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血小板障害NGSパネル|ミネルバクリニック

血小板障害NGSパネル|ミネルバクリニック

血小板障害とは

血小板障害は、血液を固める働きをする血小板の数や機能に異常が生じる疾患群です。血小板は血管が損傷した際に集まって血栓を形成し、出血を止める重要な役割を担っています。血小板障害は大きく分けて、血小板の数が減少する「血小板減少症」と、血小板の数は正常でも機能に異常がある「血小板機能異常症」に分類されます。

遺伝性血小板障害は、先天的な遺伝子変異により引き起こされ、生涯にわたって出血傾向を示します。遺伝形式は常染色体優性(顕性)遺伝、常染色体劣性(潜性)遺伝、X連鎖遺伝のいずれの形式もあり、現在までに多数の原因遺伝子が同定されています。

血小板障害は、比較的稀な疾患群ですが、適切な診断と管理が重要です。遺伝性血小板機能異常症は最も一般的な遺伝性出血性疾患の一つであり、フォン・ヴィレブランド病を含めると、人口の約1%に何らかの遺伝性出血性疾患が存在すると推定されています。

症状と病態

血小板障害の主な症状は、出血傾向です。血小板数や機能の異常の程度により、症状の重症度は大きく異なります。軽症の場合は無症状のこともありますが、重症例では日常生活に大きな影響を及ぼす出血症状を呈します。

主要症状

  • 皮膚の点状出血(小さな赤い斑点)
  • あざができやすい(打撲後の皮下出血)
  • 鼻出血(鼻血が止まりにくい、頻繁に出る)
  • 歯肉出血(歯磨き時や自然に出血する)
  • 月経過多(女性で月経量が異常に多い)
  • 抜歯後の遷延性出血
  • 軽微な外傷後の過剰な出血
  • 消化管出血(血便、吐血)
  • 関節内出血(重症例)
  • 頭蓋内出血(重症例)

主な疾患と特徴

遺伝性血小板障害には、以下のような代表的な疾患があります:

  • グランツマン血小板無力症:血小板表面の糖タンパク質GPIIb/IIIa(インテグリンαIIb/β3)の欠損により、血小板凝集能が障害されます。常染色体劣性遺伝で、約50万人に1人の頻度です。重度の出血傾向を示します
  • Bernard-Soulier症候群:血小板表面の糖タンパク質GPIb/IX/V複合体の欠損により、血小板粘着能が障害されます。常染色体劣性遺伝で、巨大血小板と血小板減少を特徴とし、約100万人に1人の頻度です
  • フォン・ヴィレブランド病:フォン・ヴィレブランド因子(VWF)の量的減少または質的異常により、血小板粘着や凝固因子の安定性が障害されます。最も頻度の高い遺伝性出血性疾患で、人口の約1%に存在します
  • 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP):ADAMTS13という酵素の活性低下により、VWFが適切に分解されず、血小板血栓が形成されます。先天性と後天性があり、先天性はUpshaw-Schulman症候群とも呼ばれます
  • Hermansky-Pudlak症候群:血小板濃染顆粒の異常による放出障害に加え、皮膚・毛髪・眼の色素脱失を特徴とします。常染色体劣性遺伝で、一部の症例では肺線維症を合併します
  • Chediak-Higashi症候群(チェディアック・東症候群):血小板顆粒異常による放出障害、免疫不全、部分的白皮症を特徴とします。常染色体劣性遺伝の稀な疾患です
  • Wiskott-Aldrich症候群:X連鎖劣性遺伝で、小型血小板を伴う血小板減少、湿疹、易感染性を3主徴とします。主に男児に発症します
  • MYH9関連疾患:巨大血小板を伴う血小板減少症を呈し、一部の患者では難聴、白内障、腎障害を合併します
  • 血小板放出障害:血小板内の顆粒から活性化物質が適切に放出されない疾患群で、比較的軽症です

出血パターンの特徴

血小板障害による出血は、以下のような特徴的なパターンを示します:

  • 皮膚や粘膜の出血が主体(点状出血、紫斑、鼻出血、歯肉出血)
  • 外傷後の即時出血(凝固因子異常による遅延性出血とは異なる)
  • 軽微な外傷でも出血しやすい
  • 女性では月経過多が重要な症状
  • 出産時や手術時の大量出血のリスク

