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肺疾患NGS遺伝子パネル検査|ミネルバクリニック

肺疾患NGS遺伝子パネル検査|ミネルバクリニック

遺伝性肺疾患とは

遺伝性肺疾患は、遺伝子変異が主な原因となって起こる稀な肺の疾患群です。これらの疾患は、肺の構造や機能に影響を及ぼし、呼吸障害、間質性肺炎、肺線維症、気道感染症の繰り返し、肺高血圧症などの様々な症状を引き起こします。

遺伝性肺疾患は臨床的にも遺伝学的にも多様性が高く、発症年

遺伝性肺疾患とは

遺伝性肺疾患は、遺伝子変異が主な原因となって起こる稀な肺の疾患群です。これらの疾患は、肺の構造や機能に影響を及ぼし、呼吸障害、間質性肺炎、肺線維症、気道感染症の繰り返し、肺高血圧症などの様々な症状を引き起こします。

遺伝性肺疾患は臨床的にも遺伝学的にも多様性が高く、発症年齢、症状の重症度、進行速度などが患者さんによって大きく異なります。新生児期から発症するものもあれば、成人になってから症状が現れるものもあります。遺伝形式も常染色体優性(顕性)遺伝、常染色体劣性(潜性)遺伝、X連鎖遺伝など様々です。

遺伝性肺疾患には、特発性肺線維症(IPF)などの間質性肺疾患、原発性線毛機能不全症(PCD)、嚢胞性線維症(CF)、Hermansky-Pudlak症候群(HPS)、結節性硬化症(TSC)に伴う肺病変、遺伝性肺動脈性肺高血圧症(PAH)、α1-アンチトリプシン欠損症など、多岐にわたる疾患が含まれます。これらの疾患の早期診断と適切な管理により、患者さんのQOL(生活の質)を改善し、予後を向上させることが可能です。

主な遺伝性肺疾患

特発性肺線維症と遺伝性間質性肺疾患

特発性肺線維症(IPF)は、原因不明の進行性肺線維症です。家族性IPFの頻度は極めて低いものの、SFTPA1、SFTPA2、SFTPB、SFTPC、ABCA3などのサーファクタント関連遺伝子やTERC、TERT、RTEL1、PARN、DKC1などのテロメア関連遺伝子の変異が原因となることが明らかになっています。

遺伝性間質性肺疾患には、新生児期から発症する先天性肺胞蛋白症や小児期発症の間質性肺炎も含まれます。胸部X線写真やCT画像上でびまん性間質性陰影と呼吸障害を呈し、症状の重症度や進行速度は原因遺伝子によって異なります。

原発性線毛機能不全症(PCD)

原発性線毛機能不全症は、運動線毛の構造または機能の異常により引き起こされる希少な遺伝性疾患です。線毛の運動障害により、粘液線毛クリアランスが低下し、慢性的な上・下気道感染症、副鼻腔炎、気管支拡張症を引き起こします。

主要症状:
・新生児呼吸窮迫(正期産児での呼吸困難)
・慢性湿性咳嗽(幼児期早期から)
・慢性鼻閉・副鼻腔炎
・反復性中耳炎(難聴のリスク)
・気管支拡張症
・内臓逆位(約50%の症例で認められ、カルタゲナー症候群と呼ばれる)
・男性不妊(精子の運動障害)

原因遺伝子としてDNAI1、DNAH5、CCDC39、CCDC40、RSPH4A、RSPH9など50種類以上が同定されています。常染色体劣性遺伝形式をとることが多く、発症頻度は2万人に1人程度と推定されています。

嚢胞性線維症(CF)

嚢胞性線維症は、CFTR遺伝子の変異を原因とする常染色体劣性遺伝疾患です。CFTRは全身の上皮膜細胞に発現する塩化物イオンチャネルで、イオンと水の輸送を調節しています。CFTRの異常により、全身の分泌液・粘液が著しく粘稠となり、管腔が閉塞し感染しやすくなります。

典型的な症状:
・胎便性イレウス(新生児期)
・膵外分泌不全による消化吸収不良
・大量の悪臭を伴う脂肪便
・発育障害(体重増加不良)
・呼吸器感染症の反復
・慢性呼吸不全
・汗中塩化物イオン濃度の高値(診断に重要)
・男性不妊(精管欠損)

