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滑脳症NGS遺伝子パネル検査|ミネルバクリニック

滑脳症NGS遺伝子パネル検査|ミネルバクリニック

滑脳症とは

滑脳症(Lissencephaly)は、「滑らかな脳」を意味するギリシャ語に由来する先天性脳形成異常です。健康な脳では大脳皮質に多数のひだ(脳回)と溝(脳溝)が見られますが、滑脳症では胎生期における神経細胞の移動障害により、これらの脳回形成が欠損または減少し、脳表面が滑らかな状態となります。

本疾患は神経細胞移動異常症の代表的な病型であり、脳回の欠損程度により無脳回(agyria:脳回が完全に欠損)と厚脳回(pachygyria:脳回が少なく幅広い)に分類されます。脳の表面積が減少することで、複雑な脳機能が障害され、重度の神経学的症状を引き起こします。

滑脳症の有病率は約10万人に1人と推定されていましたが、MRI検査の普及により現在はより多くの患者が診断されるようになっています。多くの症例で遺伝子変異が原因となりますが、一部では先天性サイトメガロウイルス感染などの胎内感染や環境要因も関与します。早期診断と適切な管理により、患者さんとご家族の生活の質の向上が期待できます。

症状と病態

滑脳症の主な症状は、てんかん発作、重度の発達遅滞、知的障害、運動障害です。症状の重症度は脳形成異常の程度や範囲によって大きく異なります。

主要症状

  • てんかん発作(乳児期に90%の患者で発症、しばしば点頭てんかん)
  • 重度の発達遅滞(座る、歩く、話すなどの発達マイルストーンの遅れ)
  • 知的障害(多くの患者で重度)
  • 筋緊張低下(低緊張性の脳性麻痺)
  • 摂食障害(嚥下困難)
  • 呼吸障害
  • 小頭症(一部の症例)

古典型滑脳症の特徴

古典型滑脳症では、大脳皮質が正常な6層構造ではなく4層構造となり、皮質が異常に肥厚します。脳回パターンの減少または欠損に加えて、しばしばびまん性のニューロンの異所形成が認められます。臨床的には、てんかん発作、特に点頭てんかんと低緊張性の脳性麻痺、知的障害を併発することが多いです。

ミラー・ディカー(Miller-Dieker)症候群

ミラー・ディカー症候群は滑脳症の中でも最も重症な形態の一つで、17番染色体の微細欠失による隣接遺伝子症候群です。無脳回と特徴的な顔貌異常(小頭だが広い額、側頭部の陥凹、四角い顔、短く小さい鼻、上向きの鼻孔、薄い上口唇、小顎、耳介低位)が必発であり、他の内臓奇形を伴うこともあります。てんかんは難治性で、摂食障害を伴い肺炎を繰り返し、生命予後は不良です。

亜型による特徴

原因遺伝子によって、脳形成異常の分布パターンや臨床症状に特徴が認められます:

  • 前頭部優位型:DCX遺伝子変異では、前頭部優位の脳回形成異常を呈し、6層構造の皮質を示します
  • 後頭部優位型:PAFAH1B1(LIS1)遺伝子およびARX遺伝子変異では、後頭部優位の脳回形成異常を呈します
  • 小脳低形成合併型:TUBA1A、RELN、VLDLR遺伝子変異では、小脳低形成を伴うことがあります
  • X連鎖性滑脳症:DCX、ARX遺伝子変異による。男性で重症、女性では皮質下帯状異所性灰白質(軽症型)を呈することが多い

関連する病態

滑脳症と関連する神経細胞移動異常症には以下のものがあります:

  • 皮質下帯状異所性灰白質(SBH):滑脳症の軽症型で、皮質と脳室壁の間に異所性灰白質の帯状構造が形成されます。てんかん発作と知的障害が主体で、運動障害は比較的軽度です
  • 脳室周囲結節状異所性灰白質:脳室周囲に神経細胞が結節状に残存します。てんかん発作が主体で、無症状の症例もあります

進行と予後

滑脳症は基本的に進行することなく慢性に経過します。しかし、重症例では肺炎などの感染症を繰り返したり、栄養障害や呼吸障害によって全身状態が悪化したりすることがあります。多くの患者さんは早期の発達段階にとどまり、生涯にわたって介護が必要となります。適切な医療管理とリハビリテーションにより、生活の質の改善が期待できます。

