ミトコンドリアDNA枯渇症候群遺伝子検査(NGSパネル)|ミネルバクリニック
ミトコンドリアDNA枯渇症候群とは
ミトコンドリアDNA枯渇症候群(Mitochondrial DNA Depletion Syndrome: MTDPS)は、細胞内のミトコンドリアDNA(mtDNA)量が著しく減少することにより、ミトコンドリアのエネルギー代謝が阻害され、様々な臓器に機能障害が起こる遺伝性疾患群です。
本疾患の一次的な原因は核DNAにコードされる遺伝子の異常であり、その結果として二次的にmtDNA量の枯渇を中心に、時に多重欠失や点変異などの異常も引き起こされます。これは核DNAとmtDNAの間のゲノム間コミュニケーションの障害と捉えることができます。
ミトコンドリアは細胞内でエネルギー(ATP)を産生する重要な小器官です。mtDNAが不足すると、細胞は十分なエネルギーを産生できなくなり、特にエネルギー需要の高い臓器(脳、筋肉、肝臓など)に症状が現れやすくなります。ミトコンドリア呼吸鎖複合体欠損症(MRCD)全体の頻度は出生5,000人に1人とされ、その中でMTDPSが占める割合は複合型呼吸鎖異常症の18-50%と報告されています。
症状と病態
ミトコンドリアDNA枯渇症候群の症状は非常に多様で、影響を受ける臓器や組織によって異なります。ほとんどの病型では、生後2年以内に症状が現れることが多いですが、発症年齢や重症度には大きな個人差があります。
病型による分類
ミトコンドリアDNA枯渇症候群は、主に障害される臓器によって以下の4つの病型に分類されます:
- 筋型(Myopathic form):主に骨格筋が障害され、進行性の筋力低下、筋緊張低下を呈します
- 脳筋型(Encephalomyopathic form):脳と筋肉の両方が障害され、発達遅延、けいれん、筋力低下などが見られます
- 肝脳型(Hepatocerebral form):肝臓と脳が主に障害され、肝不全、神経症状を呈します
- 神経消化器型(Neurogastrointestinal form):神経系と消化器系が障害され、消化管運動障害、末梢神経障害などが見られます
主要症状
筋型の症状
- 進行性の全身性筋力低下
- 筋緊張低下(floppy infant)
- 哺乳困難・嚥下障害
- 呼吸筋力低下による呼吸不全
- 外眼筋麻痺(眼球運動障害)
- 顔面筋力低下
- 筋萎縮
- 深部腱反射の低下または消失
脳筋型の症状
- 発達遅延・退行
- 難治性てんかん発作
- 進行性の知的障害
- 筋緊張低下
- 痙縮(四肢の硬直)
- 進行性認知症
- 視神経萎縮・失明
- 難聴
- 乳酸アシドーシス
- 眼瞼下垂
- 外眼筋麻痺
肝脳型の症状
- 急性または慢性肝不全
- 新生児期からの肝障害
- けいれん
- 脳症
- 退行(獲得した発達段階の喪失)
- 低血糖
- 肝腫大
- 黄疸
- 乳酸アシドーシス
神経消化器型の症状
- 消化管運動障害(腸管の動きが悪くなる)
- 慢性的な偽性腸閉塞
- 末梢神経障害
- 体重増加不良・発育不全
- 嘔吐・下痢
- 腹部膨満
代表的な疾患
TK2欠損症(筋型):最も一般的な筋型で、乳児期から小児期に発症します。急速進行型では生後数ヶ月から2歳までに呼吸不全で死亡することが多く、緩徐進行型では小児期後半から青年期まで生存する例もあります。
Alpers症候群(肝脳型):POLG遺伝子変異によるもので、難治性てんかん、発達退行、肝不全を特徴とします。多くは乳幼児期に発症し、進行性の経過をたどります。
MNGIE症候群(神経消化器型):TYMP遺伝子変異によるもので、消化管運動障害、末梢神経障害、眼瞼下垂、難聴などを特徴とします。
進行と予後
疾患の進行速度と予後は原因遺伝子や病型によって大きく異なります。筋型や肝脳型の重症例では、乳幼児期に呼吸不全や肝不全で死亡することが多いですが、一部の患者さんでは小児期後半や青年期まで生存する例もあります。脳筋型の一部(SUCLA2変異)では成人期まで生存する例も報告されています。現時点では根本的な治療法はありませんが、対症療法や栄養管理、呼吸管理などにより症状の軽減や生活の質の向上が図られています。
遺伝形式と原因遺伝子
ミトコンドリアDNA枯渇症候群は、核DNAにコードされる遺伝子の変異により発症する常染色体劣性遺伝性疾患です。これまでに複数の原因遺伝子が同定されており、それぞれの遺伝子はmtDNAの複製、修復、ヌクレオチド合成など、mtDNAの維持に重要な役割を果たしています。
主な原因遺伝子と関連する病型
筋型の原因遺伝子
- TK2遺伝子:チミジンキナーゼ2をコードし、最も頻度の高い筋型の原因遺伝子です。ヌクレオチド救済経路に関与します
- RRM2B遺伝子:リボヌクレオチド還元酵素の調節サブユニットをコードします
脳筋型の原因遺伝子
- SUCLA2遺伝子:サクシニルCoAリガーゼのβサブユニットをコードし、脳筋型の主要な原因遺伝子の一つです