進行と予後

遺伝性血小板障害の多くは生涯にわたって症状が持続しますが、適切な管理により日常生活を送ることが可能です。重症例では、重大な出血イベントを避けるための予防的措置や、必要時の血小板輸血などの治療が必要となります。妊娠・出産時には特別な管理が必要であり、事前の計画が重要です。

遺伝形式と原因遺伝子

血小板障害は遺伝学的に非常に多様性が高く、常染色体優性(顕性)遺伝、常染色体劣性(潜性)遺伝、X連鎖遺伝のいずれの形式でも発症します。血小板の生成、構造、機能に関わる様々な遺伝子の変異が原因となります。

常染色体優性(顕性)遺伝形式

片方の親から変異遺伝子を受け継ぐことで発症する遺伝形式です:

  • ANKRD26遺伝子:血小板減少症2型の原因遺伝子で、軽度から中等度の血小板減少を呈します
  • FLI1遺伝子:血小板生成に関わる転写因子をコードし、血小板減少と機能異常を引き起こします
  • RUNX1遺伝子:血小板減少と白血病のリスク上昇に関連します
  • MYH9遺伝子:巨大血小板性血小板減少症の原因で、難聴や腎障害を合併することがあります

常染色体劣性(潜性)遺伝形式

両親からそれぞれ変異遺伝子を受け継ぐことで発症する遺伝形式で、重症型が多い傾向があります:

  • ITGA2B/ITGB3遺伝子:グランツマン血小板無力症の原因遺伝子で、GPIIb/IIIa複合体の欠損により重度の血小板機能異常を引き起こします
  • GP1BA/GP1BB/GP9遺伝子:Bernard-Soulier症候群の原因遺伝子で、GPIb/IX/V複合体の欠損により血小板粘着能が障害されます
  • HPS1, HPS3, HPS4, HPS5, HPS6遺伝子:Hermansky-Pudlak症候群の原因遺伝子群で、血小板濃染顆粒の異常と色素脱失を引き起こします
  • LYST遺伝子:Chediak-Higashi症候群の原因遺伝子で、細胞内輸送の異常により血小板機能異常と免疫不全を引き起こします
  • ADAMTS13遺伝子:先天性血栓性血小板減少性紫斑病(Upshaw-Schulman症候群)の原因遺伝子です

X連鎖遺伝形式

X染色体上の遺伝子変異により発症し、主に男性に影響します:

  • WAS遺伝子:Wiskott-Aldrich症候群の原因遺伝子で、小型血小板を伴う血小板減少、湿疹、易感染性を引き起こします

血小板機能に関わる主要な遺伝子グループ

  • 血小板受容体遺伝子:GP1BA, GP1BB, GP6, GP9, ITGA2B, ITGB3など
  • 血小板顆粒関連遺伝子:BLOC1S3, BLOC1S6, DTNBP1, HPS1-6, LYSTなど
  • 血小板産生関連遺伝子:ANKRD26, FLI1, GATA1, GFI1B, HOXA11, MPL, RUNX1, THPOなど
  • 血小板細胞骨格関連遺伝子:ACTN1, FLNA, MYH9, TUBB1など
  • 血小板シグナル伝達関連遺伝子:P2RY12, TBXA2R, TBXAS1など
  • 凝固・線溶関連遺伝子:VWF, PLAUなど

当検査パネルでは、これらの原因遺伝子のうち、臨床的に重要な44遺伝子を対象としています。これにより、血小板障害の主要な原因を効率的にスクリーニングすることが可能です。

ミネルバクリニックの血小板障害遺伝子パネル検査の特徴

「血小板障害 NGSパネル検査」とは、現在血小板障害の原因として報告されている44の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。

従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。

何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、血小板障害に関連する44遺伝子を一度に調べられる「血小板障害 NGSパネル検査」を採用しています。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.費用がリーズナブル

一般的な医療機関で血小板障害の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。

当院では、血小板障害に関係するとされる44の遺伝子を一度に調べられる「血小板障害 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)

2.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行える血小板障害の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。

当院で行う「血小板障害 NGSパネル検査」の場合、44の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。

3.一気にまとめてできる

臨床症状から血小板障害を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。

当院で行う「血小板障害 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な44の原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。

オプション

塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)