遺伝形式と原因遺伝子

滑脳症は遺伝学的に多様性が高く、常染色体優性(顕性)遺伝、常染色体劣性(潜性)遺伝、X連鎖遺伝のいずれの形式でも発症します。また、遺伝とは関係のない新生突然変異や環境要因によっても発症します。

主要な原因遺伝子

遺伝学的研究により、滑脳症に関連する17遺伝子が同定されており、以下の遺伝子が主要な原因として知られています:

  • PAFAH1B1(LIS1)遺伝子:最も頻度の高い原因遺伝子(約40%)。17番染色体(17p13.3)に位置し、運動タンパク質ダイニンを調節することで神経細胞の移動に関与します。ミラー・ディカー症候群では、この遺伝子を含む領域の微細欠失が認められます
  • DCX遺伝子:2番目に頻度の高い原因遺伝子(約23%)。X染色体に位置し、ダブルコルチンというタンパク質をコードします。神経細胞の微小管に結合し、神経細胞の移動に必須です。男性では重症の滑脳症、女性では軽症の皮質下帯状異所性灰白質を呈します
  • TUBA1A遺伝子:約5%の症例で変異が認められます。チューブリンアルファ1aをコードし、微小管の構成要素として神経細胞の移動に重要です。小脳低形成や脳梁欠損を合併することがあります
  • ARX遺伝子:X染色体に位置し、転写因子をコードします。前脳および他の組織の発達に重要な役割を果たします。外性器異常を伴うX連鎖性滑脳症の原因となります
  • RELN遺伝子:リーリンタンパク質をコードし、神経細胞の移動と配置に関与します。常染色体劣性遺伝形式で、小脳低形成を伴います

その他の関連遺伝子

  • ACTB, ACTG1遺伝子:アクチンタンパク質をコードし、細胞骨格の構成要素です
  • FKRP, FKTN遺伝子:先天性筋ジストロフィーと関連し、敷石様皮質異形成を伴います
  • LARGE1遺伝子:グリコシルトランスフェラーゼをコードし、筋ジストロフィーと脳形成異常を引き起こします
  • POMGNT1, POMT1, POMT2遺伝子:タンパク質のグリコシル化に関与し、Walker-Warburg症候群などの原因となります
  • VLDLR遺伝子:超低比重リポタンパク質受容体をコードし、リーリンシグナル伝達経路に関与します
  • MACF1遺伝子:微小管アクチン架橋因子をコードします

ミラー・ディカー症候群の遺伝学

ミラー・ディカー症候群は、17p13.3領域のPAFAH1B1(LIS1)からYWHAE(14-3-3ε)遺伝子までを含む染色体微細欠失による隣接遺伝子症候群です。PAFAH1B1遺伝子のみの欠失または変異では古典型滑脳症(孤発性滑脳症)を呈しますが、YWHAE遺伝子を含むより大きな欠失では、顔貌異常などの追加症状を伴うミラー・ディカー症候群となります。

当検査パネルでは、これらの原因遺伝子のうち、臨床的に重要な15遺伝子を対象としています。これにより、滑脳症の主要な原因を効率的にスクリーニングすることが可能です。

ミネルバクリニックの滑脳症遺伝子パネル検査の特徴

「滑脳症 NGSパネル検査」とは、現在滑脳症の原因として報告されている15の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。

従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。

何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、滑脳症に関連する15遺伝子を一度に調べられる「滑脳症 NGSパネル検査」を採用しています。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.費用がリーズナブル

一般的な医療機関で滑脳症の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。

当院では、滑脳症に関係するとされる15の遺伝子を一度に調べられる「滑脳症 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)

2.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行える滑脳症の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。

当院で行う「滑脳症 NGSパネル検査」の場合、15の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。

3.一気にまとめてできる

臨床症状から滑脳症を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。

当院で行う「滑脳症 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な15の原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。

オプション

塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)

検査内容

「滑脳症 NGSパネル検査」では、滑脳症に関係するとされる15種類の遺伝子(ACTB、ACTG1、ARX、DCX、FKRP、FKTN、LARGE1、MACF1、PAFAH1B1、POMGNT1、POMT1、POMT2、RELN、TUBA1A、VLDLR)をまとめて検査します。

「滑脳症 NGSパネル検査」は、滑脳症の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。

どんな人が受けたらいいの?

