関与するタンパク質をコードします。

・RHO遺伝子:
ロドプシンをコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式で、欧米では最も頻度が高い原因遺伝子です。杆体細胞の光受容体タンパク質として機能します。

・RPGR遺伝子:
網膜色素変性症GTPase調節因子をコードする遺伝子。X連鎖遺伝形式で、X連鎖型網膜色素変性症の約70%を占めます。ORF15領域の変異が多いことが知られています。

・RP2遺伝子:
X連鎖型網膜色素変性症の約20%を占める遺伝子。小胞輸送に関与するタンパク質をコードします。

・PDE6A、PDE6B遺伝子:
杆体cGMP-フォスフォジエステラーゼのαサブユニットとβサブユニットをコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、視覚サイクルにおいて重要な役割を果たします。

・GUCY2D遺伝子:
網膜グアニルシクラーゼをコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝または優性遺伝形式で、レーベル先天黒内障の原因遺伝子でもあります。

・RPE65遺伝子:
網膜色素上皮特異的65kDaタンパク質をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、視覚サイクルに必須の酵素です。この遺伝子変異が確認された場合、遺伝子治療(ボレチゲン ネパルボベク)の適応となる可能性があります。

・PRPH2(RDS)遺伝子:
ペリフェリンをコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式で、光受容体外節の構造維持に関与します。

・USH2A遺伝子:
アッシャリンをコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、アッシャー症候群2型(網膜色素変性症+難聴)の原因遺伝子です。

視神経萎縮関連遺伝子

・OPA1遺伝子:
優性遺伝性視神経萎縮の最も頻度が高い原因遺伝子。ミトコンドリアのダイナミクス(融合と分裂)に関与するGTPaseをコードします。小児期から緩徐に進行する両眼性視力低下を特徴とします。

・OPA3遺伝子:
ミトコンドリア内膜タンパク質をコードする遺伝子。優性遺伝性視神経萎縮の原因となります。

その他の重要遺伝子

・ABCA4遺伝子:
ATP結合カセットトランスポーターA4をコードする遺伝子。スターガルト病(若年黄斑変性)の主要原因遺伝子であり、錐体杆体ジストロフィの原因にもなります。

・CEP290遺伝子:
レーベル先天黒内障の主要原因遺伝子の一つ。セントロソームタンパク質290をコードし、繊毛の機能に関与します。

・CHM遺伝子:
脈絡膜欠損症(choroideremia)の原因遺伝子。X連鎖遺伝形式で、進行性の脈絡膜・網膜色素上皮・光受容体の変性を引き起こします。

・RS1遺伝子:
X連鎖若年網膜分離症の原因遺伝子。レチノスキシンをコードし、網膜の層構造維持に関与します。

・BBS1~BBS12遺伝子:
バルデー・ビードル症候群の原因遺伝子群。網膜色素変性症に多指症、肥満、腎臓異常などを伴います。

・BEST1遺伝子:
ベスト病(卵黄様黄斑ジストロフィ)の原因遺伝子。ベストロフィン1をコードし、網膜色素上皮の塩化物イオンチャネルとして機能します。

※RPGRのORF15領域について:本検査はRPGR遺伝子の重要なORF15領域の大部分を検出可能ですが、この領域の複雑性により、一部の領域(chrX(GRCh37):38144792-38146498)では変異を完全に検出できない場合があります。

カバレッジ

カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。

≥99% at 20x(読み取り深度20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
 検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

検査の限界

詳しくはこちら

すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。

低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。

この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。

RPGR遺伝子に関する特記事項:本検査はRPGR遺伝子の重要な「ORF15」領域の大部分の病的変異を検出可能です(NM_001034853.1)。しかし、この領域の複雑性により、現在利用可能な検査技術では、この領域の一部(chrX(GRCh37):38144792-38146498)における変異を完全に検出できません。

※レーベル遺伝性視神経症のミトコンドリアDNA変異(11778、14484、3460など)の検出には、通常のNGSパネル検査とは別の専用検査が推奨される場合があります。ミトコンドリア遺伝子の詳細な検査をご希望の場合は、遺伝カウンセリング時にご相談ください。

※この検査パネルでは、278の原因遺伝子を対象としていますが、すべての遺伝性網膜症・視神経萎縮症の原因遺伝子を網羅しているわけではありません。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。

