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高インスリン血症遺伝子検査(NGSパネル)|ミネルバクリニック

高インスリン血症遺伝子検査(NGSパネル)|ミネルバクリニック

先天性高インスリン血症とは

先天性高インスリン血症(Congenital Hyperinsulinism)は、インスリンの過剰分泌により難治性の低血糖をきたす遺伝性疾患です。新生児や乳児期に多く発症し、最初の症状は生後1ヶ月以内に現れることが半数以上を占めます。主な症状として易刺激性、哺乳困難、無気力などが認められます。

インスリンは本来、血糖値を下げるホルモンですが、先天性高インスリン血症では血糖値が低い状態でもインスリンが過剰に分泌され続けるため、重度の低血糖が引き起こされます。低血糖が持続すると、けいれんや意識障害だけでなく、脳の発達に悪影響を及ぼし、発達遅滞、けいれん、脳性麻痺などの神経後遺症を残す可能性があるため、早期診断と適切な管理が極めて重要です。

先天性高インスリン血症には、3~4ヶ月を超えて症状が続く持続性のものと、生後3~4週以内に治癒する一過性のものがあります。持続性のものは遺伝子異常によることが多く、特に膵β細胞上でインスリン分泌の調節を行うATP依存性カリウムチャネル(KATPチャネル)を構成するABCC8遺伝子とKCNJ11遺伝子の異常が約半数を占めます。

症状と病態

先天性高インスリン血症では、血糖値が低い状態でも不適切にインスリンが分泌され続けるため、症候性の低血糖症をきたします。低血糖の症状は、まず体が血糖値を上げようとする反応による症状として現れます。

主要症状

  • 発汗
  • 脈拍数の増加
  • 易刺激性
  • 哺乳困難
  • 無気力
  • 頭痛
  • 目のかすみ
  • 集中力の低下
  • 生あくび

重篤な症状

低血糖を放置しておくと、脳がエネルギー不足になり、以下のような重篤な症状が現れます:

  • けいれん
  • 意識消失
  • 発達遅滞
  • 脳性麻痺
  • 神経後遺症

遺伝形式と予後

持続性の先天性高インスリン血症は遺伝子異常によるものが多く、特に誘引なく発症します。一方、一過性のものは低出生体重児や出生前後で何らかのトラブルがあった児に多く、非遺伝性のものが大部分です。

適切に治療を行わないと神経後遺症を残す可能性があるため、早期診断と継続的な管理が非常に重要です。治療により症状の管理は可能ですが、完治は難しく、長期的な症状管理を通じて合併症を予防することが治療の目標となります。

ミネルバクリニックの高インスリン血症遺伝子パネル検査の特徴

「高インスリン血症NGSパネル検査」とは、現在先天性高インスリン血症および関連する症候群の原因として報告されている28の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。

従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。

何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、高インスリン血症に関連する遺伝子を一度に調べられる「高インスリン血症NGSパネル検査」を採用しています。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.費用がリーズナブル

一般的な医療機関で先天性高インスリン血症の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。

当院では、高インスリン血症に関係するとされる28の遺伝子を一度に調べられる「高インスリン血症NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)

2.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行える先天性高インスリン血症の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。

当院で行う「高インスリン血症NGSパネル検査」の場合、28の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。

3.一気にまとめてできる

臨床症状から先天性高インスリン血症を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。

当院で行う「高インスリン血症NGSパネル検査」ならば、最も頻度の高いABCC8遺伝子やKCNJ11遺伝子を含む28の関連遺伝子を同時に検査できるという利点があります。また、Kabuki症候群や先天性糖鎖合成異常症など、高インスリン血症を特徴とする症候群に関連する遺伝子も含まれています。

オプション

塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)

検査内容

「高インスリン血症NGSパネル検査」では、先天性高インスリン血症に関係するとされる28種類の遺伝子をまとめて検査します。これらには最も頻度の高いABCC8遺伝子やKCNJ11遺伝子をはじめ、その他の稀な遺伝子異常や、高インスリン血症を特徴とする症候群(Kabuki症候群、先天性糖鎖合成異常症など)に関連する遺伝子も含まれています。

「高インスリン血症NGSパネル検査」は、先天性高インスリン血症の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。

どんな人が受けたらいいの?

【先天性高インスリン血症の個人歴または家族歴のある方】に
「高インスリン血症NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。

この検査は以下のような方に適しています:
・新生児期、乳児期に頻回の低血糖エピソードがある方
・生後1ヶ月以内に低血糖症状を経験された方
・易刺激性、哺乳困難、無気力などの症状がある乳児
・けいれんや意識障害を伴う低血糖がある方
・血糖値が低い状態でもインスリン値が高い方
・ジアゾキシドなどの薬剤に反応しない難治性低血糖の方
・高インスリン血症の家族歴がある方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方

このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

遺伝子検査により原因が判明すると、先天性高インスリン血症の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、予防的治療や生活習慣の改善、定期的なモニタリングを行うことができます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・最適な治療法の選択(ジアゾキシド、オクトレオチド等)
・局所性病変と全身性病変の鑑別
・外科的治療の適応判断
・神経後遺症の予防
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供

患者さんで病原性変異が同定された場合、遺伝形式によって家族へのリスクは異なります。ABCC8遺伝子やKCNJ11遺伝子の場合、劣性遺伝形式をとることが多く、兄弟姉妹が同じ疾患を発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。

