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遺伝性痙性対麻痺(HSP)遺伝子検査パネル|ミネルバクリニック

遺伝性痙性対麻痺(HSP)遺伝子検査パネル|ミネルバクリニック

遺伝性痙性対麻痺とは

遺伝性痙性対麻痺(Hereditary Spastic Paraplegia: HSP)は、緩徐進行性の下肢の痙縮(筋肉のつっぱり)と筋力低下を主症状とする神経変性疾患群です。病理学的には、脊髄の錐体路、後索、脊髄小脳路といった神経線維の系統的な変性を特徴とします。

本疾患は臨床的にも遺伝学的にも非常に多様性が高く、発症年齢は乳児期から成人期まで様々で、遺伝形式も常染色体優性(顕性)遺伝、常染色体劣性(潜性)遺伝、X連鎖遺伝、ミトコンドリア遺伝など多岐にわたります。現在までに80以上の原因遺伝子が同定されており、それぞれSPG(Spastic Gait)ナンバーで分類されています。

遺伝性痙性対麻痺は、家族性痙性対麻痺(Familial Spastic Paraplegia: FSP)やStrümpell-Lorrain症候群とも呼ばれます。本邦では、常染色体優性遺伝性ではSPG4が最も多く約38%を占め、常染色体劣性遺伝性ではSPG11が多いとされています。欧米では10万人あたり4.3~9.8人程度の有病率と報告されており、国内では約1,500名程度の患者さんがいると推測されています。

症状と病態

遺伝性痙性対麻痺の主な症状は、下肢の進行性の痙縮(筋肉のつっぱり)と筋力低下による歩行障害です。症状は緩やかに進行し、徐々に歩行が困難になります。発症年齢は乳児期から高齢期まで様々で、個々の遺伝型によって異なります。

臨床病型:純粋型と複合型

遺伝性痙性対麻痺は、随伴症状の有無により純粋型(pure form)と複合型(complex form)に分けられます。

純粋型:
下肢の痙性対麻痺が主症状で、時に以下の症状を伴うことがあります:
・軽度の下肢振動覚低下
・膀胱直腸障害(排尿・排便障害)
・上肢の腱反射亢進

複合型:
純粋型の症状に加えて、以下のような他の神経症状や全身症状を伴います:
・末梢神経障害(ニューロパチー)
・小脳失調
・脳梁の菲薄化
・精神発達遅延・知的障害
・痙攣(てんかん)
・難聴
・網膜色素変性症
・魚鱗癬(皮膚症状)
複合型は症状の進行が早く、より重症となる傾向があります。

主要症状と身体所見

  • 下肢の痙性不全麻痺(両下肢が突っ張って動かしにくい)
  • 進行性の歩行困難(歩くとつまずきやすい、階段の昇降が困難)
  • 腱反射亢進(膝を叩くと強く反応する)
  • クローヌス(足首を素早く曲げると震える)
  • バビンスキー徴候陽性(足の裏を刺激すると足の親指が反り返る)
  • 足の変形・拘縮(進行すると足の形が変わることがある)
  • 上肢が侵されることもある(手の動きがぎこちなくなる)

感覚と括約筋機能

純粋型では、通常、感覚障害は軽度で、膀胱直腸機能はある程度保たれます。ただし、複合型では感覚障害や排尿・排便障害がより顕著になることがあります。

進行と予後

症状は緩やかに進行します。欧米の報告では、発症から22年で約半数の患者さんが歩行補助具を必要とし、37年で約1/4の患者さんが車椅子を必要とするとされています。高齢発症であるほど経過が重症で、独歩不能になるまでの期間が短い傾向があります。病気の重症度には、発症からの期間が最も強く影響することが分かっています。

遺伝形式と原因遺伝子

遺伝性痙性対麻痺は遺伝学的に非常に多様性が高く、常染色体優性(顕性)遺伝、常染色体劣性(潜性)遺伝、X連鎖遺伝、ミトコンドリア遺伝のいずれの形式でも発症します。現在までに80以上の原因遺伝子が同定されており、SPG1からSPG90以上までナンバーリングされています。

常染色体優性(顕性)遺伝形式

最も頻度の高い遺伝形式です。日本の多施設共同研究(JASPAC)による分子疫学研究では、以下の頻度が報告されています:

  • SPG4(SPAST遺伝子):最も頻度が高く、常染色体優性遺伝性HSPの約38%を占めます。発症年齢は0~74歳(平均29±17歳)と幅広く、大部分は純粋型ですが、認知症や振戦、手の筋萎縮を伴う例もあります
  • SPG3A(ATL1遺伝子):約5%を占め、比較的若年発症が多いです
  • SPG31(REEP1遺伝子):約5%を占めます
  • SPG10(KIF5A遺伝子):約2%を占めます
  • SPG8:約1%と稀です