- SUCLG1遺伝子:サクシニルCoAリガーゼのαサブユニットをコードします
- FBXL4遺伝子:F-boxタンパク質をコードし、ミトコンドリアの品質管理に関与します
- AGK遺伝子:アシルグリセロールキナーゼをコードします
肝脳型の原因遺伝子
- DGUOK遺伝子:デオキシグアノシンキナーゼをコードし、ヌクレオチド救済経路に関与します
- MPV17遺伝子:ミトコンドリア内膜タンパク質をコードします
- POLG遺伝子:ミトコンドリアDNAポリメラーゼγの触媒サブユニットをコードし、Alpers症候群の原因となります
- POLG2遺伝子:ミトコンドリアDNAポリメラーゼγの副サブユニットをコードします
- TWNK遺伝子(旧C10orf2):Twinkleヘリカーゼをコードし、mtDNAの複製に関与します
神経消化器型の原因遺伝子
- TYMP遺伝子:チミジンホスホリラーゼをコードし、MNGIE症候群の原因となります
その他の関連遺伝子
- SLC25A4遺伝子:ADP/ATPトランスロカーゼをコードします
- TFAM遺伝子:ミトコンドリア転写因子Aをコードし、mtDNAの転写と複製に関与します
- MGME1遺伝子:ミトコンドリアゲノム維持エキソヌクレアーゼ1をコードします
- OPA1遺伝子:ミトコンドリアのダイナミクスに関与するタンパク質をコードします
遺伝形式
ミトコンドリアDNA枯渇症候群は常染色体劣性遺伝形式をとります。これは、両親がそれぞれ変異遺伝子を1コピーずつ保有している(保因者)場合に、子どもが発症する可能性があることを意味します。
常染色体劣性遺伝のリスク:
・両親が保因者の場合、子どもが発症する確率は25%
・子どもが保因者となる確率は50%
・子どもが変異遺伝子を持たない確率は25%
・保因者の両親は通常、症状を示しません
ミネルバクリニックのミトコンドリアDNA枯渇症候群遺伝子パネル検査の特徴
「ミトコンドリアDNA枯渇症候群 NGSパネル検査」とは、現在ミトコンドリアDNA枯渇症候群の原因として報告されている16の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。
従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。
何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、ミトコンドリアDNA枯渇症候群に関連する16遺伝子を一度に調べられる「ミトコンドリアDNA枯渇症候群 NGSパネル検査」を採用しています。
一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。
1.費用がリーズナブル
一般的な医療機関でミトコンドリアDNA枯渇症候群の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。
当院では、ミトコンドリアDNA枯渇症候群に関係するとされる16の遺伝子を一度に調べられる「ミトコンドリアDNA枯渇症候群 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)
2.結果が出るまでがはやい
一般的な医療機関で行えるミトコンドリアDNA枯渇症候群の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。
当院で行う「ミトコンドリアDNA枯渇症候群 NGSパネル検査」の場合、16の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。
3.一気にまとめてできる
臨床症状からミトコンドリアDNA枯渇症候群を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。
当院で行う「ミトコンドリアDNA枯渇症候群 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な16の原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。
オプション
塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)
検査内容
「ミトコンドリアDNA枯渇症候群 NGSパネル検査」では、ミトコンドリアDNA枯渇症候群に関係するとされる16種類の遺伝子(AGK、DGUOK、FBXL4、MGME1、MPV17、OPA1、POLG、POLG2、RRM2B、SLC25A4、SUCLA2、SUCLG1、TFAM、TK2、TWNK、TYMP)をまとめて検査します。
「ミトコンドリアDNA枯渇症候群 NGSパネル検査」は、ミトコンドリアDNA枯渇症候群の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。
どんな人が受けたらいいの?
