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橋小脳低形成症NGS遺伝子パネル検査|ミネルバクリニック

橋小脳低形成症NGS遺伝子パネル検査|ミネルバクリニック

橋小脳低形成症とは

橋小脳低形成症(Pontocerebellar Hypoplasia: PCH)は、脳幹の一部である橋(pons)と小脳(cerebellum)の形成不全を特徴とする稀な神経変性疾患群です。胎児期から発症し、進行性の経過をたどります。脳の正常な発達が妨げられることで、重度の運動障害や知的障害を引き起こします。

本疾患は遺伝学的にも臨床的にも非常に多様性が高く、現在までに少なくとも17以上のサブタイプ(PCH1~PCH17)が報告されています。各サブタイプは原因遺伝子、臨床症状、画像所見、発症年齢などが異なり、常染色体劣性遺伝形式で継承されることがほとんどです。

橋小脳低形成症は非常に稀な疾患で、正確な有病率は不明ですが、10万人あたり1人未満と推定されています。PCH1とPCH2が最も頻度の高いサブタイプとして知られています。本疾患は神経画像検査(MRI)で橋と小脳の容積減少として確認され、小頭症や重度の発達遅滞を伴うことが特徴的です。

症状と病態

橋小脳低形成症の主な症状は、橋と小脳の形成不全に起因する重度の神経学的障害です。多くの症例では出生時または乳児期早期から症状が明らかとなり、進行性の経過をたどります。

主要症状

  • 小頭症(出生時から、または進行性に頭囲が小さくなる)
  • 重度の発達遅滞(運動発達・認知発達の著しい遅れ)
  • 筋緊張異常(低緊張または痙縮)
  • 重度の運動障害(座位・歩行の獲得困難)
  • 嚥下障害・摂食困難
  • 呼吸障害(早期に人工呼吸管理が必要となることがある)
  • てんかん発作(一部のサブタイプで認められる)
  • 視覚障害(視神経萎縮を伴うことがある)
  • ジストニア、舞踏運動、アテトーゼなどの不随意運動

サブタイプによる特徴

橋小脳低形成症は遺伝子変異によって異なる臨床症状パターンを示します:

  • PCH1型:VRK1、EXOSC3、EXOSC8、EXOSC9遺伝子変異によって引き起こされ、脊髄前角細胞の変性を伴い、脊髄性筋萎縮症(SMA)と類似した運動ニューロン障害を呈します。乳児期早期から重度の筋力低下、呼吸不全を伴うことが特徴です。
  • PCH2型:TSEN2、TSEN34、TSEN54、RARS2遺伝子変異が原因で、最も頻度の高いサブタイプです。進行性小頭症、重度の知的障害、ジストニア、舞踏運動を特徴とします。てんかん発作は比較的稀です。
  • PCH4型:TSEN54遺伝子変異によって引き起こされ、PCH2に類似しますが、多小脳回症(polymicrogyria)などの大脳皮質形成異常を伴うことがあります。
  • PCH6型:RARS2遺伝子変異が原因で、ミトコンドリア機能障害を伴います。浮腫、肝障害などの全身症状を呈することがあります。
  • X連鎖型MICPCH:CASK遺伝子変異(X連鎖)によって引き起こされ、女性に発症します。小頭症、橋小脳低形成、視神経萎縮を特徴とします。

進行と予後

橋小脳低形成症は一般的に予後不良の疾患です。多くの症例では乳児期または幼児期早期に死亡します。特にPCH1型では呼吸不全により生後数ヶ月から数年以内に死亡することが多いです。PCH2型では生存期間が比較的長く、学童期まで生存する症例もありますが、重度の神経学的障害が持続します。いずれのサブタイプでも、座位や歩行の獲得は困難で、生涯にわたって全面的な介護が必要となります。

遺伝形式と原因遺伝子

橋小脳低形成症は遺伝学的に非常に多様性が高く、現在までに17以上のサブタイプが同定されています。ほとんどのサブタイプは常染色体劣性遺伝形式で継承されますが、CASK遺伝子変異によるX連鎖型も存在します。

常染色体劣性遺伝形式

最も一般的な遺伝形式で、以下の遺伝子が知られています:

  • VRK1遺伝子:PCH1型の原因遺伝子の一つ。ワクシニアウイルス関連キナーゼ1をコードし、細胞周期調節、神経細胞の増殖に関与します。脊髄前角細胞の変性を伴い、脊髄性筋萎縮症と類似した臨床像を示します。
  • EXOSC3遺伝子:PCH1型の主要な原因遺伝子。エキソソーム複合体の構成要素をコードし、RNA代謝に関与します。
  • TSEN2、TSEN34、TSEN54遺伝子:PCH2型およびPCH4型の原因遺伝子。tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ複合体の構成要素をコードし、tRNA成熟に必須です。
  • RARS2遺伝子:PCH6型の原因遺伝子。ミトコンドリアアルギニルtRNA合成酵素をコードし、ミトコンドリアタンパク質合成に関与します。
  • SEPSECS遺伝子:セレノシステインtRNA合成に関与する遺伝子。PCH2様の表現型を示します。