【滑脳症の個人歴または家族歴のある方】に
「滑脳症 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。

この検査は以下のような方に適しています:
・MRI検査で脳回形成異常(無脳回、厚脳回)が認められた方
・乳児期からのてんかん発作(特に点頭てんかん)がある方
・重度の発達遅滞がある方
・低緊張性の脳性麻痺がある方
・知的障害が認められる方
・摂食障害や嚥下困難がある方
・ミラー・ディカー症候群を疑わせる顔貌異常がある方
・皮質下帯状異所性灰白質が認められる方
・小脳低形成や脳梁欠損を合併する方
・滑脳症または神経細胞移動異常症の家族歴がある方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方

このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

遺伝子検査により原因が判明すると、滑脳症の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切な抗てんかん薬の選択、リハビリテーション、栄養管理、呼吸管理、定期的なモニタリングを行うことができます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・他の神経系疾患との鑑別
・適切な抗てんかん薬の選択と管理
・リハビリテーションプログラムの立案
・栄養管理および摂食嚥下訓練の計画
・呼吸機能障害のリスク評価と管理
・合併症(肺炎、栄養障害など)の早期発見と予防
・疾患の進行予測と長期的な管理計画の立案
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供

患者さんで病原性変異が同定された場合、遺伝形式に応じて家族の発症リスクが異なります。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症するリスクは50%、常染色体劣性遺伝の場合は兄弟姉妹が発症するリスクは25%、X連鎖遺伝の場合は男児が発症するリスクは50%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。

対象遺伝子

詳しくはこちら

ACTB, ACTG1, ARX, DCX, FKRP, FKTN, LARGE1, MACF1, PAFAH1B1, POMGNT1, POMT1, POMT2, RELN, TUBA1A, VLDLR ( 15遺伝子 )

各遺伝子の詳細:
・ACTB遺伝子:
β-アクチンをコードする遺伝子。細胞骨格の主要構成要素で、神経細胞の移動に重要な役割を果たします。変異により滑脳症や小頭症を引き起こします。

・ACTG1遺伝子:
γ-アクチンをコードする遺伝子。ACTBと同様に細胞骨格の構成要素で、神経細胞の形態維持と移動に関与します。変異により滑脳症、小頭症、難聴などを呈します。

・ARX遺伝子:
アリスタレス関連ホメオボックスタンパク質をコードする遺伝子。X染色体に位置し、転写因子として前脳の発達に重要な役割を果たします。変異により外性器異常を伴うX連鎖性滑脳症(XLAG)を引き起こします。後頭部優位の脳回形成異常が特徴的です。

・DCX遺伝子:
ダブルコルチンタンパク質をコードする遺伝子。X染色体に位置し、神経細胞の微小管に結合して神経細胞の移動に必須の役割を果たします。滑脳症の約23%を占める頻度の高い原因遺伝子です。男性では重症の滑脳症、女性では軽症の皮質下帯状異所性灰白質を呈します。前頭部優位の脳回形成異常が特徴的で、6層構造の皮質を示します。

・FKRP遺伝子:
フクチン関連タンパク質をコードする遺伝子。タンパク質のグリコシル化に関与し、変異により先天性筋ジストロフィーと敷石様皮質異形成を引き起こします。

・FKTN遺伝子:
フクチンをコードする遺伝子。福山型先天性筋ジストロフィーの原因遺伝子で、筋ジストロフィーに加えて敷石様皮質異形成を伴います。国内で特に重要な原因遺伝子です。

・LARGE1遺伝子:
グリコシルトランスフェラーゼ様タンパク質をコードする遺伝子。α-ジストログリカンのグリコシル化に関与し、変異により先天性筋ジストロフィーと脳形成異常を引き起こします。

・MACF1遺伝子:
微小管アクチン架橋因子1をコードする遺伝子。細胞骨格の微小管とアクチンフィラメントを架橋し、神経細胞の移動と形態維持に関与します。

・PAFAH1B1(LIS1)遺伝子:
血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ1b調節サブユニット1をコードする遺伝子。17番染色体(17p13.3)に位置し、滑脳症の最も頻度の高い原因遺伝子(約40%)です。運動タンパク質ダイニンを調節することで、神経細胞核の微小管に沿った移動に関与します。変異または欠失により孤発性滑脳症を、YWHAE遺伝子を含むより大きな欠失によりミラー・ディカー症候群を引き起こします。後頭部優位の脳回形成異常が特徴的で、4層構造の皮質を示します。

