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低血糖・ケトン体利用障害NGS遺伝子検査|ミネルバクリニック

低血糖・ケトン体利用障害NGS遺伝子検査|ミネルバクリニック

低血糖・ケトン体利用障害とは

低血糖・ケトン体利用障害は、ケトン体の分解・利用に関わる酵素の異常により、肝臓で作られたケトン体を脳や筋肉などの肝外組織でエネルギーとして利用できず、血中にケトン体が蓄積して重篤なケトアシドーシスを引き起こす先天性代謝異常症です。

ケトン体は、絶食や感染症などで糖が不足した際に、脂肪を分解して肝臓で産生されるエネルギー源です。通常、肝臓で作られたケトン体は血流に乗って全身の組織に運ばれ、特に脳や心臓、筋肉などでエネルギーとして利用されます。しかし、ケトン体利用障害では、この利用過程に必要な酵素が欠損しているため、ケトン体が組織で使われず血中に蓄積し、重篤なケトアシドーシスを引き起こします。

本疾患群には、β-ケトチオラーゼ欠損症(ACAT1遺伝子変異)とスクシニルCoA:3-ケト酸CoAトランスフェラーゼ(SCOT)欠損症(OXCT1遺伝子変異)が含まれます。また、ACAT2遺伝子もケトン体代謝に関与しています。これらは常染色体劣性遺伝形式をとり、日本を含む世界中で報告されていますが、比較的稀な疾患です。

症状と病態

低血糖・ケトン体利用障害の主な症状は、飢餓、発熱、感染などのストレス時に突然出現する重篤なケトアシドーシスです。非発作時は通常無症状ですが、発作時には生命を脅かす重篤な症状を呈することがあります。

主要症状

  • 重篤なケトアシドーシス発作(pH 6.8~7.2程度まで低下することがある)
  • 嘔吐、多呼吸(クスマウル呼吸)
  • 意識障害、嗜眠、昏睡
  • けいれん
  • 腹痛
  • 脱水
  • アセトン臭(甘酸っぱいリンゴの熟したような口臭)
  • 低血糖(特に新生児・乳児期)または正常~高血糖

発症のきっかけ

ケトアシドーシス発作は以下のような状況で誘発されます:

  • 絶食、空腹状態の長時間持続
  • 発熱、風邪などの感染症
  • 胃腸炎による嘔吐・下痢
  • 過度の運動
  • 外科手術などの身体的ストレス
  • 予防接種後

発症時期と重症度

発症時期は疾患により異なります:

  • β-ケトチオラーゼ欠損症:生後数か月から2歳頃に初発することが多いですが、新生児期や学童期に発症することもあります。日本の症例では、残存活性を持つ非典型例が多く見られます。
  • SCOT欠損症:約半数は新生児期に発症し、残り半数は生後数か月から2歳頃に発症します。典型例では持続性ケトーシス(発作間欠期でも尿ケトン体陽性)が見られることがありますが、非典型例ではこの特徴がないこともあります。

検査所見

  • 血液検査:著しい代謝性アシドーシス(pH 7.3未満)、高ケトン血症(血中ケトン体5,000 μmol/L以上)、アニオンギャップ開大、軽度の高アンモニア血症(200~400 μg/dL程度)
  • 尿検査:強いケトン尿陽性
  • 遊離脂肪酸とケトン体の比:ケトン体利用障害では、遊離脂肪酸に比してケトン体が著しく高く、遊離脂肪酸/ケトン体比が0.3以下となります
  • 尿有機酸分析:β-ケトチオラーゼ欠損症では2-メチル-3-ヒドロキシ酪酸とチグリルグリシンの排泄増加が特徴的(ただし残存活性を持つ例では検出されないことがある)
  • 血中アシルカルニチン分析:特異的な異常パターンを示します

