尿細管性アシドーシス(RTA) NGS遺伝子パネル検査|ミネルバクリニック
尿細管性アシドーシスとは
尿細管性アシドーシス(Renal Tubular Acidosis: RTA)は、腎臓の尿細管機能の異常により、尿中への酸の排泄が障害され、血液が酸性に傾く(代謝性アシドーシス)疾患です。腎機能全体の低下によるものではなく、尿細管の特定の機能障害によって生じることが特徴です。
本疾患は、障害される尿細管の部位や機序によって、1型(遠位型)、2型(近位型)、4型(高カリウム血症型)に分類されます。3型は現在では1型の重症型と考えられています。多くの患者さんは乳幼児期に発症し、成長障害や発育不良を呈しますが、遺伝子変異によっては成人期に発症する場合もあります。
尿細管性アシドーシスには先天性(遺伝性)と後天性があります。先天性の場合は特定の遺伝子変異が原因となり、常染色体劣性遺伝または常染色体優性遺伝の形式をとります。後天性の場合は、シェーグレン症候群などの自己免疫疾患、薬剤の副作用、ファンコーニ症候群などが原因となります。
症状と病態
尿細管性アシドーシスの症状は、病型や発症年齢によって異なりますが、共通して血液の酸性化(アシドーシス)と電解質異常が認められます。アニオンギャップ正常の高クロール性代謝性アシドーシスが特徴的な検査所見です。
主要症状
- 乳幼児期の成長障害・発育不良
- 哺乳不良・体重増加不良
- 多飲多尿(のどが渇きやすく、尿量が多い)
- 筋力低下・筋肉痛
- 骨の痛み・骨軟化症(成人)
- くる病(小児)
- 嘔吐・食欲不振
- 便秘
- 夜尿症の遷延
1型(遠位型)尿細管性アシドーシス
遠位尿細管における水素イオン(酸)の排泄障害が原因で、最も頻度の高い遺伝性尿細管性アシドーシスです。著明なアシドーシスの存在下でも尿pHが5.5以下にならないことが診断の重要なポイントです。
主な特徴:
- 低カリウム血症(血液中のカリウムが低い)
- 低重炭酸血症(血液中の重炭酸イオンが低い)
- 高カルシウム尿症
- 尿路結石・腎石灰化(腎臓内にカルシウムが沈着)
- 骨軟化症・骨粗鬆症
- 難聴(ATP6V1B1遺伝子変異の場合)
- 尿濃縮力低下による多尿
2型(近位型)尿細管性アシドーシス
近位尿細管における重炭酸イオンの再吸収障害が原因です。多くの場合、ファンコーニ症候群を合併し、アミノ酸尿、糖尿、リン酸尿などの近位尿細管機能全般の障害を伴います。
主な特徴:
- 低カリウム血症
- 低リン血症
- 骨軟化症・くる病
- 低身長
- 白内障(SLC4A4遺伝子変異の場合)
- 緑内障(SLC4A4遺伝子変異の場合)
- 大理石骨病(CA2遺伝子変異の場合)
- 知的障害(CA2遺伝子変異の場合)
合併症
適切な治療が行われない場合、以下のような合併症が生じる可能性があります:
- 成長障害:乳幼児期から小児期にかけて、適切な成長が阻害され低身長となります
- 骨病変:小児ではくる病、成人では骨軟化症や骨粗鬆症を生じます
- 腎石灰化・尿路結石:特に1型で頻度が高く、腎機能障害の原因となります
- 慢性腎臓病:長期間放置されると、腎機能が徐々に低下します
- 感音性難聴:一部の遺伝子変異(ATP6V1B1)では不可逆的な難聴を伴います
- 低カリウム血症による症状:筋力低下、麻痺、不整脈などが生じることがあります
進行と予後
遺伝性尿細管性アシドーシスは生涯にわたる疾患ですが、適切なアルカリ療法(重炭酸ナトリウムやクエン酸カリウムの補充)により、アシドーシスと電解質異常を是正することで、多くの症状は改善します。早期診断・早期治療により、成長障害や骨病変を予防し、正常な発育を促すことが可能です。ただし、腎石灰化や難聴などの一部の症状は治療によっても改善が困難な場合があります。
遺伝形式と原因遺伝子
遺伝性尿細管性アシドーシスは、常染色体劣性遺伝または常染色体優性遺伝の形式をとります。現在までに複数の原因遺伝子が同定されており、遺伝子によって病型や臨床症状が異なります。
1型(遠位型)の原因遺伝子
遠位尿細管の水素イオンポンプ(H+-ATPase)や陰イオン交換体の異常が原因です:
- ATP6V1B1遺伝子(常染色体劣性遺伝):H+-ATPaseのサブユニットをコードし、最も頻度の高い原因遺伝子の一つです。難聴を伴うことが特徴的です