・POMGNT1遺伝子:
プロテインO-マンノース β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ1をコードする遺伝子。タンパク質のグリコシル化に関与し、変異により筋・眼・脳疾患(muscle-eye-brain disease)を引き起こします。

・POMT1遺伝子:
プロテインO-マンノシルトランスフェラーゼ1をコードする遺伝子。タンパク質のO-マンノシル化に関与し、変異によりWalker-Warburg症候群などの重症先天性筋ジストロフィーと脳形成異常を引き起こします。

・POMT2遺伝子:
プロテインO-マンノシルトランスフェラーゼ2をコードする遺伝子。POMT1と同様にタンパク質のO-マンノシル化に関与し、変異によりWalker-Warburg症候群などを引き起こします。

・RELN遺伝子:
リーリンタンパク質をコードする遺伝子。7番染色体(7q22.1)に位置し、神経細胞の移動と配置に重要な役割を果たします。常染色体劣性遺伝形式で、小脳低形成を伴う滑脳症(lissencephaly with cerebellar hypoplasia: LCH)を引き起こします。

・TUBA1A遺伝子:
チューブリンアルファ1aをコードする遺伝子。12番染色体(12q13.2)に位置し、微小管の主要構成要素として神経細胞の移動に重要です。滑脳症の約5%を占めます。小脳低形成、脳梁欠損、脳幹形成不全などを合併することがあります。

・VLDLR遺伝子:
超低比重リポタンパク質受容体をコードする遺伝子。リーリンシグナル伝達経路に関与し、神経細胞の移動と配置に重要です。変異により小脳低形成を伴う滑脳症を引き起こします。

カバレッジ

カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。

≥99% at 20x(読み取り深度20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
 検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

検査の限界

詳しくはこちら

すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。

低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。

この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。

※この検査パネルでは、15の原因遺伝子のみを対象としています。これらの遺伝子で変異が検出されない症例も存在します。また、先天性サイトメガロウイルス感染症や環境要因による滑脳症は、この遺伝子検査では検出できません。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。

結果が出るまでの期間

2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。

料金

税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
MRI検査で脳回形成異常(無脳回、厚脳回)が認められた方、乳児期からのてんかん発作(特に点頭てんかん)がある方、重度の発達遅滞がある方におすすめします。また、皮質下帯状異所性灰白質が認められる方や、家族に滑脳症または神経細胞移動異常症がある場合も検査をご検討ください。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
ミラー・ディカー症候群とは何ですか?
ミラー・ディカー症候群は滑脳症の中でも最も重症な形態の一つで、17番染色体の微細欠失による隣接遺伝子症候群です。重度の滑脳症に加えて、特徴的な顔貌異常(小頭だが広い額、側頭部の陥凹、四角い顔など)を呈します。てんかんは難治性で、生命予後は不良です。
家族も検査を受ける必要がありますか?
遺伝形式によって家族の発症リスクが異なります。常染色体優性遺伝の場合、患者さんのお子さんが発症するリスクは50%です。常染色体劣性遺伝の場合、兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。X連鎖遺伝の場合、男児が発症するリスクは50%です。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
この検査パネルでは15の主要な原因遺伝子のみを対象としており、変異が検出されない症例も存在します。また、先天性サイトメガロウイルス感染症や環境要因による滑脳症は、この遺伝子検査では検出できません。検査で病原性変異が検出されなくても、MRI所見と臨床症状に基づいた診断と管理が引き続き重要です。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
遺伝形式によって子どもへの影響が異なります。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症する確率は50%、常染色体劣性遺伝の場合は保因者同士のカップルで子どもが発症する確率は25%、X連鎖遺伝の場合は男児が発症する確率は50%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
滑脳症の治療はどのように行われますか?
現在のところ根本的な治療法はありませんが、抗てんかん薬による発作コントロール、理学療法や作業療法などのリハビリテーション、栄養管理、呼吸管理などの対症療法が行われます。重症例では感染症予防が特に重要です。
予後はどうですか?
予後は脳形成異常の程度によって大きく異なります。重症例では肺炎などの感染症を繰り返し、栄養障害や呼吸障害により全身状態が悪化することがあります。多くの患者さんは早期の発達段階にとどまり、生涯にわたって介護が必要となります。適切な医療管理により、生活の質の改善が期待できます。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では臨床的に重要な15の原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。


プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

仲田洋美のプロフィールはこちら