肺動脈性肺高血圧症NGS遺伝子検査|ミネルバクリニック
肺動脈性肺高血圧症とは
肺動脈性肺高血圧症(Pulmonary Arterial Hypertension: PAH)は、心臓から肺に血液を送る肺動脈の圧力(血圧)が異常に上昇する疾患です。肺の細い血管が異常に狭くなり、また硬くなることで血液の流れが悪くなり、心臓に多大な負担がかかります。
肺動脈の圧力が上昇する理由は、肺動脈の血管収縮、肺動脈壁の肥厚、血栓症の3つのメカニズムがかかわっていると考えられています。心臓は狭い血管の中に無理に血液を流すように努力するため、肺動脈の圧力が上昇します。しかし、何故このような病気が起こるのかは完全には解明されていません。
肺動脈性肺高血圧症は厚生労働省の指定難病(指定難病86)に認定されています。右心カテーテル検査により肺動脈平均圧が25mmHg以上であることが診断基準となります。全国で約4,000~5,000人の患者さんがいると推定されており、比較的若い人にも発症し、女性に多いという特徴があります。
症状と病態
肺動脈性肺高血圧症の主な症状は、体を動かす時の息苦しさ、疲労感、全身倦怠感です。初期は安静時の自覚症状はありませんが、体を動かす時により多くの酸素が必要になるため、その酸素の供給が十分にできなくなることで症状が出現します。
主要症状
- 労作時の息切れ(体を動かす時に息苦しい)
- 疲労感・全身倦怠感(すぐに疲れる、体がだるい)
- 失神(意識がなくなる)
- 動悸(心臓がドキドキする)
- 胸痛(胸が痛む)
- 浮腫(足がむくむ)
- 腹部膨満感(お腹が張る)
病気の進行
病気が進行すると、心臓の機能がより低下するために、足がむくむ、少し体を動かしただけでも息苦しいなどの症状が出現します。適切な治療を受けないと、右心不全が進行し、重篤な状態に陥る可能性があります。
近年はいくつかの治療薬の開発により、治療成績が大幅に向上しています。早期に発見し、早期からしっかりとした治療を行うことが重要です。肺動脈を拡張させる薬剤(エンドセリン受容体拮抗薬、PDE-5阻害薬、プロスタサイクリン製剤など)を中心に、患者さんの病状に応じた治療方針が選択されます。
遺伝形式と原因遺伝子
肺動脈性肺高血圧症は、その発症原因により以下のように分類されます:
肺動脈性肺高血圧症の分類
- 特発性PAH(IPAH):原因が全く不明のもの。他の病気や明らかな原因が認められない場合に診断されます。
- 遺伝性PAH(HPAH):BMPR2、ACVRL1、ENG、SMAD9、CAV1、KCNK3などの遺伝子変異が病気の発症に関与するもの。家族内発症が認められます。
- 薬物誘発性PAH:食欲抑制薬などの特殊な薬物の服用が発症に関与するもの。
- 膠原病に伴うPAH:全身性強皮症、全身性エリテマトーデス、混合性結合組織病などに合併するもの。
- 先天性心疾患に伴うPAH:心房中隔欠損症、心室中隔欠損症、動脈管開存症などに合併するもの。
- 門脈圧亢進症に伴うPAH:肝硬変などの肝疾患に合併するもの。
- HIV感染症に伴うPAH
- 住血吸虫症に伴うPAH
遺伝性肺動脈性肺高血圧症(HPAH)
遺伝性肺動脈性肺高血圧症は、特定の遺伝子変異が原因で発症する病型です。従来、家族内でPAHを発症した人がいる場合(家族性PAH)として認識されていましたが、2000年代に入りPAHの発症関連遺伝子が報告されるようになり、現在では発症関連遺伝子に変異を認めた場合もHPAHと診断されます。
BMPR2遺伝子:最も頻度の高い原因遺伝子で、家族性PAHの約75%、孤発性IPAHの約25%に変異が認められます。ただし、BMPR2遺伝子変異を持っていても、生涯でPAHを発症するリスクは男性で14%、女性で42%と浸透率が低いことが特徴です。
HPAHは特発性PAH(IPAH)と比較して若年発症の傾向が強く、平均発症年齢はIPAHより約10歳若いとされています。また、遺伝子変異の種類によって臨床経過が異なる可能性があるため、遺伝子検査の結果に基づいた個別化された管理戦略が重要です。
遺伝カウンセリングの重要性
遺伝性肺動脈性肺高血圧症と診断された患者さんの1親等の家族の遺伝状況を明らかにすることで、HPAHの早期発見が可能になり、治療を早く始めることで長期的転帰が良くなる可能性があります。遺伝学的検査は本人や家族の診断や予後予測に有用ですが、適切な遺伝カウンセリングのもとで行われることが極めて重要です。
ミネルバクリニックの肺動脈性肺高血圧症遺伝子パネル検査の特徴
「肺動脈性肺高血圧症 NGSパネル検査」とは、現在肺動脈性肺高血圧症の原因として報告されている16の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。
従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。
何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、肺動脈性肺高血圧症に関連する16遺伝子を一度に調べられる「肺動脈性肺高血圧症 NGSパネル検査」を採用しています。
一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。
1.費用がリーズナブル
一般的な医療機関で肺動脈性肺高血圧症の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。
当院では、肺動脈性肺高血圧症に関係するとされる16の遺伝子を一度に調べられる「肺動脈性肺高血圧症 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)
2.結果が出るまでがはやい
一般的な医療機関で行える肺動脈性肺高血圧症の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。
当院で行う「肺動脈性肺高血圧症 NGSパネル検査」の場合、16の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。
3.一気にまとめてできる
臨床症状から肺動脈性肺高血圧症を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。
当院で行う「肺動脈性肺高血圧症 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な16の原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。
オプション
塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)
検査内容
「肺動脈性肺高血圧症 NGSパネル検査」では、肺動脈性肺高血圧症に関係するとされる16種類の遺伝子(ABCC8、ACVRL1、ATP13A3、BMPR2、CAV1、EIF2AK4、ENG、GDF2、GGCX、KCNA5、KCNK3、KDR、SMAD9、SOX17、TBX4、TET2)をまとめて検査します。
「肺動脈性肺高血圧症 NGSパネル検査」は、肺動脈性肺高血圧症の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。
どんな人が受けたらいいの?
