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遅発性運動失調症遺伝子パネル検査|ミネルバクリニック

遅発性運動失調症遺伝子パネル検査|ミネルバクリニック

遺伝性運動失調症とは

遺伝性運動失調症(Hereditary Ataxia)は、小脳や脊髄などの神経系の変性により、協調運動障害を主症状とする遺伝性神経疾患の総称です。歩行時のふらつき、手の不器用さ、呂律が回らない、眼球運動の異常などの症状が徐々に進行することを特徴とします。

遺伝性運動失調症は、遺伝形式、発症年齢、原因遺伝子によって多くの病型に分類されます。発症年齢により、小児期に発症する早期発症型と、18歳以降に発症する遅発性(成人発症型)に大別されます。遅発性運動失調症は成人期に発症し、緩徐進行性の経過をとることが多く、原因遺伝子の特定により適切な診断と管理が可能になります。

遺伝性運動失調症の中で最も頻度の高いのは脊髄小脳失調症(Spinocerebellar Ataxia: SCA)です。SCAは主に常染色体優性遺伝形式をとり、現在までに60以上の病型(SCA1、SCA2、SCA3など)が同定されています。日本ではSCA3(マチャド・ジョセフ病)、SCA6、SCA31の頻度が高いことが知られています。有病率は10万人あたり約3~5人程度と推定されており、神経変性疾患の中ではアルツハイマー病、パーキンソン病に次いで患者数が多い疾患群です。

症状と病態

遺伝性運動失調症の主な症状は、小脳および小脳に関連する神経系の障害により引き起こされる協調運動の障害です。症状の程度や進行速度は原因遺伝子や病型によって異なりますが、多くの患者さんで日常生活に支障をきたすようになります。

主要症状

  • 失調性歩行(開脚歩行、不安定な歩行、ふらつき)
  • 体幹失調(座位や立位でのバランス障害)
  • 四肢運動失調(手足の協調運動障害)
  • 構音障害(言葉が不明瞭になる、呂律が回らない)
  • 眼球運動障害(眼振、注視障害、衝動性眼球運動障害)
  • 嚥下障害(飲み込みにくい、むせやすい)
  • 筋トーヌス低下
  • 深部腱反射の変化

病型による特徴的症状

原因遺伝子や病型によって、運動失調以外の症状を伴うことがあります:

  • パーキンソン症状合併型:動作緩慢、筋強剛、振戦などのパーキンソン症状を伴う病型があります(SCA2、SCA3など)
  • 錐体路徴候合併型:痙性、腱反射亢進、病的反射などの錐体路徴候を呈する病型があります
  • 末梢神経障害合併型:感覚障害や筋萎縮を伴う病型があります
  • 認知機能障害合併型:記憶障害、遂行機能障害などの認知機能低下を伴う病型があります(SCA2、SCA31など)
  • 自律神経障害合併型:起立性低血圧、排尿障害、発汗異常などを呈する病型があります
  • 視神経萎縮合併型:視力低下を伴う病型があります
  • 発作性運動失調:一過性の運動失調発作を繰り返す特殊な病型もあります(Episodic Ataxia)

疾患の進行

多くの遺伝性運動失調症は緩徐進行性で、発症から数年から数十年かけて徐々に症状が悪化します。初期には歩行時のふらつきや手の不器用さが目立ちますが、進行すると日常生活動作(ADL)が徐々に障害され、補助具や介助が必要になります。重症例では車椅子生活となり、誤嚥性肺炎や呼吸不全などの合併症により生命予後が影響を受けることもあります。

遺伝形式と原因遺伝子

遺伝性運動失調症は遺伝学的に非常に多様性が高く、常染色体優性(顕性)遺伝、常染色体劣性(潜性)遺伝、X連鎖遺伝のいずれの形式でも発症します。原因遺伝子も多岐にわたり、現在までに100以上の原因遺伝子が同定されています。

常染色体優性(顕性)遺伝形式

最も頻度の高い遺伝形式で、脊髄小脳失調症(SCA)の多くがこの遺伝形式をとります:

  • 三塩基リピート伸長による病型:SCA1、SCA2、SCA3(マチャド・ジョセフ病)、SCA6、SCA7など。CAGリピートの異常伸長により発症し、リピート長が長いほど若年発症し重症化する傾向があります(表現促進現象)
  • 非リピート伸長による病型:SCA5、SCA14、SCA15など。点変異や欠失により発症します
  • 発作性運動失調:EA1(KCNA1遺伝子)、EA2(CACNA1A遺伝子)など。一過性の運動失調発作を繰り返します

