低血糖症・脂肪酸β酸化異常症遺伝子検査パネル(NGS)|ミネルバクリニック
脂肪酸β酸化異常症とは
脂肪酸β酸化異常症(Fatty Acid Oxidation Disorders: FAODs)は、ミトコンドリア内で脂肪酸をエネルギーに変換するβ酸化経路の酵素が欠損・欠乏することで発症する先天性代謝異常症の総称です。空腹時や運動時、発熱時など、体がエネルギーを必要とする際に重篤な低血糖を引き起こします。
通常、人は食事から得た糖質をエネルギー源として利用しますが、空腹時や絶食時には体内の脂肪を分解してエネルギーを作り出します。脂肪酸β酸化異常症の患者さんでは、この脂肪からエネルギーを作り出す過程(β酸化)に障害があるため、エネルギー不足に陥り、低ケトン性低血糖(ケトン体が産生されない低血糖)や代謝性アシドーシスなどの重篤な症状を呈します。
脂肪酸β酸化異常症は、日本では新生児マススクリーニング(タンデムマス法)の対象疾患となっており、早期発見・早期治療により予後を大幅に改善できます。MCAD欠損症は最も頻度が高く、約1万~2万人に1人の割合で発症します。VLCAD欠損症やLCHAD欠損症はより稀で、約10万人に1人程度と推定されています。
症状と病態
脂肪酸β酸化異常症の症状は、原因酵素の種類や欠損の程度によって異なりますが、共通する特徴は空腹時や発熱時、運動時などのエネルギー需要が高まる状況で症状が出現することです。
主要症状
- 低ケトン性低血糖(ケトン体が産生されない低血糖)
- 代謝性アシドーシス(血液の酸性化)
- 肝腫大・肝機能障害
- 筋力低下・筋緊張低下
- 嘔吐・哺乳不良
- 意識障害・けいれん
- 急性脳症様症状(ライ様症候群)
低血糖の特徴
脂肪酸β酸化異常症における低血糖は「低ケトン性低血糖」と呼ばれ、通常の低血糖とは異なる特徴があります。健常者が絶食すると脂肪酸が分解されてケトン体が産生され、脳のエネルギー源として利用されます。しかし、脂肪酸β酸化異常症患者では脂肪酸の分解ができないため、ケトン体が産生されず、低血糖にもかかわらずケトン体が検出されないという特徴的な所見を示します。
低血糖症状には以下のようなものがあります:
- 異常な空腹感・不機嫌
- 体がだるい・無気力
- 動悸・冷や汗
- ふるえ・筋緊張低下
- 意識がもうろうとする
- けいれん・昏睡
疾患別の特徴
MCAD(中鎖アシルCoA脱水素酵素)欠損症
最も頻度が高い脂肪酸β酸化異常症で、3~4歳以下の小児が感染や空腹を契機に急性脳症様・ライ様症候群様の症状を呈します。発症までは無症状で健常に見えることが多く、突然の発症により重篤化しやすいため、乳幼児突然死症候群(SIDS)の一因としても知られています。新生児マススクリーニングで早期発見できれば、適切な食事管理により発症をほぼ完全に予防できます。
VLCAD(極長鎖アシルCoA脱水素酵素)欠損症
早期発症型と遅発型の2つの病型があります。早期発症型は生後数日~数週間で発症し、心筋症(肥大型または拡張型)、不整脈、心嚢液貯留などの心臓症状を呈し、筋緊張低下、肝腫大、間欠的な低血糖も認めます。遅発型は幼児期以降に発症し、低ケトン性低血糖や運動時の横紋筋融解症(筋肉の破壊)、ミオグロビン尿(褐色尿)を呈することがあります。
LCHAD(長鎖3-ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素)欠損症
MCAD欠損症と類似の症状を呈しますが、心筋症、末梢神経障害、肝機能異常、網膜変性などを伴うことがあります。運動などの激しい活動をすると横紋筋融解症を起こし、ミオグロビン尿(褐色または血尿様の尿)が出現することがあります。特徴的なこととして、LCHAD欠損症の胎児を妊娠している母親は、妊娠中にHELLP症候群(溶血、肝酵素上昇、血小板減少)を発症することがあります。
進行と予後
新生児マススクリーニングで早期発見され、適切な管理が行われれば、多くの患者さんは発症を予防でき、正常な発達・成長が期待できます。しかし、診断が遅れて急性発症した場合は死亡率が高く、救命できても神経学的後遺症を残すことがあります。長期管理としては、空腹回避、低脂肪高炭水化物食、L-カルニチン補充、発熱時の早期対応などが重要です。
遺伝形式と原因遺伝子
脂肪酸β酸化異常症は、すべて常染色体劣性(潜性)遺伝形式をとります。つまり、両親がそれぞれ1つずつ変異遺伝子を持つ保因者(キャリア)である場合、子どもが発症する確率は25%、保因者となる確率は50%、正常遺伝子のみを受け継ぐ確率は25%です。
β酸化経路と原因遺伝子
脂肪酸β酸化は、脂肪酸の鎖長に応じて複数の酵素が順番に働く複雑な代謝経路です。以下のステップで進行します:
1. 脂肪酸の活性化と輸送:
細胞質で脂肪酸がCoAと結合してアシルCoAとなり、カルニチンと結合してミトコンドリア内に輸送されます(CPT1、SLC25A20、CPT2が関与)。カルニチン欠乏症(SLC22A5)も輸送障害を引き起こします。
2. β酸化反応:
ミトコンドリア内で、脂肪酸の鎖長に応じた脱水素酵素が働きます。
・極長鎖脂肪酸(C14-C20)→ ACADVL(VLCAD)
・中鎖脂肪酸(C4-C10)→ ACADM(MCAD)
・短鎖脂肪酸(C4-C6)→ ACADS(SCAD)
・分岐鎖脂肪酸 → ACADSB
3. その後の反応:
・HADHA、HADHB(三頭酵素の一部)、HSD17B10が長鎖脂肪酸の代謝に関与
・電子伝達系への電子供給:ETFA、ETFB、ETFDH
主要な原因遺伝子
- ACADM遺伝子:中鎖アシルCoA脱水素酵素(MCAD)をコードし、最も頻度の高いMCAD欠損症の原因となります
- ACADVL遺伝子:極長鎖アシルCoA脱水素酵素(VLCAD)をコードし、VLCAD欠損症の原因となります
- HADHA・HADHB遺伝子:三頭酵素のα・β鎖をコードし、LCHAD欠損症や三頭酵素欠損症の原因となります
- CPT1A、CPT2遺伝子:カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼをコードし、長鎖脂肪酸のミトコンドリア内輸送に関与します
- SLC22A5遺伝子:カルニチントランスポーターをコードし、全身性カルニチン欠乏症の原因となります
- ETFA、ETFB、ETFDH遺伝子:電子伝達フラボプロテインをコードし、グルタル酸血症II型(多発アシルCoA脱水素酵素欠損症)の原因となります
当検査パネルでは、これらの臨床的に重要な14遺伝子を対象としています。これにより、脂肪酸β酸化異常症の主要な原因を効率的にスクリーニングすることが可能です。
ミネルバクリニックの低血糖症・脂肪酸β酸化異常症遺伝子パネル検査の特徴
「低血糖症・脂肪酸β酸化異常症 NGSパネル検査」とは、現在脂肪酸β酸化異常症の原因として報告されている14の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。
従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。
何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、脂肪酸β酸化異常症に関連する14遺伝子を一度に調べられる「低血糖症・脂肪酸β酸化異常症 NGSパネル検査」を採用しています。
一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。
1.費用がリーズナブル
一般的な医療機関で脂肪酸β酸化異常症の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。
当院では、脂肪酸β酸化異常症に関係するとされる14の遺伝子を一度に調べられる「低血糖症・脂肪酸β酸化異常症 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)
2.結果が出るまでがはやい
一般的な医療機関で行える脂肪酸β酸化異常症の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。
当院で行う「低血糖症・脂肪酸β酸化異常症 NGSパネル検査」の場合、14の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。
3.一気にまとめてできる
臨床症状から脂肪酸β酸化異常症を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。
当院で行う「低血糖症・脂肪酸β酸化異常症 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な14の原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。
オプション
塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)
検査内容
「低血糖症・脂肪酸β酸化異常症 NGSパネル検査」では、脂肪酸β酸化異常症に関係するとされる14種類の遺伝子(ACADM、ACADS、ACADSB、ACADVL、CPT1A、CPT2、ETFA、ETFB、ETFDH、HADHA、HADHB、HSD17B10、SLC22A5、SLC25A20)をまとめて検査します。
「低血糖症・脂肪酸β酸化異常症 NGSパネル検査」は、脂肪酸β酸化異常症の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。
どんな人が受けたらいいの?