【肺動脈性肺高血圧症の個人歴または家族歴のある方】に
「肺動脈性肺高血圧症 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。
この検査は以下のような方に適しています:
・労作時の息切れがある方
・原因不明の疲労感・全身倦怠感がある方
・失神を経験したことがある方
・右心カテーテル検査で肺動脈平均圧の上昇が認められた方
・心エコー検査で肺高血圧症が疑われた方
・膠原病(強皮症、全身性エリテマトーデスなど)を患っている方
・先天性心疾患を持つ方
・肝疾患(肝硬変、門脈圧亢進症など)を患っている方
・肺動脈性肺高血圧症の家族歴がある方
・家族内でPAHを発症した人がいる方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方
このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。
検査で得られる患者さんの潜在的利益は?
遺伝子検査により原因が判明すると、肺動脈性肺高血圧症の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、早期からの適切な治療介入、定期的なモニタリングを行うことができます。
遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・特発性PAH、遺伝性PAH、他の原因によるPAHの鑑別
・早期治療介入による予後改善の可能性
・肺血管拡張薬の適切な選択と使用
・右心不全の早期発見と管理
・呼吸機能のモニタリングと酸素療法の適応判断
・疾患の進行予測と長期的な管理計画の立案
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族スクリーニングによる早期発見の機会
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供
患者さんで病原性変異が同定された場合、常染色体優性遺伝のため、子どもが同じ変異を受け継ぐリスクは50%です。ただし、BMPR2遺伝子変異の場合、浸透率が低く、変異を持っていても発症しない場合もあります。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。
対象遺伝子
- 詳しくはこちら
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ABCC8, ACVRL1, ATP13A3, BMPR2, CAV1, EIF2AK4, ENG, GDF2, GGCX, KCNA5, KCNK3, KDR, SMAD9, SOX17, TBX4, TET2 ( 16遺伝子 )
各遺伝子の詳細:
・ABCC8遺伝子:
ATP結合カセットサブファミリーCメンバー8をコードする遺伝子。カリウムチャネルの調節に関与します。
・ACVRL1遺伝子(ALK1):
アクチビン受容体様キナーゼ1をコードする遺伝子。TGF-βシグナル伝達経路に関与し、遺伝性出血性毛細血管拡張症(HHT)との関連も知られています。ACVRL1遺伝子変異は遺伝性PAHの原因の一つです。
・ATP13A3遺伝子:
P型ATPアーゼをコードする遺伝子。細胞内イオン輸送に関与します。
・BMPR2遺伝子:
骨形成タンパク質受容体2型をコードする遺伝子。TGF-βスーパーファミリーのシグナル伝達に関与します。遺伝性PAHの最も頻度の高い原因遺伝子で、家族性PAHの約75%、孤発性IPAHの約25%に変異が認められます。BMPR2遺伝子変異により、肺動脈における平滑筋細胞の増殖と肺動脈内皮細胞の過剰なアポトーシスが誘導されます。
・CAV1遺伝子:
カベオリン1をコードする遺伝子。細胞膜カベオラの主要構成成分で、細胞内シグナル伝達に関与します。
・EIF2AK4遺伝子:
真核生物翻訳開始因子2αキナーゼ4をコードする遺伝子。タンパク質合成の調節に関与し、特に肺毛細血管腫症(PCH)との関連が知られています。
・ENG遺伝子(エンドグリン):
エンドグリンをコードする遺伝子。血管内皮細胞に発現し、TGF-βシグナル伝達に関与します。遺伝性出血性毛細血管拡張症(HHT)の原因遺伝子としても知られています。
・GDF2遺伝子(BMP9):
成長分化因子2(骨形成タンパク質9)をコードする遺伝子。血管の恒常性維持に関与します。
・GGCX遺伝子:
γ-グルタミルカルボキシラーゼをコードする遺伝子。ビタミンK依存性タンパク質の翻訳後修飾に関与します。
・KCNA5遺伝子:
電位依存性カリウムチャネルKv1.5をコードする遺伝子。肺動脈平滑筋細胞のカリウムチャネルとして機能します。
・KCNK3遺伝子:
2ポアドメインカリウムチャネルTASK-1をコードする遺伝子。肺動脈平滑筋細胞の静止膜電位の維持に関与します。
・KDR遺伝子(VEGFR2):
血管内皮増殖因子受容体2をコードする遺伝子。血管新生と血管透過性の調節に関与します。
・SMAD9遺伝子(SMAD8):
SMAD9(SMAD8としても知られる)をコードする遺伝子。BMPシグナル伝達経路の細胞内メディエーターとして機能します。
・SOX17遺伝子:
SRY関連HMGボックス転写因子17をコードする遺伝子。血管内皮細胞の分化と維持に関与します。
・TBX4遺伝子:
Tボックス転写因子4をコードする遺伝子。胎児期の肺と下肢の発生に関与します。TBX4遺伝子変異は、PAHに加え、指から肢体の異常、呼吸器疾患、発達障害、先天性心疾患など様々な表現型を伴うことがあります。
・TET2遺伝子:
テン-イレブン転座2をコードする遺伝子。DNAメチル化の調節に関与するエピジェネティック制御因子です。
カバレッジ
カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。
≥99% at 20x(読み取り深度平均20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。
検体
血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)
※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。
検査の限界
- 詳しくはこちら
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すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。
低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。
この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。
※この検査パネルでは、16の原因遺伝子のみを対象としています。特発性・遺伝性肺動脈性肺高血圧症の全ての症例で既知の遺伝子に変異が見つかるわけではありません。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。
結果が出るまでの期間
2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。
料金
税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)
よくあるご質問
- どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
- 体を動かす時の息切れ、原因不明の疲労感・全身倦怠感、失神などの症状がある方におすすめします。特に、右心カテーテル検査で肺動脈平均圧の上昇が認められた方、心エコー検査で肺高血圧症が疑われた方は検査をご検討ください。また、家族に肺動脈性肺高血圧症の患者さんがいる場合も、早期発見のために検査を受けることが推奨されます。
- 検査はどのように行いますか?
- 血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
- 特発性PAHと遺伝性PAHの違いは何ですか?
- 特発性PAH(IPAH)は、他の病気や明らかな原因が認められない原因不明のPAHです。遺伝性PAH(HPAH)は、BMPR2などの遺伝子変異が原因で発症するPAHで、家族内発症が認められることがあります。当検査により原因遺伝子を特定することで、より正確な診断と適切な管理が可能になります。
- 家族も検査を受ける必要がありますか?
- 遺伝性PAHの場合、常染色体優性遺伝のため、患者さんのお子さんが同じ変異を受け継ぐリスクは50%です。ただし、BMPR2遺伝子変異の場合、浸透率が低く(男性で14%、女性で42%)、変異を持っていても発症しない場合もあります。ご家族の検査により早期発見が可能になり、治療を早く始めることで長期的転帰が良くなる可能性があります。
- 検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
- 特発性・遺伝性肺動脈性肺高血圧症の全ての症例で既知の遺伝子に変異が見つかるわけではありません。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。臨床症状と右心カテーテル検査などの検査所見に基づいた診断と治療が引き続き重要です。
- 保険は適用されますか?
- 当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
- 結果はどのように説明されますか?
- 検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
- 子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
- 遺伝性PAHの場合、常染色体優性遺伝のため子どもが同じ変異を受け継ぐ確率は50%です。ただし、浸透率が低いため、変異を持っていても発症しない場合もあります。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
- 肺動脈性肺高血圧症の治療はどのように行われますか?
- 肺動脈を拡張させる薬剤(エンドセリン受容体拮抗薬、PDE-5阻害薬、プロスタサイクリン製剤など)を中心に、患者さんの病状に応じた治療方針が選択されます。在宅酸素療法などの支持療法も併用されます。重症例では肺移植が検討される場合もあります。
- 予後はどうですか?
- 近年はいくつかの治療薬の開発により、治療成績が大幅に向上しています。早期に発見し、早期からしっかりとした治療を行うことが重要です。適切な治療により、多くの患者さんは症状の改善と生活の質の向上が期待できます。ただし、疾患の進行度や治療反応性は個人によって異なります。
- 他の医療機関での検査との違いは何ですか?
- 当院では臨床的に重要な16の原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。
プロフィール
この記事の筆者:仲田洋美(医師)
ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。
仲田洋美のプロフィールはこちら