常染色体劣性(潜性)遺伝形式

若年発症型が多く、比較的重症例が多い傾向があります:

  • フリードライヒ運動失調症(FRDA):最も頻度の高い常染色体劣性遺伝性運動失調症。FXN遺伝子のGAAリピート伸長により発症します
  • 毛細血管拡張性運動失調症(AT):ATM遺伝子変異により発症し、免疫不全や腫瘍発生リスクの上昇を伴います
  • 眼球運動失行を伴う運動失調症(AOA):APTX遺伝子、SETX遺伝子などの変異により発症します
  • ビタミンE欠乏性運動失調症(AVED):TTPA遺伝子変異により発症し、ビタミンE補充療法が有効です

X連鎖遺伝形式

  • 脆弱X関連振戦/運動失調症候群(FXTAS):FMR1遺伝子のCGGリピートのプレミューテーション領域での伸長により、主に男性で発症します

当検査パネルでは、遅発性(成人発症型)運動失調症の原因として臨床的に重要な57遺伝子を対象としています。これにより、遺伝性運動失調症の主要な原因を効率的にスクリーニングすることが可能です。なお、本パネル検査にはリピート伸長解析は含まれていません。

ミネルバクリニックの遅発性運動失調症遺伝子パネル検査の特徴

「遅発性運動失調症 NGSパネル検査」とは、18歳以降に発症する遺伝性運動失調症の原因として報告されている57の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。

従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。

何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、遺伝性運動失調症に関連する57遺伝子を一度に調べられる「遅発性運動失調症 NGSパネル検査」を採用しています。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.費用がリーズナブル

一般的な医療機関で遺伝性運動失調症の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。

当院では、遺伝性運動失調症に関係するとされる57の遺伝子を一度に調べられる「遅発性運動失調症 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)

2.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行える遺伝性運動失調症の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。

当院で行う「遅発性運動失調症 NGSパネル検査」の場合、57の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。

3.一気にまとめてできる

臨床症状から遺伝性運動失調症を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。

当院で行う「遅発性運動失調症 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な57の原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。ただし、本検査にはリピート伸長解析は含まれていないため、三塩基リピート伸長が原因となる病型の検出には、別途リピート伸長検査が必要です。

オプション

塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)

検査内容

「遅発性運動失調症 NGSパネル検査」では、18歳以降に発症する遺伝性運動失調症に関係するとされる57種類の遺伝子をまとめて検査します。

「遅発性運動失調症 NGSパネル検査」は、遺伝性運動失調症の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。

重要:本パネル検査は、塩基配列の変化(点変異や欠失・重複)を検出する検査であり、リピート伸長解析は含まれていません。多くの脊髄小脳失調症(SCA1、SCA2、SCA3、SCA6、SCA7など)やフリードライヒ運動失調症は三塩基リピート伸長が原因であるため、これらの病型を疑う場合は別途リピート伸長検査が必要です。

どんな人が受けたらいいの?

【遺伝性運動失調症の個人歴または家族歴のある方】に
「遅発性運動失調症 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。

この検査は以下のような方に適しています:
・18歳以降に運動失調症状が出現した方
・歩行時のふらつきや開脚歩行がある方
・手足の協調運動障害がある方
・構音障害(呂律が回らない)がある方
・眼球運動障害(眼振、注視障害)がある方
・嚥下障害がある方
・遺伝性運動失調症または脊髄小脳変性症の家族歴がある方
・リピート伸長検査で異常が見つからなかった方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方

このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

遺伝子検査により原因が判明すると、遺伝性運動失調症の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切なリハビリテーション、薬物療法、生活習慣の改善、定期的なモニタリングを行うことができます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・他の神経疾患との鑑別
・疾患の進行予測と長期的な管理計画の立案
・適切なリハビリテーションプログラムの立案
・薬物療法の適応判断(一部の病型では特異的治療が可能)
・合併症(心疾患、糖尿病、嚥下障害など)の早期発見と管理
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供
・関連リソースやサポートへの患者の接続

患者さんで病原性変異が同定された場合、遺伝形式に応じて家族の発症リスクが異なります。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症するリスクは50%、常染色体劣性遺伝の場合は兄弟姉妹が発症するリスクは25%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。