対象遺伝子

詳しくはこちら

ABCC8, AKT2, AKT3, ALG3, ALG6, CACNA1D, EIF2S3, FOXA2, GCK, GLUD1, HADH, HK1, HNF1A, HNF4A, INS, INSR, KCNJ11, KCNQ1, KDM6A, KMT2D, MPI, PDX1, PGM1, PMM2, SLC16A1, TRMT10A, UCP2, USH1C ( 28遺伝子 )

主要遺伝子の詳細:
・ABCC8遺伝子:
ATP依存性カリウムチャネル(KATPチャネル)のサルフォニル尿素受容体1(SUR1)サブユニットをコードする遺伝子。膵β細胞においてインスリン分泌の調節に重要な役割を果たします。この遺伝子の変異は先天性高インスリン血症の最も一般的な原因であり、劣性遺伝または優性遺伝のいずれの形式もとります。劣性型は重症でジアゾキシド不応性のことが多く、優性型は軽症から重症まで幅広い症状を示します。

・KCNJ11遺伝子:
ATP依存性カリウムチャネル(KATPチャネル)のKir6.2サブユニットをコードする遺伝子。ABCC8と共にKATPチャネルを構成し、血糖値に応じたインスリン分泌を調節します。この遺伝子の変異もまた先天性高インスリン血症の頻度の高い原因であり、劣性遺伝または優性遺伝の形式をとります。

・GLUD1遺伝子:
グルタミン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子。この遺伝子の変異により高アンモニア血症を合併する高インスリン血症が引き起こされます。特にタンパク質の豊富な食事の後に低血糖が生じやすいという特徴があります。

・GCK遺伝子:
グルコキナーゼをコードする遺伝子。グルコースセンサーとして機能し、血糖値に応じたインスリン分泌の調節に関与します。

・HADH遺伝子:
短鎖3-ヒドロキシアシルCoAデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子。脂肪酸酸化に関与し、この遺伝子の変異は軽度から中等度の高インスリン血症を引き起こします。

その他の遺伝子:
このパネルには、上記の主要遺伝子に加えて、より稀な原因遺伝子や、Kabuki症候群(KMT2D、KDM6A)、先天性糖鎖合成異常症(ALG3、ALG6、MPI、PGM1、PMM2)など、高インスリン血症を特徴とする症候群に関連する遺伝子も含まれています。

カバレッジ

カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。

≥99% at 20x(読み取り深度20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
 検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

検査の限界

詳しくはこちら

すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。

低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。

この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。

※持続性の先天性高インスリン血症のうち、遺伝子異常が同定されるのはおよそ50%であり、未知の遺伝子異常によるものが存在すると考えられています。このパネル検査で病原性変異が検出されなくても、先天性高インスリン血症を完全に除外することはできません。

結果が出るまでの期間

2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。

料金

税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
新生児期、乳児期に頻回の低血糖エピソードがある方、生後1ヶ月以内に低血糖症状を経験された方、易刺激性、哺乳困難、無気力などの症状がある乳児におすすめします。また、血糖値が低い状態でもインスリン値が高い方や、高インスリン血症の家族歴がある場合も検査をご検討ください。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
家族も検査を受ける必要がありますか?
ABCC8遺伝子やKCNJ11遺伝子の劣性遺伝形式の場合、患者さんの兄弟姉妹が同じ疾患を発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。ご両親は通常無症候性保因者です。遺伝形式は変異の種類によって異なりますので、詳しくは遺伝カウンセリングでご説明いたします。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
この検査では28の関連遺伝子を対象としていますが、持続性の先天性高インスリン血症のうち、遺伝子異常が同定されるのはおよそ50%です。検査で病原性変異が検出されなくても、未知の遺伝子異常による可能性があり、先天性高インスリン血症を完全に除外することはできません。主治医と相談して、臨床症状に基づいた適切な管理を継続することが重要です。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療選択肢(ジアゾキシド、オクトレオチド、外科的治療など)などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
遺伝形式は変異の種類によって異なります。劣性遺伝形式の場合、保因者同士のカップルではお子さんが疾患を発症する確率は25%です。優性遺伝形式の場合は50%の確率で遺伝します。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
先天性高インスリン血症の治療はどのように行われますか?
治療は症状の重症度や遺伝子型によって異なります。軽症例では頻回食による管理が可能ですが、より重症例ではジアゾキシド、オクトレオチドなどの薬剤による治療が行われます。薬剤に反応しない重症例や局所性病変の場合は、外科的治療(膵切除術)が検討されます。遺伝子検査の結果は、最適な治療法の選択や外科的治療の適応判断に役立ちます。
予後はどうですか?
予後は疾患の重症度や治療への反応、遺伝子型によって大きく異なります。適切な治療により血糖値が良好にコントロールできれば、神経後遺症のリスクを最小限に抑えることができます。一部の患者さんでは時間経過とともに症状の改善が見られることもあります。早期診断と適切な管理が予後の改善に極めて重要です。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では最も頻度の高いABCC8遺伝子やKCNJ11遺伝子を含む28の関連遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、高インスリン血症を特徴とする症候群に関連する遺伝子も含まれており、包括的な診断が可能です。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも検査を受けることが可能です。


プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

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