原発性高シュウ酸尿症NGS遺伝子パネル検査|ミネルバクリニック
原発性高シュウ酸尿症とは
原発性高シュウ酸尿症(Primary Hyperoxaluria: PH)は、肝臓の代謝酵素の先天的な欠損により、体内でシュウ酸が過剰に産生される稀な常染色体劣性(潜性)遺伝性疾患です。過剰に産生されたシュウ酸は腎臓から排泄されますが、その量が多いため不溶性のシュウ酸カルシウムとなって結晶化し、腎臓や尿路に沈着します。
本疾患は現在3つの型(1型、2型、3型)が知られており、それぞれ異なる遺伝子の変異によって引き起こされます。最も頻度が高く重症なのは1型(PH1)で、全体の約80%を占めます。2型(PH2)は約10%、3型(PH3)は約10%とされていますが、診断技術の進歩により2型と3型の診断率が向上しています。
原発性高シュウ酸尿症は、小児期から成人期まで幅広い年齢で発症します。乳児期に重症の腎不全で発症する例から、成人期まで無症状で経過し、偶然発見される例まで、臨床像は非常に多様です。わが国での正確な患者数は不明ですが、欧米では出生10,000人あたり約1~3人の頻度と推定されています。
症状と病態
原発性高シュウ酸尿症の主な症状は、シュウ酸カルシウムの結晶が腎臓や尿路に沈着することによって引き起こされます。病型や発症年齢によって症状の重症度は大きく異なります。
主要症状
- 反復性の腎結石(尿路結石)
- 腎石灰化(腎臓へのカルシウム沈着)
- 血尿(目に見える血尿または顕微鏡的血尿)
- 尿路感染症
- 腹痛・側腹部痛(結石による疝痛発作)
- 進行性の腎機能低下
- 成長障害(小児例)
- 高血圧
型別の臨床的特徴
原発性高シュウ酸尿症の3つの型は、それぞれ異なる臨床経過を示します:
- 1型(PH1):最も頻度が高く(約80%)、最も重症です。乳児期から成人期まで幅広い年齢で発症し、約50%の患者が30歳までに末期腎不全に至ります。AGXT遺伝子の変異によって引き起こされ、肝臓のペルオキシソームに存在するアラニン・グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ(AGT)の欠損が原因です。
- 2型(PH2):1型より軽症で、腎不全への進行は緩やかです。GRHPR遺伝子の変異によって引き起こされ、グリオキシル酸還元酵素/ヒドロキシピルビン酸還元酵素(GRHPR)の欠損が原因です。尿中L-グリセリン酸の上昇が特徴的です。
- 3型(PH3):最も軽症で、多くの患者は腎機能が比較的良好に保たれます。HOGA1遺伝子の変異によって引き起こされ、4-ヒドロキシ-2-オキソグルタル酸アルドラーゼ(HOGA1)の欠損が原因です。最も早期に症状が出現しますが、腎機能の低下は最も緩徐です。
全身性シュウ酸症(Systemic Oxalosis)
末期腎不全に至ると、シュウ酸の排泄が不可能となり、血中シュウ酸濃度が上昇します。その結果、シュウ酸カルシウムが全身の臓器に沈着する全身性シュウ酸症が発症します。
- 骨への沈着:骨痛、病的骨折、成長障害
- 心臓への沈着:不整脈、心不全、伝導障害
- 眼への沈着:角膜・結膜への結晶沈着、網膜症
- 皮膚への沈着:皮下結節、難治性潰瘍
- 血管への沈着:末梢血管障害、壊疽
- その他:関節痛、神経障害、貧血の増悪
進行と予後
原発性高シュウ酸尿症の予後は、病型と発症年齢によって大きく異なります。1型では約50%の患者が30歳までに末期腎不全に至りますが、2型と3型では腎機能の低下は比較的緩徐です。早期診断と適切な治療介入により、腎機能の保持と生活の質の維持が可能です。透析導入後は、全身性シュウ酸症の進行を防ぐため、できるだけ早期の肝腎同時移植が推奨されます。
遺伝形式と原因遺伝子
原発性高シュウ酸尿症はすべての型で常染色体劣性(潜性)遺伝形式をとります。これは、両親がそれぞれ1つずつ変異遺伝子を持つ保因者である場合、子どもが発症する確率は25%、保因者となる確率は50%、健常である確率は25%であることを意味します。
1型(PH1):AGXT遺伝子
染色体位置:2q37.3
原因酵素:アラニン・グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ(AGT)
- 肝臓のペルオキシソームに局在する酵素で、グリオキシル酸をグリシンに変換します
