(更新日:2025/09/29)
MODY(若年発症成人型糖尿病)・新生児糖尿病遺伝子検査|ミネルバクリニック
MODY・新生児糖尿病とは
MODY(若年発症成人型糖尿病:Maturity Onset Diabetes of the Young)と新生児糖尿病(Neonatal Diabetes Mellitus:NDM)は、単一遺伝子の異常によって発症する糖尿病です。これらは単一遺伝子性糖尿病(モノジェニック糖尿病)と呼ばれ、一般的な1型糖尿病や2型糖尿病とは異なる遺伝性の糖尿病です。
単一遺伝子性糖尿病は、1型や2型糖尿病として誤診されることが多く、患者さんが最も効果的な治療を受けられないケースが少なくありません。MODYは単一遺伝子性糖尿病の中で最も頻度が高く、糖尿病全体の1~3%を占めると推定されています。しかし、認知度が低いため、実際の患者数はさらに多い可能性があります。
単一遺伝子性糖尿病の正確な診断は、患者さんに最適な治療法を選択する上で極めて重要です。例えば、特定の遺伝子変異によるMODYでは、インスリン治療から経口血糖降下薬(スルホニル尿素薬)への切り替えが可能になる場合があり、患者さんのQOL(生活の質)が大きく改善します。
MODYの特徴と病型
MODYは、通常25歳未満の若年期に発症する糖尿病で、常染色体優性(顕性)遺伝の形式をとります。これは、両親のどちらか一方がMODYの場合、子どもが発症する確率が50%であることを意味します。
MODYの診断基準
以下の特徴がある場合、MODYが疑われます:
25歳未満(多くは35歳未満)での糖尿病発症
肥満を伴わない
家族歴:少なくとも3世代にわたって同様の糖尿病患者がいる
1型糖尿病に特徴的な自己抗体(GAD抗体など)が陰性
インスリン分泌能の低下が主体(インスリン抵抗性は原則として認めない)
主要なMODYの病型
現在までに14種類以上のMODY関連遺伝子が同定されており、原因遺伝子不明のMODYXも存在します。特に頻度の高い病型について説明します。
MODY2(GCK遺伝子異常)
GCK(グルコキナーゼ)遺伝子の異常により発症します。グルコキナーゼは肝臓や膵臓で糖代謝の最初のステップを触媒する酵素です。日本人を含むアジア人では最も頻度が高い病型の一つです。
MODY2の特徴:
出生時から軽度の高血糖が存在するが、多くは無症状
学校検尿や健康診断で偶然発見されることが多い
空腹時血糖値は軽度上昇するが、食後血糖値は糖尿病域でないことも多い
インスリン分泌能は比較的保たれる
終生、糖代謝異常が重篤化しない場合が多い
多くの場合、食事・運動療法のみで管理可能
糖尿病合併症のリスクは比較的低い
MODY3(HNF1A遺伝子異常)
HNF1A遺伝子は転写因子をコードしており、膵臓や腎臓の分化・発生に関与しています。薬物療法が必要なMODYの中で最も頻度が高い病型です。
MODY3の特徴:
10歳前後に診断されることが多い
学校検尿が診断のきっかけになることが多い
糖尿病発症前から尿糖が陽性になることがある
進行性のインスリン分泌能低下
細小血管合併症(腎症、網膜症)の発症頻度が高い
スルホニル尿素薬に対する反応性が非常に良好
インスリン治療からスルホニル尿素薬への切り替えが可能な場合がある
MODY1(HNF4A遺伝子異常)
HNF4A遺伝子も転写因子をコードしています。MODY2、MODY3に次いで頻度が高い病型です。
MODY1の特徴:
インスリン分泌不全が主な特徴
スルホニル尿素薬に良好に反応
細小血管合併症の頻度が高い
予後は比較的不良
MODY5(HNF1B遺伝子異常)
HNF1B遺伝子は腎臓の発達にも関与しているため、腎嚢胞・糖尿病症候群とも呼ばれます。
MODY5の特徴:
約50%の症例で糖尿病を認める
本質は腎疾患である
腎嚢胞、家族性高尿酸血性腎症、その他の腎奇形を約80%が有する
膵臓や肝臓の異常を伴うことがある
痛風のような関節炎を呈することがある
新生児糖尿病の特徴
新生児糖尿病(NDM)は、生後6か月未満に発症する極めて稀な糖尿病です。日本では約9万出生に1例の発症頻度と報告されています。自己免疫性のものは少なく、多くは遺伝子異常が原因です。
新生児糖尿病の分類
一過性新生児糖尿病(TNDM:Transient Neonatal Diabetes Mellitus)
生後18か月(中央値3か月)までに自然寛解する病型です。
一過性新生児糖尿病の特徴:
6q24インプリント異常が約70%を占める
KATPチャネル遺伝子異常(KCNJ11、ABCC8)がそれに次ぐ
両者で約90%を占める
約80%の症例で思春期以降に再発
再発後は永続的に糖尿病となる
永続性新生児糖尿病(PNDM:Permanent Neonatal Diabetes Mellitus)
