非症候群性乏毛症NGSパネル|ミネルバクリニック
非症候群性乏毛症とは
非症候群性乏毛症(Nonsyndromic Hypotrichosis)は、他の全身症状を伴わず、毛髪のみに異常が見られる遺伝性の疾患です。生まれつき、または幼児期から頭髪や体毛がまばらにしか生えてこない、または正常に生えてこないことを特徴とします。
本疾患は遺伝学的に非常に多様性が高く、現在までに複数の原因遺伝子が同定されています。遺伝形式は常染色体優性(顕性)遺伝、常染色体劣性(潜性)遺伝のいずれの形式もあり、原因遺伝子によって症状の程度や毛髪の特徴が異なります。
非症候群性乏毛症は、症候群性乏毛症(外胚葉形成不全症など他の臓器症状を伴うもの)とは区別されます。非症候群性乏毛症では、歯、爪、汗腺などの他の外胚葉由来組織は正常に機能し、毛髪の異常のみが認められることが重要な特徴です。日本では常染色体劣性遺伝性乏毛症の頻度は約1万人に1人と推定されており、比較的稀な疾患です。
症状と病態
非症候群性乏毛症の主な症状は、生まれつき、または幼児期からの毛髪の異常です。毛髪の量が少ない、または正常に生えてこないことが特徴で、多くの場合、頭髪だけでなく眉毛、まつ毛、体毛なども影響を受けます。
主要症状
- 頭髪がまばらにしか生えない(薄毛、疎毛)
- 毛髪の成長が遅く、数センチ程度しか伸びない
- 毛髪が粗く縮れてパサパサした状態(縮毛症を伴う場合)
- 毛髪が細く、脆弱で切れやすい
- 眉毛、まつ毛の欠如または薄毛
- 体毛(腋毛、陰毛、四肢の毛)の薄毛
- 出生時は正常でも、乳児期の儀式的な剃髪後に再生が不良(一部の症例)
縮毛症との関連
非症候群性乏毛症の一部の症例では、「縮毛症」と呼ばれる毛髪の異常な縮れを伴います。この場合、毛髪は全体的に強く縮れ(woolly hair)、光沢がなく乾燥した状態となります。縮毛症を伴う乏毛症では、毛髪は出生時から縮れており、成長とともにまばらになることがあります。
病型による特徴
原因遺伝子によって、特徴的な症状パターンが認められることがあります:
- 単純型乏毛症(Hypotrichosis Simplex):出生時は正常な毛髪があるが、幼児期から進行性に毛髪が薄くなるタイプ。毛髪の構造異常は通常認められない
- 縮毛症/乏毛症(Woolly Hair/Hypotrichosis):出生時から縮れた毛髪があり、成長とともにまばらになるタイプ。特に日本人ではLIPH遺伝子変異によるものが多い
- Marie Unna型乏毛症:出生時は毛髪が少なく、幼児期に粗い毛髪が生えるが、思春期頃から再び脱毛が進行するタイプ
- 限局性乏毛症:頭皮の一部のみに乏毛が認められるタイプ
非症候群性の重要性
非症候群性乏毛症では、毛髪以外の臓器や組織には異常が認められません。これは診断上重要なポイントで、以下の点が正常であることが特徴です:
- 歯の形成と数は正常
- 爪の形成は正常
- 汗腺の機能は正常(発汗に異常なし)
- 知的発達は正常
- 聴力は正常
- 掌蹠角化症(手のひらや足の裏の角化異常)は通常認められない(一部の遺伝子変異を除く)
進行と予後
疾患の進行パターンは原因遺伝子や個人によって異なります。一部の症例では出生時から毛髪が薄く、その状態が持続します。別の症例では、出生時は正常な毛髪があっても、乳幼児期から徐々に薄くなっていきます。また、Marie Unna型のように、幼児期に一時的に毛髪が生えても、思春期以降に再び脱毛が進行するタイプもあります。
生命予後は良好で、全身の健康状態に影響を与えることはありません。しかし、外見上の変化により、心理社会的な影響を受けることがあり、適切な心理的サポートが重要です。
遺伝形式と原因遺伝子
非症候群性乏毛症は遺伝学的に非常に多様性が高く、常染色体優性(顕性)遺伝、常染色体劣性(潜性)遺伝のいずれの形式でも発症します。現在までに14以上の病型が報告されており、それぞれ異なる遺伝子変異によって引き起こされます。
常染色体優性(顕性)遺伝形式
以下の遺伝子が知られています:
- APCDD1遺伝子(乏毛症1型):Wntシグナル伝達経路の阻害因子をコードし、毛包の発達に関与します
- CDSN遺伝子(乏毛症2型):コルネオデスモシンをコードし、角層細胞間の接着に関与します
- HR遺伝子(無毛症):ヘアレスタンパク質をコードし、毛周期の調節に重要な役割を果たします
- KRT71遺伝子(乏毛症13型):毛髪の内毛根鞘ケラチンをコードし、縮毛症を伴うことがあります
- KRT74遺伝子(乏毛症3型):毛髪の内毛根鞘ケラチンをコードし、縮毛症の原因ともなります
常染色体劣性(潜性)遺伝形式
特に日本人を含むアジア人に多く見られる遺伝形式です:
- LIPH遺伝子(乏毛症7型):リゾホスファチジン酸産生に関わる酵素(phosphatidic acid-selective phospholipase A1)をコードします。日本人の常染色体劣性遺伝性縮毛症/乏毛症では、この遺伝子変異が最も多く報告されています。LIPH遺伝子変異によるLPA(リゾホスファチジン酸)の不足は、毛髪の成長促進シグナルの低下を引き起こします
- LPAR6遺伝子(乏毛症8型):LPA受容体をコードし、LIPH遺伝子産物が産生するLPAのシグナル伝達に関与します
- DSG4遺伝子:デスモグレイン4をコードし、毛包内の細胞接着に関与します。変異により毛髪の脆弱性が生じます
- KRT25遺伝子(縮毛症3型):毛髪のケラチンをコードし、変異により縮毛症を伴う乏毛症を引き起こします
- LSS遺伝子(乏毛症14型):ラノステロール合成酵素をコードし、コレステロール生合成に関与します
- RPL21遺伝子(乏毛症12型):リボソームタンパク質L21をコードし、タンパク質合成に関与します
- SNRPE遺伝子(乏毛症11型):スプライソソームの構成成分をコードし、mRNAのスプライシングに関与します
その他の関連遺伝子
- CDH3遺伝子:P-カドヘリンをコードし、細胞間接着に関与します。変異により乏毛症と掌蹠角化症を伴うことがあります
当検査パネルでは、これらの原因遺伝子のうち、臨床的に重要な13遺伝子(APCDD1, CDH3, CDSN, DSG4, HR, KRT25, KRT71, KRT74, LIPH, LPAR6, LSS, RPL21, SNRPE)を対象としています。特に日本人に多いLIPH遺伝子変異を含む、非症候群性乏毛症の主要な原因を効率的にスクリーニングすることが可能です。
ミネルバクリニックの非症候群性乏毛症遺伝子パネル検査の特徴
「非症候群性乏毛症 NGSパネル検査」とは、現在非症候群性乏毛症の原因として報告されている13の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。
従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。
何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、非症候群性乏毛症に関連する13遺伝子を一度に調べられる「非症候群性乏毛症 NGSパネル検査」を採用しています。
一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。
1.費用がリーズナブル
一般的な医療機関で非症候群性乏毛症の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。
当院では、非症候群性乏毛症に関係するとされる13の遺伝子を一度に調べられる「非症候群性乏毛症 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)
2.結果が出るまでがはやい
一般的な医療機関で行える非症候群性乏毛症の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。
当院で行う「非症候群性乏毛症 NGSパネル検査」の場合、13の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。
3.一気にまとめてできる
臨床症状から非症候群性乏毛症を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。
当院で行う「非症候群性乏毛症 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な13の原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。
オプション
塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)
検査内容
「非症候群性乏毛症 NGSパネル検査」では、非症候群性乏毛症に関係するとされる13種類の遺伝子(APCDD1、CDH3、CDSN、DSG4、HR、KRT25、KRT71、KRT74、LIPH、LPAR6、LSS、RPL21、SNRPE)をまとめて検査します。
「非症候群性乏毛症 NGSパネル検査」は、非症候群性乏毛症の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。
どんな人が受けたらいいの?
