(更新日:2025/10/06)
高IgE症候群NGS遺伝子検査|ミネルバクリニック
高IgE症候群とは
高IgE症候群(Hyper-IgE Syndrome: HIES)は、著しく高い血清IgE値(通常2,000 IU/mL以上)、湿疹、再発性の皮膚・肺感染症を特徴とする稀な原発性免疫不全症です。世界で100万人あたり1人未満が罹患する極めて稀な疾患で、新生児期または乳児期早期から症状が現れることが多いです。
本疾患は、免疫系細胞(特にT細胞)の成熟に関与する遺伝子の異常により発症します。これらの遺伝子異常により、細菌や真菌に対する身体の反応を制御する能力が損なわれ、特徴的な症状が引き起こされます。
高IgE症候群には、常染色体優性遺伝形式をとる1型(AD-HIES、別名Job症候群)と、常染色体劣性遺伝形式をとる2型(AR-HIES)の2つの主要な病型があります。それぞれ臨床的特徴や原因遺伝子が異なり、正確な診断と適切な管理のためには遺伝学的検査が重要です。
症状と病態
高IgE症候群の主な症状は、新生児期の皮疹、湿疹様皮膚炎、再発性の皮膚・肺感染症、および著しく高い血清IgE値です。症状の重症度や組み合わせは、原因遺伝子や個人によって異なります。
主要症状
新生児期からの皮疹・湿疹様皮膚炎
再発性皮膚感染症(特に黄色ブドウ球菌による膿瘍)
再発性肺感染症・肺炎
著しく高い血清IgE値(通常2,000 IU/mL以上)
好酸球増多症
皮膚・肺の「冷たい」膿瘍(炎症反応が弱い膿瘍)
肺嚢胞(pneumatocele)の形成
1型高IgE症候群(AD-HIES、Job症候群)の特徴
1型高IgE症候群はSTAT3遺伝子の変異により発症し、最も頻度の高い病型です。免疫異常に加えて、結合組織や骨格の異常を伴うことが特徴です:
特徴的な顔貌: 顔面非対称、突出した前額、粗い顔貌
骨格異常: 再発性骨折、脊柱側弯症、関節過伸展
歯の異常: 乳歯の遅延脱落(2列に歯が生える)
血管異常: 冠動脈瘤、脳動脈瘤
真菌感染: 爪白癬、粘膜カンジダ症
再発性肺炎と肺嚢胞形成
2型高IgE症候群(AR-HIES)の特徴
2型高IgE症候群は主にDOCK8遺伝子の変異により発症し、1型とは異なる臨床的特徴を示します:
ウイルス感染への感受性: 伝染性軟属腫(水いぼ)、単純ヘルペスウイルス感染
重症アレルギー: 食物アレルギー、喘息、アナフィラキシー
自己免疫疾患: 自己免疫性溶血性貧血など
悪性腫瘍リスク: リンパ腫などの悪性腫瘍の発症リスク増加
神経学的合併症: 中枢神経系の異常を伴うことがある
骨格異常は通常見られない
その他の関連疾患
本パネル検査には、血清IgE高値を呈する他の疾患の原因遺伝子も含まれています:
ネザートン症候群(SPINK5遺伝子): 先天性魚鱗癬、毛髪異常(竹様毛髪)、アトピー素因を3主徴とする疾患
PGM3欠損症(PGM3遺伝子): 免疫不全、神経発達遅滞、骨格異常を伴う先天性糖鎖合成異常症
TYK2欠損症(TYK2遺伝子): 抗酸菌およびウイルス感染への感受性を特徴とする免疫不全症
STAT6関連疾患(STAT6遺伝子): 免疫調節異常による感染症・アレルギー
進行と予後
高IgE症候群は生涯にわたる管理が必要な疾患です。早期診断と適切な管理により、感染症の予防と合併症の軽減が可能です。1型高IgE症候群では長期的には肺機能障害や血管合併症が問題となることがあり、2型高IgE症候群では悪性腫瘍のリスクに注意が必要です。定期的な経過観察と予防的抗菌薬投与、積極的な感染症治療が重要です。
遺伝形式と原因遺伝子
高IgE症候群は遺伝学的に多様性があり、常染色体優性(顕性)遺伝と常染色体劣性(潜性)遺伝の両方の形式で発症します。原因遺伝子によって臨床的特徴が異なるため、遺伝学的診断が重要です。
常染色体優性(顕性)遺伝形式
1型高IgE症候群(Job症候群)の原因遺伝子:
STAT3遺伝子: シグナル伝達兼転写活性化因子3をコードする遺伝子。1型高IgE症候群の最も頻度の高い原因で、通常は新規変異(de novo)として発症します。STAT3タンパク質はサイトカインシグナル伝達に重要な役割を果たし、その機能喪失型変異により免疫異常と結合組織・骨格異常が引き起こされます。
常染色体劣性(潜性)遺伝形式
2型高IgE症候群および関連疾患の原因遺伝子:
DOCK8遺伝子: dedicator of cytokinesis 8をコードする遺伝子。2型高IgE症候群の最も頻度の高い原因で、ウイルス感染への易感染性、重症アレルギー、悪性腫瘍リスク増加が特徴です。
PGM3遺伝子: ホスホグルコムターゼ3をコードする遺伝子。糖鎖合成経路に関与し、PGM3欠損症では免疫不全に加えて神経発達遅滞、骨格異常を呈します。