生涯にわたって持続する病型です。
永続性新生児糖尿病の特徴:
KATPチャネル遺伝子異常(KCNJ11、ABCC8)が最も多い
インスリン遺伝子異常(INS)を加えると約半数を占める
KCNJ11、ABCC8遺伝子異常では、高用量スルホニル尿素薬でインスリン療法を離脱できる症例が多い
長期にわたって良好な血糖コントロールが可能
新生児糖尿病に伴う症状
新生児糖尿病では、以下のような症状が認められます:
子宮内発育不全(IUGR)
出生後の体重増加不良
多尿
重度の脱水
高血糖またはケトアシドーシス
一部の症例では先天奇形や神経学的障害を伴う
症状と病態
単一遺伝子性糖尿病の症状は、原因遺伝子や病型によって大きく異なります。
MODYの主要症状
MODYの症状は病型によって異なりますが、共通する特徴として以下が挙げられます:
若年期からの高血糖
膵β細胞機能の進行性低下(病型による)
口渇、多飲、多尿(高血糖が顕著な場合)
体重減少(進行例)
無症状で健診や家族歴調査で偶然発見されることも多い
MODY2のように軽症で生涯を通じて症状が軽微な場合もあれば、MODY3のように進行性にインスリン分泌能が低下し、合併症を発症しやすい病型もあります。
糖尿病合併症のリスク
適切な血糖コントロールが行われない場合、以下の合併症が発症・進展するリスクがあります:
糖尿病網膜症
糖尿病腎症
糖尿病神経障害
心血管疾患
感染症への易罹患性
ただし、病型によって合併症のリスクは異なります。MODY2は合併症リスクが低い一方、MODY3やMODY1は比較的高いリスクがあります。
その他の関連症状
一部のMODYや症候群性の単一遺伝子性糖尿病では、糖尿病以外の症状を伴うことがあります:
Wolfram症候群(WFS1遺伝子異常)
若年発症の糖尿病
視神経萎縮
感音性難聴
尿崩症
尿路異常
精神神経疾患
ミネルバクリニックのMODY・新生児糖尿病遺伝子パネル検査の特徴
「MODY・新生児糖尿病NGSパネル検査」とは、現在単一遺伝子性糖尿病の原因として報告されている38の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。
従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。
何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、MODY・新生児糖尿病に関連する38遺伝子を一度に調べられる「MODY・新生児糖尿病NGSパネル検査」を採用しています。
一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページ をご覧ください。
1.費用がリーズナブル
一般的な医療機関で単一遺伝子性糖尿病の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。
当院では、MODY・新生児糖尿病に関係するとされる38の遺伝子を一度に調べられる「MODY・新生児糖尿病NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)
2.結果が出るまでがはやい
一般的な医療機関で行える単一遺伝子性糖尿病の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。
当院で行う「MODY・新生児糖尿病NGSパネル検査」の場合、38の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。
3.一気にまとめてできる
臨床症状から単一遺伝子性糖尿病を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。
当院で行う「MODY・新生児糖尿病NGSパネル検査」ならば、MODY、新生児糖尿病、Wolfram症候群など、単一遺伝子性糖尿病に関連する38遺伝子を同時に検査できるという利点があります。
オプション
塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)
検査内容
「MODY・新生児糖尿病NGSパネル検査」では、単一遺伝子性糖尿病に関係するとされる38種類の遺伝子をまとめて検査します。これには、MODY、新生児糖尿病、Wolfram症候群、インスリン受容体異常症など、幅広い単一遺伝子性糖尿病の原因遺伝子が含まれます。
「MODY・新生児糖尿病NGSパネル検査」は、単一遺伝子性糖尿病の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。
どんな人が受けたらいいの?
