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PLAGL1遺伝子検査(新生児一過性糖尿病)|ミネルバクリニック

PLAGL1遺伝子検査(新生児一過性糖尿病)|ミネルバクリニック

新生児一過性糖尿病とは

新生児一過性糖尿病(Transient Neonatal Diabetes Mellitus: TNDM)は、生後6か月以内、特に生後6週以内に発症する極めて稀な遺伝性疾患です。新生児糖尿病の約50〜60%を占め、発生頻度は30万〜40万出生に1人と推定されています。

本疾患の最大の特徴は、新生児期に高血糖とインスリン分泌不全を呈するものの、生後18か月頃まで(中央値:3か月)に一旦寛解することです。しかし、これは完全な治癒ではなく、約50〜90%の患者さんで思春期や妊娠を契機に糖尿病が再発します。

原因が判明している新生児一過性糖尿病の約70%は、6q24染色体領域に存在するPLAGL1遺伝子の過剰発現によるものです。PLAGL1遺伝子は、膵臓のβ細胞の発達とインスリン分泌調節に重要な役割を果たしています。適切な遺伝学的検査により原因を特定することで、患者さんとご家族にとって重要な医学的情報を提供できます。

PLAGL1遺伝子と6q24領域

PLAGL1(Pleiomorphic Adenoma Gene-Like 1)遺伝子は、6番染色体長腕24領域(6q24)に位置する、インプリンティング(刷り込み)を受ける遺伝子です。インプリンティング遺伝子とは、父親由来と母親由来で発現が異なる特殊な遺伝子のことです。

正常な状態

通常、PLAGL1遺伝子は父親由来の遺伝子のみが発現し、母親由来の遺伝子はメチル化により発現が抑制されています。この片親性発現により、適切な量のPLAGL1タンパク質が産生されます。

6q24関連新生児一過性糖尿病(6q24-TNDM)の発症機序

以下のいずれかのメカニズムにより、PLAGL1遺伝子が過剰発現すると新生児一過性糖尿病が発症します:

  • 父親由来6番染色体の片親性ダイソミー(UPD6):父親由来の6番染色体が2本存在し、母親由来が欠損している状態。最も頻度が高く、約40〜50%を占める
  • 6q24領域の重複:父親由来の6q24領域が重複している状態。約30〜40%を占める
  • インプリンティングセンター異常:母親由来のPLAGL1遺伝子のメチル化が不十分で、本来抑制されるべき母親由来の遺伝子も発現してしまう状態。約20〜30%を占める

PLAGL1タンパク質の機能

PLAGL1は亜鉛フィンガー型転写因子をコードしており、以下の機能を持ちます:

  • 細胞周期の停止
  • アポトーシス(細胞死)の調節
  • 膵臓β細胞の発達と成熟の制御
  • インスリン分泌の調節

PLAGL1の過剰発現により、胎児期から膵臓β細胞の発達が障害され、インスリン分泌不全が生じます。成長とともに膵機能が一時的に改善するため寛解しますが、β細胞の機能異常は生涯持続し、思春期のインスリン抵抗性増大や妊娠などの代謝ストレス時に糖尿病が再発すると考えられています。

症状と病態

新生児一過性糖尿病では、胎児期からインスリン欠乏が存在するため、特徴的な臨床像を呈します。

胎児期・周産期の特徴

  • 胎児発育不全(FGR):胎児期からのインスリン欠乏により、子宮内での成長が障害される
  • 低出生体重:在胎週数に対して小さく生まれる(SGA: small for gestational age)
  • 早産の頻度が高い:正期産よりも早産で生まれることが多い

新生児期の主要症状

生後1週間以内、特に日齢7頃までに以下の症状が出現します:

  • 高血糖:著明な血糖上昇(しばしば600mg/dL以上)
  • 糖尿:尿中に糖が排泄される
  • 脱水:高血糖による浸透圧利尿で脱水症状を呈する
  • 哺乳不良・体重増加不良:十分な栄養が摂取できない
  • ケトアシドーシスの欠如:持続性新生児糖尿病と異なり、ケトアシドーシスは通常軽度または認められない

