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高アンモニア血症・尿素サイクル異常症NGS遺伝子検査パネル|ミネルバクリニック

高アンモニア血症・尿素サイクル異常症NGS遺伝子検査パネル|ミネルバクリニック

高アンモニア血症・尿素サイクル異常症とは

尿素サイクル異常症(Urea Cycle Disorders: UCD)は、血液中のアンモニアを尿素に変換する尿素サイクルの酵素が欠損または機能低下することで発症する遺伝性代謝疾患です。肝臓で行われる尿素サイクルが正常に機能しないため、体内に有毒なアンモニアが蓄積し、高アンモニア血症を引き起こします。

尿素サイクル異常症は約35,000人に1人の割合で発症する比較的稀な疾患ですが、早期診断と適切な治療により予後を大きく改善できる疾患です。酵素機能がほとんどない重症型では新生児期に症状が現れますが、酵素活性が部分的に保たれている軽症型では成人期になって初めて症状が現れることもあります。

高アンモニア血症は尿素サイクル異常症だけでなく、有機酸代謝異常症、先天性乳酸アシドーシス、脂肪酸酸化異常症、二塩基性アミノ酸欠損症などの他の先天代謝異常でも発症します。高アンモニア血症は生命を脅かす重篤な状態であるため、早期診断と治療が極めて重要です。本検査パネルは、尿素サイクル異常症だけでなく、高アンモニア血症を引き起こす可能性のある幅広い代謝異常の原因遺伝子を包括的に検査します。

症状と病態

尿素サイクル異常症および高アンモニア血症の主な症状は、血中アンモニア濃度の上昇による神経学的障害です。症状の重症度は、原因となる酵素の残存活性や代謝ストレスの程度によって異なります。

新生児期・乳児期の症状(重症型)

  • 哺乳困難・哺乳不良
  • 嗜眠・意識障害
  • 嘔吐
  • 過呼吸
  • 低体温
  • けいれん
  • 肝腫大
  • 成長障害

遅発型(軽症~中等症型)の症状

酵素活性が部分的に保たれている場合、幼児期以降や成人期に以下のような症状が現れることがあります:

  • 発達遅滞・学習障害
  • 行動異常(多動、攻撃性、自閉症様行動)
  • タンパク質を嫌う食行動
  • 周期性嘔吐
  • 頭痛
  • 運動失調
  • 精神症状(錯乱、幻覚、異常行動)
  • 昏睡

高アンモニア血症の急性増悪

感染症、高タンパク質食、手術、出産などの代謝ストレスにより、急性高アンモニア血症が引き起こされることがあります。急性増悪時には以下の症状が現れます:

  • 嘔吐・食欲不振
  • 意識障害(傾眠から昏睡まで)
  • 過呼吸
  • けいれん
  • 脳浮腫
  • 治療が遅れた場合:不可逆的な脳損傷、死亡

長期的な影響

適切な治療が行われない場合、または高アンモニア血症のエピソードが繰り返される場合、以下のような長期的な神経学的後遺症が残る可能性があります:

  • 知的障害
  • 運動障害
  • てんかん
  • 発達遅滞
  • 行動障害

尿素サイクル異常症の種類

尿素サイクルは肝臓でアンモニアを尿素に変換する一連の生化学反応で、複数の酵素が関与しています。各酵素の欠損により、それぞれ異なるタイプの尿素サイクル異常症が発症します。

