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ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群遺伝子検査(NGSパネル)|ミネルバクリニック

ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群遺伝子検査(NGSパネル)|ミネルバクリニック

ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群とは

ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群(Jervell and Lange-Nielsen Syndrome: JLNS)は、先天性の両側感音難聴と著明なQT延長症候群を特徴とする稀な遺伝性疾患です。1957年にAnton JervellとFred Lange-Nielsenによって初めて報告されました。本疾患は遺伝性QT延長症候群の一型であり、常染色体劣性(潜性)遺伝形式をとります。

QT延長症候群とは、心電図上でQT間隔(心室の興奮開始から興奮終了までの時間)が異常に延長する病態を指します。ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群では、QTc間隔(心拍数で補正したQT間隔)が通常500ミリ秒以上と著明に延長し、致死的な不整脈であるトルサード・ド・ポワント(torsades de pointes)や心室細動を引き起こし、失神発作や突然死のリスクが高くなります。

ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群は非常に稀な疾患で、世界的な有病率は100万人あたり1.6~6人程度と推定されています。ただし、デンマーク、スウェーデン、ノルウェーなどの北欧諸国では比較的高い頻度(20万人に1人以上)で認められます。常染色体劣性遺伝であるため、両親ともに保因者(キャリア)である場合に発症します。

症状と病態

ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群の主な症状は、先天性の両側感音難聴と心臓の不整脈です。難聴は出生時から存在し、通常は高度から重度で、特に高周波数の聴力が障害されます。心臓の症状は、QT延長に起因する致死的不整脈によるものです。

主要症状

  • 先天性両側感音難聴(出生時から存在)
  • 著明なQT延長(QTc間隔500ミリ秒以上、平均557±65ミリ秒)
  • 失神発作(感情的興奮や運動により誘発)
  • トルサード・ド・ポワント(特殊な心室頻拍)
  • 心室細動
  • 心停止
  • 突然死のリスク

難聴の特徴

ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群における難聴は、内耳の感覚神経が機能しないことによる感音難聴です。出生時から両側性に存在し、通常は高度から重度です。聴力検査や生理学的検査により診断されます。高周波数の音がより強く障害される傾向があります。人工内耳埋め込み術により聴力改善が期待できる場合があります。

心臓症状の特徴

心臓症状は主にQT延長に起因します。QT間隔の延長により、心室筋の再分極(興奮からの回復)に時間がかかり、その間に新たな刺激が入ると致死的不整脈が誘発されます。

  • 発症時期:多くの患者さん(50%)が3歳までに症状を呈します。86%の患者さんが生涯のうちに心臓関連の症状を経験します
  • 誘発因子:感情的興奮、運動、驚愕などのストレスが不整脈の引き金となります。95%の不整脈イベントが感情的または身体的ストレスにより誘発されます
  • 失神発作:不整脈により脳への血流が一時的に低下し、意識消失が起こります
  • 突然死:治療を受けていない場合、15歳までに50%以上の患者さんが突然死に至ります

ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群とロマノ・ワード症候群の違い

同じKCNQ1遺伝子またはKCNE1遺伝子の変異でも、遺伝形式の違いにより臨床像が異なります:

  • ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群:常染色体劣性遺伝(両方の遺伝子に変異)。先天性難聴あり、QT延長が著明、心臓症状が重症
  • ロマノ・ワード症候群:常染色体優性遺伝(片方の遺伝子に変異)。難聴なし、QT延長は比較的軽度、心臓症状は比較的軽症

KCNQ1遺伝子やKCNE1遺伝子変異の保因者(ヘテロ接合体)の一部では、QT延長を伴うことがありますが、聴力は正常です。これはロマノ・ワード症候群に分類されます。

進行と予後

ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群は、他の型のQT延長症候群と比べて重症であることが知られています。治療を受けていない場合、15歳までに50%以上の患者さんが死亡します。しかし、適切な治療により予後は改善します。ベータ遮断薬による治療、植込み型除細動器(ICD)の使用、生活指導などにより、多くの患者さんの生命予後が改善しています。

予後に影響する因子:

  • 原因遺伝子:KCNE1遺伝子変異による場合は、KCNQ1遺伝子変異よりも比較的軽症の経過をとる傾向があります
  • 性別:女性の方が男性より予後が良好です
  • QTc間隔:QTc間隔が550ミリ秒未満の場合はリスクが比較的低いです
  • 初発年齢:生後1年以内に症状が出現しなかった場合は予後が比較的良好です
  • 治療:早期からのベータ遮断薬治療により心臓イベントが減少し、死亡率が改善します

