低マグネシウム血症(遺伝性)NGS遺伝子パネル検査|ミネルバクリニック
遺伝性低マグネシウム血症とは
遺伝性低マグネシウム血症は、血液中のマグネシウム濃度が病的に低下する遺伝性の電解質異常症です。マグネシウムは体内で600種類以上の酵素の機能に関与し、神経伝達、筋肉の収縮、骨形成など、生命維持に不可欠な役割を果たしています。遺伝性低マグネシウム血症では、腎臓または腸管におけるマグネシウムの再吸収が障害されることで、慢性的なマグネシウム欠乏状態となります。
本疾患は臨床的にも遺伝学的にも多様性が高く、原因遺伝子によって症状の重症度や合併する電解質異常が異なります。多くの場合、小児期から成人期にかけて症状が出現し、適切な診断と管理が必要となります。
遺伝性低マグネシウム血症には、高カルシウム尿症を伴うもの、ギテルマン症候群様の病態を呈するもの、ミトコンドリア機能異常を伴うものなど、様々な病型があります。血清マグネシウム濃度が1.8mg/dL(0.70mmol/L)未満の状態が持続し、他の電解質異常(低カリウム血症、低カルシウム血症)を合併することが多いのが特徴です。
症状と病態
遺伝性低マグネシウム血症の症状は、マグネシウム欠乏の程度と合併する電解質異常によって様々です。多くの患者さんで小児期から思春期にかけて症状が出現し、進行性の経過をたどります。
主要症状
- 神経筋症状:筋力低下、筋肉のけいれん、振戦、テタニー(手足のこわばり)
- 中枢神経症状:けいれん発作、注意力低下、易刺激性、嗜眠
- 心血管症状:不整脈、QT延長、心室性頻拍
- 消化器症状:食欲不振、悪心、嘔吐、便秘
- 発育障害:低身長、発育不全(failure to thrive)
- 倦怠感、疲労感
合併する電解質異常
遺伝性低マグネシウム血症では、マグネシウム欠乏に加えて他の電解質異常を合併することが非常に多く、これらが症状の重症度に大きく影響します:
- 低カリウム血症:腎臓からのカリウム喪失により低カリウム血症を呈します。筋力低下や不整脈の原因となります
- 低カルシウム血症:マグネシウム欠乏により副甲状腺ホルモンの分泌が障害され、低カルシウム血症を引き起こします。テタニーやけいれんの原因となります
- 代謝性アルカローシス:水素イオンの腎排泄増加により、血液のpHが上昇します
病型による特徴
原因遺伝子によって、特徴的な臨床像が認められることがあります:
- 高カルシウム尿症を伴う家族性低マグネシウム血症:尿中へのカルシウム排泄が増加し、腎石灰化症や尿路結石を合併します。進行性の腎機能障害をきたし、末期腎不全に至ることがあります(CLDN16、CLDN19遺伝子変異)
- ギテルマン症候群:低カリウム血症、低マグネシウム血症、代謝性アルカローシスを特徴とする尿細管機能異常症です。成人期まで無症状の場合もあります(SLC12A3遺伝子変異)
- バーター症候群:ギテルマン症候群と類似しますが、高カルシウム尿症を伴い、より重症です(CLCNKB遺伝子変異など)
- 低カルシウム血症を伴う低マグネシウム血症:腸管と腎臓でのマグネシウム吸収障害により、重度の低マグネシウム血症と二次性低カルシウム血症を呈します(TRPM6遺伝子変異)
- ミトコンドリア機能異常を伴う低マグネシウム血症:ミトコンドリア遺伝子の異常により、多臓器にわたる症状を呈することがあります(SARS2遺伝子変異など)
進行と予後
疾患の進行は原因遺伝子や病型によって異なります。適切なマグネシウム補充療法により症状をコントロールできる軽症例から、進行性の腎機能障害により透析療法が必要となる重症例まで幅広い臨床像を呈します。早期診断と適切な管理により、長期予後を改善できる可能性があります。
遺伝形式と原因遺伝子
遺伝性低マグネシウム血症は遺伝学的に非常に多様で、常染色体優性(顕性)遺伝、常染色体劣性(潜性)遺伝、X連鎖遺伝、ミトコンドリア遺伝のいずれの形式でも発症します。現在までに20以上の原因遺伝子が同定されており、それぞれ異なる病態機序で低マグネシウム血症を引き起こします。
腎尿細管でのマグネシウム再吸収障害
最も頻度の高い病態機序で、以下の遺伝子が関与します:
- CLDN16、CLDN19遺伝子(常染色体劣性遺伝):腎臓のヘンレループ太い上行脚でのマグネシウムとカルシウムの再吸収に関与するタイトジャンクション蛋白をコードします。変異により高カルシウム尿症と腎石灰化症を伴う家族性低マグネシウム血症を発症します
- SLC12A3遺伝子(常染色体劣性遺伝):遠位尿細管のチアジド感受性Na-Cl共輸送体をコードし、変異によりギテルマン症候群を発症します
- CLCNKB遺伝子(常染色体劣性遺伝):腎臓の塩素イオンチャネルをコードし、バーター症候群III型の原因となります
- FXYD2遺伝子(常染色体優性遺伝):Na-K-ATPaseの制御サブユニットをコードします
- KCNJ10遺伝子(常染色体劣性遺伝):カリウムチャネルをコードし、EAST/SeSAME症候群の原因となります