対象遺伝子

詳しくはこちら

ABHD12, AFG3L2, ALS2, ANO10, APTX, ATL1, C19orf12, CACNA1A, CACNB4, CCDC88C, CLCN2, CYP27A1, CYP7B1, DNMT1, EEF2, EIF2B1, EIF2B2, EIF2B3, EIF2B4, EIF2B5, ELOVL4, ELOVL5, FGF14, FMR1, FXN, GFAP, ITM2B, ITPR1, KCNC3, KCND3, KIF5A, NOL3, NOTCH3, PDYN, PEX7, PHYH, POLG, PRKCG, RORA, RRM2B, SETX, SLC1A3, SPAST, SPG11, SPG7, STUB1, SYNE1, SYT14, TGM6, TMEM240, TTBK2, TTPA, TUBB4A, TWNK, TYMP, VAMP1, WASHC5 ( 57遺伝子 )

主要遺伝子の詳細:

・CACNA1A遺伝子:
P/Q型電位依存性カルシウムチャネルをコードする遺伝子。SCA6の原因遺伝子であり、発作性運動失調2型(EA2)や片麻痺性片頭痛1型の原因遺伝子でもあります。小脳プルキンエ細胞に高発現しています。

・FXN遺伝子:
フラタキシンをコードする遺伝子。フリードライヒ運動失調症(FRDA)の原因遺伝子です。最も頻度の高い変異はGAA三塩基リピート伸長ですが、本検査では塩基配列の変化と欠失・重複のみを検出します。リピート伸長の検出には別途専用の検査が必要です。

・FMR1遺伝子:
FMRP(fragile X mental retardation protein)をコードする遺伝子。CGGリピートのプレミューテーション領域での伸長により、脆弱X関連振戦/運動失調症候群(FXTAS)を引き起こします。本検査では塩基配列の変化のみを検出します。

・PRKCG遺伝子:
プロテインキナーゼCγをコードする遺伝子。SCA14の原因遺伝子です。純粋小脳型の運動失調を呈します。

・ITPR1遺伝子:
イノシトール1,4,5-三リン酸受容体1型をコードする遺伝子。SCA15/16/29の原因遺伝子です。小脳プルキンエ細胞に発現しています。

・TTPA遺伝子:
α-トコフェロール転送タンパク質をコードする遺伝子。ビタミンE欠乏性運動失調症(AVED)の原因遺伝子で、ビタミンE補充療法により治療可能な数少ない遺伝性運動失調症の一つです。

・APTX遺伝子:
アプラタキシンをコードする遺伝子。眼球運動失行を伴う運動失調症1型(AOA1)の原因遺伝子です。常染色体劣性遺伝形式をとります。

・SETX遺伝子:
セナタキシンをコードする遺伝子。眼球運動失行を伴う運動失調症2型(AOA2)の原因遺伝子です。DNA/RNA代謝に関与します。

・POLG遺伝子:
ミトコンドリアDNAポリメラーゼγをコードする遺伝子。常染色体優性または劣性遺伝形式で、運動失調、ミオパチー、末梢神経障害、外眼筋麻痺など多彩な症状を呈します。

・AFG3L2遺伝子:
ミトコンドリアマトリックスのメタロプロテアーゼをコードする遺伝子。SCA28の原因遺伝子です。

・SYNE1遺伝子:
ニュースペクトリンをコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝性小脳失調症(ARCA1/SCAR8)の原因遺伝子です。純粋小脳型の運動失調を呈します。

・STUB1遺伝子:
CHIP(C-terminus of Hsc70-interacting protein)をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、若年発症の運動失調と認知機能障害を呈します(SCAR16)。

・KCNA1遺伝子(KCNC3遺伝子として記載):
電位依存性カリウムチャネルをコードする遺伝子。発作性運動失調1型(EA1)の原因遺伝子で、短時間の運動失調発作とミオキミアを特徴とします。

・SPAST、ATL1、REEP1遺伝子:
痙性対麻痺の原因遺伝子ですが、運動失調を合併することがあります。

その他の重要遺伝子:
ANO10(SCAR10)、TGM6(SCA35)、ELOVL4(SCA34)、ELOVL5(SCA38)、CCDC88C(SCA40)、TMEM240(SCA21)、FGF14(SCA27)など、比較的稀な病型の原因遺伝子も含まれています。