【ミトコンドリアDNA枯渇症候群の個人歴または家族歴のある方】に
「ミトコンドリアDNA枯渇症候群 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。
この検査は以下のような方に適しています:
・原因不明の進行性筋力低下がある方
・筋緊張低下(floppy infant)がある乳児
・発達遅延や発達退行がある方
・難治性てんかんがある方
・乳幼児期からの肝障害・肝不全がある方
・消化管運動障害(慢性偽性腸閉塞)がある方
・外眼筋麻痺や眼瞼下垂がある方
・呼吸筋力低下がある方
・乳酸アシドーシスがある方
・血液検査や筋生検でミトコンドリア機能異常が疑われる方
・ミトコンドリアDNA枯渇症候群またはミトコンドリア病の家族歴がある方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方
このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。
検査で得られる患者さんの潜在的利益は?
遺伝子検査により原因が判明すると、ミトコンドリアDNA枯渇症候群の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。原因遺伝子が特定されることで、病型の予測や予後の推定、適切な対症療法の選択が可能になります。
遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・他のミトコンドリア病や神経筋疾患との鑑別
・病型(筋型、脳筋型、肝脳型、神経消化器型)の判定
・予後の推定と長期的な管理計画の立案
・適切な対症療法(抗てんかん薬、栄養療法、呼吸管理など)の選択
・肝移植などの治療選択肢の検討
・合併症の早期発見と予防
・より個別化された治療と症状管理
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供
患者さんで病原性変異が同定された場合、常染色体劣性遺伝形式のため、両親は保因者であり、兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。
対象遺伝子
- 詳しくはこちら
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AGK, DGUOK, FBXL4, MGME1, MPV17, OPA1, POLG, POLG2, RRM2B, SLC25A4, SUCLA2, SUCLG1, TFAM, TK2, TWNK, TYMP ( 16遺伝子 )
各遺伝子の詳細:
・AGK遺伝子:
アシルグリセロールキナーゼをコードする遺伝子。脳筋型の原因となり、発達遅延、筋力低下、白質脳症などを呈します。
・DGUOK遺伝子:
デオキシグアノシンキナーゼをコードする遺伝子。ヌクレオチド救済経路に関与し、肝脳型の主要な原因遺伝子の一つです。新生児期から乳児期に肝不全で発症することが多いです。
・FBXL4遺伝子:
F-boxタンパク質をコードする遺伝子。ミトコンドリアの品質管理に関与し、脳筋型を引き起こします。早期乳酸アシドーシス、発達遅延、てんかんなどが特徴的です。
・MGME1遺伝子:
ミトコンドリアゲノム維持エキソヌクレアーゼ1をコードする遺伝子。mtDNAの複製と修復に関与します。
・MPV17遺伝子:
ミトコンドリア内膜タンパク質をコードする遺伝子。肝脳型の原因となり、乳児期の肝不全、神経症状を呈します。
・OPA1遺伝子:
ミトコンドリアのダイナミクス(融合)に関与するタンパク質をコードする遺伝子。通常は常染色体優性遺伝性視神経萎縮症の原因ですが、劣性遺伝形式でmtDNA枯渇症候群を引き起こすこともあります。
・POLG遺伝子:
ミトコンドリアDNAポリメラーゼγの触媒サブユニットをコードする遺伝子。肝脳型の主要な原因遺伝子で、Alpers症候群(難治性てんかん、発達退行、肝不全)を引き起こします。非常に多様な臨床症状を示し、新生児期から高齢まであらゆる年齢で発症する可能性があります。
・POLG2遺伝子:
ミトコンドリアDNAポリメラーゼγの副サブユニットをコードする遺伝子。POLGと協働してmtDNAの複製を行います。
・RRM2B遺伝子:
リボヌクレオチド還元酵素の調節サブユニットp53R2をコードする遺伝子。ヌクレオチド合成に関与し、筋型および脳筋型の原因となります。
・SLC25A4遺伝子:
ADP/ATPトランスロカーゼ1(ANT1)をコードする遺伝子。ミトコンドリア内外でのADPとATPの交換を担います。筋型や脳筋型を引き起こします。
・SUCLA2遺伝子:
サクシニルCoAリガーゼのβサブユニットをコードする遺伝子。脳筋型の主要な原因遺伝子の一つで、発達遅延、筋緊張低下、ジストニア、難聴などが特徴的です。一部の患者では成人期まで生存する例も報告されています。
・SUCLG1遺伝子:
サクシニルCoAリガーゼのαサブユニットをコードする遺伝子。SUCLA2と協働して機能し、脳筋型を引き起こします。
・TFAM遺伝子:
ミトコンドリア転写因子Aをコードする遺伝子。mtDNAの転写と複製、mtDNAの維持に重要な役割を果たします。
・TK2遺伝子:
チミジンキナーゼ2をコードする遺伝子。ヌクレオチド救済経路に関与し、最も頻度の高い筋型の原因遺伝子です。乳児期から小児期に発症する進行性筋力低下が特徴で、急速進行型と緩徐進行型があります。
・TWNK遺伝子(旧C10orf2):
Twinkleヘリカーゼをコードする遺伝子。mtDNAの複製に必須のヘリカーゼで、肝脳型の原因となります。
・TYMP遺伝子:
チミジンホスホリラーゼをコードする遺伝子。MNGIE症候群(ミトコンドリア神経消化管脳症)の原因となり、消化管運動障害、末梢神経障害、眼瞼下垂、難聴などが特徴的です。
カバレッジ
カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。