欧米の白人では2,500人に1人が発症する比較的頻度の高い遺伝性疾患ですが、日本人ではきわめて稀で、発症頻度は約59万人に1人と推計されています。日本人のCFTR遺伝子変異は欧米人とは異なるスペクトラムを示します。

Hermansky-Pudlak症候群(HPS)

Hermansky-Pudlak症候群は、皮膚・毛髪・眼の色素脱失症と血小板機能異常に伴う出血傾向を特徴とする常染色体劣性遺伝疾患です。リソソーム関連小器官(LRO)の形成と輸送に関連する遺伝子の異常が原因で、現在までに9種類以上の原因遺伝子が同定されています。

主要症状:
・眼皮膚白皮症(皮膚・毛髪・眼の色素脱失)
・視力障害、眼振
・出血傾向(血小板濃染顆粒の欠損による)
・肺線維症(一部の型で発症し、生命予後を悪化させる)
・肉芽腫性大腸炎(比較的稀)
・腎炎(稀)

特にHPS1型とHPS4型では肺線維症を高率に合併し、発症すると予後不良となります。肺線維症は通常30~40歳代で発症し、進行性の呼吸不全をきたします。

結節性硬化症(TSC)に伴う肺病変

結節性硬化症は、TSC1またはTSC2遺伝子の変異により、mTORC1シグナル経路が過剰に活性化され、脳、皮膚、腎臓、肺、心臓など全身の臓器に過誤腫(良性腫瘍)を形成する常染色体優性遺伝疾患です。

肺病変としては、リンパ脈管筋腫症(LAM)が重要です。LAMは主に女性の20~40歳代に発症し、異常な平滑筋様細胞が肺内で増殖することにより、気胸、乳び胸水、呼吸困難などを引き起こします。LAMは結節性硬化症の女性患者の約30~40%に認められ、進行性の呼吸不全をきたす可能性があります。

遺伝性肺動脈性肺高血圧症(PAH)

肺動脈性肺高血圧症は、肺動脈の血管収縮や肺血管床の閉塞により肺動脈圧が上昇する疾患です。遺伝性PAHの原因遺伝子として最も頻度が高いのはBMPR2遺伝子で、遺伝性PAHの約75%、特発性PAHでも10~40%に変異が認められます。

その他、ACVRL1、ENG、SMAD9などのTGF-βシグナル経路に関与する遺伝子の変異も知られています。常染色体優性遺伝形式をとり、浸透率は約20%と低いため、変異を持っていても必ずしも発症するとは限りません。

α1-アンチトリプシン欠損症

α1-アンチトリプシン欠損症は、SERPINA1遺伝子の変異により、プロテアーゼ阻害因子であるα1-アンチトリプシンが欠乏する常染色体劣性遺伝疾患です。α1-アンチトリプシンの欠乏により、肺のエラスターゼによる組織破壊が進行し、早期発症の肺気腫、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を引き起こします。

また、異常なα1-アンチトリプシンが肝臓に蓄積することにより、肝硬変や肝癌のリスクも増加します。喫煙により肺疾患の進行が著しく加速されるため、禁煙が極めて重要です。

ミネルバクリニックの肺疾患遺伝子パネル検査の特徴

「肺疾患 NGSパネル検査」とは、現在遺伝性肺疾患の原因として報告されている69の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。

従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。

何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、遺伝性肺疾患に関連する69遺伝子を一度に調べられる「肺疾患 NGSパネル検査」を採用しています。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.費用がリーズナブル

一般的な医療機関で遺伝性肺疾患の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。

当院では、遺伝性肺疾患に関係するとされる69の遺伝子を一度に調べられる「肺疾患 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)

2.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行える遺伝性肺疾患の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。

当院で行う「肺疾患 NGSパネル検査」の場合、69の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。

3.一気にまとめてできる

臨床症状から遺伝性肺疾患を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。

当院で行う「肺疾患 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な69の原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。

オプション

塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)