X連鎖遺伝形式

  • CASK遺伝子:X連鎖遺伝形式で、主に女性に発症します(MICPCH: microcephaly with pontocerebellar hypoplasia)。シナプス形成とシグナル伝達に関与するタンパク質をコードします。小頭症、橋小脳低形成、視神経萎縮を特徴とします。
  • OPHN1遺伝子:X連鎖知的障害の原因遺伝子で、橋小脳低形成を伴うことがあります。Rhoファミリー低分子量GTPアーゼ活性化タンパク質をコードします。

当検査パネルでは、これらの原因遺伝子のうち、臨床的に重要な9遺伝子(CASK、EXOSC3、OPHN1、RARS2、SEPSECS、TSEN2、TSEN34、TSEN54、VRK1)を対象としています。これにより、橋小脳低形成症の主要なサブタイプを効率的にスクリーニングすることが可能です。

ミネルバクリニックの橋小脳低形成症遺伝子パネル検査の特徴

「橋小脳低形成症 NGSパネル検査」とは、現在橋小脳低形成症の原因として報告されている9つの遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。

従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。

何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、橋小脳低形成症に関連する9遺伝子を一度に調べられる「橋小脳低形成症 NGSパネル検査」を採用しています。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.費用がリーズナブル

一般的な医療機関で橋小脳低形成症の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。

当院では、橋小脳低形成症に関係するとされる9つの遺伝子を一度に調べられる「橋小脳低形成症 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)

2.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行える橋小脳低形成症の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。

当院で行う「橋小脳低形成症 NGSパネル検査」の場合、9つの遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。

3.一気にまとめてできる

臨床症状や画像所見から橋小脳低形成症を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。

当院で行う「橋小脳低形成症 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な9つの原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。

オプション

塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)

検査内容

「橋小脳低形成症 NGSパネル検査」では、橋小脳低形成症に関係するとされる9種類の遺伝子(CASK、EXOSC3、OPHN1、RARS2、SEPSECS、TSEN2、TSEN34、TSEN54、VRK1)をまとめて検査します。

「橋小脳低形成症 NGSパネル検査」は、橋小脳低形成症の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。

どんな人が受けたらいいの?

【橋小脳低形成症の個人歴または家族歴のある方】に
「橋小脳低形成症 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。

この検査は以下のような方に適しています:
・神経画像検査(MRI)で橋と小脳の容積減少が認められた方
・小頭症(出生時または進行性)がある方
・重度の発達遅滞(運動発達・認知発達の著しい遅れ)がある方
・筋緊張異常(低緊張または痙縮)がある方
・重度の運動障害がある方
・嚥下障害・摂食困難がある方
・呼吸障害がある方
・てんかん発作がある方
・ジストニア、舞踏運動などの不随意運動がある方
・橋小脳低形成症の家族歴がある方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方

このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

遺伝子検査により原因が判明すると、橋小脳低形成症の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切な症状管理、栄養管理、呼吸管理、定期的なモニタリングを行うことができます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・サブタイプの特定による予後予測
・他の神経変性疾患や代謝性疾患との鑑別
・適切な症状管理(抗てんかん薬の選択など)
・栄養管理(経管栄養の適応判断)
・呼吸管理(人工呼吸管理の適応判断)
・合併症の早期発見と管理
・リハビリテーションプログラムの立案
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供

患者さんで病原性変異が同定された場合、ほとんどのサブタイプは常染色体劣性遺伝形式のため、兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。X連鎖型(CASK、OPHN1遺伝子変異)の場合、遺伝カウンセリングにより家族のリスクを評価することが重要です。

対象遺伝子

詳しくはこちら

CASK, EXOSC3, OPHN1, RARS2, SEPSECS, TSEN2, TSEN34, TSEN54, VRK1 ( 9遺伝子 )

各遺伝子の詳細:
・CASK遺伝子:
カルシウム/カルモジュリン依存性セリンプロテインキナーゼをコードするX連鎖遺伝子。シナプス形成とシグナル伝達に関与します。変異により、小頭症、橋小脳低形成、視神経萎縮を特徴とするX連鎖型MICPCH(microcephaly with pontocerebellar hypoplasia)を引き起こします。主に女性に発症します。

・EXOSC3遺伝子:
エキソソーム複合体構成要素3をコードする遺伝子。PCH1型の主要な原因遺伝子です。RNA代謝に関与し、特に3’→5’方向のRNA分解に重要な役割を果たします。変異により、脊髄前角細胞の変性を伴う橋小脳低形成症を引き起こします。

・OPHN1遺伝子:
オリゴフレニン-1をコードするX連鎖遺伝子。Rhoファミリー低分子量GTPアーゼ活性化タンパク質で、樹状突起のスパイン形態とシナプス機能に関与します。変異により、X連鎖知的障害と橋小脳低形成を引き起こします。