合併症と予後

重篤なケトアシドーシス発作により、急性脳症を発症し、発達障害などの後遺症を残すことがあります。発作中に死亡するケースも報告されています。早期診断により、適切な予防的管理を行えば、発作を未然に防ぎ、正常な発達を維持することが可能です。

遺伝形式と原因遺伝子

低血糖・ケトン体利用障害は常染色体劣性遺伝形式をとる先天性代謝異常症です。両親がともに保因者(変異を1つ持つが発症しない)の場合、子どもが発症する確率は25%、保因者となる確率は50%、正常である確率は25%です。

原因遺伝子

ACAT1遺伝子(β-ケトチオラーゼ欠損症)

ACAT1遺伝子はミトコンドリアアセトアセチルCoAチオラーゼ(T2)をコードしています。この酵素は、ケトン体の利用およびイソロイシンの代謝に必須です。ACAT1遺伝子の変異により、ケトン体を肝外組織でエネルギーとして利用できなくなり、また分岐鎖アミノ酸の一つであるイソロイシンの中間代謝も障害されます。

日本では比較的多くの症例が報告されており、残存活性を持つ非典型的な症例が多いことが特徴です。典型例では尿有機酸分析で2-メチル-3-ヒドロキシ酪酸とチグリルグリシンが検出されますが、残存活性を持つ例では発作時以外に検出されないこともあります。

OXCT1遺伝子(SCOT欠損症)

OXCT1遺伝子はスクシニルCoA:3-ケト酸CoAトランスフェラーゼ(SCOT)をコードしています。この酵素は、ケトン体の肝外組織での利用に最も重要な酵素の一つで、スクシニルCoAからアセト酢酸へのCoA基の転移を触媒し、アセトアセチルCoAを生成します。

OXCT1遺伝子は染色体5p13に位置し、世界で30例以上、日本では4家系6症例が診断されています。典型例では持続性ケトーシス(発作間欠期でも尿ケトン体陽性が持続)が診断の手がかりとなりますが、すべての症例に見られる所見ではありません。

ACAT2遺伝子

ACAT2遺伝子はアセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ2をコードしており、主に細胞質やエンドプラズマ網に存在します。ACAT1とは異なる細胞内局在を持ち、コレステロールのエステル化やリポタンパク質の合成に関与するとともに、ケトン体代謝にも一部関与しています。

これらの遺伝子変異による疾患は、タンデムマススクリーニングによる新生児マススクリーニングの二次対象疾患となっており、早期発見により予防的管理が可能です。

ミネルバクリニックの低血糖・ケトン体利用障害遺伝子パネル検査の特徴

「低血糖・ケトン体利用障害 NGSパネル検査」とは、現在低血糖・ケトン体利用障害の原因として報告されている3つの遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。

従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。

何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、低血糖・ケトン体利用障害に関連する3遺伝子を一度に調べられる「低血糖・ケトン体利用障害 NGSパネル検査」を採用しています。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.費用がリーズナブル

一般的な医療機関で低血糖・ケトン体利用障害の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。

当院では、低血糖・ケトン体利用障害に関係するとされる3つの遺伝子を一度に調べられる「低血糖・ケトン体利用障害 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)

2.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行える低血糖・ケトン体利用障害の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。

当院で行う「低血糖・ケトン体利用障害 NGSパネル検査」の場合、3つの遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。

3.一気にまとめてできる

臨床症状から低血糖・ケトン体利用障害を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。

当院で行う「低血糖・ケトン体利用障害 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な3つの原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。

オプション

塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)

検査内容

「低血糖・ケトン体利用障害 NGSパネル検査」では、低血糖・ケトン体利用障害に関係するとされる3種類の遺伝子(ACAT1、ACAT2、OXCT1)をまとめて検査します。

「低血糖・ケトン体利用障害 NGSパネル検査」は、低血糖・ケトン体利用障害の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。

どんな人が受けたらいいの?

