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部分性無歯症(Oligodontia)遺伝子検査NGSパネル|ミネルバクリニック

部分性無歯症(Oligodontia)遺伝子検査NGSパネル|ミネルバクリニック

部分性無歯症(Oligodontia)とは

部分性無歯症(Oligodontia)は、第三大臼歯(親知らず)を除いて6本以上の永久歯が先天的に欠如している状態を指す遺伝性の発育異常です。日本語では「oligodontia」と「hypodontia」を厳密に区別することができないため、医学的には原語のまま使用されることもあります。

本疾患は歯の発生過程における遺伝的な異常が原因で、歯胚(歯の原基)の形成不全により永久歯が欠如します。臨床的には、欠如する歯の数、部位、形態異常の程度などが患者さんによって大きく異なります。遺伝形式は常染色体優性(顕性)遺伝、常染色体劣性(潜性)遺伝、X連鎖遺伝のいずれの形式もあり、現在までに40以上の原因遺伝子が同定されています。

部分性無歯症は、単独で発症する非症候群性(孤発性)と、他の臓器の異常を伴う症候群性の2つのタイプに分類されます。症候群性の場合、外胚葉異形成症、Van Der Woude症候群、ダウン症候群、Rieger症候群など様々な遺伝性疾患と関連して発症します。発生頻度は0.08~0.16%程度と推定されており、比較的稀な疾患です。性別では女性にやや多く、男女比は約2:3とされています。

症状と診断

部分性無歯症の主な症状は、複数の永久歯の先天的欠如です。欠如しやすい歯には特徴的なパターンがあり、下顎切歯、第二小臼歯、上顎側切歯、第二大臼歯が欠如しやすいことが知られています。

主要症状

  • 6本以上の永久歯の先天的欠如(第三大臼歯を除く)
  • 歯の形態異常(円錐歯、矮小歯など)
  • 永久歯の萌出遅延
  • 乳歯の残存(晩期残存)
  • 上下顎の歯槽骨の発育不全
  • 下顔面高の減少
  • 歯間離開(すきっ歯)
  • 咬合高径の低下

診断について

部分性無歯症の診断には、徹底した臨床診査とX線検査が必要です。パノラマX線写真や口腔内X線写真により、歯胚の有無を確認します。正常な場合、すべての乳歯と第一大臼歯の歯胚は出生時から確認でき、第三大臼歯を除くすべての永久歯の歯冠は6歳までにX線写真で確認できます。

診断にあたっては、埋伏歯の可能性や、齲蝕(虫歯)や外傷で歯を失った可能性を排除する必要があります。永久歯の萌出遅延、乳歯の残存、歯槽骨の発育不全、歯間離開の存在は、部分性無歯症を疑う重要な所見となります。

症候群性と非症候群性の鑑別

部分性無歯症の診断後、症候群性か非症候群性かを鑑別することが重要です。症候群性の場合は、毛髪、爪、汗腺、眼などの身体所見を詳細に観察し、先天性の異常がないかを確認します。

  • 外胚葉異形成症:毛髪の菲薄化、爪の異常、発汗障害を伴う場合
  • Van Der Woude症候群:口唇裂・口蓋裂、下口唇の嚢胞を伴う場合
  • Rieger症候群:眼の異常(緑内障など)を伴う場合
  • Ellis-Van Creveld症候群:四肢短縮、多指症、先天性心疾患を伴う場合

関連する機能障害

多数の歯が欠如することで、様々な機能障害が生じます:

  • 咀嚼機能の障害
  • 発音障害(特にサ行、タ行の発音困難)
  • 審美的問題
  • 咬合支持域の減少
  • 顎骨の成長発育への影響
  • 心理社会的問題(自尊心の低下など)

遺伝形式と原因遺伝子

部分性無歯症は遺伝学的に非常に多様性が高く、常染色体優性(顕性)遺伝、常染色体劣性(潜性)遺伝、X連鎖遺伝のいずれの形式でも発症します。現在までに40以上の原因遺伝子が同定されていますが、約50~60%の症例では遺伝学的原因が未だ特定されていません。

