歌舞伎症候群・歌舞伎様症候群 遺伝子検査(NGSパネル)|ミネルバクリニック
歌舞伎症候群とは
歌舞伎症候群(Kabuki syndrome)は、1981年に日本の新川詔夫と黒木良和により初めて報告された遺伝性疾患です。特徴的な顔貌が歌舞伎役者の化粧(隈取)を思わせることから、この名前が付けられました。
本疾患は、特徴的な顔貌(外側1/3の下眼瞼外反を伴う切れ長の眼瞼裂、弓状で広い眉毛、押しつぶされた鼻尖を伴う短い鼻柱、大きく突出した耳またはカップ耳)、軽微な骨格異常、胎児期遺残である指尖の膨らみ(フィンガーパッド)、軽度から中等度の知的障害、そして出生後に始まる成長障害によって特徴づけられます。
発症頻度は約32,000人に1人と推定されており、日本をはじめ世界のほぼすべての民族で報告されています。主な原因遺伝子として、KMT2D遺伝子(約70~75%)とKDM6A遺伝子(約5%)が同定されていますが、残りの約30%の患者さんでは原因遺伝子が未同定です。
歌舞伎症候群は指定難病(難病指定187)および小児慢性特定疾病に認定されており、適切な遺伝学的検査により原因を特定することで、患者さんとご家族にとって重要な医学的情報を提供できます。多くの症状は対症療法で管理可能であり、早期診断と適切な支援により、患者さんの生活の質を向上させることができます。
歌舞伎様症候群とは
歌舞伎様症候群とは、歌舞伎症候群と類似した臨床症状を呈するものの、原因遺伝子や病態が異なる疾患群を指します。これらの疾患は、特徴的顔貌、発達遅延、先天性心疾患、骨格異常などの所見が歌舞伎症候群と重複するため、鑑別診断が重要です。
主な歌舞伎様症候群を呈する疾患
本パネル検査では、以下の疾患に関連する遺伝子も含めて検査を行います:
- CHARGE症候群(CHD7遺伝子):コロボーマ(虹彩や脈絡膜の欠損)、心疾患、後鼻孔閉鎖、成長発達遅滞、生殖器の異常、耳の異常を特徴とする。歌舞伎症候群と臨床的に重複する所見が多い。
- 鰓・耳・腎(BOR)症候群(EYA1、SIX5遺伝子):鰓性瘻孔、耳の奇形、難聴、腎尿路異常を特徴とする。
- IRF6関連疾患(IRF6遺伝子):ファンデルヴォウデ症候群や膝窩翼状片症候群など、口唇口蓋裂を伴う疾患群。
- ラーセン症候群(FLNB遺伝子):関節脱臼、骨格異常、特徴的顔貌を呈する。
- RAP1関連疾患(RAP1A、RAP1B遺伝子):歌舞伎症候群と重複する特徴を持つ疾患。
- HNRNPK関連疾患(HNRNPK遺伝子):発達遅延、知的障害、特徴的顔貌を呈する。
- KDM1A関連疾患(KDM1A遺伝子):発達遅延、骨格異常などを呈する。
- OTUD6B関連疾患(OTUD6B遺伝子):知的障害、発達遅延を呈する。
これらの疾患は臨床症状のみでの鑑別が困難な場合があり、包括的な遺伝子パネル検査により正確な診断が可能になります。
症状と病態
歌舞伎症候群は、遺伝子異常によるヒストンメチル化異常症として理解されています。KMT2D遺伝子とKDM6A遺伝子は、いずれもヒストン修飾を介して遺伝子発現を調節する重要な役割を担っており、これらの遺伝子異常により、多様な臓器における発生・発達過程に影響が及びます。
主要症状
- 特徴的顔貌(ほぼ100%):下眼瞼外側1/3の外反、切れ長の眼瞼裂、外側が疎な弓状の眉、短い鼻柱、先端がつぶれた鼻、大きく突出した耳またはカップ耳
- 骨格系の異常(約92%):指短縮(特にV指、中節骨短縮)、脊柱側弯、椎体矢状裂、肋骨異常
- 軽度~中等度の精神発達遅延(約92%):ほとんどの患者さんは話すことができ、歩行可能。平均して20か月前後で独歩・発語が可能。
- 出生後に始まる成長障害(約88%):低身長で推移することが多い
- 皮膚紋理異常(約90%):指尖部の隆起(フィンガーパッド)、指三叉c,dの欠損、小指球部蹄状紋増加
その他の合併症
歌舞伎症候群では、以下のような多様な合併症が報告されています:
- 心血管系:先天性心疾患(大動脈縮窄症、心室中隔欠損、心房中隔欠損など)が約50%に認められる
- 腎尿路生殖器系:腎尿路異常が約30%に認められる