【非症候群性乏毛症の個人歴または家族歴のある方】に
「非症候群性乏毛症 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。
この検査は以下のような方に適しています:
・生まれつき、または幼児期から頭髪が薄い方
・毛髪の成長が遅く、数センチ程度しか伸びない方
・毛髪が粗く縮れてパサパサしている方
・毛髪が細く、切れやすい方
・眉毛、まつ毛が薄い、または欠如している方
・体毛(腋毛、陰毛、四肢の毛)が薄い方
・歯、爪、汗腺などの他の外胚葉由来組織は正常な方(非症候群性)
・非症候群性乏毛症または縮毛症の家族歴がある方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方
このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。
検査で得られる患者さんの潜在的利益は?
遺伝子検査により原因が判明すると、非症候群性乏毛症の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、原因遺伝子が判明した場合には、一部の遺伝子変異(特にLIPH遺伝子変異)に対しては、ミノキシジル外用療法が有効である可能性があることが報告されています。
遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・症候群性乏毛症や他の毛髪疾患との鑑別
・原因遺伝子に応じた治療法の選択(LIPH遺伝子変異の場合はミノキシジル療法の検討)
・疾患の進行予測と長期的な管理計画の立案
・適切な心理社会的サポートの提供
・関連リソースやサポートグループ(冠花の会など)への患者の接続
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供
患者さんで病原性変異が同定された場合、遺伝形式に応じて家族の発症リスクが異なります。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症するリスクは50%、常染色体劣性遺伝の場合は両親がともに保因者の時、子どもが発症するリスクは25%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。
対象遺伝子
- 詳しくはこちら
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APCDD1, CDH3, CDSN, DSG4, HR, KRT25, KRT71, KRT74, LIPH, LPAR6, LSS, RPL21, SNRPE ( 13遺伝子 )
各遺伝子の詳細:
・APCDD1遺伝子(乏毛症1型):
Wntシグナル伝達経路の阻害因子であるAPCDD1タンパク質をコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式で、毛包の発達と維持に重要な役割を果たします。変異により毛髪が全体的に薄くなり、徐々に進行する乏毛症を引き起こします。
・CDH3遺伝子:
P-カドヘリン(カドヘリン3)をコードする遺伝子。細胞間接着に関与し、特に毛包の発達に重要です。変異により乏毛症と掌蹠角化症(手のひらや足の裏の角化異常)を伴うことがあります。
・CDSN遺伝子(乏毛症2型):
コルネオデスモシンをコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式で、角層細胞間の接着に関与します。変異により頭皮の乏毛症を引き起こします。
・DSG4遺伝子:
デスモグレイン4をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、デスモソームと呼ばれる細胞接着構造を形成します。毛髪のコルテックス(毛の内側の部分)や毛包の特定領域の細胞に存在し、毛髪を強くするだけでなく、毛髪形成のための細胞間情報伝達に関与します。変異により縮毛症を伴う乏毛症や連珠毛を引き起こすことがあります。
・HR遺伝子(無毛症):
ヘアレス(hairless)タンパク質をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、毛周期の調節、特に退行期への移行に重要な役割を果たします。変異により出生時から完全な無毛症または重度の乏毛症を引き起こします。
・KRT25遺伝子(縮毛症3型):
毛髪の内毛根鞘に存在するケラチン25をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、変異により縮毛症を伴う乏毛症を引き起こします。
・KRT71遺伝子(乏毛症13型):
毛髪の内毛根鞘に存在するケラチン71をコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式で、変異により縮毛症を伴う乏毛症を引き起こします。
・KRT74遺伝子(乏毛症3型):
毛髪の内毛根鞘に存在するケラチン74をコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式で、変異により縮毛症または頭皮限局型の乏毛症を引き起こします。
・LIPH遺伝子(乏毛症7型):
phosphatidic acid-selective phospholipase A1(リパーゼH)をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、この酵素はリゾホスファチジン酸(LPA)という脂質メディエーターの産生に関与します。LPAは毛髪の成長促進に重要な役割を果たすため、LIPH遺伝子変異によってLPAが不足すると、毛包の成長が阻害され、縮毛症を伴う乏毛症を引き起こします。
日本人では最も頻度の高い原因遺伝子であり、LIPH遺伝子変異による乏毛症に対してはミノキシジル外用療法が有効である可能性が報告されています。
・LPAR6遺伝子(乏毛症8型、P2RY5遺伝子とも呼ばれる):
リゾホスファチジン酸受容体6をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、LIPH遺伝子産物が産生するLPAのシグナル伝達を受け取る受容体として機能します。変異により縮毛症を伴う乏毛症を引き起こします。
・LSS遺伝子(乏毛症14型):
ラノステロール合成酵素をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、コレステロール生合成経路に関与します。変異により産毛様の薄い毛髪を特徴とする乏毛症を引き起こします。
・RPL21遺伝子(乏毛症12型):
リボソームタンパク質L21をコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式で、リボソームの構成成分としてタンパク質合成に関与します。変異により全身性の進行性乏毛症を引き起こします。リボソームタンパク質遺伝子の変異が非症候群性の毛髪異常を引き起こすことが初めて報告された遺伝子です。