・RARS2遺伝子:
ミトコンドリアアルギニルtRNA合成酵素をコードする遺伝子。PCH6型の原因遺伝子で、常染色体劣性遺伝形式をとります。ミトコンドリアタンパク質合成に関与し、変異によりミトコンドリア機能障害を伴う橋小脳低形成症を引き起こします。浮腫、肝障害などの全身症状を呈することがあります。

・SEPSECS遺伝子:
Sep(O-ホスホセリル)tRNA:Sec(セレノシステイン)tRNA合成酵素をコードする遺伝子。セレノシステインtRNAの成熟に関与します。変異により、PCH2様の表現型を示す橋小脳低形成症を引き起こします。

・TSEN2遺伝子:
tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ複合体サブユニット2をコードする遺伝子。PCH2型およびPCH4型の原因遺伝子の一つです。常染色体劣性遺伝形式で、tRNA成熟に必須の酵素複合体の構成要素です。

・TSEN34遺伝子:
tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ複合体サブユニット34をコードする遺伝子。PCH2型およびPCH4型の原因遺伝子の一つです。TSEN2と同様に、tRNA成熟に必須の酵素複合体の構成要素で、常染色体劣性遺伝形式をとります。

・TSEN54遺伝子:
tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ複合体サブユニット54をコードする遺伝子。PCH2型およびPCH4型の最も頻度の高い原因遺伝子です。tRNA成熟に必須の酵素複合体の構成要素で、常染色体劣性遺伝形式をとります。PCH4型では大脳皮質形成異常を伴うことがあります。

・VRK1遺伝子:
ワクシニアウイルス関連キナーゼ1をコードする遺伝子。PCH1型の原因遺伝子の一つで、常染色体劣性遺伝形式をとります。細胞周期の調節、ヒストンの修飾、神経細胞の増殖に関与するセリン・スレオニンタンパク質キナーゼを生成します。変異により、脊髄前角細胞の変性を伴う橋小脳低形成症を引き起こし、脊髄性筋萎縮症と類似した臨床像を示します。

カバレッジ

カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。

≥99% at 20x(読み取り深度20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
 検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

検査の限界

詳しくはこちら

すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。

低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。

この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。

※この検査パネルでは、9つの原因遺伝子のみを対象としています。橋小脳低形成症には17以上のサブタイプが報告されており、この検査パネルに含まれない遺伝子変異による症例も存在します。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。

結果が出るまでの期間

2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。

料金

税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
神経画像検査(MRI)で橋と小脳の容積減少が認められた方、小頭症がある方、重度の発達遅滞がある方におすすめします。特に出生時または乳児期早期から筋緊張異常、重度の運動障害、嚥下障害、呼吸障害などの症状がある場合は、橋小脳低形成症の可能性が高くなります。また、家族に同様の症状がある場合も検査をご検討ください。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
橋小脳低形成症のサブタイプの違いは何ですか?
橋小脳低形成症には17以上のサブタイプがあり、原因遺伝子、臨床症状、予後が異なります。PCH1型は脊髄前角細胞の変性を伴い、脊髄性筋萎縮症と類似した運動ニューロン障害を呈します。PCH2型は最も頻度が高く、進行性小頭症、重度の知的障害、ジストニアを特徴とします。当検査により原因遺伝子を特定することで、より正確なサブタイプの診断と予後予測が可能になります。
家族も検査を受ける必要がありますか?
ほとんどのサブタイプは常染色体劣性遺伝形式のため、患者さんの兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。X連鎖型(CASK、OPHN1遺伝子変異)の場合は、遺伝カウンセリングにより家族のリスクを評価することが重要です。保因者の方が将来子どもを持つことを考えている場合、パートナーの検査も推奨されます。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
橋小脳低形成症には17以上のサブタイプが報告されており、この検査パネルに含まれない遺伝子変異による症例も存在します。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。臨床症状と画像所見に基づいた診断と管理が引き続き重要です。必要に応じて、全エクソーム解析などのより包括的な遺伝子検査をご検討いただくこともあります。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。特に橋小脳低形成症は予後に大きく関わる疾患であるため、十分な時間をかけて丁寧にご説明いたします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
ほとんどのサブタイプは常染色体劣性遺伝形式のため、保因者同士のカップルで子どもが発症する確率は25%です。X連鎖型の場合、遺伝カウンセリングにより正確なリスク評価が必要です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
橋小脳低形成症の治療はどのように行われますか?
現在のところ根本的な治療法はありません。症状管理が中心となり、抗てんかん薬の投与、栄養管理(経管栄養)、呼吸管理(人工呼吸管理)、リハビリテーションなどが行われます。適切な症状管理により、患者さんのQOL(生活の質)を改善することが目標となります。
予後はどうですか?
橋小脳低形成症は一般的に予後不良の疾患です。多くの症例では乳児期または幼児期早期に死亡します。特にPCH1型では呼吸不全により生後数ヶ月から数年以内に死亡することが多いです。PCH2型では生存期間が比較的長く、学童期まで生存する症例もありますが、重度の神経学的障害が持続します。サブタイプによって予後が異なるため、原因遺伝子の特定は予後予測に重要です。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では臨床的に重要な9つの原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。


プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

仲田洋美のプロフィールはこちら