注意:本パネル検査に含まれるFXN遺伝子とFMR1遺伝子については、リピート伸長が主な病因となる場合が多いですが、本検査ではリピート伸長は検出できません。これらの遺伝子のリピート伸長が疑われる場合は、専用のリピート伸長検査が必要です。

カバレッジ

カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。

≥99% at 20x(読み取り深度20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
 検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

検査の限界

詳しくはこちら

すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。

低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。

この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基リピート)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。

重要:FXN遺伝子について
FXN遺伝子変異で最も頻度の高いのはGAA三塩基リピート伸長です。本検査では塩基配列の変化と欠失・重複のみを検出し、リピート伸長は検出できません。フリードライヒ運動失調症が臨床的に疑われる場合は、別途リピート伸長検査が必要です。

重要:リピート伸長について
多くの脊髄小脳失調症(SCA1、SCA2、SCA3、SCA6、SCA7、SCA8、SCA12、SCA17、SCA31、SCA36など)は三塩基またはヘキサ塩基のリピート伸長が原因です。本検査ではこれらのリピート伸長を検出できないため、これらの病型が疑われる場合は別途リピート伸長検査が必要です。

※この検査パネルでは、57の原因遺伝子のみを対象としています。すべての遺伝性運動失調症の原因遺伝子を網羅しているわけではありません。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。

結果が出るまでの期間

2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。

料金

税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
18歳以降に歩行時のふらつき、手足の協調運動障害、構音障害(呂律が回らない)、眼球運動障害などの症状が出現した方におすすめします。特に家族に同様の症状がある場合は、遺伝性運動失調症の可能性が高くなります。また、画像検査で小脳萎縮が認められる場合も検査をご検討ください。
この検査でリピート伸長も検出できますか?
いいえ、本パネル検査はリピート伸長解析を含みません。多くの脊髄小脳失調症(SCA1、SCA2、SCA3、SCA6など)やフリードライヒ運動失調症は三塩基リピート伸長が原因であるため、これらの病型を疑う場合は別途リピート伸長検査が必要です。本検査は、リピート伸長以外の塩基配列の変化(点変異や欠失・重複)を検出します。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
脊髄小脳変性症と遺伝性運動失調症の違いは何ですか?
脊髄小脳変性症(SCD)は運動失調を主症状とする神経変性疾患の総称で、孤発性(非遺伝性)と遺伝性の両方を含みます。遺伝性運動失調症はSCDのうち遺伝性のものを指します。本検査は遺伝性運動失調症の原因遺伝子を調べる検査です。
家族も検査を受ける必要がありますか?
遺伝形式によって家族の発症リスクが異なります。常染色体優性遺伝の場合、患者さんのお子さんが発症するリスクは50%です。常染色体劣性遺伝の場合、兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
本検査は57遺伝子のみを対象としており、すべての遺伝性運動失調症の原因遺伝子を網羅しているわけではありません。また、リピート伸長は検出できません。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。臨床症状と画像検査に基づいた診断と管理が引き続き重要です。必要に応じてリピート伸長検査も検討してください。
発作性運動失調も検査できますか?
はい、本パネルにはCACNA1A遺伝子(EA2の原因遺伝子)が含まれています。ただし、KCNA1遺伝子(EA1の原因遺伝子)は含まれていません。一過性の運動失調発作を繰り返す場合は、別途EA1の検査も検討する必要があるかもしれません。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
遺伝形式によって子どもへの影響が異なります。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症する確率は50%、常染色体劣性遺伝の場合は保因者同士のカップルで子どもが発症する確率は25%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
遺伝性運動失調症の治療はどのように行われますか?
多くの遺伝性運動失調症では根本的な治療法はありませんが、理学療法、作業療法、言語療法などのリハビリテーション、薬物療法(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン製剤など)が行われます。一部の病型では特異的治療が可能です(ビタミンE欠乏性運動失調症へのビタミンE補充療法、フリードライヒ運動失調症へのオマベロキソロンなど)。
予後はどうですか?
疾患の進行速度は原因遺伝子や個人によって大きく異なります。多くの症例では緩徐進行性で、適切なリハビリテーションにより長期間にわたって日常生活動作を維持できることが多いです。重症例では車椅子生活となることもあり、誤嚥性肺炎や心疾患などの合併症により生命予後が影響を受けることもあります。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では臨床的に重要な57の原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。


プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

仲田洋美のプロフィールはこちら