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プラダー・ウィリ症候群/アンジェルマン症候群 メチル化解析NGS遺伝子検査|ミネルバクリニック

プラダー・ウィリ症候群/アンジェルマン症候群 メチル化解析NGS遺伝子検査|ミネルバクリニック

プラダー・ウィリ症候群とは

プラダー・ウィリ症候群(Prader-Willi syndrome: PWS)は、15番染色体q11-q13領域の父親由来の遺伝子の機能喪失により発症する遺伝性神経発達症候群です。約15,000人に1人の割合で発症し、性別や人種による差はありません。指定難病193として認定されています。

主な症状

プラダー・ウィリ症候群の症状は年齢とともに変化し、多岐にわたります:

新生児期

  • 著しい筋緊張低下(フロッピーインファント)
  • 哺乳困難、体重増加不良
  • 経管栄養が必要となることも多い
  • 泣き声が弱い、または欠如
  • 外性器低形成(男児では停留精巣、ミクロペニスが90%以上に認められる)
  • 色素低下(髪や皮膚の色が薄い)

幼児期以降

  • 3~4歳頃から過食傾向が始まる
  • 満腹中枢の異常による食欲のコントロール不全
  • 肥満(過食による)
  • 低身長(成人男性で平均150cm弱、女性で140cm弱)
  • 性腺機能不全、二次性徴の遅れ
  • 発達遅滞、知的障害(軽度から中等度)
  • 特徴的な顔貌(アーモンド型の眼、狭い前額部、下向きの口角、鼻柱が狭い、上唇が薄い)
  • 小さな手足(小肢端症)
  • 側弯症

行動・性格の特徴

  • こだわりが強い
  • 頑固な性格
  • かんしゃく発作
  • 皮膚掻破(skin picking)
  • 強迫的な行動

合併症

肥満に伴い、糖尿病が10歳以上の患者さんの約30%に発症します。また、睡眠障害(睡眠時無呼吸症候群など)も高頻度で認められます。

近年では早期診断と適切な管理・治療(成長ホルモン治療、食事管理、リハビリテーションなど)により、肥満患者の減少など、予後が改善しています。多職種チーム(小児科医、内分泌科医、遺伝科医、精神科医、臨床心理士、栄養士、理学療法士など)による包括的なケアが重要です。

アンジェルマン症候群とは

アンジェルマン症候群(Angelman syndrome: AS)は、15番染色体q11-q13領域の母親由来の遺伝子(主にUBE3A遺伝子)の機能喪失により発症する遺伝性神経発達症候群です。約12,000~20,000人に1人の割合で発症し、性別や人種による差はありません。指定難病201として認定されています。

主な症状

  • 重度の知的障害、発達遅滞
  • 言語発達の著しい遅れ(発語がない、あっても非常に少ない)
  • 運動障害(失調性歩行、あやつり人形様歩行)
  • てんかん発作(約80%以上に認められる)
  • 容易に引き起こされる笑い(頻繁な笑顔)
  • 明るく幸福感の高い性格
  • 手のひらひらさせる動き(hand flapping)
  • 睡眠障害
  • 小頭症
  • 特徴的な顔貌(顎が尖っている、口が大きい、舌の突出)
  • 色素異常(髪や皮膚、眼の色が薄い)
  • 側弯症
  • 水への興味・関心が強い

発症時期

乳児期早期には哺乳困難や筋緊張低下などの非特異的な症状が見られることがあります。生後6ヶ月頃から発達の遅れが明らかになり始め、特徴的な行動(頻繁な笑顔、手のひらひらさせる動きなど)が目立つようになることで診断に至ることが多いです。

予後

適切なてんかんのコントロールや感染症への対応などが行われれば、平均寿命は一般の人々と大きく変わらないか、それに近い水準にあります。多くの方が成人期以降まで生存することが期待できます。ただし、てんかんの重症度や呼吸器系の問題によって予後は個人差があります。

インプリンティング疾患について

プラダー・ウィリ症候群とアンジェルマン症候群は、いずれも15番染色体q11-q13領域に関連するインプリンティング疾患です。この疾患を理解するには、ゲノムインプリンティングの仕組みを知ることが重要です。

ゲノムインプリンティングとは

通常、私たちは父親と母親から遺伝子を1つずつ受け継ぎ、両方の遺伝子が等しく働きます(発現します)。しかし、インプリント遺伝子と呼ばれる特別な遺伝子群は、父親由来か母親由来かによって発現の仕方が異なります。