- ATP6V0A4遺伝子(常染色体劣性遺伝):H+-ATPaseのサブユニットをコードします。難聴は伴わないか軽度です
- SLC4A1遺伝子(常染色体優性または劣性遺伝):赤血球および尿細管の陰イオン交換体をコードします。遺伝形式により重症度が異なり、優性遺伝では成人発症が多く、劣性遺伝では小児発症で重症です
2型(近位型)の原因遺伝子
近位尿細管における重炭酸イオンの再吸収に関わるトランスポーターや酵素の異常が原因です:
- SLC4A4遺伝子(常染色体劣性遺伝):電解質依存性Na+/HCO3-共輸送体(NBC-1)をコードします。眼症状(白内障、緑内障、帯状角膜症)を伴うことが特徴的です
- CA2遺伝子(常染色体劣性遺伝):炭酸脱水酵素II(Carbonic Anhydrase II)をコードします。大理石骨病(骨硬化症)、脳石灰化、知的障害を伴う稀な疾患です
その他の関連遺伝子
- SLC34A1遺伝子(常染色体劣性遺伝):近位尿細管のリン酸トランスポーターをコードし、低リン血症性くる病とRTAを呈します
- HNF4A遺伝子(常染色体優性遺伝):転写因子をコードし、MODY1型糖尿病やファンコーニ症候群を伴うことがあります
当検査パネルでは、これらの原因遺伝子のうち、臨床的に重要な7遺伝子(ATP6V0A4、ATP6V1B1、CA2、HNF4A、SLC34A1、SLC4A1、SLC4A4)を対象としています。これにより、遺伝性尿細管性アシドーシスの主要な原因を効率的にスクリーニングすることが可能です。
ミネルバクリニックの尿細管性アシドーシス遺伝子パネル検査の特徴
「尿細管性アシドーシス NGSパネル検査」とは、現在尿細管性アシドーシスの原因として報告されている7の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。
従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。
何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、尿細管性アシドーシスに関連する7遺伝子を一度に調べられる「尿細管性アシドーシス NGSパネル検査」を採用しています。
一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。
1.費用がリーズナブル
一般的な医療機関で尿細管性アシドーシスの遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。
当院では、尿細管性アシドーシスに関係するとされる7の遺伝子を一度に調べられる「尿細管性アシドーシス NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)
2.結果が出るまでがはやい
一般的な医療機関で行える尿細管性アシドーシスの遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。
当院で行う「尿細管性アシドーシス NGSパネル検査」の場合、7の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。
3.一気にまとめてできる
臨床症状から尿細管性アシドーシスを疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。
当院で行う「尿細管性アシドーシス NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な7の原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。
オプション
塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)
検査内容
「尿細管性アシドーシス NGSパネル検査」では、尿細管性アシドーシスに関係するとされる7種類の遺伝子(ATP6V0A4、ATP6V1B1、CA2、HNF4A、SLC34A1、SLC4A1、SLC4A4)をまとめて検査します。
「尿細管性アシドーシス NGSパネル検査」は、尿細管性アシドーシスの遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。
どんな人が受けたらいいの?