主要な尿素サイクル異常症

  • N-アセチルグルタミン酸合成酵素欠損症(NAGS欠損症):
    NAGS遺伝子変異により発症。尿素サイクルの最初の段階を活性化する酵素の欠損。常染色体劣性遺伝。
  • カルバモイルリン酸合成酵素I欠損症(CPS1欠損症):
    CPS1遺伝子変異により発症。尿素サイクルの最初の酵素の欠損。最も重症な尿素サイクル異常症の一つ。常染色体劣性遺伝。
  • オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症(OTC欠損症):
    OTC遺伝子変異により発症。最も頻度の高い尿素サイクル異常症。X連鎖遺伝のため、男児で重症化しやすい。保因者の女性も症状を呈することがある。
  • オルニチントランスロカーゼ欠損症:
    SLC25A15遺伝子変異により発症。オルニチンをミトコンドリア内に輸送する酵素の欠損。常染色体劣性遺伝。
  • シトルリン血症I型(ASS欠損症):
    ASS1遺伝子変異により発症。アルギニノコハク酸合成酵素の欠損。常染色体劣性遺伝。
  • アルギニノコハク酸尿症(ASL欠損症):
    ASL遺伝子変異により発症。アルギニノコハク酸リアーゼの欠損。肝障害や高血圧を合併することがある。常染色体劣性遺伝。
  • アルギナーゼ欠損症:
    ARG1遺伝子変異により発症。尿素サイクルの最終段階の酵素欠損。痙性対麻痺が特徴的。常染色体劣性遺伝。
  • シトルリン血症II型(SLC25A13欠損症):
    SLC25A13遺伝子変異により発症。アスパラギン酸・グルタミン酸輸送体の欠損。新生児期の肝内胆汁うっ滞や成人発症型シトルリン血症(CTLN2)を引き起こす。常染色体劣性遺伝。日本人に比較的多い。

関連する代謝異常

高アンモニア血症は、尿素サイクル異常症以外にも以下のような代謝異常で発症します:

  • 有機酸代謝異常症:プロピオン酸血症、メチルマロン酸血症、イソ吉草酸血症など
  • 脂肪酸酸化異常症:中鎖アシルCoA脱水素酵素(MCAD)欠損症、カルニチントランスポーター欠損症など
  • 先天性乳酸アシドーシス:ミトコンドリア病、ピルビン酸カルボキシラーゼ欠損症など
  • その他:グルタミン酸脱水素酵素異常症、リジン尿性タンパク不耐症など

ミネルバクリニックの高アンモニア血症・尿素サイクル異常症遺伝子パネル検査の特徴

「高アンモニア血症・尿素サイクル異常症 NGSパネル検査」とは、高アンモニア血症や尿素サイクル異常症の原因として報告されている56の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。

従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。

何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、高アンモニア血症・尿素サイクル異常症に関連する56遺伝子を一度に調べられる「高アンモニア血症・尿素サイクル異常症 NGSパネル検査」を採用しています。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.費用がリーズナブル

一般的な医療機関で高アンモニア血症・尿素サイクル異常症の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。

当院では、高アンモニア血症・尿素サイクル異常症に関係するとされる56の遺伝子を一度に調べられる「高アンモニア血症・尿素サイクル異常症 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)

2.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行える高アンモニア血症・尿素サイクル異常症の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。

当院で行う「高アンモニア血症・尿素サイクル異常症 NGSパネル検査」の場合、56の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。

3.一気にまとめてできる

臨床症状から高アンモニア血症・尿素サイクル異常症を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。

当院で行う「高アンモニア血症・尿素サイクル異常症 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な56の原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。尿素サイクル異常症だけでなく、有機酸代謝異常症、脂肪酸酸化異常症など、高アンモニア血症を引き起こす様々な代謝異常を包括的にスクリーニングできます。

オプション

塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)

検査内容

「高アンモニア血症・尿素サイクル異常症 NGSパネル検査」では、高アンモニア血症や尿素サイクル異常症に関係するとされる56種類の遺伝子(ACADM、ACADS、ACADVL、ALDH18A1、ARG1、ASL、ASS1、ATP5F1E、ATPAF2、BCKDHA、BCKDHB、BCS1L、BTD、CA5A、CPS1、CPT1A、CPT2、DBT、DLD、ETFA、ETFB、ETFDH、GLUD1、GLUL、HADHA、HADHB、HCFC1、HLCS、HMGCL、HMGCS2、IVD、MCCC1、MCCC2、MMAA、MMAB、MMACHC、MUT、NAGS、OAT、OTC、PC、PCCA、PCCB、PYY、SLC22A5、SLC25A13、SLC25A15、SLC25A20、SLC7A7、SUCLA2、SUCLG1、TMEM70、TTC19、TUFM、UQCRB、UQCRQ)をまとめて検査します。

「高アンモニア血症・尿素サイクル異常症 NGSパネル検査」は、高アンモニア血症や尿素サイクル異常症の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。

どんな人が受けたらいいの?

