全前脳胞症NGS遺伝子パネル検査|ミネルバクリニック
全前脳胞症とは
全前脳胞症(Holoprosencephaly: HPE)は、胎児期初期(胎生3~5週頃)に前脳が左右の大脳半球に正常に分離しないために生じる、最も頻度の高い先天性脳形成異常です。前脳の分離不全の程度により脳の形態異常が起こり、それに伴って顔面正中部の形成異常も認められることが特徴です。
全前脳胞症は受胎時には約250人に1人の割合で発生すると推定されていますが、多くは胎児期早期に流産となるため、出生まで至るのは約10,000~16,000人に1人程度です。重症型では生命予後が不良ですが、軽症型では知的発達に問題がなく、軽度の顔面異常のみで成人される方もいらっしゃいます。
全前脳胞症は臨床的にも遺伝学的にも多様性が高く、無脳葉型(alobar)、半脳葉型(semilobar)、脳葉型(lobar)の3つの主要な病型に分類されます。また、これらの典型的な病型以外にも、中間型半球間変異型(MIHV)や軽症型(microform)など、スペクトラムとして様々な程度の症状を呈します。
症状と病態
全前脳胞症の症状は、前脳の分離不全の程度によって大きく異なります。脳の異常の重症度と顔面の異常の重症度は必ずしも一致しませんが、一般的には重症の脳形成異常ほど顔面異常も重度となる傾向があります。
脳形成異常
- 無脳葉型(alobar):最重症型で、大脳半球の分離がほとんど認められず、視床や視床下部も融合しています。単一の大きな脳室が形成され、背側に囊胞形成を認めることがあります。
- 半脳葉型(semilobar):中等度の重症度で、大脳半球の後方部分は分離していますが、前方部分と視床は融合しています。
- 脳葉型(lobar):比較的軽症型で、大脳半球はほぼ分離していますが、前頭葉の一部のみが連続しています。
- 中間型半球間変異型(MIHV):後頭葉と前頭葉は分離していますが、頭頂葉と前頭葉の境界部分が融合しています。
顔面異常
全前脳胞症では、前脳の発達異常に伴い、顔面正中部の形成異常が生じます。重症度により以下のような特徴が認められます:
- 単眼症(cyclopia):最重症型で、単一の中央に位置する眼球を形成し、鼻の代わりに鼻様突起(proboscis)が眼球の上方に認められます。
- 眼球欠損症(ethmocephaly):極度の眼間狭小と鼻様突起を認めます。
- 嘴鼻症(cebocephaly):眼間狭小と単一鼻孔を認めます。
- 正中口唇裂:口唇・口蓋の正中部の裂け目を認めます。
- 軽症型の顔面異常:眼間狭小(目と目の間が狭い)、扁平な鼻梁、鼻孔が近接、浅い人中、単一の中切歯などの軽度の異常のみを認めることもあります。
その他の症状
- 重度の精神発達遅滞(重症型)
- てんかん発作(高頻度)
- 脳性麻痺
- 摂食障害・嚥下障害
- 内分泌異常(尿崩症、電解質異常、下垂体機能不全)
- 視床下部機能障害
- 水頭症
- 体温調節障害
全身合併症
全前脳胞症では、中枢神経系や顔面以外の臓器にも異常を伴うことがあります:
- 性器の形成異常
- 多指症
- 椎体の異常
- 四肢の形成不全
- 大血管転位
- その他の心奇形
予後
無脳葉型の重症例では、出生直後から数ヶ月以内に死亡することが多いです。半脳葉型では生存期間は様々ですが、重度の発達遅滞とてんかんを伴うことが多いです。脳葉型や軽症型では、軽度から中等度の知的障害を伴いながらも長期生存が可能で、中には知的発達がほぼ正常な方もいらっしゃいます。
遺伝形式と原因遺伝子
全前脳胞症は遺伝学的に非常に多様性が高く、染色体異常(13トリソミーが最も多い)、単一遺伝子異常、環境要因(妊娠糖尿病、アルコール、レチノイン酸など)、多因子遺伝など、様々な原因で発症します。単一遺伝子異常による全前脳胞症の多くは常染色体優性(顕性)遺伝形式をとりますが、浸透率は不完全で、同じ遺伝子変異を持っていても症状の重症度は大きく異なります。
主要な原因遺伝子
現在までに複数の原因遺伝子が同定されており、その多くは前脳の正中部の発達に重要なシグナル伝達経路に関与しています:
- SHH遺伝子(Sonic Hedgehog):最も重要な原因遺伝子の一つで、全前脳胞症の約12%を占めます。前脳の正中部構造の形成に必須のシグナル分子をコードします。
- ZIC2遺伝子:転写因子をコードし、全前脳胞症の約9%を占めます。
- SIX3遺伝子:転写因子をコードし、全前脳胞症の約5%を占めます。
- TGIF1遺伝子:転写因子をコードし、TGF-βシグナル伝達経路に関与します。