- 消化器系:口唇裂・口蓋裂、鎖肛を含む消化管異常
- 眼科:眼瞼下垂、斜視
- 歯科:歯間空隙の拡大、歯牙低形成、先天性欠如歯
- 免疫系:易感染性、自己免疫疾患のリスク
- 神経系:けいれん(薬物療法でコントロール可能なことが多い)、筋緊張低下
- 耳鼻咽喉科:滲出性中耳炎、難聴(内耳奇形を伴うことがある)
- 内分泌系:女児の早期乳房発育症、思春期以降の肥満(半数以上)
- 摂食:乳児期の摂食困難
- 整形外科:関節弛緩性と関節脱臼(特に再発性膝蓋骨脱臼)
予後
歌舞伎症候群の予後は個人差が大きく、合併症の種類と程度により左右されます。一般的には、難治性てんかんや重度の心疾患の合併が生命予後に影響を与えるとされています。多くの患者さんは話すことができ、歩行可能で、適切な支援のもとでコミュニケーションや日常生活を送ることができます。長期的な予後については不明な点も多いですが、短命ではないとされています。
ミネルバクリニックの歌舞伎症候群・歌舞伎様症候群遺伝子パネル検査の特徴
「歌舞伎症候群・歌舞伎様症候群 NGSパネル検査」とは、現在歌舞伎症候群および類似疾患の原因として報告されている12の遺伝子(CHD7、EYA1、FLNB、HNRNPK、IRF6、KDM1A、KDM6A、KMT2D、OTUD6B、RAP1A、RAP1B、SIX5)に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。
従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。
何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、歌舞伎症候群および類似疾患に関連する遺伝子を一度に調べられる「歌舞伎症候群・歌舞伎様症候群 NGSパネル検査」を採用しています。
一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。
1.費用がリーズナブル
一般的な医療機関で歌舞伎症候群の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。
当院では、歌舞伎症候群および類似疾患に関係するとされる12の遺伝子を一度に調べられる「歌舞伎症候群・歌舞伎様症候群 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)
2.結果が出るまでがはやい
一般的な医療機関で行える歌舞伎症候群の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。
当院で行う「歌舞伎症候群・歌舞伎様症候群 NGSパネル検査」の場合、関連する12の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。
3.一気にまとめてできる
臨床症状から歌舞伎症候群を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。
当院で行う「歌舞伎症候群・歌舞伎様症候群 NGSパネル検査」ならば、主要な原因遺伝子であるKMT2D、KDM6Aに加えて、類似症状を呈する疾患の原因遺伝子も同時に検査できるという利点があります。これにより、正確な診断と適切な治療・管理方針の決定が可能になります。
オプション
塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)
検査内容
「歌舞伎症候群・歌舞伎様症候群 NGSパネル検査」では、歌舞伎症候群および類似症状を呈する疾患に関係するとされる12種類の遺伝子(CHD7、EYA1、FLNB、HNRNPK、IRF6、KDM1A、KDM6A、KMT2D、OTUD6B、RAP1A、RAP1B、SIX5)をまとめて検査します。
「歌舞伎症候群・歌舞伎様症候群 NGSパネル検査」は、歌舞伎症候群および類似疾患の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。
どんな人が受けたらいいの?
