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ネフロン癆NGS遺伝子パネル検査|ミネルバクリニック

ネフロン癆NGS遺伝子パネル検査|ミネルバクリニック

ネフロン癆とは

ネフロン癆(Nephronophthisis: NPHP)は、腎髄質に嚢胞(球状の袋)が形成される進行性の遺伝性嚢胞性腎疾患です。一次繊毛の構造的・機能的異常が原因とされ、尿細管間質性腎炎を特徴とし、進行性の糸球体硬化と硝子化を伴います。最終的には末期腎不全に至る重篤な疾患であり、小児期から若年成人期に発症する末期腎不全の最も多い遺伝性原因の一つです。

本疾患は主として常染色体劣性遺伝形式をとりますが、孤発例も存在します。遺伝学的には非常に多様性が高く、現在までに25以上の原因遺伝子が同定されています。これらの遺伝子産物の多くは一次繊毛、基底体、中心体に局在し、細胞シグナル伝達や細胞極性の維持に重要な役割を果たしています。

ネフロン癆は小児期に発症する末期腎不全の約5%を占め、30歳までの若年者における末期腎不全の最も多い単一遺伝子疾患です。発症頻度は人口によって異なり、カナダでは出生5万人に1人、フィンランドでは出生10万人に1人、米国では出生92万2千人に1人と推定されています。日本における正確な発症頻度は不明ですが、比較的稀な疾患です。

症状と病態

ネフロン癆の主な症状は、腎間質障害および腎不全に関連する症状です。初期には尿濃縮能低下による多飲・多尿が特徴的で、幼児期から学童期(4~6歳頃)に気づかれることが多いです。夜尿症や昼間の尿失禁として現れることもあります。

主要症状

  • 多飲・多尿(尿濃縮能低下による)
  • 夜間の頻尿・夜尿症
  • 昼間尿失禁
  • 成長発達障害(低身長・体重増加不良)
  • 貧血(腎性貧血)
  • 高血圧
  • 全身倦怠感・疲労感
  • 食欲不振
  • 電解質異常(低ナトリウム血症、高カリウム血症)
  • 代謝性アシドーシス

腎臓の特徴的所見

ネフロン癆では、腎髄質と皮質の境界部(皮髄境界部)に多数の嚢胞が形成されることが特徴です。超音波検査では、腎臓の輝度上昇、皮質と髄質の境界消失、腎実質部の小嚢胞が認められます。組織学的には、尿細管の嚢胞様拡張、尿細管基底膜の不規則性変化(肥厚や断裂)、尿細管萎縮、間質の線維化が特徴的です。疾患が進行すると糸球体周囲の線維化や硬化糸球体が出現します。

尿所見の特徴

ネフロン癆における尿所見には特徴があります。尿比重が低く(低比重尿)、薄い尿が産生されます。タンパク尿は認められますが、β2ミクログロブリンなどの低分子タンパク尿が主体であり、アルブミンを中心に検出する一般的な試験紙法では検出されにくいため、学校検診などのマススクリーニングで見落とされることがあります。また、尿糖が認められることもあります。

腎外症状について

ネフロン癆の約10~20%の患者さんでは腎外症状が認められます。一次繊毛は全身の細胞に存在するため、多臓器に症状が現れることがあります:

  • 網膜色素変性症:視力低下、夜盲症を来します(Senior-Løken症候群)
  • 肝線維症:肝機能障害を伴うことがあります
  • 骨格異常:多指症、短肋骨症候群などが認められます
  • 神経学的異常:小脳低形成、発達遅滞、知的障害(Joubert症候群など)
  • 心臓の異常:心筋症、心奇形などが報告されています
  • 内臓逆位:臓器の左右配置の異常(NPHP2/INVS遺伝子変異に関連)

臨床病型と進行

ネフロン癆は末期腎不全(ESRD)に至る時期により3つのサブタイプに分類されます:

  • 乳児型ネフロン癆(NPH2):3~5歳頃までにESRDに至ります。NPHP2/INVS遺伝子変異が原因で、内臓逆位を伴うことがあります。
  • 若年性ネフロン癆(NPH1):最も頻度が高いタイプで、幼少期から学童期に発症し、平均13~14歳でESRDに移行します。NPHP1遺伝子変異が最も多い原因です。
  • 思春期型ネフロン癆(NPH3):平均19歳頃にESRDに至ります。NPHP3遺伝子変異が関与します。