- AGTが欠損すると、グリオキシル酸が蓄積し、シュウ酸に変換されます
- 175種類以上の変異が報告されています
- 最も頻度が高く(約80%)、最も重症な型です
- 一部の変異では、ビタミンB6(ピリドキシン)が有効な場合があります
2型(PH2):GRHPR遺伝子
染色体位置:9q12
原因酵素:グリオキシル酸還元酵素/ヒドロキシピルビン酸還元酵素(GRHPR)
- 肝臓のサイトゾルに局在する酵素で、グリオキシル酸をグリコール酸に還元します
- GRHPRが欠損すると、グリオキシル酸が蓄積し、シュウ酸に変換されます
- 25種類以上の変異が報告されています
- 尿中L-グリセリン酸の上昇が特徴的です
- 1型より軽症で、腎不全への進行は緩やかです
3型(PH3):HOGA1遺伝子
染色体位置:10q24.2
原因酵素:4-ヒドロキシ-2-オキソグルタル酸アルドラーゼ(HOGA1)
- ミトコンドリアに局在する酵素で、ヒドロキシプロリンからグリオキシル酸への代謝経路に関与します
- HOGA1が欠損すると、4-ヒドロキシ-2-オキソグルタル酸が蓄積し、グリオキシル酸が増加します
- 最も軽症な型で、多くの患者は腎機能が比較的良好に保たれます
- 最も早期に症状が出現しますが、腎機能の低下は最も緩徐です
当検査パネルでは、原発性高シュウ酸尿症の原因となる3つの遺伝子(AGXT、GRHPR、HOGA1)をすべて対象としています。これにより、原発性高シュウ酸尿症のほぼすべての遺伝的原因を効率的にスクリーニングすることが可能です。
ミネルバクリニックの原発性高シュウ酸尿症遺伝子パネル検査の特徴
「原発性高シュウ酸尿症 NGSパネル検査」とは、現在原発性高シュウ酸尿症の原因として報告されている3つの遺伝子(AGXT、GRHPR、HOGA1)に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。
従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。
何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、原発性高シュウ酸尿症に関連する3遺伝子を一度に調べられる「原発性高シュウ酸尿症 NGSパネル検査」を採用しています。
一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。
1.費用がリーズナブル
一般的な医療機関で原発性高シュウ酸尿症の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。
当院では、原発性高シュウ酸尿症に関係するとされる3つの遺伝子を一度に調べられる「原発性高シュウ酸尿症 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)
2.結果が出るまでがはやい
一般的な医療機関で行える原発性高シュウ酸尿症の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。
当院で行う「原発性高シュウ酸尿症 NGSパネル検査」の場合、3つの遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。
3.一気にまとめてできる
臨床症状から原発性高シュウ酸尿症を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。
当院で行う「原発性高シュウ酸尿症 NGSパネル検査」ならば、すべての原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。
オプション
塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)
検査内容
「原発性高シュウ酸尿症 NGSパネル検査」では、原発性高シュウ酸尿症に関係するとされる3種類の遺伝子(AGXT、GRHPR、HOGA1)をまとめて検査します。
「原発性高シュウ酸尿症 NGSパネル検査」は、原発性高シュウ酸尿症の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。
どんな人が受けたらいいの?