【脂肪酸β酸化異常症の個人歴または家族歴のある方】に
「低血糖症・脂肪酸β酸化異常症 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。
この検査は以下のような方に適しています:
・繰り返す低血糖発作(特に空腹時、発熱時、運動時)のある方
・低ケトン性低血糖と診断された方
・新生児マススクリーニングで精密検査が必要と言われた方
・原因不明の肝腫大・肝機能障害がある方
・心筋症(特に乳児期発症)のある方
・運動時の筋力低下・横紋筋融解症・ミオグロビン尿がある方
・原因不明の意識障害・けいれん・急性脳症様症状の既往がある方
・兄弟姉妹に脂肪酸β酸化異常症の方がいる方
・妊娠中にHELLP症候群を発症した方(胎児の検査として)
・乳幼児突然死症候群(SIDS)の家族歴がある方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方
このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。
検査で得られる患者さんの潜在的利益は?
遺伝子検査により原因が判明すると、脂肪酸β酸化異常症の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切な食事療法、空腹回避、発熱時の早期対応、L-カルニチン補充などを行うことができます。
遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・適切な食事療法(低脂肪高炭水化物食、空腹回避)の開始
・長鎖脂肪酸代謝異常症での中鎖脂肪酸(MCT)の利用
・L-カルニチン補充療法の適応判断
・発熱時・感染時の早期ブドウ糖補給による発作予防
・心筋症・肝機能障害のリスク評価と早期発見
・運動制限の必要性の判断
・新生児期・乳児期の突然死リスクの低減
・神経学的後遺症の予防
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供
患者さんで病原性変異が同定された場合、常染色体劣性遺伝のため兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。
対象遺伝子
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ACADM, ACADS, ACADSB, ACADVL, CPT1A, CPT2, ETFA, ETFB, ETFDH, HADHA, HADHB, HSD17B10, SLC22A5, SLC25A20 ( 14遺伝子 )
各遺伝子の詳細:
・ACADM遺伝子(中鎖アシルCoA脱水素酵素):
中鎖脂肪酸(C4-C10)の代謝に関与する酵素をコードします。この遺伝子の変異はMCAD欠損症を引き起こし、脂肪酸β酸化異常症の中で最も頻度が高い疾患です(約1万~2万人に1人)。3~4歳以下の小児が感染や空腹を契機に急性脳症様症状を呈し、適切な治療がなければ死亡率が高く、乳幼児突然死症候群(SIDS)の一因としても知られています。新生児マススクリーニングで早期発見できれば、適切な食事管理により発症をほぼ完全に予防できます。
・ACADS遺伝子(短鎖アシルCoA脱水素酵素):
短鎖脂肪酸(C4-C6)の代謝に関与する酵素をコードします。SCAD欠損症は軽症型が多く、臨床的意義が不明確な場合もありますが、一部では低血糖や発達遅滞を呈することがあります。
・ACADSB遺伝子(短/分岐鎖アシルCoA脱水素酵素):
短鎖および分岐鎖脂肪酸の代謝に関与する酵素をコードします。
・ACADVL遺伝子(極長鎖アシルCoA脱水素酵素):
極長鎖脂肪酸(C14-C20)の代謝の最初のステップを触媒する酵素をコードします。VLCAD欠損症は約10万人に1人程度の頻度で、早期発症型と遅発型の2つの病型があります。早期発症型は生後数週間以内に心筋症、不整脈、筋緊張低下、肝腫大、低血糖を呈し、生命を脅かす重篤な疾患です。遅発型は幼児期以降に低ケトン性低血糖や運動時の横紋筋融解症を呈します。
・CPT1A遺伝子(カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ1A):
長鎖脂肪酸をカルニチンと結合させてミトコンドリア内に輸送する酵素をコードします。CPT1欠損症は肝型の低ケトン性低血糖を呈し、心筋症や筋症状は稀です。
・CPT2遺伝子(カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ2):
ミトコンドリア内でカルニチンから長鎖脂肪酸を再び遊離させる酵素をコードします。CPT2欠損症には新生児型、乳児型、筋型の3つの病型があり、筋型は成人発症で運動時の横紋筋融解症を呈します。
・ETFA遺伝子(電子伝達フラボプロテインα鎖):