以下のような方に「MODY・新生児糖尿病NGSパネル検査」を受けることをおすすめします:
【MODYが疑われる方】
・25歳未満(または35歳未満)で糖尿病と診断された方
・肥満がなく(BMI 25kg/m²未満)、糖尿病と診断された方
・家族歴:少なくとも片親が糖尿病(3世代にわたって糖尿病患者がいる)
・1型糖尿病の自己抗体(GAD抗体など)が陰性の方
・インスリン分泌能の低下が主体の方
・学校検尿で尿糖が陽性になった方
【新生児糖尿病が疑われる方】
・生後6か月未満で糖尿病を発症した方
・子宮内発育不全(IUGR)があった方
・出生後の体重増加不良、発育障害がある乳児
・重度の脱水を伴う高血糖がある新生児
【その他】
・若年発症の糖尿病で、1型または2型糖尿病の典型的な特徴を示さない方
・膵臓の自己抗体が陰性で、インスリン分泌能が低下している方
・糖尿病に加えて、難聴、視神経萎縮、腎疾患などを伴う方
・将来子どもを持つことを考えている方で、リスク評価を希望される方
このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。
検査で得られる患者さんの潜在的利益は?
遺伝子検査により原因が判明すると、単一遺伝子性糖尿病の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。特に重要なのは、遺伝子型に応じた最適な治療法の選択が可能になることです。
遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・遺伝子型に基づいた治療法の選択
・スルホニル尿素薬への切り替えの可能性(HNF1A、HNF4A、KCNJ11、ABCC8遺伝子異常)
・インスリン治療からの離脱の可能性
・不必要な治療の回避
・糖尿病合併症リスクの評価と管理
・追加の関連症状のリスクの特定
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供
MODYは常染色体優性遺伝形式のため、患者さんの子どもが同じ疾患を発症するリスクは50%です。新生児糖尿病の多くの病型も遺伝性です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。
対象遺伝子
詳しくはこちら
ABCC8, AKT2, APPL1, BLK, CEL, CISD2, CP, EIF2AK3, FOXP3, GATA4, GATA6, GCK, GLIS3, GLUD1, HADH, HNF1A, HNF1B, HNF4A, IER3IP1, INS, INSR, KCNJ11, KLF11, MNX1, NEUROD1, NEUROG3, NKX2-5, PAX4, PDX1, PPARG, PTF1A, RFX6, SLC16A1, SLC19A2, SLC2A2, UCP2, WFS1, ZFP57 ( 38遺伝子 )
主要な遺伝子の詳細:
【MODY関連遺伝子】
・GCK遺伝子(MODY2):
グルコキナーゼをコードする遺伝子。糖代謝の調節に関与。日本人で最も頻度が高いMODY病型の一つ。軽症で、多くは食事・運動療法のみで管理可能。合併症リスクは低い。
・HNF1A遺伝子(MODY3):
転写因子をコードする遺伝子。膵臓や腎臓の分化・発生に関与。薬物療法が必要なMODYの中で最も頻度が高い。進行性のインスリン分泌低下。スルホニル尿素薬に非常に良好に反応。
・HNF4A遺伝子(MODY1):
転写因子をコードする遺伝子。インスリン分泌不全が主な特徴。スルホニル尿素薬に良好に反応。細小血管合併症の頻度が高い。
・HNF1B遺伝子(MODY5):
転写因子をコードする遺伝子。腎臓の発達に関与。腎嚢胞・糖尿病症候群とも呼ばれる。約80%で腎疾患を伴う。
【新生児糖尿病関連遺伝子】
・KCNJ11遺伝子(Kir6.2):
KATPチャネルのサブユニットをコードする遺伝子。永続性新生児糖尿病の最も頻度の高い原因。高用量スルホニル尿素薬でインスリン療法を離脱できる症例が多い。
・ABCC8遺伝子(SUR1):
KATPチャネルのサブユニットをコードする遺伝子。永続性新生児糖尿病の主要な原因。高用量スルホニル尿素薬が有効。
・INS遺伝子:
インスリンをコードする遺伝子。永続性新生児糖尿病の主要な原因の一つ。多くはヘテロ接合体で常染色体優性遺伝。
【症候群性糖尿病関連遺伝子】
・WFS1遺伝子:
Wolfram症候群の原因遺伝子。若年発症の糖尿病、視神経萎縮、感音性難聴、尿崩症などを伴う。小胞体ストレスによる膵β細胞のアポトーシスからインスリン分泌不全を呈する。
・INSR遺伝子:
インスリン受容体をコードする遺伝子。インスリン抵抗性による糖尿病を引き起こす。
その他、膵臓の発生・分化、インスリン分泌、糖代謝に関わる多数の遺伝子が含まれます。
カバレッジ
カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。
≥99% at 20x(読み取り深度20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。
検体
血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)
※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能 です。
ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。
検査の限界
詳しくはこちら
すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。
低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。
この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。
結果が出るまでの期間
2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。
料金
税込み330,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)
よくあるご質問
どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
25歳未満で糖尿病と診断された方、肥満がないのに糖尿病になった方、家族に若年発症の糖尿病患者がいる方、1型糖尿病の自己抗体が陰性の方におすすめします。また、生後6か月未満で糖尿病を発症した方(新生児糖尿病)も検査対象です。学校検尿で尿糖が陽性になった場合も、MODYの可能性を考慮して検査をご検討ください。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
家族も検査を受ける必要がありますか?
MODYは常染色体優性遺伝形式をとるため、患者さんの子どもが同じ疾患を発症するリスクは50%です。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。また、家族内に未診断のMODY患者がいる可能性もあります。
MODYと診断されると治療法は変わりますか?
はい。特にHNF1A遺伝子異常(MODY3)やHNF4A遺伝子異常(MODY1)の場合、スルホニル尿素薬に非常に良好に反応するため、インスリン治療から経口薬への切り替えが可能になる場合があります。また、MODY2の場合、多くは食事・運動療法のみで管理可能です。遺伝子診断により、患者さんに最適な治療法を選択できます。
新生児糖尿病でスルホニル尿素薬が効く場合とは?
KCNJ11遺伝子やABCC8遺伝子の異常による新生児糖尿病の場合、高用量のスルホニル尿素薬によってインスリン療法を離脱し、長期にわたって良好な血糖コントロールが可能になることが多いです。遺伝子診断により、この治療法の適応を判断できます。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
この検査では38の主要な遺伝子を対象としていますが、まだ同定されていない原因遺伝子が存在する可能性があります(MODYX)。また、検査では検出されない複雑な遺伝子変化が原因の場合もあります。検査で病原性変異が検出されなくても、臨床的にMODYが強く疑われる場合は、主治医と相談して追加の検査や経過観察を行うことが重要です。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み330,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。ただし、診断確定後の治療については保険診療が可能です。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、最適な治療選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
MODYは常染色体優性遺伝形式をとるため、患者さんの子どもが疾患を発症する確率は50%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。新生児糖尿病の一部の病型も遺伝性のため、家族計画において重要な情報となります。
1型糖尿病や2型糖尿病との違いは何ですか?
1型糖尿病は自己免疫疾患で、膵臓のβ細胞が破壊されます。2型糖尿病は主に生活習慣や環境要因、複数の遺伝因子が関与します。これに対し、MODYや新生児糖尿病は単一遺伝子の異常が原因で、生活習慣とは無関係に発症します。遺伝形式や治療法も異なるため、正確な診断が重要です。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では単一遺伝子性糖尿病に関連する38遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を大幅に短縮できます。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも検査を受けることが可能です。また、遺伝カウンセリングを通じて、結果の解釈から治療選択、家族への影響まで包括的なサポートを提供しています。
プロフィール
この記事の筆者:仲田洋美(医師)
ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得 して以来、のべ10万人以上 のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。
仲田洋美のプロフィールはこちら