予後

ネフロン癆は進行性の疾患であり、現在のところ根本的な治療法は存在しません。基本的に30歳までに全例が末期腎不全に至り、腎代替療法(透析または腎移植)が必要となります。ただし、腎移植後の再発は認められないため、腎移植は有効な治療選択肢となります。早期診断により、適切な腎機能保護療法、合併症管理、家族計画のための遺伝カウンセリングが可能となります。

遺伝形式と原因遺伝子

ネフロン癆は主として常染色体劣性遺伝形式をとる遺伝性疾患です。患者さんは両親からそれぞれ1つずつ変異遺伝子を受け継いでいます。両親は通常保因者であり、症状を示しません。保因者同士のカップルから生まれる子どもが発症する確率は25%、保因者となる確率は50%、正常である確率は25%です。

原因遺伝子と一次繊毛病

現在までに25以上のNPHP遺伝子(NPHP1~NPHP20およびその他の関連遺伝子)が同定されています。これらの遺伝子がコードするタンパク質(ネフロシスチンファミリータンパク質など)は、一次繊毛、基底体、中心体という細胞内構造に局在し、細胞シグナル伝達、細胞極性、細胞周期制御に重要な役割を果たしています。

一次繊毛は細胞表面から突出する微小な毛状構造で、細胞外からのシグナルを感知する「アンテナ」のような役割を果たします。ネフロン癆では一次繊毛の構造的・機能的異常により、正常な細胞シグナル伝達が障害され、尿細管細胞の極性異常、細胞増殖の制御異常、アポトーシスの異常などが生じ、最終的に嚢胞形成や間質線維化を来すと考えられています。

主要な原因遺伝子

  • NPHP1遺伝子:最も頻度の高い原因遺伝子で、ネフロン癆症例の約20%を占めます。若年性ネフロン癆の主な原因です。ネフロシスチン-1タンパク質をコードし、一次繊毛の移行帯に局在します。
  • NPHP2/INVS遺伝子:インバージンタンパク質をコードし、乳児型ネフロン癆の原因となります。内臓逆位と関連します。
  • NPHP3遺伝子:思春期型ネフロン癆の原因です。網膜色素変性症や肝線維症を伴うことがあります。
  • NPHP4遺伝子:若年性から思春期型のネフロン癆の原因となり、重症例では網膜色素変性症を伴います。
  • NPHP5/IQCB1遺伝子:Senior-Løken症候群(ネフロン癆と網膜色素変性症の合併)の原因となります。
  • NPHP6/CEP290遺伝子:Joubert症候群関連疾患の原因遺伝子で、神経学的異常を伴うことが特徴です。

遺伝子変異同定率

臨床的にネフロン癆と診断される症例のうち、遺伝子変異が同定される頻度は約30%程度に留まります。これは未同定の原因遺伝子が存在する可能性や、非コード領域の変異、エピジェネティックな要因などが関与している可能性を示唆しています。

当検査パネルでは、これらの原因遺伝子のうち、臨床的に重要な31遺伝子を対象としています。これにより、ネフロン癆の主要な遺伝的原因を効率的にスクリーニングすることが可能です。

ミネルバクリニックのネフロン癆遺伝子パネル検査の特徴

「ネフロン癆 NGSパネル検査」とは、現在ネフロン癆の原因として報告されている31の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。

従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。

何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、ネフロン癆に関連する31遺伝子を一度に調べられる「ネフロン癆 NGSパネル検査」を採用しています。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.費用がリーズナブル

一般的な医療機関でネフロン癆の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。

当院では、ネフロン癆に関係するとされる31の遺伝子を一度に調べられる「ネフロン癆 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)

2.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行えるネフロン癆の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。

当院で行う「ネフロン癆 NGSパネル検査」の場合、31の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。

3.一気にまとめてできる

臨床症状からネフロン癆を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。

当院で行う「ネフロン癆 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な31の原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。

オプション

塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)