合併する先天異常

6q24関連新生児一過性糖尿病では、以下の先天異常を合併することがあります:

  • 巨舌(44%):舌が大きい
  • 臍ヘルニア(21%):へその部分が膨らむ
  • 特徴的顔貌(18%):顔の形態的特徴
  • 腎泌尿器疾患(9%):腎臓や尿路の異常
  • 先天性心疾患(9%):心臓の構造異常
  • 四肢の異常(8%):手足の形態異常
  • 甲状腺機能低下症(4%)
  • 難聴

寛解期の特徴

通常、生後12週頃までに血糖値が改善し、インスリン治療を中止できるようになります。寛解までの期間は数週間から最長1年以上に及ぶこともあります。寛解中は正常血糖を維持しますが、時に低インスリン性高血糖をきたすことがあります。

糖尿病の再発

寛解後、約50〜90%の患者さんで糖尿病が再発します。再発時期は個人差がありますが、以下の時期に多く認められます:

  • 思春期:最も頻度が高く、インスリン抵抗性が増大する時期に再発しやすい
  • 妊娠中:女性では妊娠を契機に再発することが多い
  • 成人期:成人期のいつでも再発する可能性がある

再発時の症状は、多飲・多尿が主で、新生児期と異なり糖尿病性ケトアシドーシスは生じにくいとされています。ただし、β細胞機能の低下は生涯持続するため、長期的なモニタリングが必要です。

長期予後

早期診断と適切な治療により、正常な成長発達が期待できます。インスリン治療により速やかなキャッチアップ成長が得られ、多くは2歳までに正常な身長・体重に到達します。

ただし、約10%で精神発達遅滞が報告されており、長期フォローアップが重要です。また、糖尿病再発のリスクが高いため、思春期以降も定期的な血糖モニタリングが推奨されます。

ミネルバクリニックの新生児一過性糖尿病遺伝子検査の特徴

「PLAGL1遺伝子検査」は、新生児一過性糖尿病の主要な原因であるPLAGL1遺伝子の異常を調べる検査です。次世代シーケンシング(NGS)技術を用いて、PLAGL1遺伝子の塩基配列の変化や欠失・重複を高精度で検出します。

新生児期に糖尿病を発症した場合、一過性(TNDM)か持続性(PNDM)かを臨床症状のみで区別することは困難です。遺伝子検査により原因を明らかにすることで、予後予測、適切な治療方針の決定、家族計画に関する情報提供が可能になります。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.費用がリーズナブル

一般的な医療機関で新生児糖尿病の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに高額な費用がかかることが多く、原因遺伝子が特定されるまで複数の検査が必要になることもあります。

当院では、新生児一過性糖尿病の最も頻度の高い原因であるPLAGL1遺伝子の検査をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)

2.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行える新生児糖尿病の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。

当院で行う「PLAGL1遺伝子検査」の場合、2~3週間程度で結果をお知らせすることが可能です。新生児期の診断確定により、適切な治療と長期フォローアップ計画を早期に立てることができます。

3.高精度な検査

次世代シーケンシング(NGS)技術により、PLAGL1遺伝子の塩基配列変化(point mutations)および欠失・重複(deletions/duplications)を99%以上の高いカバレッジで検出します。

病的意義不明の変異(VUS)、病原性の可能性がある変異(likely pathogenic)、病原性変異(pathogenic)が報告されます。良性変異および良性の可能性が高い変異は通常報告されません。

オプション

塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)

検査内容

「PLAGL1遺伝子検査」では、新生児一過性糖尿病の主要な原因遺伝子であるPLAGL1遺伝子を詳細に検査します。PLAGL1遺伝子は6番染色体長腕24領域(6q24)に位置し、約70%の新生児一過性糖尿病症例で異常が認められます。

「PLAGL1遺伝子検査」は、新生児一過性糖尿病の遺伝的原因を特定する可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる重要な情報を提供します。

どんな人が受けたらいいの?