検査内容

「血小板障害 NGSパネル検査」では、血小板障害に関係するとされる44種類の遺伝子(ACTN1、ADAMTS13、ANKRD26、ANO6、AP3B1、BLOC1S3、BLOC1S6、CD36、CYCS、DTNBP1、FERMT3、FLI1、FLNA、GATA1、GFI1B、GP1BA、GP1BB、GP6、GP9、HOXA11、HPS1、HPS3、HPS4、HPS5、HPS6、ITGA2B、ITGB3、LYST、MPL、MYH9、NBEA、NBEAL2、P2RY12、PLA2G4A、PLAU、RBM8A、RUNX1、SLFN14、TBXA2R、TBXAS1、THPO、TUBB1、VWF、WAS)をまとめて検査します。

「血小板障害 NGSパネル検査」は、血小板障害の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。

どんな人が受けたらいいの?

【血小板障害の個人歴または家族歴のある方】に
「血小板障害 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。

この検査は以下のような方に適しています:
・原因不明の血小板減少症がある方
・血小板数は正常だが出血傾向がある方
・あざができやすい方
・鼻出血が頻繁に起こる、または止まりにくい方
・歯肉出血が続く方
・月経過多がある女性
・抜歯後や手術後に過剰な出血があった方
・軽微な外傷で大量出血した経験がある方
・巨大血小板または小型血小板が認められる方
・血小板機能検査で異常が指摘された方
・血小板障害の家族歴がある方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方

このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

遺伝子検査により原因が判明すると、血小板障害の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切な予防措置、定期的なモニタリング、手術・出産時の特別な管理計画を立てることができます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・他の血液疾患との鑑別
・出血リスクの評価と個別化された予防戦略の立案
・手術や歯科処置時の適切な止血管理
・妊娠・出産時の管理計画の立案
・血小板輸血の適応と時期の判断
・抗血小板薬使用時のリスク評価
・白血病などの合併症リスクの評価(RUNX1変異など)
・追加の関連症状のリスクの特定(難聴、腎障害、肺線維症など)
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供

患者さんで病原性変異が同定された場合、遺伝形式に応じて家族の発症リスクが異なります。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症するリスクは50%、常染色体劣性遺伝の場合は兄弟姉妹が発症するリスクは25%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。

対象遺伝子

詳しくはこちら

ACTN1, ADAMTS13, ANKRD26, ANO6, AP3B1, BLOC1S3, BLOC1S6, CD36, CYCS, DTNBP1, FERMT3, FLI1, FLNA, GATA1, GFI1B, GP1BA, GP1BB, GP6, GP9, HOXA11, HPS1, HPS3, HPS4, HPS5, HPS6, ITGA2B, ITGB3, LYST, MPL, MYH9, NBEA, NBEAL2, P2RY12, PLA2G4A, PLAU, RBM8A, RUNX1, SLFN14, TBXA2R, TBXAS1, THPO, TUBB1, VWF, WAS ( 44遺伝子 )

各遺伝子の詳細:
・ACTN1遺伝子:
α-アクチニン-1をコードする遺伝子。血小板の細胞骨格に関与し、常染色体優性遺伝形式の血小板減少症の原因となります。

・ADAMTS13遺伝子:
フォン・ヴィレブランド因子切断酵素をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、先天性血栓性血小板減少性紫斑病(Upshaw-Schulman症候群)の原因となります。

・ANKRD26遺伝子:
アンキリンリピート含有タンパク質26をコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式の血小板減少症2型の原因で、白血病のリスクがやや上昇します。

・ANO6遺伝子:
アノクタミン6をコードする遺伝子。血小板のリン脂質スクランブル活性に関与し、Scott症候群の原因となります。

・AP3B1遺伝子:
アダプタータンパク質複合体3のβ1サブユニットをコードする遺伝子。Hermansky-Pudlak症候群2型の原因となります。

・BLOC1S3遺伝子:
BLOC-1複合体のサブユニットをコードする遺伝子。Hermansky-Pudlak症候群8型の原因で、血小板濃染顆粒の形成に関与します。

・BLOC1S6遺伝子:
BLOC-1複合体のサブユニットをコードする遺伝子。Hermansky-Pudlak症候群9型の原因となります。

・CD36遺伝子:
血小板糖タンパク質IVをコードする遺伝子。CD36欠損症の原因で、コラーゲンへの血小板粘着に関与します。

・CYCS遺伝子:
シトクロムcをコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式の血小板減少症の原因となります。