常染色体劣性(潜性)遺伝形式

優性遺伝に比べると頻度は低いですが、複合型が多く重症例が多い傾向があります:

  • SPG11:最も頻度の高い常染色体劣性遺伝性HSPで、脳梁の菲薄化を特徴とします
  • SPG7:ミトコンドリア障害に関連します
  • SPG5、SPG15、SPG21:それぞれ特徴的な神経画像所見を伴うことがあります

X連鎖遺伝形式

  • SPG1(L1CAM遺伝子):男児に発症し、知的障害を伴うことが多いです
  • SPG2(PLP1遺伝子):Pelizaeus-Merzbacher病の軽症型とも関連します

ミトコンドリア遺伝形式

非常に稀ですが、ミトコンドリアDNAの変異によるHSPも報告されています。

重要な注意点:
遺伝性痙性対麻痺は、同じSPGナンバーの遺伝子変異であっても臨床像が異なることがあり、逆に異なる遺伝子変異でも同じような臨床像を示すことがあります。そのため、病型診断は遺伝子検査により確定することが必要です。また、家族歴がはっきりしない場合でもHSP原因遺伝子変異を認める症例があることに注意が必要です。

ミネルバクリニックの遺伝性痙性対麻痺遺伝子パネル検査の特徴

「遺伝性痙性対麻痺 NGSパネル検査」とは、現在遺伝性痙性対麻痺の原因として報告されている38の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。

従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。

何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、遺伝性痙性対麻痺に関連する38遺伝子を一度に調べられる「遺伝性痙性対麻痺 NGSパネル検査」を採用しています。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.費用がリーズナブル

一般的な医療機関で遺伝性痙性対麻痺の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。

当院では、遺伝性痙性対麻痺に関係するとされる38の遺伝子を一度に調べられる「遺伝性痙性対麻痺 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)

2.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行える遺伝性痙性対麻痺の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。

当院で行う「遺伝性痙性対麻痺 NGSパネル検査」の場合、38の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。

3.一気にまとめてできる

臨床症状から遺伝性痙性対麻痺を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。

当院で行う「遺伝性痙性対麻痺 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な38の原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。

オプション

塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)

検査内容

「遺伝性痙性対麻痺 NGSパネル検査」では、遺伝性痙性対麻痺に関係するとされる38種類の遺伝子(ABCD1、ACOX1、ALDH18A1、AP5Z1、ATAD3A、ATL1、BICD2、BSCL2、CPT1C、CYP7B1、DNM2、DSTYK、ERLIN2、FA2H、HSPD1、KIF1A、KIF5A、KPNA3、L1CAM、NIPA1、NT5C2、OPA3、PLP1、REEP1、REEP2、RTN2、SLC16A2、SLC33A1、SPART、SPAST、SPG11、SPG21、SPG7、TUBB4A、UBAP1、WASHC5、ZFYVE26、ZFYVE27)をまとめて検査します。

「遺伝性痙性対麻痺 NGSパネル検査」は、遺伝性痙性対麻痺の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。

どんな人が受けたらいいの?

【遺伝性痙性対麻痺の個人歴または家族歴のある方】に
「遺伝性痙性対麻痺 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。

この検査は以下のような方に適しています:
・緩徐進行性の下肢痙縮(下肢のつっぱり)がある方
・両下肢の筋力低下がある方
・歩行障害(つまずきやすい、階段の昇降が困難)がある方
・腱反射亢進、クローヌス、バビンスキー徴候陽性などの上位運動ニューロン徴候がある方
・膀胱直腸障害(排尿・排便障害)を伴う方
・軽度の振動覚低下がある方
・複合型の場合:小脳失調、末梢神経障害、知的障害、てんかん、難聴などを伴う方
・遺伝性痙性対麻痺または類似疾患の家族歴がある方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方

このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

遺伝子検査により原因が判明すると、遺伝性痙性対麻痺の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切なリハビリテーション、装具療法、薬物療法、定期的なモニタリングを行うことができます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・他の神経変性疾患や脊髄疾患との鑑別
・適切なリハビリテーションプログラムの立案
・装具療法(短下肢装具、杖、歩行器など)の適応判断
・抗痙縮薬による薬物療法の検討
・ボツリヌス毒素療法やバクロフェン髄注療法などの専門的治療の適応判断
・膀胱直腸障害に対する適切な管理
・疾患の進行予測と長期的な管理計画の立案
・複合型の場合の随伴症状(てんかん、知的障害など)への対応
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供

患者さんで病原性変異が同定された場合、遺伝形式に応じて家族の発症リスクが異なります。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症するリスクは50%、常染色体劣性遺伝の場合は兄弟姉妹が発症するリスクは25%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。