【新生児糖尿病の個人歴または家族歴のある方】に
「PLAGL1遺伝子検査」を受けることをおすすめします。

この検査は以下のような方に適しています:
・生後6か月以内、特に生後6週以内に糖尿病と診断された方
・胎児発育不全や低出生体重で生まれ、新生児期に高血糖を認めた方
・新生児期に高血糖を呈したが、その後改善した方
・巨舌、臍ヘルニア、特徴的顔貌などの先天異常を伴う新生児糖尿病の方
・新生児期に糖尿病を発症したが、ケトアシドーシスを伴わなかった方
・新生児一過性糖尿病の家族歴がある方
・過去に新生児糖尿病を発症し寛解したが、思春期や妊娠を契機に糖尿病が再発した方
・将来子どもを持つことを考えている方で、リスク評価を希望される方

このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

遺伝子検査により原因が判明すると、新生児一過性糖尿病の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、将来の糖尿病再発リスクを予測し、予防的治療や生活習慣の改善、定期的なモニタリングを行うことができます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・新生児一過性糖尿病(TNDM)と持続性新生児糖尿病(PNDM)の鑑別
・適切な診断の確立または確認
・治療方針の決定(インスリン治療の適応と期間)
・糖尿病再発リスクの予測
・寛解後の長期フォローアップ計画の立案
・思春期や妊娠時の糖尿病再発への備え
・関連する合併症のリスクの特定
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供
・患者さんとご家族への教育とサポート

患者さんで病原性変異が同定された場合、遺伝様式により家族へのリスクが異なります。父親由来6番染色体の片親性ダイソミーの場合、再発リスクはほぼゼロに近いと考えられます。一方、6q24領域の重複が遺伝性の場合やインプリンティングセンター異常の一部では、家族内で再発するリスクがあります。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。

対象遺伝子

詳しくはこちら

PLAGL1 ( 1遺伝子 )

遺伝子の詳細:
・PLAGL1遺伝子(Pleiomorphic Adenoma Gene-Like 1):
6番染色体長腕24領域(6q24)に位置するインプリンティング遺伝子。亜鉛フィンガー型転写因子をコードし、細胞周期の停止、アポトーシスの調節、膵臓β細胞の発達と成熟、インスリン分泌の調節などに関与する。通常は父親由来の遺伝子のみが発現し、母親由来の遺伝子はメチル化により抑制されている。

PLAGL1遺伝子の過剰発現を引き起こす3つの主要なメカニズム:
1. 父親由来6番染色体の片親性ダイソミー(UPD6):約40〜50%
2. 6q24領域の重複:約30〜40%
3. インプリンティングセンター異常(母親由来遺伝子のメチル化異常):約20〜30%

PLAGL1遺伝子は、胎児期の膵臓β細胞で非常に高レベルに発現するが、成人の膵島では発現しない。この遺伝子の過剰発現により、胎児期から膵臓β細胞の発達が障害され、新生児期のインスリン分泌不全と高血糖が生じる。成長とともに膵機能が一時的に改善するが、β細胞の機能異常は生涯持続し、思春期や妊娠などの代謝ストレス時に糖尿病が再発すると考えられている。

カバレッジ

カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。

≥99% at 20x(読み取り深度20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
 検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

検査の限界

詳しくはこちら

すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。

低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。

この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。

※重要な注意事項:
この検査は、PLAGL1遺伝子のコード領域の塩基配列変化および欠失・重複を検出するものです。しかし、新生児一過性糖尿病の約70%を占める6q24関連TNDM(父親由来6番染色体の片親性ダイソミー、6q24領域の重複、インプリンティングセンター異常)を完全に診断するためには、追加の検査が必要になる場合があります。

特に以下の異常は、この標準的なNGS検査では検出できないため、別途特殊な検査が必要です:
・DNAメチル化異常(インプリンティングセンター異常)
・片親性ダイソミー(UPD6)
・大きな染色体領域の重複

これらの異常が疑われる場合は、メチル化解析、SNPアレイ、または片親性ダイソミー検査などの追加検査をご提案する場合があります。また、PLAGL1遺伝子の検査で異常が検出されなかった場合でも、KCNJ11やABCC8遺伝子など、他の原因遺伝子による新生児糖尿病の可能性がありますので、主治医とご相談ください。