腸管でのマグネシウム吸収障害
- TRPM6遺伝子(常染色体劣性遺伝):腸管と腎臓に発現するマグネシウムチャネルをコードします。変異により低カルシウム血症を伴う原発性低マグネシウム血症を発症します
- TRPM7遺伝子:TRPM6と相互作用するマグネシウムチャネルです
- EGF遺伝子(常染色体劣性遺伝):上皮成長因子をコードし、腸管と腎臓でのマグネシウム輸送を制御します
マグネシウム輸送体の異常
- CNNM2、CNNM4遺伝子:細胞膜でのマグネシウム輸送を担うサイクリンM遺伝子ファミリーです
- SLC41A1、SLC41A2、SLC41A3遺伝子:マグネシウムトランスポーターをコードします
- HNF1B遺伝子(常染色体優性遺伝):転写因子をコードし、腎臓の発生と尿細管機能に重要です。変異により腎嚢胞と糖尿病症候群(RCAD)を発症します
ミトコンドリア機能関連
- SARS2遺伝子(常染色体劣性遺伝):ミトコンドリアのセリルtRNA合成酵素をコードします
- MAGT1遺伝子(X連鎖遺伝):ミトコンドリアのマグネシウムトランスポーターをコードし、免疫不全を合併します
その他の関連遺伝子
- CASR遺伝子(常染色体優性遺伝):カルシウム感知受容体をコードし、カルシウムとマグネシウムの恒常性維持に関与します
- KCNA1遺伝子(常染色体優性遺伝):電位依存性カリウムチャネルをコードします
- FAM111A遺伝子(常染色体優性遺伝):細胞周期制御に関与し、腎機能に影響します
- PCBD1遺伝子(常染色体劣性遺伝):プテリジン代謝に関与します
当検査パネルでは、これらの原因遺伝子を含む23遺伝子を対象としています。これにより、遺伝性低マグネシウム血症の主要な原因を効率的にスクリーニングすることが可能です。
ミネルバクリニックの遺伝性低マグネシウム血症遺伝子パネル検査の特徴
「遺伝性低マグネシウム血症 NGSパネル検査」とは、現在遺伝性低マグネシウム血症の原因として報告されている23の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。
従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。
何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、遺伝性低マグネシウム血症に関連する23遺伝子を一度に調べられる「遺伝性低マグネシウム血症 NGSパネル検査」を採用しています。
一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。
1.費用がリーズナブル
一般的な医療機関で遺伝性低マグネシウム血症の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。
当院では、遺伝性低マグネシウム血症に関係するとされる23の遺伝子を一度に調べられる「遺伝性低マグネシウム血症 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)
2.結果が出るまでがはやい
一般的な医療機関で行える遺伝性低マグネシウム血症の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。
当院で行う「遺伝性低マグネシウム血症 NGSパネル検査」の場合、23の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。
3.一気にまとめてできる
臨床症状から遺伝性低マグネシウム血症を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。
当院で行う「遺伝性低マグネシウム血症 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な23の原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。
オプション
塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)
検査内容
「遺伝性低マグネシウム血症 NGSパネル検査」では、遺伝性低マグネシウム血症に関係するとされる23種類の遺伝子(CASR、CLCNKB、CLDN16、CLDN19、CNNM1、CNNM2、CNNM4、EGF、FAM111A、FXYD2、HNF1B、KCNA1、KCNJ10、MAGT1、MMGT1、NIPA2、PCBD1、SARS2、SLC12A3、SLC41A2、SLC41A3、TRPM6、TRPM7)をまとめて検査します。
「遺伝性低マグネシウム血症 NGSパネル検査」は、遺伝性低マグネシウム血症の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。
どんな人が受けたらいいの?