【歌舞伎症候群または類似疾患の個人歴または家族歴のある方】に
「歌舞伎症候群・歌舞伎様症候群 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。
この検査は以下のような方に適しています:
・特徴的な顔貌(切れ長の目、下眼瞼外反、弓状の眉、つぶれた鼻、大きな耳)がある方
・指尖部の隆起(フィンガーパッド)が認められる方
・軽度から中等度の精神発達遅延がある方
・出生後の成長障害(低身長)がある方
・骨格系の異常(指短縮、脊柱側弯など)がある方
・先天性心疾患がある方
・腎尿路異常がある方
・口唇裂・口蓋裂がある方
・易感染性、反復性中耳炎がある方
・難聴がある方
・歌舞伎症候群の家族歴がある方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方
このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。
検査で得られる患者さんの潜在的利益は?
遺伝子検査により原因が判明すると、歌舞伎症候群またはそれに類似する疾患の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、予防的介入や定期的なモニタリングを行うことができます。
遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・合併症の早期発見と適切な管理
・心血管系合併症のモニタリングと治療
・腎尿路系合併症の管理
・難聴の早期発見と補聴器装用などの介入
・けいれんの適切な治療
・発達支援、リハビリテーション、療育の計画
・教育環境の調整
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供
患者さんで病原性変異が同定された場合、常染色体優性遺伝形式のため、お子さんへ遺伝する確率は50%です。ただし、多くの場合は新生(de novo)変異であり、ご両親には変異がないことがほとんどです。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。
対象遺伝子
- 詳しくはこちら
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CHD7, EYA1, FLNB, HNRNPK, IRF6, KDM1A, KDM6A, KMT2D, OTUD6B, RAP1A, RAP1B, SIX5 ( 12遺伝子 )
各遺伝子の詳細:
・KMT2D遺伝子(別名MLL2遺伝子):
ヒストンメチル基転移酵素をコードする遺伝子。歌舞伎症候群患者の約70~75%でこの遺伝子に変異が認められる。遺伝子発現の調節に重要な役割を果たす。
・KDM6A遺伝子:
ヒストン脱メチル化酵素をコードする遺伝子。歌舞伎症候群患者の約5%でこの遺伝子に変異が認められる。X染色体に存在し、遺伝子発現の調節に関与する。
・CHD7遺伝子:
CHARGE症候群の原因遺伝子。クロマチンリモデリング因子をコードし、発達過程における遺伝子発現調節に関与する。歌舞伎症候群と臨床的に重複する所見を呈することがある。
・EYA1遺伝子:
鰓・耳・腎(BOR)症候群の原因遺伝子。転写コアクチベーターとして機能し、耳や腎臓の発生に重要な役割を果たす。
・SIX5遺伝子:
鰓・耳・腎(BOR)症候群に関連する遺伝子。ホメオボックス転写因子をコードし、耳や腎臓の発生に関与する。
・IRF6遺伝子:
ファンデルヴォウデ症候群や膝窩翼状片症候群の原因遺伝子。インターフェロン調節因子をコードし、口唇口蓋裂の発生に関与する。
・FLNB遺伝子:
ラーセン症候群の原因遺伝子。フィラミンBというタンパク質をコードし、骨格発生に重要な役割を果たす。
・RAP1A、RAP1B遺伝子:
低分子量Gタンパク質をコードする遺伝子。歌舞伎症候群と重複する特徴を持つ疾患の候補遺伝子。細胞内シグナル伝達に関与する。
・HNRNPK遺伝子:
核内リボ核タンパク質Kをコードする遺伝子。RNA結合タンパク質として、転写調節、スプライシング、翻訳制御に関与する。発達遅延や知的障害を呈する。
・KDM1A遺伝子:
ヒストン脱メチル化酵素をコードする遺伝子。遺伝子発現の調節に関与し、発達遅延や骨格異常などを呈する。
・OTUD6B遺伝子:
脱ユビキチン化酵素をコードする遺伝子。知的障害や発達遅延に関連する。
カバレッジ
カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。
≥99% at 20x(読み取り深度20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。
検体
血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)
※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。
検査の限界
- 詳しくはこちら
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すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。
低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。
この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。
※この検査パネルでは、現在報告されている主要な原因遺伝子を対象としていますが、歌舞伎症候群患者の約30%では原因遺伝子が未同定です。検査で病原性変異が検出されなくても、臨床症状から歌舞伎症候群と診断される場合があります。
結果が出るまでの期間
2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。
料金
税込み330,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)
よくあるご質問
- どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
- 特徴的な顔貌(切れ長の目、下眼瞼外反、弓状の眉、つぶれた鼻、大きな耳)、指尖部の隆起(フィンガーパッド)、精神発達遅延、成長障害(低身長)、骨格系の異常、先天性心疾患、易感染性などがある方におすすめします。また、歌舞伎症候群の家族歴がある場合も検査をご検討ください。
- 検査はどのように行いますか?