- GLI2遺伝子:転写因子をコードし、Sonic Hedgehogシグナル伝達経路の下流で機能します。
- PTCH1遺伝子:Sonic Hedgehogの受容体をコードします。
染色体異常
全前脳胞症の約25~50%は染色体異常に伴って発症します。最も頻度が高いのは13トリソミー(パトー症候群)で、その約75%に全前脳胞症が認められます。その他、18トリソミー、染色体微細欠失症候群なども全前脳胞症を呈することがあります。
遺伝形式の特徴
単一遺伝子変異による全前脳胞症の多くは常染色体優性遺伝形式をとりますが、浸透率は極めて低く(約30~50%)、同じ家系内でも症状の重症度は大きく異なります。一部の患者さんでは、軽度の顔面異常(単一中切歯など)のみを認め、脳の異常がない方もいらっしゃいます。また、複数の遺伝子変異を持つことで症状が重症化する「多因子遺伝」の関与も指摘されています。
ミネルバクリニックの全前脳胞症遺伝子パネル検査の特徴
「全前脳胞症 NGSパネル検査」とは、現在全前脳胞症の原因として報告されている19の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。
従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。
何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、全前脳胞症に関連する19遺伝子を一度に調べられる「全前脳胞症 NGSパネル検査」を採用しています。
一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。
1.費用がリーズナブル
一般的な医療機関で全前脳胞症の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。
当院では、全前脳胞症に関係するとされる19の遺伝子を一度に調べられる「全前脳胞症 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)
2.結果が出るまでがはやい
一般的な医療機関で行える全前脳胞症の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。
当院で行う「全前脳胞症 NGSパネル検査」の場合、19の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。
3.一気にまとめてできる
臨床症状から全前脳胞症を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。
当院で行う「全前脳胞症 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な19の原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。
オプション
塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)
検査内容
「全前脳胞症 NGSパネル検査」では、全前脳胞症に関係するとされる19種類の遺伝子(C2CD3、CDON、CNOT1、EMX2、GLI2、GLI3、ICK、IFT80、PPP1R12A、PRRX1、PTCH1、RAD21、SHH、SIX3、SMC1A、STAG2、TGIF1、WDR81、ZIC2)をまとめて検査します。
「全前脳胞症 NGSパネル検査」は、全前脳胞症の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。
どんな人が受けたらいいの?
【全前脳胞症の個人歴または家族歴のある方】に
「全前脳胞症 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。
この検査は以下のような方に適しています:
・画像検査で全前脳胞症と診断された方
・前脳の分離不全が疑われる方
・眼間狭小、扁平な鼻梁、単一中切歯などの軽度の顔面正中部異常がある方
・口唇裂・口蓋裂などの顔面正中部奇形がある方
・全前脳胞症のお子さんがいる方で、次の妊娠を考えている方
・全前脳胞症の家族歴がある方
・全前脳胞症の方のご家族で、保因者診断を希望される方
・出生前診断で全前脳胞症が疑われた方
このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。
検査で得られる患者さんの潜在的利益は?
