ムコ多糖症NGS遺伝子パネル検査|ミネルバクリニック
ムコ多糖症とは
ムコ多糖症(Mucopolysaccharidosis: MPS)は、細胞内のライソゾームにおいてグリコサミノグリカン(GAG、ムコ多糖)を分解する酵素が生まれつき欠損または活性が低下しているため、全身の細胞にムコ多糖が蓄積する遺伝性のライソゾーム病です。日本では特定疾患(指定難病)に指定されています。
ムコ多糖(グリコサミノグリカン)は、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、ケラタン硫酸などの長鎖多糖類で、血管、臓器、骨、関節、角膜、脳、皮膚、粘膜など全身に広く存在し、細胞と細胞をつなぐ重要な役割を果たしています。これらの物質が正常に分解されないことで、様々な臓器に蓄積し、多様な症状を引き起こします。
ムコ多糖症は、欠損している酵素の種類によってI型からIX型まで複数の型に分類されます(一部欠番あり)。それぞれの型は、最初に報告した医師の名前を冠した別名でも呼ばれており、ハーラー症候群(I型H)、ハンター症候群(II型)、サンフィリッポ症候群(III型)、モルキオ症候群(IV型)などがよく知られています。
日本でのムコ多糖症の発症頻度は約5万人に1人とされ、世界的には約2万5千人に1人と推定されています。日本ではII型(ハンター症候群)が全体の約50%を占め最も多く、次いでI型が約15%、III型とIV型がそれぞれ約10%程度と報告されています。
症状と病態
ムコ多糖症の症状は型によって異なりますが、多くの型で共通する特徴的な症状があります。出生時には通常正常に見えますが、生後数ヶ月から数年かけて徐々に症状が現れ、進行していきます。症状の現れ方や進行速度は、欠損している酵素の種類や残存酵素活性、個人差によって大きく異なります。
主要症状
- 粗な顔貌(特徴的な顔つき:額が突出、鼻が低い、唇・舌が大きい)
- 低身長・成長障害
- 骨格変形(多発性異骨症:dysostosis multiplex)
- 肝脾腫(肝臓・脾臓の腫大によるお腹の膨れ)
- 関節拘縮(関節が硬くなり動きが制限される)
- 臍ヘルニア・鼠径ヘルニア
- 角膜混濁(型によっては認められない)
- 心臓弁膜症(心雑音)
- 反復性中耳炎・難聴
- 呼吸障害(気道狭窄、睡眠時無呼吸)
- 精神運動発達遅滞(型によって異なる)
- 水頭症
型別の特徴
I型(ハーラー症候群・シャイエ症候群)
α-L-イズロニダーゼ酵素の欠損により、デルマタン硫酸とヘパラン硫酸が蓄積します。重症度によって3つのサブタイプに分類されます。
- ハーラー症候群(I型H):最も重症な型。生後6ヶ月頃から症状が現れ、粗な顔貌、肝脾腫、骨格変形、角膜混濁、心疾患、精神運動発達遅滞が進行します。治療しない場合、10歳代で死亡することが多いです。
- シャイエ症候群(I型S):軽症型。思春期以降に症状が現れ、知能は正常です。関節拘縮、角膜混濁、心疾患が主な症状です。
- ハーラー・シャイエ症候群(I型H-S):中間型。
II型(ハンター症候群)
イズロン酸-2-スルファターゼ酵素の欠損により発症するX連鎖性遺伝の疾患で、ほとんどの患者は男性です。I型と似た症状を呈しますが、角膜混濁は通常認められません。重症型(早期進行型)と軽症型(緩徐進行型)があります。
- 重症型:生後18ヶ月~4歳で症状が現れ、進行性の認知機能低下、気道疾患、心疾患を伴い、通常20歳までに死亡します。
- 軽症型:中枢神経系の障害は軽度ですが、他の臓器症状は重症型と同様に進行することがあります。成人初期まで生存し、知能は正常なことが多いです。
III型(サンフィリッポ症候群)
原因酵素の違いによりA型、B型、C型、D型に分類されますが、症状はほぼ同じです。日本ではII型に次いで多く、ムコ多糖症全体の約20%を占めます。他のムコ多糖症と異なり、神経症状が特徴的です。
- 2~6歳頃から落ち着きがない、興奮、乱暴な行動、言葉の遅れ、不眠などが認められます
- 身体症状は軽く、多毛が比較的目立つ程度で、診断が遅れることが多いです
- 10歳代になると、睡眠障害、肝脾腫、痙攣発作が見られ、意思疎通が困難となります
IV型(モルキオ症候群)
A型(N-アセチルガラクトサミン-6-硫酸スルファターゼ欠損)とB型(β-ガラクトシダーゼ欠損)がありますが、ほとんどがA型です。ムコ多糖症の中で最も強い骨変形を示します。
