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低リン血症性くる病遺伝子検査(NGSパネル)|ミネルバクリニック

低リン血症性くる病遺伝子検査(NGSパネル)|ミネルバクリニック

低リン血症性くる病とは

低リン血症性くる病は、体内のリンが不足することによって引き起こされる骨の石灰化障害を特徴とする遺伝性疾患です。血液検査で低リン血症(血液中のリンが低い状態)が認められることが特徴です。成長期に発症する場合を「くる病」と呼び、成人期に発症する場合を「骨軟化症」と呼びます。

骨の発育と強化のためにはリンが必要です。腎臓の尿細管におけるリン再吸収の異常により、尿中へのリン排泄が増加し、血清リン濃度が低下することで骨の石灰化障害が生じます。ビタミンD欠乏性くる病とは異なり、天然型ビタミンDの補充では改善しないことが特徴です。

低リン血症性くる病は指定難病(難病指定238)に認定されており、適切な遺伝学的検査により原因を特定することで、患者さんとご家族にとって重要な医学的情報を提供できます。早期診断と適切な治療により、骨変形や成長障害を最小限に抑えることが可能です。

原因と遺伝形式

低リン血症性くる病の多くは、線維芽細胞増殖因子23(FGF23)というホルモンの過剰が原因となっています。FGF23は骨で作られるホルモンで、腎臓に作用して尿中へのリン排泄を増加させます。さらに、FGF23はビタミンDが活性型に代謝されるのを妨げるため、腸管でのカルシウムやリンの吸収も低下します。

主な遺伝形式

低リン血症性くる病には、遺伝形式によっていくつかの病型があります:

X連鎖性低リン血症性くる病(XLH)

最も頻度の高い遺伝性くる病で、推定発症率は約2万人に1人とされています。PHEX遺伝子の変異が原因で、X染色体上の顕性(優性)遺伝子を介して遺伝します。顕性遺伝子が関与するため、1つの遺伝子を受け継ぐだけで発症します。両親の一方がこの疾患である場合、子どもが罹患する確率は50%です。

常染色体優性低リン血症性くる病(ADHR)

FGF23遺伝子の変異により発症します。FGF23遺伝子の生理的切断部位近傍に変異が生じることで、全長FGF23が増加し、低リン血症を引き起こします。症状は比較的軽度です。

常染色体劣性低リン血症性くる病

DMP1、ENPP1などの遺伝子変異により発症します。両親がともに保因者である場合、子どもが罹患する確率は25%です。

その他の原因

腎尿細管障害、ビタミンD代謝異常、薬剤性など、さまざまな原因によって低リン血症性くる病が引き起こされることがあります。

症状と病態

低リン血症性くる病では、骨基質の石灰化障害により骨石灰化度の低下を来たします。成長期には骨の変形や成長障害、運動障害の原因となり、成人発症では骨強度の低下により骨折や疼痛の原因となります。

小児期の主要症状

  • O脚(内反膝)やX脚(外反膝)などの下肢の骨変形
  • 低身長、成長障害(身長の伸びが遅い)
  • 歩行開始の遅れ
  • 歩行時の身体の揺れ(動揺性歩行)
  • 手首や足首の腫れ
  • 骨や関節の痛み
  • 筋力低下
  • 歯のエナメル質形成不全
  • 歯肉の腫れや膿の形成
  • 頭蓋縫合早期癒合症(頭蓋骨が早く閉じてしまう)

成人期の症状

成人発症の骨軟化症では、以下のような症状が現れます:

  • 骨痛(腰背部痛、股関節痛、膝関節痛、大腿骨や下腿骨の痛み)
  • 筋力低下(特に下肢や臀筋)
  • 歩行障害
  • 偽骨折(Looser’s zone)
  • 骨折しやすい
  • 脊柱の変形
  • 胸郭の変形(鳩胸)

検査所見

低リン血症性くる病の診断には、以下の検査所見が重要です:

  • 血清リン値の低下
  • 血清アルカリホスファターゼ値の上昇
  • 尿中リン排泄の増加
  • 血清FGF23値の上昇(FGF23関連低リン血症性くる病の場合)
  • X線検査:手首や膝の骨にくる病に特徴的な変化
  • 骨シンチグラフィー:多発性取り込み

ミネルバクリニックの低リン血症性くる病遺伝子パネル検査の特徴

「低リン血症性くる病 NGSパネル検査」とは、現在低リン血症性くる病の原因として報告されている22の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。

従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。

何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、低リン血症性くる病に関連する遺伝子を一度に調べられる「低リン血症性くる病 NGSパネル検査」を採用しています。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.費用がリーズナブル

一般的な医療機関で低リン血症性くる病の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。

当院では、低リン血症性くる病に関係するとされる22の遺伝子を一度に調べられる「低リン血症性くる病 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)

2.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行える低リン血症性くる病の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。

当院で行う「低リン血症性くる病 NGSパネル検査」の場合、22の関連遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。

3.一気にまとめてできる

臨床症状から低リン血症性くる病を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。

当院で行う「低リン血症性くる病 NGSパネル検査」ならば、低リン血症性くる病に関連する22の原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。

オプション

塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)

検査内容

「低リン血症性くる病 NGSパネル検査」では、低リン血症性くる病に関係するとされる22種類の遺伝子をまとめて検査します。これらには、X連鎖性低リン血症性くる病の原因となるPHEX遺伝子や、常染色体優性遺伝形式をとるFGF23遺伝子、その他のリン代謝やビタミンD代謝に関わる重要な遺伝子が含まれます。

「低リン血症性くる病 NGSパネル検査」は、低リン血症性くる病の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。

どんな人が受けたらいいの?