【高アンモニア血症または尿素サイクル異常症の個人歴または家族歴のある方】に
「高アンモニア血症・尿素サイクル異常症 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。

この検査は以下のような方に適しています:
・新生児期・乳児期に原因不明の哺乳不良、嘔吐、嗜眠、けいれんなどがあった方
・原因不明の高アンモニア血症が認められる方
・周期性嘔吐症候群の方
・タンパク質を嫌う食行動がある方
・原因不明の発達遅滞、学習障害、行動異常がある方
・代謝性アシドーシスや低血糖を繰り返す方
・肝機能障害を伴う高アンモニア血症の方
・家族に尿素サイクル異常症や高アンモニア血症の患者がいる方
・原因不明の新生児死亡や乳児死亡の家族歴がある方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方

このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

遺伝子検査により原因が判明すると、高アンモニア血症・尿素サイクル異常症の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。尿素サイクル異常症は生命を脅かす重篤な疾患ですが、早期診断により適切な治療を開始し、予後を大きく改善できます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・他の代謝性疾患との鑑別診断
・低タンパク質食事療法の適切な実施
・適切な薬物治療(アンモニア除去薬、アルギニン補充など)の選択
・高アンモニア血症の急性増悪時の迅速な対応
・定期的な血中アンモニア値のモニタリング計画
・感染症などの代謝ストレス時の管理方針決定
・肝移植の適応判断
・追加の関連症状のリスクの特定
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供
・臨床試験へのアクセス

患者さんで病原性変異が同定された場合、遺伝形式に応じて家族の発症リスクが異なります。常染色体劣性遺伝の場合、兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。X連鎖遺伝のOTC欠損症の場合、母親が保因者であれば男児が発症するリスクは50%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。

対象遺伝子

詳しくはこちら

ACADM、ACADS、ACADVL、ALDH18A1、ARG1、ASL、ASS1、ATP5F1E、ATPAF2、BCKDHA、BCKDHB、BCS1L、BTD、CA5A、CPS1、CPT1A、CPT2、DBT、DLD、ETFA、ETFB、ETFDH、GLUD1、GLUL、HADHA、HADHB、HCFC1、HLCS、HMGCL、HMGCS2、IVD、MCCC1、MCCC2、MMAA、MMAB、MMACHC、MUT、NAGS、OAT、OTC、PC、PCCA、PCCB、PYY、SLC22A5、SLC25A13、SLC25A15、SLC25A20、SLC7A7、SUCLA2、SUCLG1、TMEM70、TTC19、TUFM、UQCRB、UQCRQ(56遺伝子)

尿素サイクル関連遺伝子:

・NAGS遺伝子:
N-アセチルグルタミン酸合成酵素をコードする遺伝子。尿素サイクルの最初の段階を活性化します。常染色体劣性遺伝。

・CPS1遺伝子:
カルバモイルリン酸合成酵素Iをコードする遺伝子。尿素サイクルの最初の酵素。常染色体劣性遺伝。最も重症な尿素サイクル異常症の一つ。

・OTC遺伝子:
オルニチントランスカルバミラーゼをコードする遺伝子。最も頻度の高い尿素サイクル異常症。X連鎖遺伝。

・ASS1遺伝子:
アルギニノコハク酸合成酵素をコードする遺伝子。シトルリン血症I型の原因。常染色体劣性遺伝。

・ASL遺伝子:
アルギニノコハク酸リアーゼをコードする遺伝子。アルギニノコハク酸尿症の原因。常染色体劣性遺伝。

・ARG1遺伝子:
アルギナーゼIをコードする遺伝子。尿素サイクルの最終段階の酵素。常染色体劣性遺伝。

・SLC25A15遺伝子:
オルニチントランスロカーゼをコードする遺伝子。オルニチンをミトコンドリア内に輸送。常染色体劣性遺伝。

・SLC25A13遺伝子:
シトリン(アスパラギン酸・グルタミン酸輸送体)をコードする遺伝子。シトルリン血症II型の原因。常染色体劣性遺伝。日本人に比較的多い。

・GLUD1遺伝子:
グルタミン酸脱水素酵素をコードする遺伝子。高インスリン血症・高アンモニア血症症候群の原因。

・GLUL遺伝子:
グルタミン合成酵素をコードする遺伝子。先天性グルタミン合成酵素欠損症の原因。

・CA5A遺伝子:
炭酸脱水酵素VAをコードする遺伝子。尿素サイクルに関与。

・OAT遺伝子:
オルニチンアミノトランスフェラーゼをコードする遺伝子。高オルニチン血症の原因。

・SLC7A7遺伝子:
Y+Lアミノ酸トランスポーターをコードする遺伝子。リジン尿性タンパク不耐症の原因。

・ALDH18A1遺伝子:
デルタ1-ピロリン-5-カルボキシル酸合成酵素をコードする遺伝子。

有機酸代謝異常症関連遺伝子:

・MUT遺伝子:
メチルマロニルCoAムターゼをコードする遺伝子。メチルマロン酸血症の原因。

・MMAA、MMAB、MMACHC遺伝子:
ビタミンB12代謝に関与する遺伝子。メチルマロン酸血症やホモシスチン尿症の原因。

・PCCA、PCCB遺伝子:
プロピオニルCoAカルボキシラーゼをコードする遺伝子。プロピオン酸血症の原因。

・MCCC1、MCCC2遺伝子:
3-メチルクロトニルCoAカルボキシラーゼをコードする遺伝子。3-メチルクロトニルCoAカルボキシラーゼ欠損症の原因。

・IVD遺伝子:
イソバレリルCoA脱水素酵素をコードする遺伝子。イソ吉草酸血症の原因。

・BCKDHA、BCKDHB、DBT、DLD遺伝子:
分岐鎖α-ケト酸脱水素酵素複合体をコードする遺伝子。メープルシロップ尿症の原因。

・HMGCL、HMGCS2遺伝子:
3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリルCoAリアーゼおよび合成酵素をコードする遺伝子。ケトン体代謝に関与。

脂肪酸酸化異常症関連遺伝子:

・ACADM遺伝子:
中鎖アシルCoA脱水素酵素(MCAD)をコードする遺伝子。最も頻度の高い脂肪酸酸化異常症。

・ACADS遺伝子:
短鎖アシルCoA脱水素酵素(SCAD)をコードする遺伝子。

・ACADVL遺伝子:
超長鎖アシルCoA脱水素酵素(VLCAD)をコードする遺伝子。

・HADHA、HADHB遺伝子:
三頭酵素(MTP)をコードする遺伝子。長鎖3-ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素(LCHAD)欠損症の原因。

・CPT1A、CPT2遺伝子:
カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼをコードする遺伝子。

・SLC22A5遺伝子:
カルニチントランスポーターをコードする遺伝子。原発性カルニチン欠乏症の原因。

・SLC25A20遺伝子:
カルニチン・アシルカルニチントランスロカーゼをコードする遺伝子。

・ETFA、ETFB、ETFDH遺伝子:
電子伝達フラビンタンパク質をコードする遺伝子。グルタル酸血症II型の原因。

ミトコンドリア病・その他関連遺伝子:

・PC遺伝子:
ピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子。ピルビン酸カルボキシラーゼ欠損症の原因。