  • 父性発現遺伝子(PEG: Paternally Expressed Gene):父親由来の遺伝子のみが働き、母親由来の遺伝子は働かない(メチル化により不活性化)
  • 母性発現遺伝子(MEG: Maternally Expressed Gene):母親由来の遺伝子のみが働き、父親由来の遺伝子は働かない(メチル化により不活性化)

このような親由来による発現の違いは、DNAメチル化というエピジェネティックな修飾(DNA配列そのものは変わらないが、遺伝子の働き方が変わる仕組み)によって制御されています。

プラダー・ウィリ症候群とアンジェルマン症候群の発症機序

15番染色体q11-q13領域には、父性発現遺伝子群と母性発現遺伝子群が存在します:

  • プラダー・ウィリ症候群:父性発現遺伝子(SNRPN、NDNなど)の機能喪失により発症
    • 原因の約75%:父親由来の15q11-q13領域の欠失
    • 原因の約25%:母性片親性ダイソミー(15番染色体が両方とも母親由来)
    • まれな原因:インプリンティングセンター(IC)の異常
  • アンジェルマン症候群:母性発現遺伝子(主にUBE3A遺伝子)の機能喪失により発症
    • 原因の約70%:母親由来の15q11-q13領域の欠失
    • 原因の約10%:UBE3A遺伝子の変異
    • 原因の約7%:父性片親性ダイソミー(15番染色体が両方とも父親由来)
    • 原因の約3%:インプリンティング異常
    • 原因不明:約10%

インプリンティング疾患の特徴

インプリンティング疾患は、DNAの塩基配列自体の変異だけでなく、DNAメチル化などのエピジェネティックな異常によっても発症します。そのため、診断には通常のDNA配列解析に加えて、メチル化解析が必須となります。当院の検査では、次世代シーケンシング(NGS)による塩基配列解析と、メチル化特異的多重ライゲーション依存プローブ増幅法(MS-MLPA)によるメチル化解析を組み合わせることで、包括的な診断を可能にしています。

ミネルバクリニックのプラダー・ウィリ/アンジェルマン症候群遺伝子検査の特徴

「プラダー・ウィリ/アンジェルマン症候群 メチル化解析NGSパネル検査」とは、プラダー・ウィリ症候群とアンジェルマン症候群の診断に必要な、次世代シーケンシング(NGS)による遺伝子解析と、メチル化特異的多重ライゲーション依存プローブ増幅法(MS-MLPA)によるメチル化解析を組み合わせた包括的な検査です。

これらの疾患は複雑なインプリンティング異常によって発症するため、分子診断なしに臨床症状だけで確定診断することは困難です。当検査では、欠失、片親性ダイソミー、インプリンティング異常、UBE3A遺伝子変異など、多様な原因を一度の検査で包括的に評価できます。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.包括的な診断が可能

プラダー・ウィリ症候群とアンジェルマン症候群の診断には、塩基配列の解析だけでなく、メチル化解析が必須です。

当院の検査では、MS-MLPAによるメチル化解析と、NGSによる塩基配列解析・コピー数解析(欠失・重複の検出)を組み合わせることで、プラダー・ウィリ症候群の99%以上、アンジェルマン症候群の90%以上の原因を検出できます。

  • MS-MLPA(メチル化特異的MLPA):15q11.2領域のインプリンティング異常を検出し、プラダー・ウィリ症候群の99%以上で異常を検出
  • NGSによる塩基配列解析:UBE3A遺伝子などの塩基配列変異を検出
  • コピー数変異(CNV)解析:欠失や重複を検出

2.費用がリーズナブル

一般的な医療機関でプラダー・ウィリ症候群やアンジェルマン症候群の遺伝子検査を行う場合、複数の検査を段階的に行う必要があり、費用が高額になることがあります。

当院では、メチル化解析とNGSパネル検査を組み合わせた包括的な検査を、リーズナブルな料金で受けることができます。(費用はページの一番下をご確認ください。)

3.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行える遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、段階的に検査を追加する場合、さらに時間がかかります。

当院で行う「プラダー・ウィリ/アンジェルマン症候群 メチル化解析NGSパネル検査」の場合、包括的な検査を2~3週間程度で完了できます。

オプション

塩基配列解析 (料金に含まれる)
欠失・重複解析 (料金に含まれる)
メチル化解析(MS-MLPA) (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)

検査内容

「プラダー・ウィリ/アンジェルマン症候群 メチル化解析NGSパネル検査」では、以下の3つの遺伝子(NDN、SNRPN、UBE3A)の塩基配列解析、コピー数変異解析、および15q11.2領域のメチル化解析を行います。

重要:NDN遺伝子はメチル化検査のみの対象です。NDN遺伝子の塩基配列変異がプラダー・ウィリ症候群と関連することは知られていないため、この遺伝子の塩基配列変異は解析されません。

この検査は、プラダー・ウィリ症候群およびアンジェルマン症候群の遺伝的原因を包括的に評価し、確定診断と適切な管理のための重要な情報を提供します。

どんな人が受けたらいいの?