検査内容

「ネフロン癆 NGSパネル検査」では、ネフロン癆に関係するとされる31種類の遺伝子(AHI1, ANKS6, CC2D2A, CEP164, CEP290, CEP83, DCDC2, GLIS2, IFT172, INVS, IQCB1, MAPKBP1, NEK8, NPHP1, NPHP3, NPHP4, OFD1, PKHD1, RPGRIP1L, SDCCAG8, SLC41A1, TMEM138, TMEM216, TMEM237, TMEM67, TRAF3IP1, TTC21B, WDR19, WDR35, XPNPEP3, ZNF423)をまとめて検査します。

「ネフロン癆 NGSパネル検査」は、ネフロン癆の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。

どんな人が受けたらいいの?

【ネフロン癆の個人歴または家族歴のある方】に
「ネフロン癆 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。

この検査は以下のような方に適しています:
・小児期から若年期に多飲・多尿がある方
・夜尿症や昼間尿失禁がある方
・低比重尿(薄い尿)が持続する方
・低分子タンパク尿が認められる方
・腎機能障害(クレアチニン上昇、推算糸球体濾過量低下)がある方
・超音波検査で腎髄質に嚢胞が認められる方
・腎臓の皮質と髄質の境界不明瞭が認められる方
・成長発達障害(低身長・体重増加不良)がある方
・腎性貧血がある方
・電解質異常(低ナトリウム血症、高カリウム血症)がある方
・網膜色素変性症、肝線維症、骨格異常、神経学的異常などの腎外症状を伴う方
・ネフロン癆または関連する嚢胞性腎疾患の家族歴がある方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方

このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

遺伝子検査により原因が判明すると、ネフロン癆の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切な腎機能保護療法、合併症管理、定期的なモニタリングを行うことができます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・他の嚢胞性腎疾患(多発性嚢胞腎、髄質嚢胞腎など)との鑑別
・腎機能保護療法(ACE阻害薬・ARB、食事療法など)の適応判断
・電解質異常や代謝性アシドーシスの管理
・腎性貧血の治療(エリスロポエチン製剤、鉄剤)
・成長障害に対する成長ホルモン療法の検討
・腎外症状(網膜色素変性症、肝線維症など)の早期発見とモニタリング
・疾患の進行予測と長期的な管理計画の立案
・透析導入や腎移植のタイミングの検討
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供

患者さんで病原性変異が同定された場合、常染色体劣性遺伝形式のため、兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。また、患者さんのお子さんは全員保因者となります。保因者同士のカップルから生まれる子どもが発症するリスクは25%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。

対象遺伝子

詳しくはこちら

AHI1, ANKS6, CC2D2A, CEP164, CEP290, CEP83, DCDC2, GLIS2, IFT172, INVS, IQCB1, MAPKBP1, NEK8, NPHP1, NPHP3, NPHP4, OFD1, PKHD1, RPGRIP1L, SDCCAG8, SLC41A1, TMEM138, TMEM216, TMEM237, TMEM67, TRAF3IP1, TTC21B, WDR19, WDR35, XPNPEP3, ZNF423 ( 31遺伝子 )

各遺伝子の詳細:
・AHI1遺伝子:
ジュベール症候群関連タンパク質をコードし、Joubert症候群の原因遺伝子の一つです。小脳虫部低形成、発達遅滞を伴うネフロン癆に関連します。

・ANKS6遺伝子:
アンキリンリピート含有タンパク質をコードし、一次繊毛の機能に関与します。ネフロン癆の原因遺伝子として最近同定されました。

・CC2D2A遺伝子:
一次繊毛の形成に関与するタンパク質をコードします。Joubert症候群やMeckel-Gruber症候群の原因遺伝子でもあります。

・CEP164遺伝子:
中心体タンパク質164をコードし、一次繊毛の形成に重要な役割を果たします。ネフロン癆の原因遺伝子として報告されています。

・CEP290遺伝子:
中心体タンパク質290(NPHP6)をコードします。Joubert症候群、Senior-Løken症候群の主要な原因遺伝子で、重症型のネフロン癆を引き起こします。

