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原発性抗体欠損症(PAD)遺伝子検査パネル|ミネルバクリニック






原発性抗体欠損症(PAD)遺伝子検査パネル|ミネルバクリニック


















原発性抗体欠損症とは

原発性抗体欠損症(Primary Antibody Deficiency: PAD)は、体内で十分な抗体を産生できないことにより、感染症に対する防御機能が低下する先天性免疫不全症の一群です。原発性免疫不全症の中で最も頻度の高い病型であり、抗体産生に関わる遺伝子の異常が原因で発症します。

抗体は、細菌、ウイルス、真菌などの病原体が体内に侵入した際に、これらを認識して排除する重要な役割を担っています。抗体が正常に機能しない、または十分に産生されない場合、感染症に繰り返しかかりやすくなり、重症化するリスクが高まります。

原発性抗体欠損症は、乳児期から成人期まで幅広い年齢で発症する可能性があり、症状の程度も軽症から重症まで多様です。一部の病型は新生児スクリーニングで発見されることもありますが、多くの場合、初期段階では無症状であり、繰り返す感染症によって気づかれることが一般的です。早期診断と適切な治療により、患者さんの予後は大きく改善します。

症状と病態

原発性抗体欠損症の主な症状は、頻回かつ重症の感染症です。特に呼吸器感染症(副鼻腔炎、中耳炎、気管支炎、肺炎)が多く見られ、消化器感染症(慢性下痢)も特徴的な症状の一つです。感染症の原因となる病原体は、主に細菌(肺炎球菌、インフルエンザ菌など)ですが、一部のウイルスや真菌による感染も見られます。

主要症状

  • 頻回の呼吸器感染症(副鼻腔炎、中耳炎、気管支炎、肺炎)
  • 重症または難治性の感染症
  • 抗菌薬治療に反応しにくい、または治療後すぐに再発する感染症
  • 慢性的な発熱
  • 鼻閉、鼻漏などの慢性的な呼吸器症状
  • 慢性下痢
  • 皮膚の発疹や感染症
  • 成長障害(小児の場合)
  • 内臓の炎症(肝臓、脾臓の腫大など)

関連する合併症

原発性抗体欠損症は、感染症以外にも様々な合併症を伴うことがあります:

  • 自己免疫疾患:自己免疫性溶血性貧血、血小板減少症、関節炎などが合併することがあります
  • 消化器症状:慢性下痢、吸収不良症候群、炎症性腸疾患様の症状
  • 血液学的異常:貧血、血小板減少、白血球減少などの血球減少
  • 悪性腫瘍のリスク増加:特にリンパ腫などのリスクが高まることが知られています
  • 肉芽腫形成:一部の病型では全身の臓器に肉芽腫が形成されることがあります
  • 気管支拡張症:繰り返す呼吸器感染により、気管支が不可逆的に拡張する状態

病態の分類

原発性抗体欠損症は、抗体産生の障害パターンにより、主に以下の3つのカテゴリーに分類されます:

1. 無ガンマグロブリン血症(Agammaglobulinemia)

血液中の免疫グロブリン(抗体)がほとんど検出されない、または著しく低下している状態です。B細胞の成熟過程に重大な障害があり、成熟B細胞がほとんど存在しません。最も代表的な疾患はX連鎖無ガンマグロブリン血症(XLA)で、BTK遺伝子の変異により発症します。通常、生後6ヶ月以降に繰り返す重症細菌感染症で発症します。

2. 高IgM症候群(Hyper IgM Syndrome)

IgG、IgA、IgEは著しく低下しているものの、IgMは正常または上昇している状態です。B細胞は存在しますが、抗体のクラススイッチ(IgMから他の免疫グロブリンへの変換)ができないことが原因です。CD40LG遺伝子変異によるX連鎖型が最も多く、細菌感染症に加えて、ニューモシスチス肺炎などの日和見感染症も合併しやすい特徴があります。

3. 分類不能型免疫不全症(Common Variable Immunodeficiency: CVID)

最も頻度の高い原発性抗体欠損症で、IgGが著しく低下し、IgAやIgMも低下していることが多い状態です。B細胞は存在しますが、形質細胞への分化や抗体産生能が障害されています。小児期から成人期まで幅広い年齢で発症し、繰り返す呼吸器感染症、自己免疫疾患、消化器症状、肉芽腫形成などの多彩な症状を呈します。原因遺伝子は多様で、約20-30%の症例で遺伝子変異が同定されます。