【低リン血症性くる病の個人歴または家族歴のある方】に
「低リン血症性くる病 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。

この検査は以下のような方に適しています:
・O脚やX脚などの下肢の骨変形がある方
・低身長や成長障害がある方
・骨や関節の痛みがある方
・血液検査で低リン血症やアルカリホスファターゼの上昇が認められる方
・X線検査で骨に特徴的な変化が認められる方
・歩行時の身体の揺れや筋力低下がある方
・歯のエナメル質形成不全や歯肉の問題がある方
・低リン血症性くる病の家族歴がある方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方

このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

遺伝子検査により原因が判明すると、低リン血症性くる病の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、予防的治療や定期的なモニタリングを行うことができます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・抗FGF23抗体(ブロスマブ)治療の適応判断
・リン製剤や活性型ビタミンDによる適切な治療
・骨変形の進行予防
・成長障害の改善
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供

遺伝形式により、家族内でのリスク評価も可能になります。X連鎖性の場合は50%の確率で子どもに伝わり、常染色体劣性の場合は両親がともに保因者であれば25%の確率で子どもが発症します。

対象遺伝子

詳しくはこちら

ALPL, CLCN5, CTNS, CYP27B1, CYP2R1, DMP1, ENPP1, FAH, FAM20C, FGF23, FGFR1, GATM, GNAS, KL, NDUFAF6, OCRL, PHEX, SLC2A2, SLC34A1, SLC34A3, SLC9A3R1, VDR ( 22遺伝子 )

主要な遺伝子の詳細:
・PHEX遺伝子:
X連鎖性低リン血症性くる病(XLH)の原因遺伝子。最も頻度の高い遺伝性くる病で、約2万人に1人の発症率。X染色体上に存在し、顕性(優性)遺伝形式をとる。PHEX遺伝子の変異によりFGF23の不活化が障害され、FGF23が過剰となる。

・FGF23遺伝子:
常染色体優性低リン血症性くる病(ADHR)の原因遺伝子。FGF23は腎臓に作用して尿中へのリン排泄を増加させ、ビタミンD活性化を抑制するホルモン。この遺伝子の変異により全長FGF23が増加し、低リン血症を引き起こす。

・DMP1遺伝子:
常染色体劣性低リン血症性くる病の原因遺伝子の一つ。骨での石灰化に関与し、変異によりFGF23産生が亢進する。

・ENPP1遺伝子:
常染色体劣性遺伝性低リン血症性くる病2型(ARHR2)の原因遺伝子。ピロリン酸の代謝に関与し、骨石灰化に重要な役割を果たす。

・CYP27B1、CYP2R1遺伝子:
ビタミンDの活性化に関与する遺伝子。これらの変異によりビタミンD依存性くる病を発症する。

・VDR遺伝子:
ビタミンD受容体をコードする遺伝子。この遺伝子の変異によりビタミンD抵抗性くる病を発症する。

・CLCN5、OCRL遺伝子:
腎尿細管障害に関連する遺伝子。Dent病などの尿細管障害により低リン血症性くる病を引き起こす。

・SLC34A1、SLC34A3遺伝子:
腎臓でのリン再吸収に関与するナトリウム-リン共輸送体をコードする遺伝子。これらの変異により遺伝性低リン血症性くる病を発症する。

カバレッジ

カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。

≥99% at 20x(読み取り深度20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
 検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

検査の限界

詳しくはこちら

すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。

低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。

この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。

※この検査パネルには、低リン血症性くる病の主要な原因遺伝子が含まれていますが、すべての原因遺伝子を網羅しているわけではありません。検査で病原性変異が検出されなくても、低リン血症性くる病を完全に否定できるわけではありません。

結果が出るまでの期間

2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。

料金

税込み385,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
O脚やX脚などの下肢の骨変形がある方、低身長や成長障害がある方、骨や関節の痛みがある方、血液検査で低リン血症やアルカリホスファターゼの上昇が認められる方におすすめします。また、低リン血症性くる病の家族歴がある場合も検査をご検討ください。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
家族も検査を受ける必要がありますか?
低リン血症性くる病には複数の遺伝形式があります。X連鎖性の場合は50%の確率で子どもに伝わり、常染色体劣性の場合は両親がともに保因者であれば25%の確率で子どもが発症します。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
この検査では低リン血症性くる病の主要な原因遺伝子22種類を対象としていますが、すべての原因遺伝子を網羅しているわけではありません。検査で病原性変異が検出されなくても、低リン血症性くる病を完全に否定できるわけではありません。主治医と相談して、必要に応じて追加の検査を受けることが重要です。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み385,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。ただし、診断確定後は指定難病制度により医療費助成を受けられる可能性があります。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療選択肢(抗FGF23抗体治療、リン製剤、活性型ビタミンDなど)について、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
低リン血症性くる病は遺伝性疾患のため、子どもに伝わる可能性があります。遺伝形式により確率は異なりますが、X連鎖性の場合は50%、常染色体劣性の場合は両親がともに保因者であれば25%の確率で発症します。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
低リン血症性くる病の治療はどのように行われますか?
治療は原因と症状に応じて行われます。血清FGF23が高値の場合は抗FGF23抗体(ブロスマブ)が使用されます。その他、リン製剤と活性型ビタミンDの併用療法が行われます。早期診断と適切な治療により、骨変形や成長障害を最小限に抑えることが可能です。
予後はどうですか?
早期に診断し適切な治療を開始すれば、骨の変形や身長の伸びは改善することが多いです。近年、抗FGF23抗体(ブロスマブ)などの新しい治療法が登場し、予後の改善が期待されています。ただし、生涯にわたる治療と定期的なモニタリングが必要です。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では低リン血症性くる病に関連する22の遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも検査を受けることが可能です。


プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

仲田洋美のプロフィールはこちら