対象遺伝子

詳しくはこちら

ABCD1, ACOX1, ALDH18A1, AP5Z1, ATAD3A, ATL1, BICD2, BSCL2, CPT1C, CYP7B1, DNM2, DSTYK, ERLIN2, FA2H, HSPD1, KIF1A, KIF5A, KPNA3, L1CAM, NIPA1, NT5C2, OPA3, PLP1, REEP1, REEP2, RTN2, SLC16A2, SLC33A1, SPART, SPAST, SPG11, SPG21, SPG7, TUBB4A, UBAP1, WASHC5, ZFYVE26, ZFYVE27 ( 38遺伝子 )

各遺伝子の詳細:
・SPAST遺伝子(SPG4):
スパスチンをコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式で、最も頻度の高い原因遺伝子です(約38%)。微小管の切断に関与するタンパク質をコードしています。発症年齢は幅広く、大部分は純粋型ですが、一部に複合型もあります。

・ATL1遺伝子(SPG3A):
アトラスチン-1をコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式で、比較的若年発症が多いです(約5%)。小胞体の形態維持に関与します。

・REEP1遺伝子(SPG31):
受容体付随タンパク質1をコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式で、約5%を占めます。小胞体の形態維持に関与します。

・KIF5A遺伝子(SPG10):
キネシンファミリーメンバー5Aをコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式で、細胞内輸送に関与します(約2%)。

・SPG11遺伝子:
スパタシンをコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、最も頻度の高い劣性遺伝性HSPです。脳梁の菲薄化を特徴とし、複合型が多いです。

・SPG7遺伝子:
パラプレジンをコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、ミトコンドリア障害に関連します。小脳失調を伴うことがあります。

・L1CAM遺伝子(SPG1):
L1細胞接着分子をコードする遺伝子。X連鎖遺伝形式で、男児に発症し、知的障害を伴うことが多いです。

・PLP1遺伝子(SPG2):
プロテオリピドタンパク質1をコードする遺伝子。X連鎖遺伝形式で、Pelizaeus-Merzbacher病の軽症型とも関連します。

・BSCL2遺伝子:
セイピン(seipin)をコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式で、上肢の障害を伴うことがあります(Silver症候群)。

・NIPA1遺伝子(SPG6):
マグネシウムトランスポーターをコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式です。

・SPG21遺伝子(ACP33遺伝子):
マストイリンをコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、脳梁の菲薄化を伴うことがあります。

・ZFYVE26遺伝子(SPG15):
スパスチジンをコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、脳梁の菲薄化を特徴とします。

・ZFYVE27遺伝子(SPG33):
プロテルギンをコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式です。

・WASHC5遺伝子(SPG8):
WASH複合体サブユニット5をコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式です。

・ERLIN2遺伝子(SPG18):
ERリピドラフト関連タンパク質2をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式です。

・FA2H遺伝子(SPG35):
脂肪酸2-水酸化酵素をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、脂質代謝に関与します。

・CYP7B1遺伝子(SPG5):
シトクロムP450 7B1をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、ステロイド代謝に関与します。

・ALDH18A1遺伝子(SPG9):
アルデヒド脱水素酵素18ファミリーメンバーA1をコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式です。

・SPART遺伝子(SPG20):
スパルチンをコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、Troyer症候群の原因遺伝子です。

・HSPD1遺伝子(SPG13):
熱ショックタンパク質60をコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式で、ミトコンドリアシャペロンに関与します。

・BICD2遺伝子(SPG51):
ビカウダルDホモログ2をコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式で、細胞内輸送に関与します。

・KIF1A遺伝子(SPG30):
キネシンファミリーメンバー1Aをコードする遺伝子。常染色体優性または劣性遺伝形式で、細胞内輸送に関与します。

・REEP2遺伝子:
受容体付随タンパク質2をコードする遺伝子。小胞体の形態維持に関与します。

・RTN2遺伝子(SPG12):
レティキュロン2をコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式で、小胞体の形態維持に関与します。

・ABCD1遺伝子:
ATP結合カセットサブファミリーDメンバー1をコードする遺伝子。X連鎖遺伝形式で、副腎白質ジストロフィー(ALD)の原因遺伝子としても知られています。

・ACOX1遺伝子:
アシルCoAオキシダーゼ1をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、ペルオキシソームの脂肪酸β酸化に関与します。

・AP5Z1遺伝子(SPG48):
アダプター関連タンパク質複合体5ζ1サブユニットをコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式です。