【遺伝性低マグネシウム血症の個人歴または家族歴のある方】に
「遺伝性低マグネシウム血症 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。
この検査は以下のような方に適しています:
・原因不明の持続性低マグネシウム血症がある方
・血清マグネシウム値が1.8mg/dL未満の方
・低マグネシウム血症に加えて低カリウム血症や低カルシウム血症がある方
・筋力低下、筋肉のけいれん、テタニーなどの症状がある方
・けいれん発作を繰り返す方
・心電図でQT延長や不整脈が認められる方
・小児期からの発育不全がある方
・腎結石や腎石灰化症が認められる方
・ギテルマン症候群やバーター症候群が疑われる方
・家族に低マグネシウム血症や腎結石の方がいる方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方
このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。
検査で得られる患者さんの潜在的利益は?
遺伝子検査により原因が判明すると、遺伝性低マグネシウム血症の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切なマグネシウム補充療法、電解質管理、腎機能モニタリング、生活習慣の改善を行うことができます。
遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・他の電解質異常や腎疾患との鑑別
・適切なマグネシウム補充療法の立案
・併存する低カリウム血症、低カルシウム血症の管理
・腎結石、腎石灰化症のリスク評価と予防
・進行性腎機能障害のモニタリングと早期介入
・不整脈やけいれんなどの重篤な合併症の予防
・疾患の進行予測と長期的な管理計画の立案
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供
患者さんで病原性変異が同定された場合、遺伝形式に応じて家族の発症リスクが異なります。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症するリスクは50%、常染色体劣性遺伝の場合は兄弟姉妹が発症するリスクは25%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。
対象遺伝子
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CASR, CLCNKB, CLDN16, CLDN19, CNNM1, CNNM2, CNNM4, EGF, FAM111A, FXYD2, HNF1B, KCNA1, KCNJ10, MAGT1, MMGT1, NIPA2, PCBD1, SARS2, SLC12A3, SLC41A2, SLC41A3, TRPM6, TRPM7 ( 23遺伝子 )
各遺伝子の詳細:
・CASR遺伝子:
カルシウム感知受容体をコードする遺伝子。副甲状腺と腎臓に発現し、カルシウムとマグネシウムの恒常性維持に重要な役割を果たします。常染色体優性遺伝形式で、変異により低マグネシウム血症を伴う低カルシウム尿性高カルシウム血症を発症することがあります。
・CLCNKB遺伝子:
腎臓の塩素イオンチャネルClC-Kbをコードする遺伝子。ヘンレループ太い上行脚と遠位尿細管に発現し、塩化物イオンの再吸収に関与します。常染色体劣性遺伝形式で、変異によりバーター症候群III型を発症します。低マグネシウム血症、低カリウム血症、代謝性アルカローシスを特徴とします。
・CLDN16遺伝子:
タイトジャンクション蛋白クローディン16(パラセリン1)をコードする遺伝子。ヘンレループ太い上行脚に発現し、マグネシウムとカルシウムの傍細胞経路での再吸収に必須です。常染色体劣性遺伝形式で、変異により高カルシウム尿症と腎石灰化症を伴う家族性低マグネシウム血症(FHHNC)を発症します。
・CLDN19遺伝子:
タイトジャンクション蛋白クローディン19をコードする遺伝子。CLDN16と協調してマグネシウムとカルシウムの再吸収を担います。常染色体劣性遺伝形式で、変異によりCLDN16と同様のFHHNCに加えて、眼科的異常(黄斑変性、眼振、近視)を合併します。
・CNNM1遺伝子:
サイクリンM1をコードする遺伝子。細胞膜でのマグネシウム輸送を担うサイクリンMファミリーの一員です。
・CNNM2遺伝子:
サイクリンM2をコードする遺伝子。基底膜側でのマグネシウム排出に関与し、腎臓と脳に高発現します。常染色体優性遺伝形式で、変異により低マグネシウム血症に加えて、発作性運動失調や知的障害を伴うことがあります。
・CNNM4遺伝子:
サイクリンM4をコードする遺伝子。歯のエナメル質形成にも関与し、変異により低マグネシウム血症とエナメル質形成不全症(ジャルバ症候群)を発症します。