・CEP83遺伝子:
中心体タンパク質83をコードし、一次繊毛の形成に関与します。ネフロン癆関連遺伝子として報告されています。

・DCDC2遺伝子:
ダブルコルチンドメイン含有タンパク質2をコードします。ネフロン癆の原因遺伝子として同定されています。

・GLIS2遺伝子:
GLI様転写因子2をコードし、腎臓の発生と機能維持に重要な役割を果たします。ネフロン癆の原因遺伝子です。

・IFT172遺伝子:
鞭毛内輸送タンパク質172をコードし、一次繊毛内の物質輸送に関与します。ネフロン癆や網膜ジストロフィーの原因となります。

・INVS遺伝子:
インバージン(NPHP2)をコードします。乳児型ネフロン癆の原因遺伝子で、内臓逆位と関連します。

・IQCB1遺伝子:
IQカルモジュリン結合モチーフ含有タンパク質1(NPHP5)をコードします。Senior-Løken症候群の主要な原因遺伝子で、網膜色素変性症を伴います。

・MAPKBP1遺伝子:
MAPキナーゼ結合タンパク質1をコードし、細胞シグナル伝達に関与します。ネフロン癆関連遺伝子です。

・NEK8遺伝子:
NIMA関連キナーゼ8(NPHP9)をコードします。一次繊毛の機能に関与し、ネフロン癆の原因となります。

・NPHP1遺伝子:
ネフロシスチン-1をコードします。最も頻度の高い原因遺伝子で、ネフロン癆症例の約20%を占めます。若年性ネフロン癆の主な原因です。一次繊毛の移行帯に局在します。

・NPHP3遺伝子:
ネフロシスチン-3をコードします。思春期型ネフロン癆の原因で、網膜色素変性症や肝線維症を伴うことがあります。

・NPHP4遺伝子:
ネフロシスチン-4をコードします。若年性から思春期型のネフロン癆の原因で、重症例では網膜色素変性症を伴います。

・OFD1遺伝子:
口顔指症候群1型タンパク質をコードします。X連鎖遺伝形式をとり、口顔指症候群に伴うネフロン癆の原因となります。

・PKHD1遺伝子:
フィブロシスチンをコードします。常染色体劣性多発性嚢胞腎の主要な原因遺伝子ですが、ネフロン癆様の病態を示すこともあります。

・RPGRIP1L遺伝子:
RPGRIP1様タンパク質をコードします。Joubert症候群やMeckel-Gruber症候群の原因遺伝子で、ネフロン癆との関連も報告されています。

・SDCCAG8遺伝子:
血清素欠損、小脳失調、巨大軸索神経障害関連タンパク質8(NPHP10)をコードします。Senior-Løken症候群やBardet-Biedl症候群様の症状を伴うネフロン癆の原因です。

・SLC41A1遺伝子:
マグネシウム輸送体をコードします。ネフロン癆の原因遺伝子として報告されています。

・TMEM138遺伝子:
膜貫通タンパク質138をコードし、一次繊毛の形成に関与します。ネフロン癆関連遺伝子です。

・TMEM216遺伝子:
膜貫通タンパク質216(NPHP11)をコードします。Joubert症候群やMeckel-Gruber症候群の原因遺伝子です。

・TMEM237遺伝子:
膜貫通タンパク質237をコードし、一次繊毛に局在します。Joubert症候群関連疾患の原因遺伝子です。

・TMEM67遺伝子:
膜貫通タンパク質67(NPHP11)をコードします。Joubert症候群やMeckel-Gruber症候群の原因遺伝子で、肝線維症を伴うことがあります。

・TRAF3IP1遺伝子:
TRAF3相互作用タンパク質1をコードし、一次繊毛の機能に関与します。ネフロン癆関連遺伝子です。

・TTC21B遺伝子:
テトラトリコペプチドリピート含有タンパク質21Bをコードします。鞭毛内輸送に関与し、ネフロン癆や網膜ジストロフィーの原因となります。

・WDR19遺伝子:
WDリピート含有タンパク質19をコードします。鞭毛内輸送に関与し、Senior-Løken症候群やネフロン癆の原因となります。

・WDR35遺伝子:
WDリピート含有タンパク質35をコードし、鞭毛内輸送に関与します。短肋骨多指症候群やネフロン癆の原因遺伝子です。

・XPNPEP3遺伝子:
X-プロリルアミノペプチダーゼ3をコードします。ミトコンドリアに局在する酵素で、ネフロン癆様の腎症の原因となります。

・ZNF423遺伝子:
ジンクフィンガータンパク質423をコードします。Joubert症候群やネフロン癆の原因遺伝子として報告されています。

カバレッジ

カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。

≥99% at 20x(読み取り深度平均20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
 検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