【プラダー・ウィリ症候群またはアンジェルマン症候群の臨床症状がある方、または家族歴のある方】に
「プラダー・ウィリ/アンジェルマン症候群 メチル化解析NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。

プラダー・ウィリ症候群が疑われる方:
・新生児期に著しい筋緊張低下と哺乳困難があった方
・幼児期以降に過食と肥満が認められる方
・低身長がある方
・性腺機能不全、二次性徴の遅れがある方
・発達遅滞、知的障害がある方
・特徴的な顔貌(アーモンド型の眼など)がある方
・小さな手足がある方
・こだわりの強さ、かんしゃくなどの行動特性がある方
・原因不明のてんかん、発達遅滞、筋緊張低下がある小児

アンジェルマン症候群が疑われる方:
・重度の知的障害、発達遅滞がある方
・言語発達の著しい遅れがある方
・失調性歩行がある方
・てんかん発作がある方
・頻繁な笑顔、明るく幸福感の高い性格
・手のひらひらさせる動き(hand flapping)がある方
・睡眠障害がある方
・小頭症がある方
・特徴的な顔貌(顎が尖っている、口が大きいなど)がある方
・原因不明のてんかん、発達遅滞、筋緊張低下がある小児

その他:
・プラダー・ウィリ症候群またはアンジェルマン症候群の家族歴がある方
・将来子どもを持つことを考えている方で、リスク評価を希望される方

このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

遺伝子検査により原因が判明すると、プラダー・ウィリ症候群またはアンジェルマン症候群の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・分子診断に基づいた予後予測
・適切な治療計画の立案(成長ホルモン治療、栄養管理、てんかん治療など)
・合併症のリスク評価と早期発見(糖尿病、側弯症、てんかんなど)
・適切なリハビリテーションプログラムの立案
・行動管理と教育支援計画の立案
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・遺伝カウンセリングを通じた適切な情報提供

患者さんで病原性変異が同定された場合、その原因のタイプ(欠失、片親性ダイソミー、インプリンティング異常など)によって、次子の再発リスクが異なります。欠失や片親性ダイソミーの場合、次子の再発リスクは1%未満ですが、インプリンティングセンターの変異の場合は最大50%となることがあります。遺伝カウンセリングを通じて、適切なリスク評価と家族計画の支援を行います。

対象遺伝子

詳しくはこちら

NDN(メチル化検査のみ)、SNRPN、UBE3A ( 3遺伝子 )

各遺伝子の詳細:
・NDN(Necdin)遺伝子:
父性発現遺伝子(父親由来のみが発現)。15番染色体q11.2領域に位置し、細胞周期制御やアポトーシス制御に関与すると考えられています。プラダー・ウィリ症候群の原因領域内に存在しますが、この遺伝子の塩基配列変異とプラダー・ウィリ症候群との関連は知られていないため、当検査ではメチル化検査のみの対象となります。

・SNRPN(Small Nuclear Ribonucleoprotein Polypeptide N)遺伝子:
父性発現遺伝子(父親由来のみが発現)。15番染色体q11.2領域に位置し、スプライシングに関与する小核リボ核タンパク質をコードします。プラダー・ウィリ症候群の主要な原因遺伝子領域の一つで、この遺伝子領域のインプリンティング異常がプラダー・ウィリ症候群の発症に関与します。当検査では塩基配列解析、コピー数変異解析、メチル化解析を行います。

・UBE3A(Ubiquitin Protein Ligase E3A)遺伝子:
脳内では母性発現遺伝子(母親由来のみが発現、脳以外の組織では両親由来が発現)。15番染色体q11-q13領域に位置し、ユビキチンリガーゼ活性を持つE6-AP(E6-associated protein)をコードします。この遺伝子の母親由来の機能喪失がアンジェルマン症候群の主要な原因となります。当検査では塩基配列解析、コピー数変異解析、メチル化解析を行います。UBE3A遺伝子の点変異は、アンジェルマン症候群患者の約10%に認められます。

15q11.2領域のメチル化解析(MS-MLPA):
MS-MLPAは、15番染色体q11.2領域のインプリンティング異常を検出する高感度な手法です。この検査により、以下を評価できます:
・父親由来および母親由来の15q11.2領域の存在
・メチル化パターンの異常(インプリンティング異常)
・欠失の検出
・片親性ダイソミーの推定