診断までの経過

原発性抗体欠損症は初期段階では無症状のことが多く、繰り返す感染症によって初めて疑われることが一般的です。診断が遅れると、繰り返す感染により気管支拡張症などの不可逆的な臓器障害をきたす可能性があります。早期診断と適切な治療(免疫グロブリン補充療法など)により、感染症の予防と合併症の軽減が可能です。

遺伝形式と原因遺伝子

原発性抗体欠損症は遺伝学的に非常に多様性が高く、常染色体優性(顕性)遺伝、常染色体劣性(潜性)遺伝、X連鎖遺伝のいずれの形式でも発症します。現在までに100以上の原因遺伝子が同定されていますが、特に分類不能型免疫不全症(CVID)では約70-80%の症例で遺伝学的原因が未だ特定されていません。

X連鎖遺伝形式

主に男性に発症する遺伝形式で、以下の遺伝子が知られています:

  • BTK遺伝子:X連鎖無ガンマグロブリン血症(XLA)の原因遺伝子。Brutonチロシンキナーゼをコードし、B細胞の成熟に必須です。男児の原発性抗体欠損症の中で最も頻度が高い病型です
  • CD40LG遺伝子:X連鎖高IgM症候群の原因遺伝子。CD40リガンドをコードし、B細胞の抗体クラススイッチに必要です。細菌感染に加えて日和見感染症のリスクも高くなります
  • IL2RG遺伝子:重症複合免疫不全症(SCID)の原因遺伝子ですが、抗体欠損も伴います。共通γ鎖をコードします
  • IKBKG遺伝子:色素失調症の原因遺伝子ですが、免疫不全も合併します
  • XIAP遺伝子:X連鎖リンパ増殖症候群の原因遺伝子の一つです

常染色体劣性(潜性)遺伝形式

両親から変異遺伝子を受け継いだ場合に発症する形式です:

  • AICDA遺伝子:活性化誘導シチジンデアミナーゼをコードし、抗体のクラススイッチと体細胞高頻度変異に必須です。高IgM症候群の原因となります
  • UNG遺伝子:ウラシルDNAグリコシラーゼをコードし、AICAと協調して抗体の多様性生成に関与します
  • CD19、CD79A、CD79B、CD81、IGLL1遺伝子:B細胞受容体複合体やシグナル伝達に関与し、無ガンマグロブリン血症の原因となります
  • RAG1、RAG2遺伝子:V(D)J組換えに必須の酵素をコードし、重症複合免疫不全症や抗体欠損症の原因となります
  • ADA遺伝子:アデノシンデアミナーゼをコードし、重症複合免疫不全症の原因遺伝子として知られています

常染色体優性(顕性)遺伝形式

片方の親から変異遺伝子を受け継ぐだけで発症する可能性がある形式です:

  • TNFRSF13B遺伝子(TACI):分類不能型免疫不全症(CVID)や選択的IgA欠損症に関与します。最も頻度の高いCVID関連遺伝子の一つです
  • TNFRSF13C遺伝子(BAFF-R):B細胞の生存に重要な受容体をコードします
  • NFKB1、NFKB2、NFKBIA遺伝子:NFκBシグナル経路に関与し、免疫応答の調節に重要です
  • PIK3CD、PIK3R1遺伝子:PI3Kシグナル経路に関与し、免疫細胞の機能調節に重要です
  • LRBA遺伝子:免疫調節に関与し、自己免疫症状を伴いやすいタイプの原因となります

当検査パネルでは、これらの原因遺伝子のうち、臨床的に重要な37遺伝子を対象としています。これにより、原発性抗体欠損症の主要な原因を効率的にスクリーニングすることが可能です。

ミネルバクリニックの原発性抗体欠損症遺伝子パネル検査の特徴

「原発性抗体欠損症 NGSパネル検査」とは、現在原発性抗体欠損症の原因として報告されている37の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。

従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。

何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、原発性抗体欠損症に関連する37遺伝子を一度に調べられる「原発性抗体欠損症 NGSパネル検査」を採用しています。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.費用がリーズナブル

一般的な医療機関で原発性抗体欠損症の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。

当院では、原発性抗体欠損症に関係するとされる37の遺伝子を一度に調べられる「原発性抗体欠損症 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)

2.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行える原発性抗体欠損症の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。

当院で行う「原発性抗体欠損症 NGSパネル検査」の場合、37の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。

3.一気にまとめてできる

臨床症状から原発性抗体欠損症を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。

当院で行う「原発性抗体欠損症 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な37の原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。