結果が出るまでの期間

2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。

料金

税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
夜盲(暗いところでものが見えにくい)、視野狭窄、進行性の視力低下、色覚異常、羞明(まぶしく感じる)などの症状がある方におすすめします。また、若年で急性または亜急性の視力低下が起こった方、眼底検査で網膜色素沈着や視神経萎縮が認められる方、網膜電図(ERG)で異常が認められる方も検査をご検討ください。家族に網膜色素変性症やレーベル遺伝性視神経症などの遺伝性眼疾患がある場合も重要な適応となります。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
網膜色素変性症とはどのような病気ですか?
網膜色素変性症は、視細胞および網膜色素上皮が進行性に障害される遺伝性疾患です。多くの場合、夜盲から始まり、徐々に視野が狭くなり、最終的に視力低下が起こります。約4,000~8,000人に1人の割合で発症し、日本には約4万人の患者さんがいると推定されています。進行速度には個人差が大きく、適切な管理により長期間にわたって視機能を維持できる方も多くいらっしゃいます。
レーベル遺伝性視神経症とはどのような病気ですか?
レーベル遺伝性視神経症は、ミトコンドリアDNAの変異によって起こる母系遺伝性の視神経変性疾患です。主に15~35歳の若年男性に好発し、急性から亜急性の両眼性視力低下を特徴とします。片眼の視力低下で始まり、数週間から数ヶ月後に反対眼も発症することが多く、数ヶ月のうちに高度の視神経萎縮に至ります。発症のきっかけとして、過度の飲酒・喫煙、頭部外傷、糖尿病、ストレスなどが関与することがあります。
家族も検査を受ける必要がありますか?
遺伝形式によって家族の発症リスクが異なります。常染色体優性遺伝の場合、患者さんのお子さんが発症するリスクは50%です。常染色体劣性遺伝の場合、兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。X連鎖遺伝の場合、男性患者の娘は全員保因者となり、息子には遺伝しません。レーベル遺伝性視神経症の場合、変異をもつ女性の子ども全員が変異を受け継ぎますが、発症するのは主に男性です。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
278の遺伝子を検査しますが、すべての遺伝性網膜症・視神経萎縮症の原因遺伝子を網羅しているわけではありません。また、未だ同定されていない新規の原因遺伝子も存在する可能性があります。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。臨床症状と眼科検査に基づいた診断と管理が引き続き重要です。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。ただし、一部の遺伝子(RPE65など)については、特定の条件下で保険診療での検査が可能な場合があります。詳しくは遺伝カウンセリング時にご相談ください。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢(遺伝子治療の適応、ロービジョンケア、身体障害者手帳や特定疾患医療費助成制度の申請など)について、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
遺伝形式によって子どもへの影響が異なります。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症する確率は50%、常染色体劣性遺伝の場合は保因者同士のカップルで子どもが発症する確率は25%です。レーベル遺伝性視神経症の場合、変異をもつ女性の子ども全員が変異を受け継ぎますが、男性からは子どもに遺伝しません。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
遺伝性網膜症・視神経萎縮症の治療はどのように行われますか?
多くの遺伝性網膜症・視神経萎縮症では根本的な治療法は確立されていませんが、RPE65遺伝子変異による網膜色素変性症に対しては遺伝子治療(ボレチゲン ネパルボベク)が承認されています。また、ビタミンA、ヘレニエン、循環改善薬などの内服、遮光眼鏡の使用、ロービジョンケア(拡大読書器など)、白内障・緑内障などの合併症治療が行われます。レーベル遺伝性視神経症に対しては、イデベノンなどのキノン誘導体が一部の患者さんに有効との報告があります。
予後はどうですか?
疾患や個人によって予後は大きく異なります。網膜色素変性症の場合、長い経過の後に矯正視力0.1以下になる方は多いですが、完全に失明する(光がわからなくなる)方はむしろ少なく、70歳で視力1.0を維持している方もいます。レーベル遺伝性視神経症の場合、多くは視力0.1以下となりますが、医学的失明(光覚なし)に至る割合は高くなく、一部の患者さんでは自然回復がみられることもあります。適切な管理とロービジョンケアにより、多くの患者さんが社会生活を維持できます。
身体障害者手帳や医療費助成は受けられますか?
視力や視野の障害の程度によっては、身体障害者手帳の認定対象となります。また、網膜色素変性症、レーベル遺伝性視神経症などは厚生労働省の指定難病に指定されており、一定の基準を満たせば特定疾患医療費助成制度の対象となります。当院では、必要に応じて身体障害者手帳や特定疾患医療費助成制度の申請サポートを行っています。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では臨床的に重要な278の原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。さらに、遺伝子治療の適応判断、ロービジョンケアの提案、身体障害者手帳や特定疾患医療費助成制度の申請サポートなど、包括的なケアを提供しています。


プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

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