結果が出るまでの期間

2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。

料金

税込み220,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
生後6か月以内、特に生後6週以内に高血糖を認めた方、胎児発育不全や低出生体重で生まれ新生児期に糖尿病を発症した方、巨舌や臍ヘルニアなどの先天異常を伴う新生児糖尿病の方におすすめします。また、新生児期に糖尿病を発症したが、その後改善した(寛解した)方、過去に新生児糖尿病を発症し思春期や妊娠時に再発した方、新生児一過性糖尿病の家族歴がある方も検査をご検討ください。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。新生児や乳児の場合でも、少量の血液または頬粘膜スワブで検査が可能です。
新生児一過性糖尿病と持続性新生児糖尿病の違いは何ですか?
新生児一過性糖尿病(TNDM)は、新生児期に発症するものの生後18か月頃までに一旦寛解する糖尿病です。ただし、約50〜90%で思春期や妊娠時に再発します。一方、持続性新生児糖尿病(PNDM)は寛解せず生涯にわたりインスリン治療が必要です。遺伝子検査により両者を鑑別することができ、予後予測と治療方針の決定に重要です。
寛解後も検査や治療は必要ですか?
はい、非常に重要です。新生児一過性糖尿病は一旦寛解しても、約50〜90%で糖尿病が再発します。特に思春期や妊娠時に再発しやすいため、寛解後も定期的な血糖モニタリングが推奨されます。早期発見により適切な治療を開始できます。
家族も検査を受ける必要がありますか?
遺伝様式により異なります。最も頻度の高い父親由来6番染色体の片親性ダイソミーの場合、再発リスクはほぼゼロです。しかし、6q24領域の重複が遺伝性の場合やインプリンティングセンター異常の一部では、ご家族に再発リスクがあります。検査結果により、ご家族の検査や将来の家族計画について遺伝カウンセリングで詳しくご説明いたします。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
PLAGL1遺伝子の検査で異常が検出されなかった場合でも、新生児糖尿病の他の原因(KCNJ11、ABCC8、INS遺伝子など)の可能性があります。また、6q24関連TNDMの診断には、メチル化解析や片親性ダイソミー検査などの追加検査が必要な場合があります。主治医と相談して、必要に応じて追加の遺伝子検査を受けることが重要です。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み220,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。ただし、新生児糖尿病の診断確定後は、小児慢性特定疾病医療費助成制度の対象となる可能性があります。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、予後予測、今後の治療や管理方針、糖尿病再発のリスク、ご家族への影響などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
最も頻度の高い父親由来6番染色体の片親性ダイソミーの場合、再発リスクはほぼゼロと考えられます。一方、6q24領域の重複が遺伝性の場合や一部のインプリンティングセンター異常では、お子さんに遺伝する可能性があります。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。また、新生児一過性糖尿病の既往がある女性は、妊娠時に糖尿病が再発しやすいため、計画的な妊娠管理が重要です。
新生児一過性糖尿病の治療はどのように行われますか?
新生児期の急性期には、脱水の補正とインスリン治療が中心となります。多くの場合、インスリンに対する感受性が良好で、1〜3単位/kgの少量で効果が得られます。寛解後はインスリン治療を中止できますが、定期的な血糖モニタリングが重要です。再発時には、インスリン治療や経口血糖降下薬による治療が必要になります。早期診断と適切な治療により、正常な成長発達が期待できます。
予後はどうですか?
早期診断と適切なインスリン治療により、多くの患者さんで速やかなキャッチアップ成長が得られ、2歳までに正常な身長・体重に到達します。寛解中は正常な生活が可能ですが、約50〜90%で思春期や妊娠時に糖尿病が再発するため、長期的なフォローアップが必要です。約10%で精神発達遅滞が報告されていますが、多くの患者さんは正常に発達します。遺伝子検査により原因を特定することで、より適切な長期管理が可能になります。


プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

仲田洋美のプロフィールはこちら