・EGF遺伝子:
上皮成長因子(EGF)をコードする遺伝子。腎臓と腸管でのマグネシウム輸送を制御します。常染色体劣性遺伝形式で、変異により腎性マグネシウム喪失を伴う低マグネシウム血症を発症します。
・FAM111A遺伝子:
トリプシン様セリンプロテアーゼをコードする遺伝子。細胞周期の制御と複製に関与します。常染色体優性遺伝形式で、変異により腎機能障害や低マグネシウム血症を伴う骨格異常症候群を発症することがあります。
・FXYD2遺伝子:
Na-K-ATPaseのγサブユニットをコードする遺伝子。遠位尿細管に発現し、ナトリウムとマグネシウムの再吸収を調節します。常染色体優性遺伝形式で、変異により単独性優性低マグネシウム血症を発症します。
・HNF1B遺伝子:
肝細胞核因子1βをコードする転写因子遺伝子。腎臓の発生と尿細管機能に重要です。常染色体優性遺伝形式で、変異により腎嚢胞と糖尿病症候群(RCAD)を発症し、低マグネシウム血症を合併します。
・KCNA1遺伝子:
電位依存性カリウムチャネルKv1.1をコードする遺伝子。神経系と腎臓に発現します。常染色体優性遺伝形式で、変異により発作性運動失調と低マグネシウム血症を伴うことがあります。
・KCNJ10遺伝子:
内向き整流性カリウムチャネルKir4.1をコードする遺伝子。遠位尿細管と脳に発現します。常染色体劣性遺伝形式で、変異によりEAST/SeSAME症候群(てんかん、運動失調、感音性難聴、尿細管障害、低マグネシウム血症)を発症します。
・MAGT1遺伝子:
ミトコンドリアのマグネシウムトランスポーターをコードする遺伝子。X連鎖遺伝形式で、変異によりX連鎖免疫不全症を伴う低マグネシウム血症(XMEN症候群)を発症します。EBウイルス感染症や慢性下痢を合併します。
・MMGT1遺伝子:
膜マグネシウムトランスポーター1をコードする遺伝子。細胞内のマグネシウム恒常性維持に関与します。
・NIPA2遺伝子:
マグネシウムトランスポーターをコードする遺伝子。腎臓と脳に発現します。
・PCBD1遺伝子:
プテリン-4α-カルビノールアミン脱水酵素をコードする遺伝子。プテリジン代謝に関与し、変異により低マグネシウム血症と肝疾患を伴うことがあります。
・SARS2遺伝子:
ミトコンドリアのセリルtRNA合成酵素をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、変異によりミトコンドリア機能異常を伴う低マグネシウム血症を発症します。発達遅滞や筋力低下を合併することがあります。
・SLC12A3遺伝子:
遠位尿細管のチアジド感受性Na-Cl共輸送体(NCCT)をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、変異によりギテルマン症候群を発症します。低マグネシウム血症、低カリウム血症、低カルシウム尿症、代謝性アルカローシスを特徴とする最も頻度の高い遺伝性尿細管機能異常症です。
・SLC41A2遺伝子:
マグネシウムトランスポーターSLC41A2をコードする遺伝子。細胞内のマグネシウム恒常性維持に関与します。
・SLC41A3遺伝子:
マグネシウムトランスポーターSLC41A3をコードする遺伝子。腎臓と消化管に発現します。
・TRPM6遺伝子:
陽イオンチャネルTRPM6をコードする遺伝子。腸管と腎臓遠位尿細管に発現し、マグネシウムの能動的吸収に必須です。常染色体劣性遺伝形式で、変異により低カルシウム血症を伴う原発性低マグネシウム血症を発症します。乳児期から重度の低マグネシウム血症と二次性低カルシウム血症によるけいれん発作を呈します。
・TRPM7遺伝子:
陽イオンチャネルTRPM7をコードする遺伝子。TRPM6と相互作用し、細胞のマグネシウム恒常性維持に関与します。
カバレッジ
カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。
≥99% at 20x(読み取り深度平均20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。
検体
血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)
※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。
検査の限界
- 詳しくはこちら
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すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。
低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。
この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。