- 生後2~3年で骨格異常が目立ち始めます
- 短胴性の低身長(重症例では身長100cm前後)
- 環軸椎亜脱臼(生命予後に直接影響するため重要)
- 関節の過伸展や靭帯弛緩による不安定性
- 角膜混濁、難聴、心臓弁膜症
- 精神発達の遅滞はなく知能は正常です
VI型(マロトー・ラミー症候群)
アリルスルファターゼB(N-アセチルガラクトサミン-4-スルファターゼ)の欠損により発症します。I型に似た身体所見を示しますが、知能は障害されません。角膜混濁、肝脾腫、骨格変形、心臓弁膜症などが見られます。
VII型(スライ症候群)
β-グルクロニダーゼの欠損により発症します。症状は多様で、ハーラー病のような全身症状・神経症状をきたすタイプ、モルキオ病のような骨の変化が主体のタイプ、胎児期から全身がむくむタイプ(胎児水腫)などがあります。
ムコリピドーシスII型(I細胞病)・III型(偽性ハーラー・ポリジストロフィー)
厳密にはムコ多糖症とは異なりますが、臨床的にムコ多糖症と似た症状を呈するため、鑑別診断として重要です。リン酸転移酵素の欠損により、様々なライソゾーム酵素がライソゾームに運ばれなくなることが原因です。
- II型(I細胞病):重症型。生まれた時や生後半年頃から症状が現れます。ムコ多糖症のハーラー病に似ていますが、症状の出現が早く、歯ぐきの肥厚が特徴的です。
- III型(偽性ハーラー・ポリジストロフィー):軽症型。2~4歳頃に骨の変形、関節拘縮などが見られ、徐々に進行しますがII型よりは症状は軽度です。成人に達し、施設などで働かれている方もいます。
進行と予後
ムコ多糖症の進行速度と予後は、型や重症度によって大きく異なります。重症型では症状が急激に進行し、治療しない場合10~20歳代で死亡することがあります。一方、軽症型では思春期や青年期以降に症状が現れ、進行は緩やかで、適切な治療により生活の質を維持できることが多いです。
現在では、一部の型(I型、II型、IV型A、VI型)に対して酵素補充療法が利用可能となり、早期診断・早期治療により予後が大きく改善しています。また、I型の一部症例では造血幹細胞移植も有効です。
遺伝形式と原因遺伝子
ムコ多糖症は遺伝性疾患であり、II型を除くすべての型が常染色体劣性(潜性)遺伝形式をとります。II型(ハンター症候群)のみがX連鎖性劣性遺伝です。
常染色体劣性(潜性)遺伝形式(I型、III型、IV型、VI型、VII型)
両親がともに保因者(変異遺伝子を1つ持つが症状のない人)である場合、子どもが発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%、健常(変異遺伝子を持たない)となるリスクは25%です。保因者の両親は通常症状がありません。
X連鎖性劣性遺伝(II型のみ)
II型(ハンター症候群)は、X染色体上のIDS遺伝子の変異が原因で発症します。男性(XY)は変異遺伝子を1つ持つだけで発症しますが、女性(XX)は通常、変異遺伝子を1つ持っていても保因者となり症状は現れません。ただし、まれに女性でも症状が現れることがあります。
- 母親が保因者の場合、男児が発症する確率は50%、女児が保因者となる確率は50%です
- 父親が患者の場合、息子は発症しませんが、娘は必ず保因者となります
原因遺伝子
当検査パネルでは、ムコ多糖症および関連疾患の原因となる12の遺伝子を対象としています:
- IDUA遺伝子(I型):α-L-イズロニダーゼをコードする遺伝子
- IDS遺伝子(II型):イズロン酸-2-スルファターゼをコードする遺伝子
- SGSH遺伝子(III型A):N-スルホグルコサミンスルホヒドラーゼをコードする遺伝子
- NAGLU遺伝子(III型B):α-N-アセチルグルコサミニダーゼをコードする遺伝子
- HGSNAT遺伝子(III型C):ヘパラン-α-グルコサミニドN-アセチルトランスフェラーゼをコードする遺伝子
- GNS遺伝子(III型D):N-アセチルグルコサミン-6-スルファターゼをコードする遺伝子
- GALNS遺伝子(IV型A):N-アセチルガラクトサミン-6-硫酸スルファターゼをコードする遺伝子
- GLB1遺伝子(IV型B):β-ガラクトシダーゼをコードする遺伝子