【低血糖・ケトン体利用障害の個人歴または家族歴のある方】に
「低血糖・ケトン体利用障害 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。

この検査は以下のような方に適しています:
・反復性の重篤なケトアシドーシス発作がある方
・飢餓、発熱、感染時に嘔吐、多呼吸、意識障害を伴うケトアシドーシス発作を起こしたことがある方
・乳児期または幼児期に原因不明のケトアシドーシスを起こしたことがある方
・低血糖時にケトン体が著しく高値を示す方
・持続性ケトーシス(発作間欠期でも尿ケトン体陽性)がある方
・新生児マススクリーニングで異常を指摘された方
・尿有機酸分析で2-メチル-3-ヒドロキシ酪酸、チグリルグリシンの排泄増加を認める方
・β-ケトチオラーゼ欠損症またはSCOT欠損症の家族歴がある方
・両親が血族結婚である方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方

このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

遺伝子検査により原因が判明すると、低血糖・ケトン体利用障害の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切な予防的管理、緊急時対応、生活指導を行うことができます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・他の代謝性疾患や感染症との鑑別
・ケトアシドーシス発作の予防戦略の確立
・空腹時間の適切な管理指導
・感染症や発熱時の早期ブドウ糖補給の重要性の理解
・緊急時の適切な治療方針の決定(大量輸液、ブドウ糖投与、電解質補正)
・カルニチン補充療法の適応判断
・タンパク質制限食(特にイソロイシン制限)の必要性の評価
・長期的な予後予測と発達フォロー計画
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供

患者さんで病原性変異が同定された場合、常染色体劣性遺伝のため、兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。また、保因者同士のカップルでは子どもが発症するリスクが25%あるため、遺伝カウンセリングと家族計画の支援が重要です。

対象遺伝子

詳しくはこちら

ACAT1, ACAT2, OXCT1 ( 3遺伝子 )

各遺伝子の詳細:
・ACAT1遺伝子:
ミトコンドリアアセトアセチルCoAチオラーゼ(T2)をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、β-ケトチオラーゼ欠損症の原因となります。この酵素はケトン体の肝外組織での利用と、分岐鎖アミノ酸のイソロイシンの中間代謝の両方に関与しています。生後数か月から2歳頃に、飢餓、発熱、感染などのストレス時に重篤なケトアシドーシスで発症することが多いです。日本では残存活性を持つ非典型的な症例が多く見られます。指定難病322に指定されています。

・ACAT2遺伝子:
アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ2をコードする遺伝子。主に細胞質やエンドプラズマ網に存在し、コレステロールのエステル化、リポタンパク質の合成に関与するとともに、ケトン体代謝にも部分的に関与しています。ACAT1とは異なる細胞内局在により、飢餓状態と食後状態での代謝制御に寄与しています。

・OXCT1遺伝子:
スクシニルCoA:3-ケト酸CoAトランスフェラーゼ(SCOT)をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、SCOT欠損症の原因となります。染色体5p13に位置し、ケトン体の肝外組織での利用に最も重要な酵素の一つです。スクシニルCoAからアセト酢酸へのCoA基の転移を触媒します。約半数は新生児期にケトアシドーシスで発症し、残り半数は生後数か月から2歳頃に発症します。典型例では持続性ケトーシス(発作間欠期でも尿ケトン体陽性)が見られることがあります。小児慢性特定疾病に指定されています。

カバレッジ

カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。

≥99% at 20x(読み取り深度平均20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
 検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

検査の限界

詳しくはこちら

すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。

低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。

この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。

※この検査パネルでは、3つの原因遺伝子のみを対象としています。日本のβ-ケトチオラーゼ欠損症では残存活性を持つ非典型例が多く、尿有機酸分析やアシルカルニチン分析で典型的な所見が得られないこともあります。また、SCOT欠損症では遺伝子上の欠失の可能性もあり、ゲノムレベルでの診断率は80%程度とされています。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。臨床症状と生化学検査所見に基づいた総合的な診断が重要です。