検査内容

「肺疾患 NGSパネル検査」では、遺伝性肺疾患に関係するとされる69種類の遺伝子(ABCA3, ACVRL1, AP3B1, ASCL1, BDNF, BLOC1S3, BLOC1S6, BMPR2, CCDC39, CCDC40, CFTR, CSF2RA, CSF2RB, DKC1, DNAAF1, DNAAF2, DNAH11, DNAH5, DNAI1, DNAI2, DNAL1, DTNBP1, EDN3, EFEMP2, ELN, ENG, FAM111B, FBLN5, FLCN, FOXF1, GDNF, HPS1, HPS3, HPS4, HPS5, HPS6, ITGA3, LTBP4, MUC5B, NAF1, NF1, NKX2-1, NME8, PARN, PHOX2B, RET, RSPH4A, RSPH9, RTEL1, SCNN1A, SCNN1B, SCNN1G, SERPINA1, SFTPA1, SFTPA2, SFTPB, SFTPC, SLC34A2, SLC7A7, SMAD9, SMPD1, STAT3, STRA6, TERC, TERT, TINF2, TMEM173, TSC1, TSC2)をまとめて検査します。

「肺疾患 NGSパネル検査」は、遺伝性肺疾患の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。

どんな人が受けたらいいの?

【遺伝性肺疾患の個人歴または家族歴のある方】に
「肺疾患 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。

この検査は以下のような方に適しています:
・原因不明の進行性呼吸困難がある方
・間質性肺炎・肺線維症と診断された方
・家族性肺線維症の家族歴がある方
・慢性の上・下気道感染症を繰り返す方
・気管支拡張症がある方
・内臓逆位を伴う呼吸器症状がある方
・新生児期に呼吸窮迫があった方
・眼皮膚白皮症と出血傾向を有する方
・結節性硬化症と診断され、肺病変が疑われる方
・肺動脈性肺高血圧症と診断された方
・若年発症のCOPDまたは肺気腫がある方
・家族に遺伝性肺疾患の患者がいる方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方

このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

遺伝子検査により原因が判明すると、遺伝性肺疾患の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切な呼吸管理、感染予防、定期的なモニタリングを行うことができます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・他の呼吸器疾患との鑑別
・適切な呼吸リハビリテーションプログラムの立案
・在宅酸素療法の適応判断
・気道クリアランス技法の適応評価
・感染予防対策の立案
・肺移植の適応評価
・疾患特異的治療(mTOR阻害薬、CFTR調節薬など)の選択
・疾患の進行予測と長期的な管理計画の立案
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供

患者さんで病原性変異が同定された場合、遺伝形式に応じて家族の発症リスクが異なります。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症するリスクは50%、常染色体劣性遺伝の場合は兄弟姉妹が発症するリスクは25%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。

対象遺伝子

詳しくはこちら

ABCA3, ACVRL1, AP3B1, ASCL1, BDNF, BLOC1S3, BLOC1S6, BMPR2, CCDC39, CCDC40, CFTR, CSF2RA, CSF2RB, DKC1, DNAAF1, DNAAF2, DNAH11, DNAH5, DNAI1, DNAI2, DNAL1, DTNBP1, EDN3, EFEMP2, ELN, ENG, FAM111B, FBLN5, FLCN, FOXF1, GDNF, HPS1, HPS3, HPS4, HPS5, HPS6, ITGA3, LTBP4, MUC5B, NAF1, NF1, NKX2-1, NME8, PARN, PHOX2B, RET, RSPH4A, RSPH9, RTEL1, SCNN1A, SCNN1B, SCNN1G, SERPINA1, SFTPA1, SFTPA2, SFTPB, SFTPC, SLC34A2, SLC7A7, SMAD9, SMPD1, STAT3, STRA6, TERC, TERT, TINF2, TMEM173, TSC1, TSC2 ( 69遺伝子 )

各遺伝子カテゴリーの詳細:

【間質性肺疾患・肺線維症関連遺伝子】

・サーファクタント関連遺伝子:
SFTPA1、SFTPA2:サーファクタントプロテインAをコードする遺伝子。変異により家族性肺線維症を引き起こします。
SFTPB:サーファクタントプロテインBをコードする遺伝子。変異により新生児呼吸窮迫症候群や間質性肺疾患を引き起こします。
SFTPC:サーファクタントプロテインCをコードする遺伝子。変異により小児および成人の間質性肺疾患を引き起こします。
ABCA3:サーファクタント輸送に関与するATPase。変異により新生児呼吸窮迫症候群や小児間質性肺疾患を引き起こします。