・DTNBP1遺伝子:
ディストロブレビン結合タンパク質1をコードする遺伝子。Hermansky-Pudlak症候群7型の原因となります。

・FERMT3遺伝子:
カインドリン-3をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、白血球接着不全症III型および血小板機能異常を引き起こします。

・FLI1遺伝子:
転写因子FLI1をコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式の血小板減少症と出血傾向の原因となります。

・FLNA遺伝子:
フィラミンAをコードする遺伝子。X連鎖優性遺伝形式で、巨大血小板性血小板減少症を引き起こします。

・GATA1遺伝子:
転写因子GATA-1をコードする遺伝子。X連鎖遺伝形式で、血小板減少と巨赤芽球性貧血を引き起こします。

・GFI1B遺伝子:
成長因子非依存性転写リプレッサー1Bをコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式の血小板減少症と赤血球系異常の原因となります。

・GP1BA遺伝子:
血小板糖タンパク質Ibαをコードする遺伝子。Bernard-Soulier症候群の原因遺伝子で、GPIb/IX/V複合体の主要な構成成分です。

・GP1BB遺伝子:
血小板糖タンパク質Ibβをコードする遺伝子。Bernard-Soulier症候群の原因遺伝子の一つです。

・GP6遺伝子:
血小板糖タンパク質VIをコードする遺伝子。コラーゲン受容体として機能し、血小板機能異常症の原因となります。

・GP9遺伝子:
血小板糖タンパク質IXをコードする遺伝子。Bernard-Soulier症候群の原因遺伝子の一つで、GPIb/IX/V複合体の構成成分です。

・HOXA11遺伝子:
ホメオボックスタンパク質HOXA11をコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式の血小板減少症の原因となります。

・HPS1遺伝子:
Hermansky-Pudlak症候群1型の原因遺伝子。血小板濃染顆粒の異常と色素脱失を引き起こし、肺線維症を合併しやすいタイプです。

・HPS3遺伝子:
Hermansky-Pudlak症候群3型の原因遺伝子。血小板放出障害と色素脱失を引き起こします。

・HPS4遺伝子:
Hermansky-Pudlak症候群4型の原因遺伝子。BLOC-3複合体のサブユニットをコードします。

・HPS5遺伝子:
Hermansky-Pudlak症候群5型の原因遺伝子。BLOC-2複合体のサブユニットをコードします。

・HPS6遺伝子:
Hermansky-Pudlak症候群6型の原因遺伝子。BLOC-2複合体のサブユニットをコードします。

・ITGA2B遺伝子:
インテグリンαIIb(GPIIb)をコードする遺伝子。グランツマン血小板無力症の原因遺伝子で、血小板凝集に必須の受容体です。

・ITGB3遺伝子:
インテグリンβ3(GPIIIa)をコードする遺伝子。グランツマン血小板無力症の原因遺伝子で、GPIIb/IIIa複合体を形成します。

・LYST遺伝子:
リソソーム輸送調節因子をコードする遺伝子。Chediak-Higashi症候群(チェディアック・東症候群)の原因で、血小板濃染顆粒の巨大化を引き起こします。

・MPL遺伝子:
トロンボポエチン受容体をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式の先天性無巨核球性血小板減少症の原因となります。

・MYH9遺伝子:
非筋ミオシン重鎖IIAをコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式で、巨大血小板性血小板減少症、難聴、白内障、腎障害を引き起こします。

・NBEA遺伝子:
ニューロビーチンをコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式の血小板減少症の原因となります。

・NBEAL2遺伝子:
ニューロビーチンライク2をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式のGray platelet症候群の原因で、血小板α顆粒の欠損を引き起こします。

・P2RY12遺伝子:
ADP受容体P2Y12をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式の血小板機能異常症の原因で、血小板凝集障害を引き起こします。

・PLA2G4A遺伝子:
ホスホリパーゼA2をコードする遺伝子。血小板のアラキドン酸代謝に関与し、機能異常の原因となります。

・PLAU遺伝子:
ウロキナーゼをコードする遺伝子。Quebec platelet症候群の原因で、血小板α顆粒内のプロテアーゼ活性亢進を引き起こします。

・RBM8A遺伝子:
RNA結合タンパク質8Aをコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式の血小板減少症の原因となります。