SPINK5遺伝子: セリンプロテアーゼ阻害因子LEKTIをコードする遺伝子。ネザートン症候群の原因で、先天性魚鱗癬、竹様毛髪、血清IgE高値を特徴とします。
TYK2遺伝子: チロシンキナーゼ2をコードする遺伝子。JAKファミリーに属し、IL-12、IL-23、I型インターフェロンのシグナル伝達に関与します。TYK2欠損症では抗酸菌やウイルス感染への易感染性を呈します。
STAT6遺伝子: シグナル伝達兼転写活性化因子6をコードする遺伝子。IL-4やIL-13のシグナル伝達に関与し、免疫調節異常を引き起こします。
当検査パネルでは、これらの臨床的に重要な6遺伝子を対象としています。これにより、高IgE症候群および関連疾患の主要な原因を効率的にスクリーニングすることが可能です。
ミネルバクリニックの高IgE症候群遺伝子パネル検査の特徴
「高IgE症候群 NGSパネル検査」とは、現在高IgE症候群および関連疾患の原因として報告されている6つの遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。
従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。
何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、高IgE症候群に関連する6遺伝子を一度に調べられる「高IgE症候群 NGSパネル検査」を採用しています。
一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページ をご覧ください。
1.費用がリーズナブル
一般的な医療機関で高IgE症候群の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。
当院では、高IgE症候群に関係するとされる6つの遺伝子を一度に調べられる「高IgE症候群 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)
2.結果が出るまでがはやい
一般的な医療機関で行える高IgE症候群の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。
当院で行う「高IgE症候群 NGSパネル検査」の場合、6つの遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。
3.一気にまとめてできる
臨床症状から高IgE症候群を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。
当院で行う「高IgE症候群 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な6つの原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。
オプション
塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)
検査内容
「高IgE症候群 NGSパネル検査」では、高IgE症候群および関連疾患に関係するとされる6種類の遺伝子(DOCK8、PGM3、SPINK5、STAT3、STAT6、TYK2)をまとめて検査します。
「高IgE症候群 NGSパネル検査」は、高IgE症候群および関連疾患の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。
どんな人が受けたらいいの?
【高IgE症候群の個人歴または家族歴のある方】に
「高IgE症候群 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。
この検査は以下のような方に適しています:
・血清IgE値が著しく高い方(2,000 IU/mL以上)
・新生児期または乳児期早期から湿疹・皮疹がある方
・再発性皮膚感染症(特に黄色ブドウ球菌による膿瘍)がある方
・再発性肺炎・肺感染症の既往がある方
・肺嚢胞を指摘されたことがある方
・好酸球増多症がある方
・特徴的な顔貌や骨格異常がある方
・乳歯の脱落遅延がある方
・再発性骨折の既往がある方
・先天性魚鱗癬または毛髪異常(竹様毛髪)がある方
・重症アレルギー・喘息がある方
・ウイルス感染症(水いぼ、ヘルペスなど)を繰り返す方
・高IgE症候群または原発性免疫不全症の家族歴がある方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方
このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。
検査で得られる患者さんの潜在的利益は?