・SNRPE遺伝子(乏毛症11型):
スプライソソームの構成成分であるU1 small nuclear ribonucleoprotein Eをコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式で、mRNAのスプライシングに関与します。変異により進行性の乏毛症を引き起こします。
カバレッジ
カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。
≥99% at 20x(読み取り深度平均20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。
検体
血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)
※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。
検査の限界
- 詳しくはこちら
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すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。
低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。
この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。
※この検査パネルでは、13の原因遺伝子のみを対象としています。非症候群性乏毛症には14以上の病型が報告されており、一部の症例では既知の遺伝子に変異が見つかりません。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。
結果が出るまでの期間
2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。
料金
税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)
よくあるご質問
- どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
- 生まれつき、または幼児期から頭髪がまばらにしか生えていない方、毛髪の成長が遅く数センチ程度しか伸びない方、毛髪が粗く縮れてパサパサしている方におすすめします。眉毛やまつ毛が薄い、または欠如している場合も検査をご検討ください。重要なのは、歯、爪、汗腺などの他の外胚葉由来組織は正常であること(非症候群性)です。また、家族に同様の症状がある場合も検査を推奨します。
- 検査はどのように行いますか?
- 血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
- 症候群性乏毛症との違いは何ですか?
- 非症候群性乏毛症では、毛髪以外の臓器や組織には異常が認められません。歯、爪、汗腺などの外胚葉由来組織は正常に機能します。一方、症候群性乏毛症(例:外胚葉形成不全症)では、毛髪の異常に加えて、歯の形成異常、爪の異常、発汗障害などの症状を伴います。当検査により原因遺伝子を特定することで、より正確な診断が可能になります。
- 家族も検査を受ける必要がありますか?
- 遺伝形式によって家族の発症リスクが異なります。常染色体優性遺伝の場合、患者さんのお子さんが発症するリスクは50%です。常染色体劣性遺伝の場合、両親がともに保因者の時、子どもが発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
- 検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
- 非症候群性乏毛症には14以上の病型が報告されており、一部の症例では既知の遺伝子に変異が見つかりません。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。臨床症状に基づいた診断と管理が引き続き重要です。また、新しい原因遺伝子が今後も発見される可能性があります。
- 治療法はありますか?
- 多くの場合、根本的な治療法はありませんが、原因遺伝子によっては治療の選択肢があります。特にLIPH遺伝子変異による乏毛症では、ミノキシジル外用療法が有効である可能性が日本の研究で報告されています。また、ウィッグや帽子などの美容的なアプローチ、適切な心理社会的サポートも重要です。原因遺伝子が判明することで、適切な管理方針を立てることができます。
- 保険は適用されますか?
- 当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
- 結果はどのように説明されますか?
- 検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢(LIPH遺伝子変異の場合はミノキシジル療法など)について、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
- 子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
- 遺伝形式によって子どもへの影響が異なります。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症する確率は50%、常染色体劣性遺伝の場合は両親がともに保因者の時に子どもが発症する確率は25%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
- 予後はどうですか?
- 非症候群性乏毛症は生命予後に影響を与えることはなく、全身の健康状態は正常です。毛髪の状態は原因遺伝子や個人によって異なり、出生時から変わらない場合もあれば、徐々に進行する場合もあります。外見上の変化により心理社会的な影響を受けることがあるため、適切な心理的サポートや患者会(冠花の会など)への参加が役立つことがあります。
- 日本人に多い遺伝子変異はありますか?
- はい、日本人を含むアジア人では、LIPH遺伝子変異が最も頻度の高い原因です。日本人の常染色体劣性遺伝性縮毛症/乏毛症の多くはLIPH遺伝子変異によるものと報告されています。当検査パネルには、この重要な遺伝子が含まれています。
- 他の医療機関での検査との違いは何ですか?
- 当院では臨床的に重要な13の原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。
プロフィール
この記事の筆者:仲田洋美(医師)
ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。
仲田洋美のプロフィールはこちら