- 血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
- 家族も検査を受ける必要がありますか?
- 歌舞伎症候群は多くの場合、新生(de novo)変異により発症します。つまり、ご両親には変異がなく、お子さんに初めて変異が生じたケースが多いです。ただし、患者さんに病原性変異が同定された場合、常染色体優性遺伝形式のため、その方のお子さんに変異が遺伝する確率は50%です。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
- 検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
- 歌舞伎症候群患者の約30%では、既知の遺伝子に変異が検出されません。検査で病原性変異が検出されなくても、臨床症状から歌舞伎症候群と診断される場合があります。主治医と相談して、臨床診断に基づいた適切な管理を行うことが重要です。
- 保険は適用されますか?
- 当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み330,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。ただし、診断確定後は指定難病制度により医療費助成を受けられる可能性があります。
- 結果はどのように説明されますか?
- 検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、必要な医療管理、利用可能な支援制度などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
- 子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
- 患者さんに病原性変異がある場合、お子さんに変異が遺伝する確率は50%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
- 歌舞伎症候群の治療はどのように行われますか?
- 現在のところ根本的な治療法はありませんが、各症状に対する対症療法により生活の質を向上させることができます。心血管系合併症の管理、腎尿路系合併症の治療、けいれんのコントロール、難聴に対する補聴器装用、発達支援やリハビリテーション、療育などを総合的に行います。早期から適切な支援を受けることで、多くの患者さんが充実した生活を送ることができます。
- 予後はどうですか?
- 歌舞伎症候群の予後は個人差が大きく、合併症の種類と程度により異なります。ほとんどの患者さんは話すことができ、歩行可能で、適切な支援のもとでコミュニケーションや日常生活を送ることができます。難治性てんかんや重度の心疾患がある場合は注意深い管理が必要ですが、多くの患者さんは長期にわたり生活されています。定期的なフォローアップと多職種による包括的なケアが重要です。
- 他の医療機関での検査との違いは何ですか?
- 当院では主要な原因遺伝子であるKMT2D、KDM6Aに加えて、類似症状を呈する10の疾患関連遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、包括的な検査により、正確な診断と適切な治療・管理方針の決定が可能になります。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも検査を受けることが可能です。
- このパネル検査にはどのような疾患が含まれますか?
- 歌舞伎症候群(KMT2D、KDM6A遺伝子)に加えて、CHARGE症候群(CHD7遺伝子)、鰓・耳・腎(BOR)症候群(EYA1、SIX5遺伝子)、IRF6関連疾患(IRF6遺伝子)、ラーセン症候群(FLNB遺伝子)、RAP1関連疾患(RAP1A、RAP1B遺伝子)、HNRNPK関連疾患(HNRNPK遺伝子)、KDM1A関連疾患(KDM1A遺伝子)、OTUD6B関連疾患(OTUD6B遺伝子)が含まれます。これらの疾患は臨床症状が重複することがあり、包括的な検査により正確な診断が可能になります。
プロフィール
この記事の筆者:仲田洋美(医師)
ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。
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