結果が出るまでの期間

2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。

料金

税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
飢餓、発熱、感染時に突然の嘔吐、多呼吸、意識障害を伴う重篤なケトアシドーシス発作を起こしたことがある方、乳幼児期に原因不明のケトアシドーシスを経験した方におすすめします。特に、低血糖時にケトン体が著しく高値を示す場合や、発作間欠期でも尿ケトン体陽性が持続する場合は、本疾患の可能性が高くなります。また、家族に同様の症状がある場合や、新生児マススクリーニングで異常を指摘された場合も検査をご検討ください。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
β-ケトチオラーゼ欠損症とSCOT欠損症の違いは何ですか?
両疾患ともケトン体利用障害ですが、原因酵素と一部の特徴が異なります。β-ケトチオラーゼ欠損症(ACAT1遺伝子変異)では、ケトン体利用障害に加えてイソロイシン代謝も障害されるため、尿有機酸分析で2-メチル-3-ヒドロキシ酪酸とチグリルグリシンが検出されることが特徴です。SCOT欠損症(OXCT1遺伝子変異)では、典型例で持続性ケトーシス(発作間欠期でも尿ケトン体陽性)が見られることがあります。当検査により原因遺伝子を特定することで、より正確な診断と管理が可能になります。
家族も検査を受ける必要がありますか?
常染色体劣性遺伝のため、患者さんのご両親は保因者であり、兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。また、患者さんが将来結婚される場合、パートナーが保因者であれば子どもが発症するリスクは25%となります。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。特に血族結婚の場合は保因者頻度が高くなるため、検査が推奨されます。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
日本のβ-ケトチオラーゼ欠損症では残存活性を持つ非典型例が多く、また、SCOT欠損症では遺伝子上の欠失により診断率が約80%とされています。検査で病原性変異が検出されなくても、臨床症状と生化学検査所見から疾患が強く疑われる場合は、酵素活性測定などの追加検査が必要です。また、現在知られていない新規の原因遺伝子の可能性もあります。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、予防的管理方法などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
常染色体劣性遺伝のため、患者さん同士が結婚された場合は子どもが必ず発症します。患者さんと保因者の結婚では子どもが発症する確率は50%、保因者となる確率は50%です。保因者同士の結婚では子どもが発症する確率は25%、保因者となる確率は50%、正常である確率は25%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
低血糖・ケトン体利用障害の治療はどのように行われますか?
現在のところ根本的な治療法はありませんが、適切な予防的管理により発作を未然に防ぐことが最も重要です。空腹時間を長くしない食事管理、発熱や嘔吐などのストレス時の早期ブドウ糖補給、カルニチン補充療法、イソロイシン制限のための蛋白制限食(β-ケトチオラーゼ欠損症の場合)などが行われます。発作時には大量の輸液とブドウ糖投与、電解質補正などの救急治療が必要です。適切な管理により、正常な発達を維持することが可能です。
予後はどうですか?
早期診断により適切な予防的管理を行えば、ケトアシドーシス発作を未然に防ぎ、正常な発達を維持できます。発作の後遺症として発達の遅れを来して成人となることもありますが、適切な管理下では発作頻度は減少し、成人期以降は食事制限も不要と考えられています。ただし、カルニチン補充療法の継続は望ましいとされています。発作時に基底核病変が生じ、重篤な後遺症を残す例も海外では報告されているため、早期発見と適切な管理が極めて重要です。
新生児マススクリーニングとの関係は?
β-ケトチオラーゼ欠損症とSCOT欠損症は、タンデムマススクリーニングによる新生児マススクリーニングの二次対象疾患です。症状が出る前に発見されることがあり、早期発見により予防的管理を開始できるという大きなメリットがあります。マススクリーニングで異常を指摘された場合は、遺伝子検査により診断を確定することが重要です。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では臨床的に重要な3つの原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。


プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

仲田洋美のプロフィールはこちら