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多発性嚢胞腎・ネフロン癆遺伝子パネル検査|ミネルバクリニック

多発性嚢胞腎・ネフロン癆遺伝子パネル検査|ミネルバクリニック

多発性嚢胞腎とは

多発性嚢胞腎(Polycystic Kidney Disease: PKD)は、両側の腎臓に多数の嚢胞(液体が詰まった袋状の構造物)が形成される遺伝性疾患です。嚢胞は進行性に増大し、正常な腎組織を圧迫・置換することで腎機能が低下していきます。日本では指定難病67に指定されており、患者数は約31,000人と推定されています。

多発性嚢胞腎の種類

常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)

最も頻度が高く、約4,000人に1人が発症します。原因遺伝子はPKD1(約85%)とPKD2(約15%)で、片方の親から変異遺伝子を受け継ぐだけで発症します(常染色体優性遺伝)。発症は通常30~40歳代で、多くは健康診断や画像検査で偶然発見されます。

ADPKDでは、腎臓の嚢胞以外にも肝嚢胞(50~80%)、脳動脈瘤(5~10%)、心臓弁膜症、大腸憩室などの合併症を伴うことがあります。特に脳動脈瘤は破裂するとくも膜下出血を引き起こす可能性があるため、診断時には必ず検査が行われます。

常染色体劣性多発性嚢胞腎(ARPKD)

比較的まれで、出生1万~4万人に1人の頻度です。原因遺伝子はPKHD1で、両親から変異遺伝子を1つずつ受け継いだ場合にのみ発症します(常染色体劣性遺伝)。通常は胎児期や新生児期に発見され、重症例では呼吸不全を伴うことがあります。肝線維症を高頻度で合併します。

主な症状

  • 血尿(肉眼的または顕微鏡的)
  • 腹痛・腰背部痛(嚢胞の増大や出血による)
  • 腹部膨満(腎臓や肝臓の腫大)
  • 高血圧(50~80%の患者に発症)
  • 嚢胞感染(発熱、疼痛を伴う)
  • 尿路結石
  • 進行性の腎機能低下

ADPKDの患者さんの約半数が60歳までに末期腎不全に至り、透析療法や腎移植が必要となります。腎機能低下の速度は個人差が大きく、PKD1変異の方がPKD2変異よりも進行が速い傾向があります。

ネフロン癆とは

ネフロン癆(Nephronophthisis: NPH)は、腎髄質に嚢胞を形成する進行性の嚢胞性腎疾患で、小児期の末期腎不全の約5%を占める遺伝性疾患です。組織学的には尿細管間質性腎炎、糸球体硬化、線維化が特徴的で、一次繊毛の構造・機能異常が原因とされています。日本では指定難病335に指定されています。

ネフロン癆の分類

末期腎不全に至る時期により3つのサブタイプに分類されます:

  • 乳児ネフロン癆(NPH2):3~5歳頃までに末期腎不全に至る
  • 若年性ネフロン癆(NPH1):幼少期から学童期に発症し、平均13~14歳で末期腎不全に移行する。最も頻度が高い
  • 思春期ネフロン癆(NPH3):平均19歳頃に末期腎不全に至る

主な症状

ネフロン癆は尿細管の再吸収障害により、以下の症状が現れます:

  • 多飲・多尿(最も特徴的な症状)
  • 低比重尿(尿濃縮能低下)
  • 夜尿・昼間の尿失禁
  • 成長障害(体重増加不良・低身長)
  • 電解質異常(低ナトリウム血症、高カリウム血症)
  • 進行性の腎機能低下
  • 末期には高血圧、貧血が出現

腎外症状

ネフロン癆患者の10~20%に腎外症状が認められます。これらの症状が診断の手がかりとなることがあります:

  • 網膜色素変性症(最も頻度が高い)
  • 眼球運動失調
  • 肝線維症
  • 骨格・顔貌異常
  • 精神発達遅滞
  • 小脳失調

遺伝形式

主に常染色体劣性遺伝形式をとりますが、孤発例(散発性)も存在します。現在、約40個の原因遺伝子が判明しており、NPHP1遺伝子の変異が最も多く、若年性ネフロン癆の約20~40%を占めます。ただし、遺伝子変異の同定率は約30%にとどまり、多くの症例で原因遺伝子が特定されていません。

ミネルバクリニックの多発性嚢胞腎・ネフロン癆遺伝子パネル検査の特徴

「多発性嚢胞腎・ネフロン癆 NGSパネル検査」とは、多発性嚢胞腎とネフロン癆の原因として報告されている78の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる包括的な検査方法です。