≥99% at 20x(読み取り深度20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。
検体
血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)
※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。
検査の限界
- 詳しくはこちら
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すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。
低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。
この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。
※この検査パネルでは、16の原因遺伝子のみを対象としています。これらの遺伝子以外にもミトコンドリアDNA枯渇症候群の原因となる遺伝子が存在する可能性があります。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。また、mtDNA自体の変異によるミトコンドリア病は本検査では検出できません。
結果が出るまでの期間
2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。
料金
税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)
よくあるご質問
- どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
- 原因不明の進行性筋力低下、筋緊張低下(floppy infant)、発達遅延や発達退行、難治性てんかん、乳幼児期からの肝障害、消化管運動障害、乳酸アシドーシスなどがある方におすすめします。特に、複数の臓器に症状があり、血液検査や筋生検でミトコンドリア機能異常が疑われる場合は、ミトコンドリアDNA枯渇症候群の可能性が高くなります。また、家族に同様の症状がある場合も検査をご検討ください。
- 検査はどのように行いますか?
- 血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
- ミトコンドリアDNA枯渇症候群の病型は検査で分かりますか?
- 原因遺伝子が特定されることで、筋型、脳筋型、肝脳型、神経消化器型のどの病型に該当するか予測できます。ただし、同じ遺伝子変異でも症状の重症度や進行速度には個人差があります。検査結果は臨床症状と合わせて総合的に判断する必要があります。
- 家族も検査を受ける必要がありますか?
- ミトコンドリアDNA枯渇症候群は常染色体劣性遺伝形式のため、両親は通常保因者です。兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。保因者診断により、出生前診断や着床前診断などの選択肢についても相談できます。
- 検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
- この検査パネルでは16の主要な原因遺伝子を対象としていますが、これら以外の遺伝子変異や、mtDNA自体の変異による場合は検出できません。検査で病原性変異が検出されなくても、臨床症状に基づいた診断と管理が引き続き重要です。必要に応じて、全エクソーム解析やmtDNA解析などの追加検査をご提案することもあります。
- 保険は適用されますか?
- 当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
- 結果はどのように説明されますか?
- 検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。病原性変異が見つかった場合は、その遺伝子に関連する病型、予後、利用可能な治療法や支援についてもご説明します。
- 子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
- 常染色体劣性遺伝形式のため、両親が保因者の場合、子どもが発症する確率は25%です。患者さんの兄弟姉妹は25%の確率で発症、50%の確率で保因者となります。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
- ミトコンドリアDNA枯渇症候群の治療はどのように行われますか?
- 現在のところ根本的な治療法はありませんが、対症療法により症状の軽減や生活の質の向上を図ります。てんかんには抗てんかん薬、筋症状には理学療法、呼吸筋力低下には呼吸管理、肝不全には肝移植などが検討されます。また、ビタミン・補酵素療法(コエンザイムQ10、カルニチン、ビタミンB群など)や栄養管理も重要です。原因遺伝子が特定されることで、より適切な対症療法を選択できます。
- 予後はどうですか?
- 予後は原因遺伝子と病型によって大きく異なります。筋型や肝脳型の重症例では乳幼児期に死亡することが多いですが、一部の患者さんでは小児期後半や青年期まで生存する例もあります。脳筋型の一部(SUCLA2変異など)では成人期まで生存する例も報告されています。原因遺伝子が特定されることで、より正確な予後予測が可能になります。
- 他の医療機関での検査との違いは何ですか?
- 当院では臨床的に重要な16の原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。
プロフィール
この記事の筆者:仲田洋美(医師)
ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。
仲田洋美のプロフィールはこちら