・ATAD3A遺伝子(SPG84):
ATPアーゼファミリーAAA+ドメイン含有タンパク質3Aをコードする遺伝子。ミトコンドリア機能に関与します。

・CPT1C遺伝子(SPG73):
カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ1Cをコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式です。

・DNM2遺伝子:
ダイナミン2をコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式で、小胞輸送に関与します。

・DSTYK遺伝子(SPG23):
デュアルセリン/スレオニンおよびチロシンタンパク質キナーゼをコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式です。

・KPNA3遺伝子:
カリオフェリンサブユニットα3をコードする遺伝子。核輸送に関与します。

・NT5C2遺伝子(SPG45):
5′-ヌクレオチダーゼ、サイトゾリックIIをコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式です。

・OPA3遺伝子:
視神経萎縮症3をコードする遺伝子。ミトコンドリア機能に関与します。

・SLC16A2遺伝子(SPG36):
溶質担体ファミリー16メンバー2(甲状腺ホルモントランスポーター)をコードする遺伝子。X連鎖遺伝形式です。

・SLC33A1遺伝子(SPG42):
溶質担体ファミリー33メンバー1(アセチルCoAトランスポーター)をコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式です。

・TUBB4A遺伝子(SPG5、DYT4):
チューブリンβ4Aクラスをコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式で、微小管の構成に関与します。

・UBAP1遺伝子(SPG80):
ユビキリン関連タンパク質1をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式です。

カバレッジ

カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。

≥99% at 20x(読み取り深度20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
 検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

検査の限界

詳しくはこちら

すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。

低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。

この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。

※この検査パネルでは、38の原因遺伝子のみを対象としています。常染色体優性遺伝性HSPの約半数では、既知の遺伝子に変異が見つかりません。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。臨床症状と合わせた総合的な判断が必要です。

結果が出るまでの期間

2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。

料金

税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
緩徐進行性の下肢痙縮(下肢のつっぱり)と筋力低下がある方、歩行障害(つまずきやすい、階段の昇降が困難)がある方におすすめします。腱反射亢進、クローヌス、バビンスキー徴候陽性などの上位運動ニューロン徴候が認められる場合は、遺伝性痙性対麻痺の可能性が高くなります。また、家族に同様の症状がある場合も検査をご検討ください。複合型の場合は、小脳失調、末梢神経障害、知的障害、てんかんなどを伴うこともあります。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
純粋型と複合型の違いは何ですか?
純粋型は下肢の痙性対麻痺が主症状で、軽度の振動覚低下や膀胱直腸障害を伴うことがあります。複合型は純粋型の症状に加えて、末梢神経障害、小脳失調、知的障害、てんかん、難聴、網膜色素変性症などの他の神経症状や全身症状を伴います。複合型は症状の進行が早く、より重症となる傾向があります。
家族も検査を受ける必要がありますか?
遺伝形式によって家族の発症リスクが異なります。常染色体優性遺伝の場合、患者さんのお子さんが発症するリスクは50%です。常染色体劣性遺伝の場合、兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
常染色体優性遺伝性HSPの約半数では、既知の遺伝子に変異が見つかりません。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。臨床症状、神経学的検査、画像検査などに基づいた診断と管理が引き続き重要です。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
遺伝形式によって子どもへの影響が異なります。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症する確率は50%、常染色体劣性遺伝の場合は保因者同士のカップルで子どもが発症する確率は25%、X連鎖遺伝の場合は男児が発症するリスクが高くなります。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
遺伝性痙性対麻痺の治療はどのように行われますか?
現在のところ根本的な治療法はありませんが、対症療法により症状の緩和が可能です。理学療法、作業療法などのリハビリテーション、装具療法(短下肢装具、杖、歩行器など)、抗痙縮薬(バクロフェン、ジアゼパム、チザニジンなど)による薬物療法、ボツリヌス毒素の局所注射療法、重症例ではバクロフェン髄注療法などが行われます。適切な管理により、多くの患者さんは長期間歩行可能な状態を維持できます。
予後はどうですか?
症状は緩やかに進行します。欧米の報告では、発症から22年で約半数の患者さんが歩行補助具を必要とし、37年で約1/4の患者さんが車椅子を必要とするとされています。ただし、進行速度は原因遺伝子や個人によって大きく異なります。高齢発症であるほど経過が重症で、独歩不能になるまでの期間が短い傾向があります。適切なリハビリテーションと装具療法により、長期間にわたって歩行可能な状態を維持できることが多いです。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では臨床的に重要な38の原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。
どの診療科で診てもらえばよいですか?
遺伝性痙性対麻痺は主に神経内科で診療されます。小児の場合は小児神経科が対応することもあります。当院では臨床遺伝専門医による専門的な診療と遺伝カウンセリングを提供しています。

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