この検査パネルには、ADPKD、ARPKD、ネフロン癆の主要な原因遺伝子だけでなく、関連する嚢胞性腎疾患や症候群の遺伝子も含まれています。バルデー・ビードル症候群、ジュベール症候群などの繊毛病関連遺伝子も網羅しており、腎外症状を伴う複雑な症例の診断にも有用です。

従来の検査方法では、複数の関連遺伝子を調べるために、候補遺伝子を1つずつ順番に検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金と時間がかかります。ミネルバクリニックではこうした不便を解消するために、78遺伝子を一度に調べられる包括的なパネル検査を採用しています。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.費用がリーズナブル

一般的な医療機関で多発性嚢胞腎やネフロン癆の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。

当院では、多発性嚢胞腎・ネフロン癆に関係する78の遺伝子を一度に調べられるパネル検査をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)

2.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行える遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。

当院で行うパネル検査の場合、78の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。

3.一気にまとめてできる

臨床症状から多発性嚢胞腎やネフロン癆を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。

当院で行うパネル検査ならば、臨床的に重要な78の遺伝子を同時に検査できるという利点があります。これにより、多発性嚢胞腎、ネフロン癆、および関連する嚢胞性腎疾患の原因を包括的に調べることができます。

オプション

塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)

検査内容

「多発性嚢胞腎・ネフロン癆 NGSパネル検査」では、多発性嚢胞腎とネフロン癆に関係する78種類の遺伝子をまとめて検査します。

このパネル検査は、多発性嚢胞腎やネフロン癆の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。

どんな人が受けたらいいの?

【多発性嚢胞腎またはネフロン癆の個人歴または家族歴のある方】に
パネル検査を受けることをおすすめします。

この検査は以下のような方に適しています:

多発性嚢胞腎が疑われる方:
・画像検査で両側腎臓に多発性嚢胞が認められる方
・腹痛、腰背部痛、血尿がある方
・高血圧を伴う腎機能低下がある方
・腹部膨満(腎臓や肝臓の腫大)がある方
・肝嚢胞が認められる方
・家族に多発性嚢胞腎の方がいる方

ネフロン癆が疑われる方:
・多飲・多尿がある小児や若年者
・低比重尿(尿濃縮能低下)が認められる方
・夜尿・昼間の尿失禁がある方
・成長障害(低身長、体重増加不良)がある方
・原因不明の進行性腎機能低下がある若年者
・網膜色素変性症などの腎外症状を伴う方
・家族にネフロン癆の方がいる方

その他:
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方
・遺伝カウンセリングを希望される家族の方

このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

遺伝子検査により原因が判明すると、多発性嚢胞腎またはネフロン癆の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・他の嚢胞性腎疾患との鑑別
・疾患の予後予測と長期的な管理計画の立案
・腎機能保護のための適切な治療(降圧療法、水分摂取指導など)
・合併症(脳動脈瘤、肝嚢胞、網膜色素変性症など)の早期発見と管理
・トルバプタン(バソプレシン受容体拮抗薬)などの治療適応判断
・電解質異常や成長障害への対応(ネフロン癆の場合)
・透析導入や腎移植のタイミングの計画
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供

患者さんで病原性変異が同定された場合、遺伝形式に応じて家族の発症リスクが異なります。多発性嚢胞腎(ADPKD)の場合は子どもが発症するリスクは50%、ネフロン癆やARPKDなどの常染色体劣性遺伝の場合は兄弟姉妹が発症するリスクは25%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。

対象遺伝子

詳しくはこちら

ABCC8, ALG5, ALG8, ALG9, ANKS6, ARL6, BBS1, BBS10, BBS12, BBS2, BBS4, BBS5, BBS7, BBS9, BICC1, BLK, CCND1, CEL, CEP164, CEP290, CEP83, CEP89, COL4A1, CRB2, DCDC2, DICER1, DNAJB11, DZIP1L, GANAB, GCK, GLIS2, HNF1B, HNF4A, IFT140, IFT172, INS, INVS, IQCB1, JAG1, KCNJ11, KLF11, LRP5, MAPKBP1, MKKS, MKS1, MUC1, NEK8, NEUROD1, NOTCH2, NPHP1, NPHP3, NPHP4, OFD1, PAX2, PAX4, PDX1, PKD1, PKD2, PKHD1, PMM2, PRKCSH, RPGRIP1L, SDCCAG8, SEC61A1, SEC61B, SEC63, SRCAP, TMEM67, TRIM32, TSC1, TSC2, TTC21B, TTC8, UMOD, VHL, WDPCP, WDR19, ZNF423 ( 78遺伝子 )

主要な遺伝子の詳細:

・PKD1遺伝子:
常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の最も主要な原因遺伝子で、約85%の症例に関与します。ポリシスチン1というタンパク質をコードしており、尿細管上皮細胞の一次繊毛に発現します。PKD1変異はPKD2変異よりも重症で、腎不全への進行が速い傾向があります。

・PKD2遺伝子:
ADPKDの約15%を占める原因遺伝子です。ポリシスチン2(カルシウムチャネル)をコードしており、PKD1と協調して機能します。PKD2変異による多発性嚢胞腎は、PKD1変異と比較して症状の発現が遅く、腎不全への進行も緩徐です。

・PKHD1遺伝子:
常染色体劣性多発性嚢胞腎(ARPKD)の原因遺伝子です。フィブロシスチン/ポリダクチンというタンパク質をコードしており、一次繊毛に局在します。両親から変異遺伝子を1つずつ受け継いだ場合に発症し、胎児期・新生児期から症状を呈することが多いです。

・NPHP1遺伝子:
若年性ネフロン癆の最も頻度の高い原因遺伝子で、ネフロン癆全体の約20~40%を占めます。ネフロシスチン1をコードしており、尿細管上皮細胞の一次繊毛に発現します。約85%の変異はホモ接合体のlarge deletion(大きな欠失)です。

・NPHP3遺伝子:
思春期ネフロン癆の原因遺伝子です。ネフロシスチン3をコードしており、細胞間接着や細胞極性の維持に関与します。

・NPHP4遺伝子:
ネフロン癆の原因遺伝子の一つで、ネフロシスチン4をコードします。若年性~思春期ネフロン癆で変異が見られます。

・INVS(NPHP2)遺伝子:
乳児ネフロン癆の原因遺伝子で、インバーシンというタンパク質をコードします。内臓逆位を伴うことがあり、3~5歳頃までに末期腎不全に至ります。

・HNF1B遺伝子:
腎嚢胞・糖尿病症候群(RCAD)の原因遺伝子です。転写因子をコードしており、腎臓の発生に重要な役割を果たします。片側または両側の腎嚢胞、腎低形成、糖尿病などを呈します。

・MUC1遺伝子:
常染色体優性尿細管間質性腎疾患(ADTKD)の原因遺伝子の一つです。ムチン1をコードしており、変異により成人期に進行性の腎機能低下をきたします。
※注意:本検査では、MUC1遺伝子のVNTR(variable number tandem repeat)領域の重複変異は検出できません。また、三塩基リピート伸長も評価対象外です。

・TSC1、TSC2遺伝子:
結節性硬化症(TSC)の原因遺伝子です。腎血管筋脂肪腫や腎嚢胞を形成することがあり、多発性嚢胞腎との鑑別が必要な場合があります。

・VHL遺伝子:
フォン・ヒッペル・リンドウ病の原因遺伝子です。腎嚢胞や腎細胞癌を形成することがあり、嚢胞性腎疾患との鑑別が必要です。

・バルデー・ビードル症候群関連遺伝子(BBS1, BBS2, BBS4, BBS5, BBS7, BBS9, BBS10, BBS12, MKKS, TRIM32など):
一次繊毛の機能異常により、腎嚢胞、網膜色素変性症、肥満、多指症、精神発達遅滞などを呈する症候群の原因遺伝子群です。

・ジュベール症候群関連遺伝子(CEP290, RPGRIP1L, TMEM67, ARL6など):
小脳虫部低形成(molar tooth sign)、発達遅滞、眼球運動異常、腎嚢胞を特徴とする症候群の原因遺伝子群です。

・メッケル・グルーバー症候群関連遺伝子(MKS1など):
後頭部脳瘤、多指症、腎嚢胞を特徴とする重症の多臓器異常症候群の原因遺伝子です。

・その他の重要な遺伝子:
GANAB, PRKCSH(ADPKDの稀な原因遺伝子)、UMOD(常染色体優性尿細管間質性腎疾患)、IFT140, IFT172, WDR19(繊毛輸送関連遺伝子)、COL4A1(脳小血管病と腎嚢胞)など、多様な嚢胞性腎疾患や関連症候群の原因遺伝子が含まれています。

カバレッジ

カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。

≥99% at 20x(読み取り深度平均20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
 検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

検査の限界

詳しくはこちら

すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。

低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。

この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。

遺伝子特有の制限事項:

MUC1遺伝子:
本検査では、MUC1遺伝子のVNTR(variable number tandem repeat:可変数タンデムリピート)領域に存在する重複型病原性変異を検出することができません。この変異は常染色体優性尿細管間質性腎疾患(ADTKD-MUC1)の原因となります。また、本検査では三塩基リピート伸長も評価していません。