遺伝子検査により原因が判明すると、高IgE症候群の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、予防的抗菌薬投与、積極的な感染症治療、定期的なモニタリングを行うことができます。
遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・病型(1型または2型)の特定と予後予測
・予防的抗菌薬療法の適応判断
・免疫グロブリン補充療法の検討
・造血幹細胞移植の適応評価(特に2型高IgE症候群)
・感染症リスクの評価と予防策の立案
・合併症(肺嚢胞、血管異常、悪性腫瘍など)の早期発見
・骨格異常や歯科的問題への対応
・適切なスキンケアとアレルギー管理
・追加の関連症状のリスクの特定
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供
患者さんで病原性変異が同定された場合、遺伝形式に応じて家族の発症リスクが異なります。常染色体優性遺伝(STAT3変異)の場合は子どもが発症するリスクは50%(ただし多くは新規変異)、常染色体劣性遺伝の場合は兄弟姉妹が発症するリスクは25%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。
対象遺伝子
詳しくはこちら
DOCK8, PGM3, SPINK5, STAT3, STAT6, TYK2 ( 6遺伝子 )
各遺伝子の詳細:
・STAT3遺伝子:
シグナル伝達兼転写活性化因子3をコードする遺伝子。1型高IgE症候群(Job症候群)の原因遺伝子で、常染色体優性遺伝形式をとります。STAT3タンパク質はサイトカイン(IL-6、IL-10、IL-21、IL-23など)のシグナル伝達において中心的な役割を果たします。機能喪失型変異により、免疫系の異常に加えて結合組織や骨格の異常が引き起こされます。爪白癬や粘膜カンジダ症との関連も報告されています。
・DOCK8遺伝子:
dedicator of cytokinesis 8をコードする遺伝子。2型高IgE症候群の最も頻度の高い原因遺伝子で、常染色体劣性遺伝形式をとります。DOCK8タンパク質は細胞骨格の調節やリンパ球の移動・生存に関与します。DOCK8欠損症の特徴は、ウイルス感染(特に伝染性軟属腫、単純ヘルペスウイルス)への易感染性、重症アレルギー、食物アレルギー、喘息、悪性腫瘍(特にリンパ腫)のリスク増加です。神経学的合併症を伴うこともあります。
・PGM3遺伝子:
ホスホグルコムターゼ3をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、PGM3欠損症の原因となります。PGM3は糖鎖合成経路(特にUDP-N-アセチルグルコサミンの合成)において重要な酵素です。PGM3欠損症では、高IgE、再発性感染症に加えて、神経発達遅滞、知的障害、低髄鞘形成、骨格異常(デスブーキ様骨異形成症)を呈します。重症例では好中球減少症や骨髄不全を伴うこともあります。
・SPINK5遺伝子:
セリンプロテアーゼ阻害因子LEKTI(lympho-epithelial Kazal-type-related inhibitor)をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、ネザートン症候群の原因となります。LEKTIは皮膚で発現するセリンプロテアーゼの阻害因子で、表皮のバリア機能維持に重要です。ネザートン症候群の3主徴は、先天性魚鱗癬(線状魚鱗癬様紅皮症)、毛髪異常(陥入性裂毛症、竹様毛髪)、アトピー素因(血清IgE高値、食物アレルギー)です。
・TYK2遺伝子:
チロシンキナーゼ2をコードする遺伝子。JAKファミリーに属する非受容体型チロシンキナーゼで、常染色体劣性遺伝形式でTYK2欠損症を引き起こします。TYK2はIL-12、IL-23、I型インターフェロン(IFN-α/β)、IL-10のシグナル伝達に関与します。TYK2欠損症では、抗酸菌(結核菌、BCG、非定型抗酸菌)やウイルス(単純ヘルペスウイルス)感染への易感染性を特徴とします。一部の症例では高IgE症候群様の症状(湿疹、皮膚膿瘍、肺感染症、血清IgE高値)を呈します。
・STAT6遺伝子:
シグナル伝達兼転写活性化因子6をコードする遺伝子。STAT6はIL-4およびIL-13のシグナル伝達に関与し、Th2細胞の分化、IgEクラススイッチ、アレルギー反応の制御において重要な役割を果たします。STAT6遺伝子の異常により免疫調節異常が引き起こされ、感染症への易感染性やアレルギー性疾患を呈することがあります。
カバレッジ
カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。
≥99% at 20x(読み取り深度平均20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。
検体
血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)
※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能 です。
ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。
検査の限界
詳しくはこちら
すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。
低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。
この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。
※この検査パネルでは、6つの原因遺伝子のみを対象としています。高IgE症候群および関連疾患には他にも原因遺伝子が存在する可能性があります。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。
結果が出るまでの期間
2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。
料金
税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)
よくあるご質問
どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
血清IgE値が著しく高い方(2,000 IU/mL以上)、新生児期から湿疹や皮疹がある方、再発性の皮膚・肺感染症がある方におすすめします。特に黄色ブドウ球菌による「冷たい」膿瘍(炎症反応が弱い膿瘍)や肺嚢胞を指摘されたことがある方、乳歯の脱落遅延や特徴的な顔貌・骨格異常がある方は検査をご検討ください。また、家族に高IgE症候群や原発性免疫不全症の方がいる場合も検査が推奨されます。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
1型高IgE症候群と2型高IgE症候群の違いは何ですか?
1型高IgE症候群(Job症候群)はSTAT3遺伝子の変異により発症し、免疫異常に加えて特徴的な顔貌、骨格異常(再発性骨折、脊柱側弯症)、歯の異常(乳歯の遅延脱落)、血管異常を伴います。2型高IgE症候群は主にDOCK8遺伝子の変異により発症し、ウイルス感染への易感染性、重症アレルギー、悪性腫瘍リスク増加が特徴で、骨格異常は通常見られません。当検査により原因遺伝子を特定することで、病型を正確に診断し、適切な管理方針を立てることができます。
家族も検査を受ける必要がありますか?
遺伝形式によって家族の発症リスクが異なります。1型高IgE症候群(STAT3変異)は常染色体優性遺伝ですが、多くは新規変異として発症するため、必ずしも家族歴があるとは限りません。2型高IgE症候群や関連疾患(DOCK8、PGM3、SPINK5、TYK2変異)は常染色体劣性遺伝で、兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
この検査パネルでは6つの主要な原因遺伝子を対象としていますが、高IgE症候群には他にも原因遺伝子が存在する可能性があります。検査で病原性変異が検出されなくても、臨床症状と血液検査所見に基づいた診断と管理が引き続き重要です。必要に応じて追加の遺伝学的検査や免疫学的評価をご提案することもあります。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
遺伝形式によって子どもへの影響が異なります。常染色体優性遺伝(STAT3変異)の場合は子どもが発症する確率は50%(ただし多くは新規変異)、常染色体劣性遺伝の場合は保因者同士のカップルで子どもが発症する確率は25%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
高IgE症候群の治療はどのように行われますか?
現在のところ根本的な治療法はありませんが、予防的抗菌薬投与(スタフィロコッカス感染予防)、積極的な感染症治療、免疫グロブリン補充療法、適切なスキンケア、アレルギー管理などが行われます。2型高IgE症候群(特にDOCK8欠損症)では、造血幹細胞移植が根治的治療として考慮されることもあります。定期的な経過観察により、合併症の早期発見と対応が重要です。
予後はどうですか?
予後は原因遺伝子や個人によって異なります。適切な管理により、多くの患者さんは比較的良好な生活の質を維持できます。1型高IgE症候群では長期的には肺機能障害(肺嚢胞、気管支拡張症)や血管合併症(動脈瘤)が問題となることがあります。2型高IgE症候群では悪性腫瘍(特にリンパ腫)のリスクに注意が必要です。早期診断、予防的治療、定期的なモニタリングにより、合併症の予防と早期対応が可能です。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では臨床的に重要な6つの原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。
プロフィール
この記事の筆者:仲田洋美(医師)
ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得 して以来、のべ10万人以上 のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。
仲田洋美のプロフィールはこちら