※この検査パネルでは、23の原因遺伝子のみを対象としています。まだ同定されていない遺伝子に変異がある可能性や、非遺伝性の原因による低マグネシウム血症もあります。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。
結果が出るまでの期間
2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。
料金
税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)
よくあるご質問
- どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
- 持続的な低マグネシウム血症(血清マグネシウム値1.8mg/dL未満)がある方、筋肉のけいれんやテタニー、けいれん発作を繰り返す方、不整脈がある方におすすめします。特に低カリウム血症や低カルシウム血症を合併している場合、小児期からの発育不全がある場合、家族に同様の症状がある場合は遺伝性の可能性が高く、検査をご検討ください。
- 検査はどのように行いますか?
- 血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
- ギテルマン症候群とバーター症候群の違いは何ですか?
- どちらも遺伝性の尿細管機能異常症で、低マグネシウム血症と低カリウム血症を呈しますが、ギテルマン症候群では低カルシウム尿症を伴い、バーター症候群では高カルシウム尿症を伴うことが多いです。ギテルマン症候群は比較的軽症で成人期まで無症状のこともありますが、バーター症候群はより重症です。当検査により原因遺伝子を特定することで、正確な診断と適切な管理が可能になります。
- 家族も検査を受ける必要がありますか?
- 遺伝形式によって家族の発症リスクが異なります。常染色体優性遺伝の場合、患者さんのお子さんが発症するリスクは50%です。常染色体劣性遺伝の場合、兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。X連鎖遺伝の場合は男性に発症します。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
- 検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
- まだ同定されていない遺伝子に変異がある可能性や、非遺伝性の原因(薬剤性、栄養不良、消化管疾患など)による低マグネシウム血症の可能性があります。検査で病原性変異が検出されなくても、臨床症状と血液検査に基づいた診断と管理が引き続き重要です。
- 保険は適用されますか?
- 当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
- 結果はどのように説明されますか?
- 検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
- 子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
- 遺伝形式によって子どもへの影響が異なります。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症する確率は50%、常染色体劣性遺伝の場合は保因者同士のカップルで子どもが発症する確率は25%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
- 遺伝性低マグネシウム血症の治療はどのように行われますか?
- 主な治療はマグネシウムの補充療法です。経口マグネシウム製剤を定期的に服用します。重症例では静脈内投与が必要になることもあります。低カリウム血症や低カルシウム血症を合併している場合は、それぞれの補充も行います。腎結石や腎石灰化症を伴う場合は、十分な水分摂取や食事療法も重要です。原因遺伝子により、適切な管理方針が異なります。
- 予後はどうですか?
- 原因遺伝子や病型によって予後は大きく異なります。ギテルマン症候群など軽症型では、適切なマグネシウム補充により通常の生活が可能です。一方、高カルシウム尿症を伴う家族性低マグネシウム血症では進行性の腎機能障害をきたし、透析療法が必要となることもあります。早期診断と適切な管理により、長期予後を改善できる可能性があります。
- 他の医療機関での検査との違いは何ですか?
- 当院では臨床的に重要な23の原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。
プロフィール
この記事の筆者:仲田洋美(医師)
ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。
仲田洋美のプロフィールはこちら