遺伝形式と原因遺伝子

ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群は常染色体劣性(潜性)遺伝形式をとります。これは、発症するためには両親から1つずつ、計2つの変異遺伝子を受け継ぐ必要があることを意味します。両親はそれぞれ1つの変異遺伝子を持つ保因者(キャリア)ですが、通常は症状がないか、軽度のQT延長のみを示します(ロマノ・ワード症候群)。

原因遺伝子

ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群は、KCNQ1遺伝子またはKCNE1遺伝子のホモ接合性変異または複合ヘテロ接合性変異により引き起こされます:

  • KCNQ1遺伝子:約90%の症例の原因遺伝子です。この遺伝子はカリウムチャネルのα(アルファ)サブユニットをコードしており、心臓の再分極(興奮からの回復)に重要な役割を果たします。KCNQ1遺伝子変異による場合はJLNS1型と呼ばれます
  • KCNE1遺伝子:残りの約10%の症例の原因遺伝子です。この遺伝子はカリウムチャネルのβ(ベータ)サブユニットをコードしており、KCNQ1タンパク質と共同してカリウムチャネルを形成します。KCNE1遺伝子変異による場合はJLNS2型と呼ばれます

遺伝子の機能

KCNQ1とKCNE1がコードするタンパク質は共同して、IKs(遅延整流性カリウム電流)と呼ばれるカリウムチャネルを形成します。このチャネルは、心臓の心室筋細胞や内耳の細胞において、カリウムイオンを細胞外に輸送する役割を担っています。

心臓における役割:心室筋の活動電位の再分極(第3相)に関与し、心筋の興奮からの回復を調節します。IKsチャネルの機能不全により再分極が遅延し、QT間隔が延長します。

内耳における役割:内耳の蝸牛の有毛細胞や前庭器官において、カリウムイオンの恒常性維持に重要な役割を果たします。IKsチャネルの機能不全により、内耳リンパ液のカリウム濃度調節が障害され、感音難聴が生じます。

遺伝カウンセリングの重要性

ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群患者さんの両親は、通常、KCNQ1またはKCNE1遺伝子変異の保因者(ヘテロ接合体)です。保因者の両親から生まれる子どもについて:

  • 25%の確率でジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群を発症(2つの変異遺伝子を受け継ぐ)
  • 50%の確率で保因者となる(1つの変異遺伝子を受け継ぐ)
  • 25%の確率で変異遺伝子を受け継がない

ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群の患者さんが子どもを持つ場合、パートナーが保因者でなければ、子どもは全員が保因者(ロマノ・ワード症候群の可能性)となりますが、ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群を発症することはありません。パートナーも保因者である場合は、50%の確率で子どもがジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群を発症します。

ミネルバクリニックのジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群遺伝子パネル検査の特徴

「ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群 NGSパネル検査」とは、現在ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群の原因として知られている2つの遺伝子(KCNQ1、KCNE1)に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。

従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。

何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群に関連する2遺伝子を一度に調べられる「ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群 NGSパネル検査」を採用しています。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.費用がリーズナブル

一般的な医療機関でジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。

当院では、ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群に関係するとされる2つの遺伝子を一度に調べられる「ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)

2.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行えるジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。

当院で行う「ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群 NGSパネル検査」の場合、2つの遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。

3.一気にまとめてできる

臨床症状からジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。

当院で行う「ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な2つの原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。

オプション

塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)

検査内容

「ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群 NGSパネル検査」では、ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群に関係するとされる2種類の遺伝子(KCNE1、KCNQ1)をまとめて検査します。

「ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群 NGSパネル検査」は、ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。

どんな人が受けたらいいの?

【ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群の個人歴または家族歴のある方】に
「ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。

この検査は以下のような方に適しています:
・先天性の両側感音難聴がある方
・心電図でQT延長(QTc間隔500ミリ秒以上)が認められる方
・失神発作(特に感情的興奮や運動時)の既往がある方
・トルサード・ド・ポワントなどの不整脈の既往がある方
・ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群またはQT延長症候群の家族歴がある方
・難聴とQT延長の両方を持つ乳幼児・小児
・原因不明の失神や心停止の既往がある難聴の方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方
・ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群患者さんの家族で、保因者診断を希望される方

このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

遺伝子検査により原因が判明すると、ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切な薬物療法、植込み型除細動器の検討、生活指導、定期的なモニタリングを行うことができます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・他のQT延長症候群や心疾患との鑑別
・ベータ遮断薬治療の適切な開始と管理
・植込み型除細動器(ICD)の適応判断
・左心交感神経切除術の検討
・運動制限など生活指導の適切な実施
・突然死リスクの評価と予防
・難聴に対する人工内耳埋め込み術の検討
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供
・保因者診断による家族の安心

患者さんで病原性変異が同定された場合、常染色体劣性遺伝であるため、両親は保因者です。兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。