β酸化で生成された電子を電子伝達系に渡す電子伝達フラボプロテインのα鎖をコードします。ETFA、ETFB、ETFDHのいずれかの変異はグルタル酸血症II型(多発アシルCoA脱水素酵素欠損症)を引き起こし、複数のβ酸化酵素が同時に機能しなくなります。重症型では新生児期に低血糖、代謝性アシドーシス、高アンモニア血症を呈し、リボフラビン(ビタミンB2)が有効な場合があります。
・ETFB遺伝子(電子伝達フラボプロテインβ鎖):
電子伝達フラボプロテインのβ鎖をコードします。ETFAと同様にグルタル酸血症II型の原因となります。
・ETFDH遺伝子(電子伝達フラボプロテイン脱水素酵素):
電子伝達フラボプロテインから電子伝達系への電子の受け渡しを行う酵素をコードします。グルタル酸血症II型の原因遺伝子です。
・HADHA遺伝子(三頭酵素α鎖/長鎖3-ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素):
ミトコンドリア三頭酵素のα鎖をコードし、長鎖3-ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素(LCHAD)活性を持ちます。HADHA遺伝子の変異はLCHAD欠損症または三頭酵素欠損症を引き起こします。LCHAD欠損症はMCAD欠損症に次いで2番目に多い脂肪酸β酸化異常症で、低ケトン性低血糖に加えて心筋症、末梢神経障害、網膜変性、横紋筋融解症を呈します。特徴的なことに、LCHAD欠損症の胎児を妊娠している母親は妊娠中にHELLP症候群を発症することがあります。
・HADHB遺伝子(三頭酵素β鎖):
ミトコンドリア三頭酵素のβ鎖をコードします。HADHBの変異は三頭酵素欠損症を引き起こし、LCHAD欠損症と類似の症状に加えて重度の心筋症を呈します。
・HSD17B10遺伝子(17β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素10型):
三頭酵素の一部として長鎖脂肪酸代謝に関与する酵素をコードします。この遺伝子はX染色体上に存在し、X連鎖遺伝形式をとります。
・SLC22A5遺伝子(カルニチントランスポーター):
細胞膜を通してカルニチンを輸送するトランスポーターをコードします。この遺伝子の変異は全身性カルニチン欠乏症を引き起こし、低ケトン性低血糖、心筋症、筋力低下を呈します。L-カルニチン補充により症状が劇的に改善します。
・SLC25A20遺伝子(カルニチン-アシルカルニチントランスロカーゼ):
ミトコンドリア内膜でアシルカルニチンとカルニチンの交換輸送を行うトランスポーターをコードします。CACT欠損症は重症型では新生児期に心筋症、不整脈、低血糖を呈し、生命を脅かす疾患です。
カバレッジ
カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。
≥99% at 20x(読み取り深度平均20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。
検体
血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)
※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。
検査の限界
- 詳しくはこちら
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すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。
低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。
この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。
※この検査パネルでは、14の原因遺伝子のみを対象としています。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。臨床症状や血液検査(アシルカルニチン分析など)と合わせた総合的な診断が重要です。
結果が出るまでの期間
2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。
料金
税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)
よくあるご質問
- どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
- 繰り返す低血糖発作、特に空腹時・発熱時・運動時に症状が出る方におすすめします。低ケトン性低血糖(ケトン体が産生されない低血糖)と診断された場合や、原因不明の肝腫大・心筋症・横紋筋融解症がある場合も検査をご検討ください。また、新生児マススクリーニングで精密検査が必要と言われた方や、兄弟姉妹に脂肪酸β酸化異常症の方がいる場合も重要です。
- 検査はどのように行いますか?