- ARSB遺伝子(VI型):アリルスルファターゼB(N-アセチルガラクトサミン-4-スルファターゼ)をコードする遺伝子
- GUSB遺伝子(VII型):β-グルクロニダーゼをコードする遺伝子
- GNPTAB遺伝子(ムコリピドーシスII型・III型):N-アセチルグルコサミン-1-リン酸転移酵素α/βサブユニットをコードする遺伝子
- GNPTG遺伝子(ムコリピドーシスIII型γ):N-アセチルグルコサミン-1-リン酸転移酵素γサブユニットをコードする遺伝子
ミネルバクリニックのムコ多糖症遺伝子パネル検査の特徴
「ムコ多糖症 NGSパネル検査」とは、現在ムコ多糖症および関連疾患の原因として報告されている12の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。
従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。
何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、ムコ多糖症に関連する12遺伝子を一度に調べられる「ムコ多糖症 NGSパネル検査」を採用しています。
一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。
1.費用がリーズナブル
一般的な医療機関でムコ多糖症の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。
当院では、ムコ多糖症に関係するとされる12の遺伝子を一度に調べられる「ムコ多糖症 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)
2.結果が出るまでがはやい
一般的な医療機関で行えるムコ多糖症の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。
当院で行う「ムコ多糖症 NGSパネル検査」の場合、12の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。
3.一気にまとめてできる
臨床症状からムコ多糖症を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。
当院で行う「ムコ多糖症 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な12の原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。
オプション
塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)
検査内容
「ムコ多糖症 NGSパネル検査」では、ムコ多糖症および関連疾患に関係するとされる12種類の遺伝子(ARSB、GALNS、GLB1、GNPTAB、GNPTG、GNS、GUSB、HGSNAT、IDS、IDUA、NAGLU、SGSH)をまとめて検査します。
「ムコ多糖症 NGSパネル検査」は、ムコ多糖症の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。
どんな人が受けたらいいの?
【ムコ多糖症の個人歴または家族歴のある方】に
「ムコ多糖症 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。
この検査は以下のような方に適しています:
・粗な顔貌(特徴的な顔つき)がある方
・低身長・成長障害がある方
・骨格変形(多発性異骨症)がある方
・肝脾腫(肝臓・脾臓の腫大)がある方
・関節拘縮(関節が硬く動きが制限される)がある方
・臍ヘルニア・鼠径ヘルニアがある方
・角膜混濁がある方
・心臓弁膜症(心雑音)がある方
・反復性中耳炎・難聴がある方
・精神運動発達遅滞がある方
・水頭症がある方
・ムコ多糖症または関連疾患の家族歴がある方
・尿中ムコ多糖(ウロン酸)の上昇が認められる方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方
このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。
検査で得られる患者さんの潜在的利益は?