※この検査パネルでは、78の遺伝子のみを対象としています。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。特にネフロン癆では、既知の遺伝子に変異が見つかるのは約30%にとどまります。多発性嚢胞腎においても、PKD1、PKD2、PKHD1以外の稀な原因遺伝子が存在する可能性があります。

結果が出るまでの期間

2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。

料金

税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
多発性嚢胞腎の場合は、画像検査で両側腎臓に多発性嚢胞が認められる方、腹痛・腰背部痛・血尿がある方、高血圧を伴う腎機能低下がある方におすすめします。ネフロン癆の場合は、多飲・多尿がある小児や若年者、低比重尿が認められる方、成長障害がある方、原因不明の進行性腎機能低下がある若年者が検査の対象となります。また、家族に同様の疾患がある場合も検査をご検討ください。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
多発性嚢胞腎とネフロン癆の違いは何ですか?
多発性嚢胞腎(特にADPKD)は成人期に発症することが多く、両側腎臓の皮質から髄質にかけて多数の嚢胞が形成されます。一方、ネフロン癆は主に小児期・若年期に発症し、腎髄質に嚢胞を形成し、尿細管間質性腎炎を伴います。ネフロン癆は多飲・多尿が特徴的で、多発性嚢胞腎よりも早期に末期腎不全に至ることが多いです。遺伝形式も異なり、ADPKDは常染色体優性遺伝、ネフロン癆は主に常染色体劣性遺伝です。当検査により原因遺伝子を特定することで、より正確な診断と予後予測が可能になります。
家族も検査を受ける必要がありますか?
遺伝形式によって家族の発症リスクが異なります。多発性嚢胞腎(ADPKD)の場合、患者さんのお子さんが発症するリスクは50%です。ネフロン癆やARPKDなどの常染色体劣性遺伝の場合、兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。無症状の家族メンバーでも、遺伝子変異がある場合は将来発症する可能性があるため、リスク評価のための検査が推奨されます。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
特にネフロン癆では、既知の遺伝子に変異が見つかるのは約30%にとどまります。多発性嚢胞腎でも、稀な原因遺伝子や未同定の遺伝子が関与している可能性があります。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。臨床症状、画像検査、腎生検などの結果を総合的に判断し、診断と管理を行うことが重要です。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。ただし、多発性嚢胞腎とネフロン癆は指定難病に指定されているため、診断確定後は医療費助成制度を利用できる場合があります。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。病原性変異が見つかった場合は、その遺伝子に特徴的な合併症のリスクや推奨される定期検査についてもご説明します。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
遺伝形式によって子どもへの影響が異なります。ADPKDのような常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症する確率は50%、ネフロン癆やARPKDのような常染色体劣性遺伝の場合は保因者同士のカップルで子どもが発症する確率は25%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
多発性嚢胞腎やネフロン癆の治療はどのように行われますか?
多発性嚢胞腎では、高血圧管理が最も重要です。降圧薬(ACE阻害薬やARB)による血圧コントロール、十分な水分摂取、塩分制限などが推奨されます。ADPKDでは、バソプレシン受容体拮抗薬(トルバプタン)により嚢胞の増大と腎機能低下を抑制できる場合があります。ネフロン癆では、電解質異常の補正、成長ホルモン療法(低身長の場合)、十分な水分・塩分摂取などが行われます。両疾患とも、末期腎不全に至った場合は透析療法または腎移植が必要となります。
予後はどうですか?
予後は疾患のタイプや原因遺伝子によって大きく異なります。ADPKDでは、PKD1変異の場合は平均50歳代で、PKD2変異の場合は平均70歳代で末期腎不全に至ります。ネフロン癆は若年性が最も多く、平均13~14歳で末期腎不全に至りますが、思春期型では平均19歳頃です。適切な管理により腎機能低下の進行を遅らせることが可能で、透析や腎移植により生命予後は良好です。
合併症にはどのようなものがありますか?
多発性嚢胞腎では、肝嚢胞(50~80%)、脳動脈瘤(5~10%、破裂するとくも膜下出血のリスク)、心臓弁膜症、大腸憩室、尿路結石、嚢胞感染などが見られます。ネフロン癆では、網膜色素変性症(最も頻度が高い)、眼球運動失調、肝線維症、骨格・顔貌異常、精神発達遅滞などの腎外症状を10~20%の患者さんに認めます。原因遺伝子により合併症のパターンが異なるため、遺伝子診断により適切なサーベイランスが可能になります。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では臨床的に重要な78の遺伝子を一度に検査でき、多発性嚢胞腎とネフロン癆を包括的に評価できます。従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を大幅に短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。


プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

仲田洋美のプロフィールはこちら