- 血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
- 新生児マススクリーニングとの違いは何ですか?
- 新生児マススクリーニング(タンデムマス法)は血液中のアシルカルニチンを測定する生化学的検査で、異常値を示した場合に精密検査として遺伝子検査が推奨されます。当検査は遺伝子を直接調べることで確定診断が可能で、家族の保因者診断や出生前診断にも利用できます。
- 家族も検査を受ける必要がありますか?
- 脂肪酸β酸化異常症は常染色体劣性遺伝のため、患者さんの兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。ご両親は保因者である可能性が高く、将来子どもを持つ予定がある場合はパートナーの検査も重要です。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
- 検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
- この検査パネルでは主要な14遺伝子を対象としていますが、すべての原因遺伝子が含まれているわけではありません。検査で病原性変異が検出されなくても、臨床症状や血液検査(アシルカルニチン分析、尿中有機酸分析など)と合わせた総合的な診断が重要です。症状がある場合は引き続き適切な管理が必要です。
- 保険は適用されますか?
- 当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
- 結果はどのように説明されますか?
- 検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
- 子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
- 常染色体劣性遺伝のため、保因者同士のカップルで子どもが発症する確率は25%、保因者となる確率は50%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
- 脂肪酸β酸化異常症の治療はどのように行われますか?
- 治療の基本は空腹回避と適切な食事療法です。低脂肪高炭水化物食、頻回の食事(特に乳幼児)、夜間の空腹時間を8~10時間以内にすること、発熱時の早期ブドウ糖補給が重要です。長鎖脂肪酸代謝異常症では中鎖脂肪酸(MCT)の利用、L-カルニチン補充が有効な場合があります。適切な管理により、多くの患者さんは正常な発達・成長が可能です。
- 予後はどうですか?
- 新生児マススクリーニングで早期発見され、適切な管理が行われれば、多くの患者さんは発症を予防でき、正常な発達・成長が期待できます。しかし、診断が遅れて急性発症した場合は死亡率が高く、救命できても神経学的後遺症を残すことがあります。早期診断・早期治療が予後改善の鍵となります。
- MCT(中鎖脂肪酸)とは何ですか?
- MCT(Medium Chain Triglyceride:中鎖脂肪酸)は炭素数8~10の脂肪酸で、VLCAD欠損症やLCHAD欠損症などの長鎖脂肪酸代謝異常症では、長鎖脂肪酸を制限する代わりにエネルギー源として利用できます。ただし、MCAD欠損症やグルタル酸血症II型では中鎖脂肪酸の代謝に障害があるため、MCTは禁忌です。
- 他の医療機関での検査との違いは何ですか?
- 当院では臨床的に重要な14の原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。
プロフィール
この記事の筆者:仲田洋美(医師)
ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。
仲田洋美のプロフィールはこちら