主要な原因遺伝子

WNT10A遺伝子

最も頻度の高い原因遺伝子で、非症候群性部分性無歯症の30~50%に変異が認められます。常染色体劣性遺伝形式をとり、両アレルに病的バリアントを有する場合にoligodontiaを呈します。ヘテロ接合者は無症候の場合もあれば、軽度のhypodontia(1~5本の歯の欠如)を示すこともあります。

MSX1遺伝子およびPAX9遺伝子

歯の発生に重要な転写因子をコードする遺伝子です。常染色体優性遺伝形式で、特に臼歯部の歯の欠如と関連します。MSX1遺伝子変異は第二小臼歯と第三大臼歯の欠如、PAX9遺伝子変異は主に大臼歯の欠如と関連します。

EDA、EDAR、EDARADD遺伝子

これらの遺伝子は外胚葉異形成症の原因遺伝子としても知られており、TNF/NF-κBシグナル伝達経路に関与します。EDA遺伝子はX連鎖遺伝、EDAR・EDARADD遺伝子は常染色体優性または劣性遺伝形式をとります。

AXIN2遺伝子

WNTシグナル伝達経路に関与する遺伝子で、oligodontia-癌素因症候群の原因となります。この遺伝子に変異がある場合、大腸ポリポーシス、大腸癌、乳癌のリスクが高まることが知られています。

その他の関連遺伝子

  • PITX2遺伝子:Axenfeld-Rieger症候群の原因遺伝子
  • TP63遺伝子:EEC症候群、ADULT症候群などの原因遺伝子
  • IKBKG遺伝子:色素失調症、外胚葉異形成症と免疫不全を伴う症候群の原因遺伝子
  • LRP6遺伝子:WNTシグナル伝達経路に関与
  • LTBP3遺伝子:常染色体劣性遺伝形式

当検査パネルでは、これらの原因遺伝子を含む臨床的に重要な46遺伝子を対象としています。これにより、部分性無歯症の主要な原因を効率的にスクリーニングすることが可能です。

ミネルバクリニックの部分性無歯症遺伝子パネル検査の特徴

「部分性無歯症(Oligodontia)NGSパネル検査」とは、現在部分性無歯症の原因として報告されている46の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。

従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。

何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、部分性無歯症に関連する46遺伝子を一度に調べられる「部分性無歯症(Oligodontia)NGSパネル検査」を採用しています。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.費用がリーズナブル

一般的な医療機関で部分性無歯症の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。

当院では、部分性無歯症に関係するとされる46の遺伝子を一度に調べられる「部分性無歯症(Oligodontia)NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)

2.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行える部分性無歯症の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。

当院で行う「部分性無歯症(Oligodontia)NGSパネル検査」の場合、46の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。

3.一気にまとめてできる

臨床症状から部分性無歯症を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。

当院で行う「部分性無歯症(Oligodontia)NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な46の原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。

オプション

塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)

検査内容

「部分性無歯症(Oligodontia)NGSパネル検査」では、部分性無歯症に関係するとされる46種類の遺伝子(ANKRD11、ATP6V1B2、AXIN2、BCL11B、BCOR、CCBE1、CDH1、CEP152、CLDN1、DSP、DVL1、EDA、EDAR、EDARADD、EVC2、FLNA、GREM2、HNRNPK、HUWE1、KCNJ2、KIF1BP、KREMEN1、LRP6、LTBP3、MESD、MSX1、PAX9、PDE3A、PIK3C2A、POLR3A、POLR3B、PORCN、PPP1R15B、PTH1R、PTHLH、ROR2、RUNX2、SATB2、SH3BP2、SLC25A24、SMOC2、TP63、UBR1、WNT10A、WNT10B、ZSWIM6)をまとめて検査します。

「部分性無歯症(Oligodontia)NGSパネル検査」は、部分性無歯症の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。

どんな人が受けたらいいの?