オプション

塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)

検査内容

「原発性抗体欠損症 NGSパネル検査」では、原発性抗体欠損症に関係するとされる37種類の遺伝子(ADA、AICDA、ATM、BLNK、BTK、CD19、CD40、CD40LG、CD79A、CD79B、CD81、CR2、DCLRE1C、ICOS、IGLL1、IKBKG、IL2RG、LRBA、LRRC8A、MRE11、MS4A1、NBN、NFKB2、NFKBIA、PIK3CD、PIK3R1、PLCG2、PRKCD、PTPRC、RAG1、RAG2、SH2D1A、TNFRSF13B、TNFRSF13C、UNG、VAV1、XIAP)をまとめて検査します。

「原発性抗体欠損症 NGSパネル検査」は、原発性抗体欠損症の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。

どんな人が受けたらいいの?

【原発性抗体欠損症の個人歴または家族歴のある方】に
「原発性抗体欠損症 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。

この検査は以下のような方に適しています:
・頻回の呼吸器感染症(副鼻腔炎、中耳炎、気管支炎、肺炎)を繰り返す方
・重症または難治性の細菌感染症がある方
・抗菌薬治療に反応しにくい、または治療後すぐに再発する感染症がある方
・慢性的な発熱、鼻閉、鼻漏がある方
・慢性下痢が続いている方
・皮膚の発疹や感染症を繰り返す方
・自己免疫疾患(自己免疫性溶血性貧血、血小板減少症など)を合併している方
・血液検査で免疫グロブリン(IgG、IgA、IgMなど)の低下が認められる方
・原発性抗体欠損症または免疫不全症の家族歴がある方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方

このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

遺伝子検査により原因が判明すると、原発性抗体欠損症の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、免疫グロブリン補充療法、予防的抗菌薬投与、感染症の早期発見と治療、ワクチン接種の適切な管理などを行うことができます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・他の免疫不全症や感染症との鑑別
・免疫グロブリン補充療法の適応判断と最適化
・予防的抗菌薬投与の必要性評価
・日和見感染症のリスク評価と予防
・自己免疫疾患や悪性腫瘍などの合併症の早期発見
・適切なワクチン接種計画の立案(生ワクチン禁忌の判断など)
・疾患の進行予測と長期的な管理計画の立案
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供

患者さんで病原性変異が同定された場合、遺伝形式に応じて家族の発症リスクが異なります。X連鎖遺伝の場合は男児が発症するリスクがあり、常染色体劣性遺伝の場合は兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症するリスクは50%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。

対象遺伝子

詳しくはこちら

ADA, AICDA, ATM, BLNK, BTK, CD19, CD40, CD40LG, CD79A, CD79B, CD81, CR2, DCLRE1C, ICOS, IGLL1, IKBKG, IL2RG, LRBA, LRRC8A, MRE11, MS4A1, NBN, NFKB2, NFKBIA, PIK3CD, PIK3R1, PLCG2, PRKCD, PTPRC, RAG1, RAG2, SH2D1A, TNFRSF13B, TNFRSF13C, UNG, VAV1, XIAP ( 37遺伝子 )

各遺伝子の詳細:
・ADA遺伝子:
アデノシンデアミナーゼをコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、重症複合免疫不全症(SCID)の約10-15%の原因となります。酵素補充療法や造血幹細胞移植が治療選択肢となります。

・AICDA遺伝子:
活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、高IgM症候群2型(HIGM2)の原因となります。抗体のクラススイッチと体細胞高頻度変異に必須です。

・ATM遺伝子:
毛細血管拡張性運動失調症の原因遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、免疫不全、神経症状、悪性腫瘍のリスク増加を特徴とします。DNA修復に関与します。

・BLNK遺伝子:
B細胞リンカータンパク質をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、無ガンマグロブリン血症の原因となります。B細胞受容体シグナル伝達に重要です。

・BTK遺伝子:
Brutonチロシンキナーゼをコードする遺伝子。X連鎖無ガンマグロブリン血症(XLA)の原因遺伝子で、男性に発症します。B細胞の成熟に必須で、分子標的治療薬の開発も進んでいます。

・CD19遺伝子:
B細胞受容体複合体の一部をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、無ガンマグロブリン血症の原因となります。

・CD40遺伝子:
TNF受容体ファミリーのメンバーをコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、高IgM症候群の原因となります。