MS-MLPAはプラダー・ウィリ症候群の99%以上で異常を検出します。また、UBE3A遺伝子の塩基配列解析とコピー数変異解析と組み合わせることで、アンジェルマン症候群の90%以上で異常を検出します。

カバレッジ

カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。

≥99% at 20x(読み取り深度20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
 検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

検査の限界

詳しくはこちら

すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。

低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。欠失/重複解析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。

この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。

検査の検出率について:
・プラダー・ウィリ症候群:MS-MLPAにより99%以上で異常を検出
・アンジェルマン症候群:MS-MLPAとUBE3A遺伝子の塩基配列解析・コピー数変異解析を組み合わせることで、90%以上で異常を検出

※アンジェルマン症候群の約10%は、既知の遺伝学的原因が特定されません。検査で病原性変異が検出されなくても、臨床症状に基づく診断は可能です。

※NDN遺伝子の塩基配列変異は解析されません。NDN遺伝子の変異とプラダー・ウィリ症候群との関連は知られていないためです。

結果が出るまでの期間

2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。

料金

税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

プラダー・ウィリ症候群とアンジェルマン症候群の違いは何ですか?
両疾患とも15番染色体q11-q13領域のインプリンティング異常により発症しますが、親由来が異なります。プラダー・ウィリ症候群は父親由来の遺伝子の機能喪失、アンジェルマン症候群は母親由来の遺伝子の機能喪失により発症します。症状も大きく異なり、プラダー・ウィリ症候群は過食・肥満・低身長が特徴的、アンジェルマン症候群は重度の知的障害・てんかん・頻繁な笑顔が特徴的です。
どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
新生児期の著しい筋緊張低下と哺乳困難、幼児期以降の過食と肥満、低身長、性腺機能不全がある場合はプラダー・ウィリ症候群を、重度の知的障害、言語発達の遅れ、失調性歩行、てんかん、頻繁な笑顔がある場合はアンジェルマン症候群を疑います。原因不明のてんかん、発達遅滞、筋緊張低下がある小児にもお勧めします。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
メチル化解析とは何ですか?なぜ必要なのですか?
メチル化解析は、DNAのメチル化パターンを調べる検査です。プラダー・ウィリ症候群とアンジェルマン症候群はインプリンティング疾患で、DNAメチル化の異常が主な原因となるため、通常の塩基配列解析だけでは診断できません。MS-MLPA(メチル化特異的MLPA)により、15q11.2領域のメチル化異常、欠失、片親性ダイソミーを検出できます。
家族も検査を受ける必要がありますか?
ほとんどの場合、欠失や片親性ダイソミーは偶発的に起こるため、次子の再発リスクは1%未満です。ただし、インプリンティングセンターの変異が原因の場合、親がその変異を持っている可能性があり、次子の再発リスクは最大50%となることがあります。患者さんで病原性変異が同定された場合、遺伝カウンセリングを通じて、ご家族の検査の必要性を個別に評価します。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
プラダー・ウィリ症候群の場合、MS-MLPAにより99%以上で異常が検出されますが、アンジェルマン症候群の場合は約10%で原因が特定されません。検査で病原性変異が検出されなくても、臨床症状に基づいて診断することは可能です。症状と経過に基づいた管理が引き続き重要です。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
治療はどのように行われますか?
プラダー・ウィリ症候群では、成長ホルモン治療、厳格な食事管理・カロリー制限、リハビリテーション、行動療法などが行われます。アンジェルマン症候群では、てんかんに対する抗てんかん薬、理学療法、作業療法、言語療法などが行われます。両疾患とも、多職種チームによる包括的なケアが重要です。
予後はどうですか?
プラダー・ウィリ症候群では、早期診断と適切な管理(成長ホルモン治療、食事管理など)により、予後が改善しています。アンジェルマン症候群では、適切なてんかんのコントロールが行われれば、平均寿命は一般の人々と大きく変わりません。両疾患とも、早期診断と適切な管理により、生活の質(QOL)の向上が期待できます。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
ほとんどの場合、欠失や片親性ダイソミーは偶発的に起こるため、次子の再発リスクは1%未満です。ただし、まれにインプリンティングセンターの変異が親から遺伝する場合があり、その場合は最大50%の再発リスクがあります。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では、MS-MLPAによるメチル化解析と、NGSによる塩基配列解析・コピー数変異解析を一度の検査で包括的に実施できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。


プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

仲田洋美のプロフィールはこちら