【原発性高シュウ酸尿症の個人歴または家族歴のある方】に
「原発性高シュウ酸尿症 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。
この検査は以下のような方に適しています:
・反復性の腎結石(尿路結石)がある方
・腎石灰化が認められる方
・小児期または若年期に腎結石を発症した方
・原因不明の進行性腎機能低下がある方
・血尿が持続する方
・尿路感染症を繰り返す方
・尿中シュウ酸排泄量が高値の方
・原発性高シュウ酸尿症の家族歴がある方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方
このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。
検査で得られる患者さんの潜在的利益は?
遺伝子検査により原因が判明すると、原発性高シュウ酸尿症の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切な水分摂取、食事療法、薬物療法、定期的なモニタリングを行うことができます。
遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・他の腎結石疾患との鑑別
・病型(1型、2型、3型)の特定
・ビタミンB6(ピリドキシン)治療の適応判断(1型の一部)
・RNA干渉療法(ルマシラン、ネドシラン)の適応判断
・腎機能低下のリスク評価と早期介入
・全身性シュウ酸症の予防と管理
・肝腎同時移植の適応判断
・疾患の進行予測と長期的な管理計画の立案
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供
患者さんで病原性変異が同定された場合、常染色体劣性遺伝のため、兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。保因者同士のカップルの場合、子どもが発症するリスクは25%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。
対象遺伝子
- 詳しくはこちら
-
AGXT, GRHPR, HOGA1 ( 3遺伝子 )
各遺伝子の詳細:
・AGXT遺伝子(原発性高シュウ酸尿症1型):
染色体位置:2q37.3
コードするタンパク質:アラニン・グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ(AGT)
肝臓のペルオキシソームに局在する酵素で、グリオキシル酸をグリシンに変換します。AGTが欠損すると、グリオキシル酸が蓄積し、シュウ酸に変換されます。原発性高シュウ酸尿症の約80%を占め、最も頻度が高く、最も重症な型です。175種類以上の変異が報告されており、p.G170R変異は比較的軽症な臨床経過をとることが知られています。一部の変異では、ビタミンB6(ピリドキシン)がAGT酵素の補酵素として作用し、酵素活性を改善することがあります。ピリドキシン反応性の患者では、高用量のビタミンB6投与により尿中シュウ酸排泄量が減少し、腎結石の形成を抑制できます。
・GRHPR遺伝子(原発性高シュウ酸尿症2型):
染色体位置:9q12
コードするタンパク質:グリオキシル酸還元酵素/ヒドロキシピルビン酸還元酵素(GRHPR)
肝臓のサイトゾルに局在する酵素で、二つの機能を持ちます。一つ目は、グリオキシル酸をグリコール酸に還元する機能(グリオキシル酸還元酵素活性)、二つ目は、ヒドロキシピルビン酸をD-グリセリン酸に還元する機能(ヒドロキシピルビン酸還元酵素活性)です。GRHPRが欠損すると、グリオキシル酸が蓄積してシュウ酸に変換されるとともに、ヒドロキシピルビン酸が蓄積してL-グリセリン酸に変換されます。このため、尿中L-グリセリン酸の上昇が特徴的な所見となり、2型の診断に有用です。原発性高シュウ酸尿症の約10%を占め、1型より軽症で、腎不全への進行は緩やかです。25種類以上の変異が報告されており、c.103delG変異が比較的頻度が高いことが知られています。
・HOGA1遺伝子(原発性高シュウ酸尿症3型):
染色体位置:10q24.2
コードするタンパク質:4-ヒドロキシ-2-オキソグルタル酸アルドラーゼ(HOGA1)
ミトコンドリアに局在する酵素で、ヒドロキシプロリンからグリオキシル酸への代謝経路に関与します。具体的には、4-ヒドロキシ-2-オキソグルタル酸をグリオキシル酸とピルビン酸に分解します。HOGA1が欠損すると、4-ヒドロキシ-2-オキソグルタル酸が蓄積し、代謝経路が変化してグリオキシル酸が増加します。原発性高シュウ酸尿症の約10%を占め、最も軽症な型です。多くの患者は腎機能が比較的良好に保たれます。最も早期(幼児期)に症状が出現しますが、腎機能の低下は最も緩徐です。p.E315del(3塩基欠失)とc.700+5G>T(スプライス部位変異)が比較的頻度の高い変異として知られています。アシュケナージ系ユダヤ人では、p.E315del変異の保因者頻度が高いことが報告されています。
カバレッジ
カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。
≥99% at 20x(読み取り深度平均20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。
検体
血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)