・テロメア関連遺伝子:
TERC、TERT:テロメア維持に関与する遺伝子。変異により特発性肺線維症、骨髄異形成症候群などを引き起こします。
RTEL1、PARN、DKC1、TINF2、NAF1:テロメア長の維持に関与する遺伝子。変異により肺線維症を伴う先天性角化不全症候群などを引き起こします。

・その他の間質性肺疾患関連遺伝子:
NKX2-1:甲状腺転写因子をコードする遺伝子。変異により間質性肺疾患、甲状腺機能低下、神経発達障害を引き起こします。
MUC5B:ムチンをコードする遺伝子。プロモーター領域の多型が特発性肺線維症のリスク因子です。
FOXF1:転写因子をコードする遺伝子。変異により肺胞毛細血管形成不全を引き起こします。

【原発性線毛機能不全症関連遺伝子】

DNAI1、DNAH5:外側ダイニンアームをコードする遺伝子。最も頻度の高い原発性線毛機能不全症の原因遺伝子です。
DNAH11、DNAI2、DNAL1:ダイニンアームの構成要素をコードする遺伝子。
CCDC39、CCDC40:N-DRC(nexin-dynein regulatory complex)をコードする遺伝子。
RSPH4A、RSPH9:放射状スポークヘッドタンパク質をコードする遺伝子。
DNAAF1、DNAAF2、NME8:線毛組み立てに関与する遺伝子。

【嚢胞性線維症関連遺伝子】

CFTR:嚢胞性線維症膜貫通伝導調節因子をコードする遺伝子。塩化物イオンチャネルとして機能し、変異により嚢胞性線維症を引き起こします。2,000種類以上の変異が報告されており、日本人では欧米人とは異なる変異スペクトラムを示します。

【Hermansky-Pudlak症候群関連遺伝子】

HPS1、HPS3、HPS4、HPS5、HPS6:リソソーム関連小器官の形成と輸送に関与する遺伝子。変異により眼皮膚白皮症、血小板機能異常、肺線維症(特にHPS1、HPS4型)を引き起こします。
AP3B1、BLOC1S3、BLOC1S6、DTNBP1:BLOCコンプレックスを構成する遺伝子。

【結節性硬化症関連遺伝子】

TSC1、TSC2:mTORC1シグナル経路の抑制に関与する遺伝子。変異により結節性硬化症を引き起こし、肺リンパ脈管筋腫症(LAM)を合併することがあります。

【肺動脈性肺高血圧症関連遺伝子】

BMPR2:bone morphogenetic protein receptor type 2をコードする遺伝子。遺伝性肺動脈性肺高血圧症の約75%の原因遺伝子です。
ACVRL1、ENG、SMAD9:TGF-βシグナル経路に関与する遺伝子。変異により遺伝性出血性毛細血管拡張症(HHT)に伴う肺高血圧症を引き起こすことがあります。
ELN、FBLN5、LTBP4、EFEMP2:血管の構造や弾性に関与する遺伝子。

【α1-アンチトリプシン欠損症関連遺伝子】

SERPINA1:α1-アンチトリプシンをコードする遺伝子。変異により早期発症のCOPD、肺気腫、肝硬変を引き起こします。

【先天性肺胞蛋白症関連遺伝子】

CSF2RA、CSF2RB:顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)受容体をコードする遺伝子。変異により先天性肺胞蛋白症を引き起こします。
SMPD1:スフィンゴミエリナーゼをコードする遺伝子。ニーマン・ピック病の原因遺伝子で、肺病変を伴うことがあります。