【尿細管性アシドーシスの個人歴または家族歴のある方】に
「尿細管性アシドーシス NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。
この検査は以下のような方に適しています:
・乳幼児期の成長障害・発育不良がある方
・哺乳不良・体重増加不良がある方
・多飲多尿がある方
・低カリウム血症・低重炭酸血症がある方
・アニオンギャップ正常の代謝性アシドーシスがある方
・尿路結石・腎石灰化がある方
・骨軟化症・くる病がある方
・原因不明の難聴がある方
・尿細管性アシドーシスの家族歴がある方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方
このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。
検査で得られる患者さんの潜在的利益は?
遺伝子検査により原因が判明すると、尿細管性アシドーシスの診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切なアルカリ療法、電解質補正、定期的なモニタリングを行うことができます。
遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・病型(1型、2型)の確定
・適切なアルカリ療法の立案(投与量の決定)
・電解質補正療法の最適化
・腎石灰化・尿路結石のリスク評価と予防
・難聴などの合併症の早期発見と対策
・骨病変(くる病・骨軟化症)の予防と治療
・成長障害の早期介入と改善
・疾患の進行予測と長期的な管理計画の立案
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供
患者さんで病原性変異が同定された場合、遺伝形式に応じて家族の発症リスクが異なります。常染色体劣性遺伝の場合、両親は保因者であり、次子が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症するリスクは50%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。
対象遺伝子
- 詳しくはこちら
-
ATP6V0A4, ATP6V1B1, CA2, HNF4A, SLC34A1, SLC4A1, SLC4A4 ( 7遺伝子 )
各遺伝子の詳細:
・ATP6V0A4遺伝子:
液胞型H+-ATPaseのa4サブユニットをコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、1型(遠位型)尿細管性アシドーシスの原因となります。ATP6V1B1遺伝子変異と異なり、難聴を伴わないか軽度です。遠位尿細管の介在細胞における酸分泌に必須の役割を果たします。
・ATP6V1B1遺伝子:
液胞型H+-ATPaseのB1サブユニットをコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、1型(遠位型)尿細管性アシドーシスの最も頻度の高い原因遺伝子の一つです。特徴的に感音性難聴を伴います。この遺伝子変異による難聴は進行性で不可逆的であり、早期からの聴力管理が重要です。内耳のコルチ器における酸分泌にも関与しています。
・CA2遺伝子:
炭酸脱水酵素II(Carbonic Anhydrase II)をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、2型(近位型)尿細管性アシドーシスの原因となります。本遺伝子変異では、RTA以外に大理石骨病(骨硬化症)、脳石灰化、知的障害を伴う稀な症候群を呈します。炭酸脱水酵素は水と二酸化炭素から炭酸を生成する反応を触媒し、尿細管での重炭酸イオンの再吸収と破骨細胞での酸分泌に重要な役割を果たします。
・HNF4A遺伝子:
肝細胞核因子4α(Hepatocyte Nuclear Factor 4 Alpha)をコードする転写因子の遺伝子。常染色体優性遺伝形式で、MODY1型糖尿病の原因遺伝子として知られていますが、ファンコーニ症候群を伴う2型尿細管性アシドーシスの原因ともなります。近位尿細管の発達と機能維持に関わる遺伝子発現を制御しています。
・SLC34A1遺伝子:
Na+/Pi共輸送体IIa(Sodium-Phosphate Cotransporter Type 2a)をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、近位尿細管におけるリン酸の再吸収に関与します。本遺伝子変異では、低リン血症性くる病と2型尿細管性アシドーシスを呈します。
・SLC4A1遺伝子:
陰イオン交換体1(Anion Exchanger 1、別名バンド3タンパク質)をコードする遺伝子。赤血球膜および遠位尿細管の介在細胞に発現し、Cl-とHCO3-の交換を行います。遺伝形式により重症度が異なり、常染色体優性遺伝では成人発症の軽症1型RTAが多く、常染色体劣性遺伝では小児発症の重症1型RTAと溶血性貧血を伴います。赤血球の形態異常(球状赤血球症、楕円赤血球症)を呈することもあります。
・SLC4A4遺伝子:
電解質依存性Na+/HCO3-共輸送体1(Electrogenic Sodium Bicarbonate Cotransporter 1、NBC-1)をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、2型(近位型)尿細管性アシドーシスの原因となります。近位尿細管における重炭酸イオンの再吸収に必須の役割を果たします。特徴的に眼症状(白内障、緑内障、帯状角膜症)を伴います。このタンパク質は眼内でも発現しており、房水の産生と眼内圧の調節に関与しています。
カバレッジ
カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。