遺伝子検査により原因が判明すると、ムコ多糖症の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切な酵素補充療法、造血幹細胞移植の検討、生活習慣の改善、定期的なモニタリングを行うことができます。
遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・ムコ多糖症の型の特定
・酵素補充療法の適応判断(I型、II型、IVA型、VI型)
・造血幹細胞移植の適応判断
・心臓弁膜症のリスク評価と管理
・呼吸機能障害のリスク評価と管理
・環軸椎亜脱臼などの骨格合併症の早期発見
・水頭症、脊髄圧迫のリスク評価
・疾患の進行予測と長期的な管理計画の立案
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供
患者さんで病原性変異が同定された場合、遺伝形式に応じて家族の発症リスクが異なります。常染色体劣性遺伝の場合は兄弟姉妹が発症するリスクは25%、X連鎖性遺伝(II型)の場合は母親が保因者であれば男児が発症するリスクは50%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。
対象遺伝子
- 詳しくはこちら
-
ARSB, GALNS, GLB1, GNPTAB, GNPTG, GNS, GUSB, HGSNAT, IDS, IDUA, NAGLU, SGSH ( 12遺伝子 )
各遺伝子の詳細:
・IDUA遺伝子(ムコ多糖症I型):
α-L-イズロニダーゼ酵素をコードする遺伝子。4番染色体に存在します。この酵素の欠損により、デルマタン硫酸とヘパラン硫酸が蓄積します。I型はハーラー症候群(重症型)、ハーラー・シャイエ症候群(中間型)、シャイエ症候群(軽症型)に分類されます。常染色体劣性遺伝形式です。
・IDS遺伝子(ムコ多糖症II型):
イズロン酸-2-スルファターゼ酵素をコードする遺伝子。X染色体に存在します。この酵素の欠損により、デルマタン硫酸とヘパラン硫酸が蓄積します。II型(ハンター症候群)は唯一のX連鎖性遺伝形式のムコ多糖症で、ほとんどの患者は男性です。重症型と軽症型があります。
・SGSH遺伝子(ムコ多糖症III型A):
N-スルホグルコサミンスルホヒドラーゼ(ヘパランN-スルファターゼ)をコードする遺伝子。この酵素の欠損により、ヘパラン硫酸が蓄積します。III型A(サンフィリッポ症候群A型)は、III型の中で最も頻度が高く、神経症状が特徴的です。常染色体劣性遺伝形式です。
・NAGLU遺伝子(ムコ多糖症III型B):
α-N-アセチルグルコサミニダーゼ酵素をコードする遺伝子。この酵素の欠損により、ヘパラン硫酸が蓄積します。III型B(サンフィリッポ症候群B型)も神経症状が特徴的です。常染色体劣性遺伝形式です。
・HGSNAT遺伝子(ムコ多糖症III型C):
ヘパラン-α-グルコサミニドN-アセチルトランスフェラーゼ酵素をコードする遺伝子。この酵素の欠損により、ヘパラン硫酸が蓄積します。III型C(サンフィリッポ症候群C型)も神経症状が特徴的です。常染色体劣性遺伝形式です。
・GNS遺伝子(ムコ多糖症III型D):
N-アセチルグルコサミン-6-スルファターゼ酵素をコードする遺伝子。この酵素の欠損により、ヘパラン硫酸が蓄積します。III型D(サンフィリッポ症候群D型)は最も稀な型です。常染色体劣性遺伝形式です。
・GALNS遺伝子(ムコ多糖症IV型A):
N-アセチルガラクトサミン-6-硫酸スルファターゼ酵素をコードする遺伝子。この酵素の欠損により、ケラタン硫酸とコンドロイチン-6-硫酸が蓄積します。IV型A(モルキオ症候群A型)は、ムコ多糖症の中で最も強い骨変形を示しますが、知能は正常です。常染色体劣性遺伝形式です。
・GLB1遺伝子(ムコ多糖症IV型B):
β-ガラクトシダーゼ酵素をコードする遺伝子。この酵素の欠損により、ケラタン硫酸が蓄積します。IV型B(モルキオ症候群B型)の症状はIVA型と似ていますが、より軽度です。常染色体劣性遺伝形式です。GLB1遺伝子の変異はGM1ガングリオシドーシスの原因にもなります。
・ARSB遺伝子(ムコ多糖症VI型):
アリルスルファターゼB(N-アセチルガラクトサミン-4-スルファターゼ)酵素をコードする遺伝子。この酵素の欠損により、デルマタン硫酸が蓄積します。VI型(マロトー・ラミー症候群)は、I型に似た身体所見を示しますが、知能は正常です。常染色体劣性遺伝形式です。
・GUSB遺伝子(ムコ多糖症VII型):
β-グルクロニダーゼ酵素をコードする遺伝子。この酵素の欠損により、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸が蓄積します。VII型(スライ症候群)は症状が多様で、重症型から軽症型まで幅広い臨床像を呈します。常染色体劣性遺伝形式です。
・GNPTAB遺伝子(ムコリピドーシスII型・III型α/β):
N-アセチルグルコサミン-1-リン酸転移酵素α/βサブユニットをコードする遺伝子。この酵素の欠損により、ライソゾーム酵素がライソゾームに正しく輸送されず、様々な物質が蓄積します。ムコリピドーシスII型(I細胞病)は重症型、III型α/β(偽性ハーラー・ポリジストロフィー)は軽症型です。常染色体劣性遺伝形式です。
・GNPTG遺伝子(ムコリピドーシスIII型γ):
N-アセチルグルコサミン-1-リン酸転移酵素γサブユニットをコードする遺伝子。この遺伝子の変異により、ムコリピドーシスIII型γが発症します。GNPTAB遺伝子変異によるIII型α/βより軽症であることが多いです。常染色体劣性遺伝形式です。
カバレッジ
カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。
≥99% at 20x(読み取り深度20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。