・CD40LG遺伝子:
CD40リガンドをコードする遺伝子。X連鎖高IgM症候群(HIGM1)の原因遺伝子で、最も頻度の高い高IgM症候群です。抗体のクラススイッチに必須で、日和見感染症のリスクが高くなります。

・CD79A遺伝子:
B細胞受容体のシグナル伝達分子をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、無ガンマグロブリン血症の原因となります。

・CD79B遺伝子:
B細胞受容体のシグナル伝達分子をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、無ガンマグロブリン血症の原因となります。

・CD81遺伝子:
B細胞の活性化に関与するテトラスパニンをコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、抗体欠損症の原因となります。

・CR2遺伝子:
補体受容体2型(CD21)をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、分類不能型免疫不全症(CVID)様の症状を呈します。

・DCLRE1C遺伝子:
DNAクロスリンク修復酵素をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、重症複合免疫不全症(SCID)の原因となります。

・ICOS遺伝子:
誘導性共刺激分子をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、分類不能型免疫不全症(CVID)の原因となります。

・IGLL1遺伝子:
免疫グロブリンλ様ポリペプチド1をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、無ガンマグロブリン血症の原因となります。

・IKBKG遺伝子(NEMO):
IκBキナーゼγをコードする遺伝子。X連鎖遺伝形式で、色素失調症や免疫不全を引き起こします。

・IL2RG遺伝子:
インターロイキン2受容体γ鎖(共通γ鎖)をコードする遺伝子。X連鎖重症複合免疫不全症(X-SCID)の原因遺伝子で、最も頻度の高いSCIDです。

・LRBA遺伝子:
LPS応答性ベージュ様アンカータンパク質をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、分類不能型免疫不全症(CVID)や自己免疫疾患を引き起こします。

・LRRC8A遺伝子:
ロイシンリッチリピート含有8ファミリーメンバーAをコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、無ガンマグロブリン血症の原因となります。

・MRE11遺伝子:
DNA二本鎖切断修復に関与する遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、毛細血管拡張性運動失調症様症候群の原因となります。

・MS4A1遺伝子(CD20):
B細胞表面抗原CD20をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、抗体欠損症の原因となります。

・NBN遺伝子:
ナイブリンをコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、ナイミーヘン染色体不安定症候群の原因となります。DNA修復に関与し、免疫不全と悪性腫瘍のリスク増加を特徴とします。

・NFKB2遺伝子:
NFκB2転写因子をコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式で、分類不能型免疫不全症(CVID)の原因となります。

・NFKBIA遺伝子:
NFκB阻害因子αをコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式で、免疫不全症の原因となります。

・PIK3CD遺伝子:
ホスファチジルイノシトール3キナーゼδをコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式(機能獲得型変異)で、活性化PI3Kδ症候群(APDS)の原因となります。分子標的治療薬が利用可能です。

・PIK3R1遺伝子:
ホスファチジルイノシトール3キナーゼ調節サブユニットをコードする遺伝子。常染色体優性または劣性遺伝形式で、活性化PI3Kδ症候群様の症状を呈します。

・PLCG2遺伝子:
ホスホリパーゼCγ2をコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式で、抗体欠損症や自己免疫疾患の原因となります。

・PRKCD遺伝子:
プロテインキナーゼCδをコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、抗体欠損症や自己免疫疾患の原因となります。

・PTPRC遺伝子(CD45):
タンパク質チロシンホスファターゼ受容体Cをコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、重症複合免疫不全症(SCID)の原因となります。

・RAG1遺伝子:
組換え活性化遺伝子1をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、重症複合免疫不全症(SCID)やオーメン症候群の原因となります。V(D)J組換えに必須です。

・RAG2遺伝子:
組換え活性化遺伝子2をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、RAG1と同様にSCIDの原因となります。

・SH2D1A遺伝子(SAP):
SH2ドメイン含有1Aをコードする遺伝子。X連鎖リンパ増殖症候群1型(XLP1)の原因遺伝子で、EBウイルス感染に対する異常な免疫応答を特徴とします。

・TNFRSF13B遺伝子(TACI):
TNF受容体スーパーファミリーメンバー13Bをコードする遺伝子。常染色体優性または劣性遺伝形式で、分類不能型免疫不全症(CVID)や選択的IgA欠損症の最も頻度の高い原因遺伝子の一つです。

・TNFRSF13C遺伝子(BAFF-R):
B細胞活性化因子受容体をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、分類不能型免疫不全症(CVID)の原因となります。