検査の限界

詳しくはこちら

すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。

低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。

この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。

※この検査パネルでは、31の原因遺伝子のみを対象としています。臨床的にネフロン癆と診断される症例のうち、遺伝子変異が同定される頻度は約30%程度です。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。未同定の原因遺伝子が存在する可能性や、検出困難な変異が存在する可能性があります。

結果が出るまでの期間

2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。

料金

税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
小児期から若年期に多飲・多尿がある方、夜尿症や昼間尿失禁がある方、低比重尿が持続する方におすすめします。また、超音波検査で腎髄質に嚢胞が認められる方、腎機能障害がある方、成長発達障害がある方も検査をご検討ください。網膜色素変性症、肝線維症、神経学的異常などの腎外症状を伴う場合は、ネフロン癆関連症候群の可能性が高くなります。家族に同様の症状やネフロン癆の診断を受けた方がいる場合も検査が推奨されます。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
ネフロン癆と多発性嚢胞腎の違いは何ですか?
多発性嚢胞腎(常染色体優性多発性嚢胞腎:ADPKD)は主に成人期に発症し、腎皮質と髄質の両方に嚢胞が多数形成されます。一方、ネフロン癆は小児期から若年期に発症し、腎髄質(特に皮髄境界部)に嚢胞が形成され、尿濃縮能低下が特徴的です。遺伝形式も異なり、ネフロン癆は主に常染色体劣性遺伝、多発性嚢胞腎は常染色体優性遺伝です。遺伝子検査により正確な診断と鑑別が可能です。
家族も検査を受ける必要がありますか?
ネフロン癆は主に常染色体劣性遺伝形式をとります。患者さんの兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。また、患者さんのお子さんは全員保因者となります。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。特に保因者同士のカップルの場合、お子さんが発症するリスクは25%となるため、遺伝カウンセリングが重要です。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
臨床的にネフロン癆と診断される症例のうち、遺伝子変異が同定される頻度は約30%程度です。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。未同定の原因遺伝子が存在する可能性や、検出困難な変異が存在する可能性があります。臨床症状、画像所見、腎生検組織所見に基づいた診断と管理が引き続き重要です。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
ネフロン癆は主に常染色体劣性遺伝形式をとります。患者さんのお子さんは全員保因者となりますが、通常は症状を示しません。しかし、保因者同士のカップルから生まれる子どもが発症する確率は25%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
ネフロン癆の治療はどのように行われますか?
現在のところ根本的な治療法はありませんが、腎機能保護療法(ACE阻害薬・ARB、食事療法)、電解質異常や代謝性アシドーシスの補正、腎性貧血の治療(エリスロポエチン製剤、鉄剤)、成長ホルモン療法などの対症療法が行われます。最終的には透析や腎移植が必要となりますが、腎移植後の再発はないため、腎移植は有効な治療選択肢です。
予後はどうですか?
ネフロン癆は進行性の疾患で、基本的に30歳までに末期腎不全に至ります。乳児型は3~5歳、若年性は平均13~14歳、思春期型は平均19歳で末期腎不全に至ります。ただし、適切な腎機能保護療法、合併症管理により、透析導入時期を遅らせることができる可能性があります。腎移植後の予後は良好で、再発は認められません。
腎外症状はどのくらいの頻度で現れますか?
ネフロン癆患者さんの約10~20%で腎外症状が認められます。網膜色素変性症(Senior-Løken症候群)、小脳虫部低形成や発達遅滞(Joubert症候群)、肝線維症、骨格異常、心臓の異常などがあります。原因遺伝子によって腎外症状の出現頻度や種類が異なるため、遺伝子検査により原因遺伝子を特定することで、腎外症状のモニタリングや早期発見が可能になります。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では臨床的に重要な31の原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。


プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

仲田洋美のプロフィールはこちら