検体
血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)
※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。
検査の限界
- 詳しくはこちら
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すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。
低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。
この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。
※この検査パネルでは、12の原因遺伝子のみを対象としています。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。また、尿中ムコ多糖の測定や酵素活性測定など、他の検査と組み合わせることで診断精度が向上します。
結果が出るまでの期間
2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。
料金
税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)
よくあるご質問
- どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
- 粗な顔貌(特徴的な顔つき)、低身長、骨格変形、肝脾腫、関節拘縮、臍ヘルニア・鼠径ヘルニア、角膜混濁、心臓弁膜症、反復性中耳炎、精神運動発達遅滞などの症状がある方におすすめします。また、尿中ムコ多糖(ウロン酸)の上昇が認められる方、家族にムコ多糖症の方がいる場合も検査をご検討ください。
- 検査はどのように行いますか?
- 血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
- 尿検査や酵素活性測定との違いは何ですか?
- 尿中ムコ多糖の測定はスクリーニング検査として有用ですが、型の特定はできません。酵素活性測定は型の特定ができますが、保因者診断や出生前診断には遺伝子検査が必要です。当検査では原因遺伝子を特定することで、確定診断、保因者診断、家族計画に関する情報提供が可能になります。
- 家族も検査を受ける必要がありますか?
- 遺伝形式によって家族の発症リスクが異なります。常染色体劣性遺伝の場合、患者さんの兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。II型(X連鎖性遺伝)の場合、母親が保因者であれば男児が発症するリスクは50%です。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
- 検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
- 検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。臨床症状と尿中ムコ多糖測定、酵素活性測定などに基づいた診断が引き続き重要です。また、この検査パネルに含まれない稀な型や、未知の遺伝子変異の可能性もあります。
- 保険は適用されますか?
- 当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。ただし、ムコ多糖症と診断された場合、特定疾患(指定難病)の医療費助成制度を利用できる可能性があります。
- 結果はどのように説明されますか?
- 検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、ムコ多糖症の型、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
- 子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
- 遺伝形式によって子どもへの影響が異なります。常染色体劣性遺伝の場合、保因者同士のカップルで子どもが発症する確率は25%です。II型(X連鎖性遺伝)の場合、母親が保因者であれば男児が発症する確率は50%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
- ムコ多糖症の治療はどのように行われますか?
- I型、II型、IVA型、VI型に対しては酵素補充療法が利用可能です。これは週1回の点滴により不足している酵素を補充する治療法で、症状の進行を遅らせる効果があります。また、I型の一部症例では造血幹細胞移植も有効です。その他、心臓弁膜症、呼吸障害、骨格変形などに対する対症療法も重要です。
- 予後はどうですか?
- ムコ多糖症の予後は型と重症度によって大きく異なります。重症型では治療しない場合10~20歳代で死亡することがありますが、早期に酵素補充療法や造血幹細胞移植を開始することで予後が大きく改善しています。軽症型では適切な管理により通常の寿命まで生きられる可能性があります。
- 酵素補充療法はどの型で利用できますか?
- 現在、I型(ラロニダーゼ)、II型(イデュルスルファーゼ)、IVA型(エロスルファーゼアルファ)、VI型(ガルスルファーゼ)に対して酵素補充療法が承認されています。週1回の点滴投与により、肝脾腫の縮小、呼吸機能の改善、関節可動域の改善などの効果が期待できます。
- 他の医療機関での検査との違いは何ですか?
- 当院では臨床的に重要な12の原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。
プロフィール
この記事の筆者:仲田洋美(医師)
ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。
仲田洋美のプロフィールはこちら