・UNG遺伝子:
ウラシルDNAグリコシラーゼをコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、高IgM症候群5型(HIGM5)の原因となります。AICAと協調して抗体の多様性生成に関与します。

・VAV1遺伝子:
グアニンヌクレオチド交換因子をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、重症複合免疫不全症(SCID)の原因となります。

・XIAP遺伝子:
X連鎖アポトーシス阻害タンパク質をコードする遺伝子。X連鎖リンパ増殖症候群2型(XLP2)の原因遺伝子で、EBウイルス感染や炎症性腸疾患のリスクが高まります。

遺伝子特記事項

CD40LG遺伝子:現在の検査方法では、この遺伝子の三塩基リピート伸長は評価されません。

カバレッジ

カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。

≥99% at 20x(読み取り深度平均20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
 検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

検査の限界

詳しくはこちら

すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。

低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。

この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。

※この検査パネルでは、37の原因遺伝子のみを対象としています。特に分類不能型免疫不全症(CVID)では約70~80%の症例で既知の遺伝子に変異が見つかりません。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。臨床症状と免疫学的検査に基づいた診断と管理が引き続き重要です。

結果が出るまでの期間

2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。

料金

税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
頻回の呼吸器感染症(副鼻腔炎、中耳炎、気管支炎、肺炎)を繰り返す方、重症または難治性の感染症がある方、抗菌薬治療に反応しにくい感染症がある方におすすめします。また、血液検査で免疫グロブリン(IgG、IgA、IgM)の低下が認められる方、自己免疫疾患を合併している方、家族に免疫不全症がある場合も検査をご検討ください。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
原発性抗体欠損症と診断されたら、どのような治療がありますか?
免疫グロブリン補充療法が主な治療法です。定期的に免疫グロブリンを静脈内または皮下に投与することで、感染症の予防が可能です。また、予防的抗菌薬投与、感染症の早期発見と治療、適切なワクチン接種管理なども重要です。一部の病型では造血幹細胞移植や遺伝子治療が選択肢となることもあります。
家族も検査を受ける必要がありますか?
遺伝形式によって家族の発症リスクが異なります。X連鎖遺伝の場合、患者さんの男性のきょうだいや男児が発症するリスクがあります。常染色体劣性遺伝の場合、兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。常染色体優性遺伝の場合、お子さんが発症するリスクは50%です。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
特に分類不能型免疫不全症(CVID)では約70~80%の症例で既知の遺伝子に変異が見つかりません。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。臨床症状と免疫学的検査(免疫グロブリン値、B細胞数、ワクチン抗体価など)に基づいた診断と管理が引き続き重要です。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。当院では臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が診療と遺伝カウンセリングを行います。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
遺伝形式によって子どもへの影響が異なります。X連鎖遺伝の場合は男児が発症する可能性があり、常染色体劣性遺伝の場合は保因者同士のカップルで子どもが発症する確率は25%、常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症する確率は50%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
無ガンマグロブリン血症、高IgM症候群、分類不能型免疫不全症の違いは何ですか?
無ガンマグロブリン血症は血液中の抗体がほとんど検出されない状態で、B細胞の成熟障害が原因です。高IgM症候群はIgMは正常または上昇していますが、IgG、IgA、IgEが低下している状態で、抗体のクラススイッチができないことが原因です。分類不能型免疫不全症(CVID)は最も頻度が高く、IgGの著しい低下とIgAやIgMの低下を特徴とし、B細胞は存在しますが抗体産生能が障害されています。当検査により原因遺伝子を特定することで、より正確な診断と適切な治療方針の決定が可能になります。
予後はどうですか?
早期診断と適切な治療(免疫グロブリン補充療法など)により、多くの患者さんは感染症を予防し、ほぼ正常な生活を送ることができます。ただし、診断が遅れると繰り返す感染により気管支拡張症などの不可逆的な臓器障害をきたす可能性があります。定期的な医療フォローアップと適切な治療により、予後は大きく改善します。
生ワクチンは接種できますか?
原発性抗体欠損症の患者さん、特に重症複合免疫不全症(SCID)や重症の抗体欠損症の方は、生ワクチン(BCG、麻疹、風疹、おたふくかぜ、水痘、ロタウイルスなど)の接種は禁忌です。遺伝子検査により原因を特定することで、ワクチン接種の適応を適切に判断できます。不活化ワクチンは安全に接種できますが、抗体産生が不十分な場合があります。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では臨床的に重要な37の原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

仲田洋美のプロフィールはこちら