・RUNX1遺伝子:
転写因子RUNX1をコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式の家族性血小板障害と白血病素因の原因となります。

・SLFN14遺伝子:
シュラーフェン14をコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式の血小板減少症の原因となります。

・TBXA2R遺伝子:
トロンボキサンA2受容体をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式の血小板機能異常症の原因となります。

・TBXAS1遺伝子:
トロンボキサンA2合成酵素をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式の血小板機能異常症の原因となります。

・THPO遺伝子:
トロンボポエチンをコードする遺伝子。血小板産生に必須のサイトカインで、変異により血小板減少症を引き起こします。

・TUBB1遺伝子:
β1-チューブリンをコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式の血小板減少症の原因となります。

・VWF遺伝子:
フォン・ヴィレブランド因子をコードする遺伝子。最も頻度の高い遺伝性出血性疾患であるフォン・ヴィレブランド病の原因遺伝子です。

・WAS遺伝子:
WASPタンパク質をコードする遺伝子。X連鎖劣性遺伝形式のWiskott-Aldrich症候群の原因で、小型血小板を伴う血小板減少、湿疹、易感染性を引き起こします。

カバレッジ

カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。

≥99% at 20x(読み取り深度平均20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
 検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

検査の限界

詳しくはこちら

すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。

低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。

この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。

※この検査パネルでは、44の原因遺伝子のみを対象としています。血小板障害は遺伝学的に多様性が高く、まだ同定されていない原因遺伝子も存在する可能性があります。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。

結果が出るまでの期間

2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。

料金

税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
原因不明の血小板減少症がある方、血小板数は正常でも出血傾向がある方、あざができやすい方、鼻出血や歯肉出血が頻繁にある方、月経過多がある女性、手術や抜歯後に過剰な出血があった方におすすめします。また、巨大血小板や小型血小板が認められる場合、血小板機能検査で異常が指摘された場合も検査をご検討ください。家族に血小板障害がある場合も重要な検査対象となります。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
グランツマン血小板無力症とBernard-Soulier症候群の違いは何ですか?
グランツマン血小板無力症は血小板表面のGPIIb/IIIa複合体の欠損により血小板凝集能が障害される疾患です。一方、Bernard-Soulier症候群はGPIb/IX/V複合体の欠損により血小板粘着能が障害され、巨大血小板と血小板減少を特徴とします。当検査により原因遺伝子を特定することで、正確な診断が可能になります。
家族も検査を受ける必要がありますか?
遺伝形式によって家族の発症リスクが異なります。常染色体優性遺伝の場合、患者さんのお子さんが発症するリスクは50%です。常染色体劣性遺伝の場合、兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。X連鎖遺伝の場合、男児が発症するリスクは50%、女児が保因者となるリスクは50%です。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
血小板障害は遺伝学的に多様性が高く、まだ同定されていない原因遺伝子も存在する可能性があります。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。臨床症状と血液検査、血小板機能検査に基づいた診断と管理が引き続き重要です。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
遺伝形式によって子どもへの影響が異なります。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症する確率は50%、常染色体劣性遺伝の場合は保因者同士のカップルで子どもが発症する確率は25%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
血小板障害の治療はどのように行われますか?
疾患の種類と重症度により治療法が異なります。軽症例では経過観察のみで十分なこともあります。出血時には止血薬(トラネキサム酸など)、デスモプレシン(DDAVP)が使用されることがあります。重度の出血や手術時には血小板輸血が必要となります。抗血小板薬や非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は出血リスクを高めるため避ける必要があります。
妊娠・出産時の注意点は?
血小板障害のある女性は、妊娠・出産時に特別な管理が必要です。分娩時の出血リスクを評価し、必要に応じて血小板輸血や止血薬の準備をします。硬膜外麻酔は血小板数や機能によっては避ける必要があります。事前に産科医、血液内科医、麻酔科医と連携した管理計画を立てることが重要です。
予後はどうですか?
多くの血小板障害は適切な管理により、日常生活を送ることが可能です。重症例では重大な出血イベントのリスクがありますが、予防的措置と迅速な対応により管理できます。一部の疾患(RUNX1変異など)では白血病のリスクが上昇するため、定期的なモニタリングが必要です。生命予後は一般的に良好ですが、疾患の種類により異なります。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では臨床的に重要な44の原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。


プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

仲田洋美のプロフィールはこちら