【部分性無歯症の個人歴または家族歴のある方】に
「部分性無歯症(Oligodontia)NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。

この検査は以下のような方に適しています:
・6本以上の永久歯が先天的に欠如している方(第三大臼歯を除く)
・複数の歯の形態異常(円錐歯、矮小歯など)がある方
・永久歯の萌出遅延がある方
・多数の乳歯が残存している方
・歯槽骨の発育不全がある方
・咬合高径の低下や下顔面高の減少が認められる方
・部分性無歯症の家族歴がある方
・症候群性疾患の疑いがある方
・oligodontia-癌素因症候群のスクリーニングを希望される方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方

このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

遺伝子検査により原因が判明すると、部分性無歯症の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切な歯科補綴治療、矯正治療、定期的なモニタリングを行うことができます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・症候群性と非症候群性の鑑別
・適切な歯科補綴治療計画の立案
・矯正治療の適応判断
・インプラント治療や骨造成術の計画立案
・AXIN2遺伝子変異がある場合の癌スクリーニング(大腸癌、乳癌など)
・症候群性疾患に伴う合併症の早期発見
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供

患者さんで病原性変異が同定された場合、遺伝形式に応じて家族の発症リスクが異なります。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症するリスクは50%、常染色体劣性遺伝の場合は兄弟姉妹が発症するリスクは25%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。

対象遺伝子

詳しくはこちら

ANKRD11, ATP6V1B2, AXIN2, BCL11B, BCOR, CCBE1, CDH1, CEP152, CLDN1, DSP, DVL1, EDA, EDAR, EDARADD, EVC2, FLNA, GREM2, HNRNPK, HUWE1, KCNJ2, KIF1BP, KREMEN1, LRP6, LTBP3, MESD, MSX1, PAX9, PDE3A, PIK3C2A, POLR3A, POLR3B, PORCN, PPP1R15B, PTH1R, PTHLH, ROR2, RUNX2, SATB2, SH3BP2, SLC25A24, SMOC2, TP63, UBR1, WNT10A, WNT10B, ZSWIM6 ( 46遺伝子 )

各遺伝子の詳細:

・ANKRD11遺伝子:
KBG症候群の原因遺伝子。歯牙異常、巨大前歯、骨格異常を伴います。

・ATP6V1B2遺伝子:
常染色体劣性遺伝形式。V-ATPaseサブユニットをコードし、歯の形成に関与します。

・AXIN2遺伝子:
oligodontia-癌素因症候群の原因遺伝子。WNTシグナル伝達経路に関与し、大腸ポリポーシス、大腸癌、乳癌のリスクを高めます。

・BCL11B遺伝子:
免疫不全症と歯牙異常を伴う症候群の原因遺伝子。

・BCOR遺伝子:
X連鎖性の眼歯指症候群(oculofaciocardiodental syndrome)の原因遺伝子。

・CCBE1遺伝子:
Hennekam症候群の原因遺伝子。リンパ浮腫、知的障害、歯牙異常を伴います。

・CDH1遺伝子:
E-カドヘリンをコードする遺伝子。歯無発生と遺伝性胃癌のリスクに関連します。

・CEP152遺伝子:
小頭症と歯牙異常を伴う常染色体劣性疾患の原因遺伝子。

・CLDN1遺伝子:
NISCH症候群(Neonatal Ichthyosis-Sclerosing Cholangitis)の原因遺伝子。

・DSP遺伝子:
デスモプラキンをコードし、外胚葉異形成症の一部で歯牙異常を伴います。

・DVL1遺伝子:
Robinow症候群の原因遺伝子の一つ。WNTシグナル伝達経路に関与します。

・EDA遺伝子:
X連鎖性低汗性外胚葉異形成症の原因遺伝子。最も頻度の高い外胚葉異形成症で、発汗障害、毛髪の菲薄化、歯牙異常を伴います。

・EDAR遺伝子:
常染色体優性または劣性遺伝の低汗性外胚葉異形成症の原因遺伝子。TNF/NF-κBシグナル伝達経路に関与します。

・EDARADD遺伝子:
常染色体劣性遺伝の低汗性外胚葉異形成症の原因遺伝子。

・EVC2遺伝子:
Ellis-Van Creveld症候群の原因遺伝子。四肢短縮、多指症、先天性心疾患、歯牙異常を伴います。

・FLNA遺伝子:
X連鎖性のフロントメタフィジール異形成症の原因遺伝子。

・GREM2遺伝子:
BMP拮抗因子をコードし、歯の発生に関与します。

・HNRNPK遺伝子:
Au-Kline症候群の原因遺伝子。知的障害、特徴的顔貌、歯牙異常を伴います。

・HUWE1遺伝子:
X連鎖性知的障害と歯牙異常を伴う症候群の原因遺伝子。

・KCNJ2遺伝子:
Andersen-Tawil症候群の原因遺伝子。周期性四肢麻痺、不整脈、歯牙異常を伴います。

・KIF1BP遺伝子:
Goldberg-Shprintzen症候群の原因遺伝子。ヒルシュスプルング病、知的障害、歯牙異常を伴います。

・KREMEN1遺伝子:
WNTシグナル伝達経路の調節因子をコードし、歯の発生に関与します。

・LRP6遺伝子:
WNT共受容体をコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式で、歯無発生、冠動脈疾患、代謝異常を伴うことがあります。

・LTBP3遺伝子:
常染色体劣性遺伝形式。TGF-β結合タンパク質をコードし、歯牙異常、短指症を伴います。

・MESD遺伝子:
LRP5/6のシャペロンタンパク質をコードし、WNTシグナル伝達に関与します。

・MSX1遺伝子:
最も頻度の高い原因遺伝子の一つ。常染色体優性遺伝形式で、主に第二小臼歯と第三大臼歯の欠如と関連します。Witkop症候群、口蓋裂を伴うoligodontiaの原因となります。

・PAX9遺伝子:
MSX1とともに頻度の高い原因遺伝子。常染色体優性遺伝形式で、主に大臼歯の欠如と関連します。

・PDE3A遺伝子:
高血圧症と歯牙異常を伴う症候群の原因遺伝子。

・PIK3C2A遺伝子:
ホスファチジルイノシトール3-キナーゼをコードし、細胞増殖に関与します。

・POLR3A遺伝子:
RNAポリメラーゼIIIサブユニットをコードし、4H症候群(Hypomyelination, Hypodontia, Hypogonadotropic Hypogonadism)の原因となります。

・POLR3B遺伝子:
POLR3Aと同様に4H症候群の原因遺伝子。常染色体劣性遺伝形式です。

・PORCN遺伝子:
X連鎖性のFocal Dermal Hypoplasiaの原因遺伝子。皮膚、骨格、歯牙の異常を伴います。

・PPP1R15B遺伝子:
タンパク質脱リン酸化酵素をコードし、ストレス応答に関与します。

・PTH1R遺伝子:
副甲状腺ホルモン受容体をコードし、骨格異常と歯牙異常を伴う疾患の原因となります。

・PTHLH遺伝子:
副甲状腺ホルモン関連ペプチドをコードし、歯の発生に関与します。

・ROR2遺伝子:
Robinow症候群の原因遺伝子。骨格異常、特徴的顔貌、歯牙異常を伴います。

・RUNX2遺伝子:
鎖骨頭蓋異形成症の原因遺伝子。鎖骨の低形成、大泉門の開存、多数の過剰歯と歯牙異常を伴います。常染色体優性遺伝形式です。注記:現在の検査方法では三塩基リピート伸長は評価しません。

・SATB2遺伝子:
SATB2関連症候群の原因遺伝子。口蓋裂、歯牙異常、知的障害を伴います。

・SH3BP2遺伝子:
ケルビズム(家族性骨線維性異形成症)の原因遺伝子。常染色体優性遺伝形式で、顎骨の対称性膨隆、歯牙異常を伴います。

・SLC25A24遺伝子:
ミトコンドリアATP-Mg/Pi輸送体をコードし、Gorlin-Chaudhry-Moss症候群の原因となります。

・SMOC2遺伝子:
SPARC関連モジュラーカルシウム結合タンパク質をコードし、歯の発生に関与します。

・TP63遺伝子:
p53ファミリー転写因子をコードし、EEC症候群、ADULT症候群、裂手裂足外胚葉異形成症候群など多様な症候群の原因となります。歯牙異常、四肢異常、皮膚異常を伴います。