≥99% at 20x(読み取り深度平均20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。
検体
血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)
※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。
検査の限界
- 詳しくはこちら
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すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。
低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。
この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。
※この検査パネルでは、7の原因遺伝子のみを対象としています。遺伝性尿細管性アシドーシスの原因遺伝子はこれら以外にも存在する可能性があります。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。また、後天性の尿細管性アシドーシス(シェーグレン症候群、ファンコーニ症候群、薬剤性など)の診断には、この遺伝子検査は適用されません。
結果が出るまでの期間
2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。
料金
税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)
よくあるご質問
- どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
- 乳幼児期の成長障害、哺乳不良、多飲多尿がある方におすすめします。また、血液検査で低カリウム血症や低重炭酸血症、アニオンギャップ正常の代謝性アシドーシスが認められる場合、尿路結石や腎石灰化がある場合も検査をご検討ください。家族に尿細管性アシドーシスの方がいる場合も重要です。
- 検査はどのように行いますか?
- 血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
- 1型と2型の違いは何ですか?
- 1型(遠位型)は遠位尿細管での酸の排泄障害が原因で、尿路結石や腎石灰化、難聴を伴うことが特徴です。2型(近位型)は近位尿細管での重炭酸イオンの再吸収障害が原因で、ファンコーニ症候群を伴うことが多く、眼症状や骨病変が目立ちます。遺伝子検査により病型を正確に診断できます。
- 家族も検査を受ける必要がありますか?
- 遺伝形式によって家族の発症リスクが異なります。多くは常染色体劣性遺伝で、患者さんのご両親は保因者です。次子が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。一部の遺伝子(SLC4A1など)では常染色体優性遺伝もあり、この場合お子さんが発症するリスクは50%です。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
- 検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
- この検査では主要な7遺伝子を対象としていますが、まだ同定されていない原因遺伝子が存在する可能性があります。また、後天性の尿細管性アシドーシス(シェーグレン症候群、薬剤性など)の場合は遺伝子変異は検出されません。検査で病原性変異が検出されなくても、臨床症状と血液・尿検査に基づいた診断と治療が引き続き重要です。
- 保険は適用されますか?
- 当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
- 結果はどのように説明されますか?
- 検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
- 子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
- 遺伝形式によって子どもへの影響が異なります。常染色体劣性遺伝(最も多い)の場合、保因者同士のカップルで子どもが発症する確率は25%です。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症する確率は50%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
- 尿細管性アシドーシスの治療はどのように行われますか?
- アルカリ療法(重炭酸ナトリウムやクエン酸カリウムの経口投与)によるアシドーシスの補正が基本です。2型では大量、1型では少量の補充で改善します。また、カリウムやリンなどの電解質の補充も必要に応じて行います。適切な治療により、成長障害や骨病変を予防し、多くの患者さんは正常な発育が可能です。
- 予後はどうですか?
- 早期診断・早期治療により、予後は良好です。適切なアルカリ療法により、成長障害は改善し、骨病変も予防できます。ただし、腎石灰化や難聴などの一部の症状は治療によっても改善が困難な場合があります。生涯にわたる治療が必要ですが、適切な管理により通常の社会生活を送ることが可能です。
- 他の医療機関での検査との違いは何ですか?
- 当院では臨床的に重要な7の原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。
プロフィール
この記事の筆者:仲田洋美(医師)
ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。
仲田洋美のプロフィールはこちら