【その他の肺疾患関連遺伝子】

FLCN:フォリキュリンをコードする遺伝子。バート・ホッグ・デューベ症候群の原因遺伝子で、気胸や肺嚢胞を引き起こします。
NF1:神経線維腫症1型の原因遺伝子。間質性肺疾患を合併することがあります。
STAT3:シグナル伝達転写活性化因子。変異によりHIES(高IgE症候群)を引き起こし、再発性肺感染症を引き起こします。
SLC34A2:リン酸トランスポーター。変異により肺胞微石症を引き起こします。
SLC7A7:アミノ酸トランスポーター。リジン尿性蛋白不耐症の原因遺伝子で、肺病変を伴うことがあります。
SCNN1A、SCNN1B、SCNN1G:上皮ナトリウムチャネル。変異により偽性低アルドステロン症を引き起こし、新生児呼吸窮迫を伴うことがあります。
ITGA3:インテグリンα3をコードする遺伝子。変異により間質性肺疾患を伴う先天性腎症候群を引き起こします。
PHOX2B、ASCL1、BDNF、GDNF、EDN3、RET:神経堤細胞の発達に関与する遺伝子。先天性中枢性低換気症候群やHirschsprung病に関連し、呼吸調節異常を引き起こします。
FAM111B:DNA修復に関与する遺伝子。変異により遺伝性線維性間質性肺疾患を引き起こします。
STRA6:レチノール輸送に関与する遺伝子。変異によりMatthew-Wood症候群を引き起こし、肺低形成を伴います。
TMEM173:インターフェロン遺伝子刺激因子(STING)をコードする遺伝子。変異によりSTING関連血管症を引き起こし、間質性肺疾患を伴います。

カバレッジ

カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。

≥99% at 20x(読み取り深度平均20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
 検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

検査の限界

詳しくはこちら

すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。

低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。

この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。

※この検査パネルでは、69の原因遺伝子のみを対象としています。遺伝性肺疾患には他にも多数の原因遺伝子が存在し、また未同定の遺伝子も多く残されています。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。

結果が出るまでの期間

2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。

料金

税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
原因不明の進行性呼吸困難、間質性肺炎、肺線維症、気管支拡張症、反復する気道感染症などの症状がある方におすすめします。特に家族に同様の肺疾患がある場合、若年発症の場合、複数の臓器に症状がある場合は、遺伝性肺疾患の可能性が高くなります。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
特発性肺線維症(IPF)との関連は?
特発性肺線維症の約20%は家族性であり、SFTPA1、SFTPA2、SFTPB、SFTPC、ABCA3などのサーファクタント関連遺伝子や、TERC、TERT、RTEL1、PARNなどのテロメア関連遺伝子の変異が原因となることがあります。当検査により原因遺伝子を特定することで、家族のリスク評価や適切な管理につながります。
原発性線毛機能不全症はどのような病気ですか?
線毛の運動障害により、粘液線毛クリアランスが低下し、慢性的な上・下気道感染症、副鼻腔炎、気管支拡張症を引き起こす遺伝性疾患です。約50%の患者さんで内臓逆位がみられ、カルタゲナー症候群と呼ばれます。DNAI1、DNAH5など50種類以上の原因遺伝子が知られています。
家族も検査を受ける必要がありますか?
遺伝形式によって家族の発症リスクが異なります。常染色体優性遺伝の場合、患者さんのお子さんが発症するリスクは50%です。常染色体劣性遺伝の場合、兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
この検査パネルでは69の原因遺伝子のみを対象としています。遺伝性肺疾患には他にも多数の原因遺伝子が存在し、また未同定の遺伝子も多く残されています。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。臨床症状と画像所見、呼吸機能検査に基づいた診断と管理が引き続き重要です。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
遺伝形式によって子どもへの影響が異なります。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症する確率は50%、常染色体劣性遺伝の場合は保因者同士のカップルで子どもが発症する確率は25%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
遺伝性肺疾患の治療はどのように行われますか?
疾患によって治療法は異なります。間質性肺疾患には抗線維化薬(ピルフェニドン、ニンテダニブ)、結節性硬化症に伴うLAMにはmTOR阻害薬(シロリムス、エベロリムス)、嚢胞性線維症にはCFTR調節薬などの疾患特異的治療があります。また、在宅酸素療法、呼吸リハビリテーション、気道クリアランス技法、感染予防なども重要です。進行例では肺移植も選択肢となります。
予後はどうですか?
疾患と重症度によって予後は大きく異なります。特発性肺線維症は進行性で予後不良ですが、抗線維化薬により進行を遅らせることが可能です。原発性線毛機能不全症は適切な管理により比較的良好な予後が期待できます。嚢胞性線維症は近年の治療法の進歩により生存期間が著しく延長しています。早期診断と適切な管理が予後改善の鍵となります。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では臨床的に重要な69の原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。


プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

仲田洋美のプロフィールはこちら