・SUCLA2、SUCLG1遺伝子:
コハク酸CoAリガーゼをコードする遺伝子。ミトコンドリア病の原因。

・ATP5F1E、ATPAF2、TMEM70遺伝子:
ATP合成酵素関連遺伝子。ミトコンドリア病の原因。

・BCS1L、TTC19、TUFM、UQCRB、UQCRQ遺伝子:
ミトコンドリア呼吸鎖複合体に関与する遺伝子。

・BTD遺伝子:
ビオチニダーゼをコードする遺伝子。ビオチニダーゼ欠損症の原因。

・HLCS遺伝子:
ホロカルボキシラーゼ合成酵素をコードする遺伝子。ホロカルボキシラーゼ合成酵素欠損症の原因。

・HCFC1遺伝子:
細胞増殖因子をコードする遺伝子。代謝異常に関与。

・PYY遺伝子:
ペプチドYYをコードする遺伝子。

カバレッジ

カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。

≥99% at 20x(読み取り深度平均20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
 検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

検査の限界

詳しくはこちら

すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。

低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。

この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。

※高アンモニア血症の原因は多岐にわたり、このパネルに含まれていない遺伝子の変異や、環境要因、他の疾患によっても引き起こされる可能性があります。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。

結果が出るまでの期間

2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。

料金

税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
新生児期・乳児期の原因不明の哺乳不良、嘔吐、嗜眠、けいれん、原因不明の高アンモニア血症、周期性嘔吐症候群、タンパク質を嫌う食行動、原因不明の発達遅滞や行動異常がある方におすすめします。また、家族に尿素サイクル異常症や高アンモニア血症の患者がいる場合、原因不明の新生児死亡や乳児死亡の家族歴がある場合も検査をご検討ください。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
尿素サイクル異常症はどのくらい稀な病気ですか?
尿素サイクル異常症は約35,000人に1人の割合で発症する比較的稀な疾患です。ただし、軽症型では診断されていないケースもあり、実際の頻度はもう少し高い可能性があります。
家族も検査を受ける必要がありますか?
遺伝形式によって家族の発症リスクが異なります。多くの尿素サイクル異常症は常染色体劣性遺伝で、兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。OTC欠損症はX連鎖遺伝で、母親が保因者であれば男児が発症するリスクは50%です。保因者の女性も症状を呈することがあります。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
高アンモニア血症の原因は多岐にわたり、このパネルに含まれていない遺伝子の変異や、環境要因、他の疾患によっても引き起こされる可能性があります。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。臨床症状と生化学検査に基づいた診断と管理が引き続き重要です。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
遺伝形式によって子どもへの影響が異なります。常染色体劣性遺伝の場合は保因者同士のカップルで子どもが発症する確率は25%です。X連鎖遺伝のOTC欠損症の場合、保因者の母親から男児が発症する確率は50%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
尿素サイクル異常症の治療はどのように行われますか?
低タンパク質食事療法、アンモニア除去薬(フェニル酪酸ナトリウム、安息香酸ナトリウムなど)、アルギニン補充などの治療が行われます。急性増悪時には血液透析による緊急的なアンモニア除去が必要になることもあります。重症例では肝移植が検討されることもあります。適切な治療により、多くの患者さんは良好な予後が期待できます。
予後はどうですか?
予後は酵素の残存活性や診断・治療開始の時期によって大きく異なります。新生児期に高アンモニア血症の昏睡を起こした場合、治療が遅れると不可逆的な脳損傷が残ることがあります。しかし、早期診断により適切な食事療法と薬物治療を行えば、正常な発達と生活の質を維持できることも多いです。定期的なモニタリングと急性増悪時の迅速な対応が重要です。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では臨床的に重要な56の原因遺伝子を一度に検査でき、尿素サイクル異常症だけでなく、有機酸代謝異常症、脂肪酸酸化異常症など、高アンモニア血症を引き起こす様々な代謝異常を包括的にスクリーニングできます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。


プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

仲田洋美のプロフィールはこちら