※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。
検査の限界
- 詳しくはこちら
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すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。
低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。
この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。
※AGXT遺伝子の16番染色体上には、遺伝子の5’側3/4の領域と高度に相同な偽遺伝子が6つ存在します。当院のバイオインフォマティクス解析により偽遺伝子由来の配列は除外されますが、技術的に完全な除外が困難な場合があります。
※約5~10%の原発性高シュウ酸尿症症例では、既知の3つの遺伝子に変異が見つかりません。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。
結果が出るまでの期間
2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。
料金
税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)
よくあるご質問
- どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
- 反復性の腎結石(尿路結石)がある方、腎石灰化が認められる方、小児期または若年期に腎結石を発症した方におすすめします。また、原因不明の進行性腎機能低下、持続する血尿、尿中シュウ酸排泄量が高値の方も検査をご検討ください。原発性高シュウ酸尿症の家族歴がある場合も重要な適応です。
- 検査はどのように行いますか?
- 血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
- 原発性高シュウ酸尿症の1型、2型、3型の違いは何ですか?
- 1型(AGXT遺伝子)は最も頻度が高く(約80%)、最も重症です。約50%の患者が30歳までに末期腎不全に至ります。2型(GRHPR遺伝子)は1型より軽症で、尿中L-グリセリン酸の上昇が特徴的です。3型(HOGA1遺伝子)は最も軽症で、多くの患者は腎機能が比較的良好に保たれます。当検査により病型を特定することで、適切な治療方針を決定できます。
- 家族も検査を受ける必要がありますか?
- 原発性高シュウ酸尿症は常染色体劣性遺伝のため、兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。保因者同士のカップルの場合、子どもが発症するリスクは25%です。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
- 検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
- 約5~10%の原発性高シュウ酸尿症症例では、既知の3つの遺伝子に変異が見つかりません。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。臨床症状、尿中シュウ酸排泄量、画像検査に基づいた診断と管理が引き続き重要です。
- 保険は適用されますか?
- 当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
- 結果はどのように説明されますか?
- 検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
- 子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
- 常染色体劣性遺伝のため、保因者同士のカップルで子どもが発症する確率は25%、保因者となる確率は50%、健常である確率は25%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
- 原発性高シュウ酸尿症の治療はどのように行われますか?
- 治療の基本は、十分な水分摂取(1日2~3リットル以上)、クエン酸製剤の投与、リン酸製剤の投与です。1型の一部(約30%)ではビタミンB6(ピリドキシン)が有効です。2020年以降、RNA干渉療法(ルマシラン、ネドシラン)が承認され、肝臓でのシュウ酸産生を抑制できるようになりました。末期腎不全では、肝腎同時移植が根本的治療となります。
- 予後はどうですか?
- 予後は病型によって大きく異なります。1型では約50%の患者が30歳までに末期腎不全に至りますが、2型と3型では腎機能の低下は比較的緩徐です。早期診断と適切な治療介入により、腎機能の保持と生活の質の維持が可能です。RNA干渉療法の登場により、予後の改善が期待されています。
- 他の医療機関での検査との違いは何ですか?
- 当院では原発性高シュウ酸尿症のすべての原因遺伝子(AGXT、GRHPR、HOGA1)を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。
プロフィール
この記事の筆者:仲田洋美(医師)
ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。
仲田洋美のプロフィールはこちら