対象遺伝子

詳しくはこちら

KCNE1, KCNQ1 ( 2遺伝子 )

各遺伝子の詳細:
・KCNE1遺伝子:
カリウムチャネルのβサブユニット(MinK)をコードする遺伝子。KCNQ1タンパク質と共同してIKsカリウムチャネルを形成します。KCNE1遺伝子の変異は、ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群の約10%の症例の原因となります(JLNS2型)。KCNE1遺伝子変異による場合、KCNQ1遺伝子変異と比べて比較的軽症の経過をとる傾向があります。ヘテロ接合性変異(1つの変異遺伝子)の場合は、ロマノ・ワード症候群(LQT5型)として知られるQT延長症候群を引き起こすことがありますが、難聴は伴いません。

・KCNQ1遺伝子:
カリウムチャネルのαサブユニット(KvLQT1)をコードする遺伝子。KCNE1タンパク質と共同してIKsカリウムチャネルを形成します。KCNQ1遺伝子の変異は、ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群の約90%の症例の原因となります(JLNS1型)。ホモ接合性変異または複合ヘテロ接合性変異により、重度のIKs機能障害が生じ、著明なQT延長と先天性難聴を引き起こします。ヘテロ接合性変異(1つの変異遺伝子)の場合は、ロマノ・ワード症候群(LQT1型)として知られるQT延長症候群を引き起こすことがありますが、難聴は伴いません。KCNQ1遺伝子はインプリンティング遺伝子としても知られており、ベックウィズ・ウィーデマン症候群の候補遺伝子でもあります。

カバレッジ

カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。

≥99% at 20x(読み取り深度20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
 検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

検査の限界

詳しくはこちら

すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。

低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。

この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。

※ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群の診断には、臨床症状(先天性両側感音難聴とQT延長)と遺伝子検査結果を総合的に評価する必要があります。検査で病原性変異が検出されなくても、臨床的にジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群が強く疑われる場合は、他の遺伝子変異や未知の原因の可能性があります。

結果が出るまでの期間

2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。

料金

税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
先天性の両側感音難聴があり、心電図でQT延長(QTc間隔500ミリ秒以上)が認められる方、失神発作(特に感情的興奮や運動時)の既往がある方におすすめします。また、ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群やQT延長症候群の家族歴がある方、原因不明の失神や心停止の既往がある難聴の方も検査をご検討ください。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
ロマノ・ワード症候群との違いは何ですか?
ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群は常染色体劣性遺伝で、両方の遺伝子に変異がある場合に発症し、先天性難聴とQT延長の両方が認められます。ロマノ・ワード症候群は常染色体優性遺伝で、片方の遺伝子に変異がある場合に発症し、QT延長はありますが難聴は伴いません。同じKCNQ1遺伝子やKCNE1遺伝子の変異でも、遺伝形式の違いにより臨床像が異なります。
家族も検査を受ける必要がありますか?
ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群患者さんの両親は通常、保因者(キャリア)です。兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。また、保因者の方は軽度のQT延長を示すことがあり、適切な管理が必要な場合があります。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
検査で病原性変異が検出されなくても、臨床症状(先天性難聴とQT延長)に基づいた診断と管理が引き続き重要です。稀に、他の原因遺伝子や未知の遺伝的要因の可能性もあります。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群は常染色体劣性遺伝です。患者さんが子どもを持つ場合、パートナーが保因者でなければ子どもは全員が保因者となりますが発症しません。パートナーも保因者の場合は、50%の確率で子どもが発症します。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群の治療はどのように行われますか?
ベータ遮断薬(プロプラノロール、ナドロールなど)による治療が基本です。植込み型除細動器(ICD)の適応を検討します。重症例や薬物療法で不整脈が抑制できない場合は、左心交感神経切除術が考慮されます。運動制限や感情的ストレスの回避など生活指導も重要です。難聴に対しては人工内耳埋め込み術が有効な場合があります。
予後はどうですか?
治療を受けていない場合、15歳までに50%以上の患者さんが死亡しますが、適切な治療により予後は大幅に改善します。ベータ遮断薬治療と植込み型除細動器により、突然死のリスクを大きく減少させることができます。KCNE1遺伝子変異、女性、QTc間隔550ミリ秒未満、生後1年以内に症状がない場合は、比較的予後が良好です。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では臨床的に重要な2つの原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。
人工内耳埋め込み術を検討していますが、心臓への影響は?
ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群患者さんでも、適切な心臓管理のもとで人工内耳埋め込み術を安全に受けることが可能です。手術前に心臓の状態を十分に評価し、ベータ遮断薬の継続や植込み型除細動器の適応などを検討します。人工内耳により聴力が改善することで、生活の質が大きく向上します。


プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

仲田洋美のプロフィールはこちら