・UBR1遺伝子:
Johanson-Blizzard症候群の原因遺伝子。膵外分泌不全、知的障害、歯牙異常を伴います。

・WNT10A遺伝子:
非症候群性oligodontiaの最も頻度の高い原因遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、30~50%の症例に変異が認められます。低汗性外胚葉異形成症、歯爪皮膚異形成症、Schöpf-Schulz-Passarge症候群の原因遺伝子でもあります。

・WNT10B遺伝子:
WNT10Aと類似の機能を持ち、WNTシグナル伝達経路に関与します。

・ZSWIM6遺伝子:
常染色体優性遺伝の知的障害と歯牙異常を伴う症候群の原因遺伝子。

カバレッジ

カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。

≥99% at 20x(読み取り深度20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
 検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

検査の限界

詳しくはこちら

すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。

低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。

この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。

※RUNX2遺伝子については、現在の検査方法では三塩基リピート伸長は評価しません。

※この検査パネルでは、46の原因遺伝子のみを対象としています。約50~60%の部分性無歯症症例では、既知の遺伝子に変異が見つかりません。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。

結果が出るまでの期間

2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。

料金

税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
6本以上の永久歯が先天的に欠如している方、複数の歯の形態異常(円錐歯、矮小歯など)がある方、永久歯の萌出遅延や多数の乳歯が残存している方におすすめします。また、家族に同様の症状がある場合や、症候群性疾患の疑いがある場合も検査をご検討ください。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
症候群性と非症候群性の違いは何ですか?
症候群性の部分性無歯症は、歯の欠如に加えて他の臓器の異常(毛髪、爪、汗腺、骨格、心臓など)を伴います。非症候群性は歯の欠如のみが主症状で、他の明らかな異常を伴いません。当検査により原因遺伝子を特定することで、症候群性か非症候群性かの鑑別や、合併症のリスク評価が可能になります。
家族も検査を受ける必要がありますか?
遺伝形式によって家族の発症リスクが異なります。常染色体優性遺伝の場合、患者さんのお子さんが発症するリスクは50%です。常染色体劣性遺伝の場合、兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
約50~60%の部分性無歯症症例では、既知の遺伝子に変異が見つかりません。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。臨床症状とX線所見に基づいた診断と管理が引き続き重要です。
AXIN2遺伝子変異が見つかった場合、癌のリスクはどのくらいですか?
AXIN2遺伝子に変異がある場合、oligodontia-癌素因症候群として、大腸ポリポーシス、大腸癌、乳癌のリスクが高まります。定期的な大腸内視鏡検査や乳癌検診など、適切なサーベイランスが推奨されます。詳細は遺伝カウンセリングでご説明いたします。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
遺伝形式によって子どもへの影響が異なります。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症する確率は50%、常染色体劣性遺伝の場合は保因者同士のカップルで子どもが発症する確率は25%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
部分性無歯症の治療はどのように行われますか?
欠如した歯を補う方法として、部分床義歯、ブリッジ、インプラントなどの歯科補綴治療が行われます。また、歯列不正に対する矯正治療、骨造成術なども必要に応じて実施されます。多職種(歯科医師、矯正歯科医、口腔外科医、補綴専門医など)による包括的な治療計画が重要です。
治療の開始時期はいつが適切ですか?
乳歯列期から定期的な経過観察が重要です。矯正治療は成長期に開始することが多いですが、インプラント治療は骨格成長がほぼ完了した後(通常18歳以降)に行うべきです。早期診断により、適切な時期に適切な治療を計画することが可能になります。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では臨床的に重要な46の原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。


プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

仲田洋美のプロフィールはこちら