遺伝子検査により原因が判明すると、全前脳胞症の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切な医学的管理、定期的なモニタリング、合併症の早期発見・治療を行うことができます。
遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・染色体異常と単一遺伝子異常の鑑別
・てんかんの適切な管理
・内分泌異常(尿崩症、下垂体機能不全など)のリスク評価と管理
・摂食障害・嚥下障害への適切な対応
・水頭症などの合併症の早期発見
・全身合併症(心奇形、性器異常など)のスクリーニング
・疾患の進行予測と長期的な管理計画の立案
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供
患者さんで病原性変異が同定された場合、多くは常染色体優性遺伝形式ですが浸透率が低いため、同じ変異を持っていても発症しない方や軽症の方もいらっしゃいます。家族を検査することで、再発リスクを明らかにすることが重要です。
対象遺伝子
- 詳しくはこちら
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C2CD3, CDON, CNOT1, EMX2, GLI2, GLI3, ICK, IFT80, PPP1R12A, PRRX1, PTCH1, RAD21, SHH, SIX3, SMC1A, STAG2, TGIF1, WDR81, ZIC2 ( 19遺伝子 )
各遺伝子の詳細:
・C2CD3遺伝子:
繊毛形成に関与するタンパク質をコードする遺伝子。
・CDON遺伝子:
細胞接着分子をコードする遺伝子。Sonic Hedgehogシグナル伝達の補助受容体として機能します。
・CNOT1遺伝子:
CCR4-NOT転写複合体のサブユニットをコードする遺伝子。
・EMX2遺伝子:
ホメオボックス転写因子をコードする遺伝子。前脳の発達に重要な役割を果たします。
・GLI2遺伝子:
転写因子をコードする遺伝子。Sonic Hedgehogシグナル伝達経路の下流で機能し、全前脳胞症の約1~2%を占めます。
・GLI3遺伝子:
転写因子をコードする遺伝子。GLI2と同様にSonic Hedgehogシグナル伝達経路に関与します。
・ICK遺伝子:
繊毛形成に関与するキナーゼをコードする遺伝子。
・IFT80遺伝子:
繊毛内輸送に関与するタンパク質をコードする遺伝子。
・PPP1R12A遺伝子:
ミオシンホスファターゼ調節サブユニットをコードする遺伝子。
・PRRX1遺伝子:
ホメオボックス転写因子をコードする遺伝子。頭蓋顔面の発達に関与します。
・PTCH1遺伝子:
Sonic Hedgehogの受容体をコードする遺伝子。Sonic Hedgehogシグナル伝達経路の調節に重要です。
・RAD21遺伝子:
コヒーシン複合体のサブユニットをコードする遺伝子。染色体の分離や遺伝子発現調節に関与します。
・SHH遺伝子(Sonic Hedgehog):
最も重要な原因遺伝子の一つで、全前脳胞症の約12%を占めます。前脳の正中部構造の形成に必須のシグナル分子をコードします。
・SIX3遺伝子:
ホメオボックス転写因子をコードする遺伝子。前脳と眼の発達に重要な役割を果たし、全前脳胞症の約5%を占めます。
・SMC1A遺伝子:
コヒーシン複合体のサブユニットをコードする遺伝子。X連鎖遺伝形式をとることがあります。
・STAG2遺伝子:
コヒーシン複合体のサブユニットをコードする遺伝子。
・TGIF1遺伝子:
転写因子をコードする遺伝子。TGF-βシグナル伝達経路の調節に関与します。
・WDR81遺伝子:
WDリピート含有タンパク質をコードする遺伝子。
・ZIC2遺伝子:
ジンクフィンガー転写因子をコードする遺伝子。前脳の正中線構造の発達に重要で、全前脳胞症の約9%を占めます。
※重要な注記:ZIC2遺伝子については、現在の検査方法ではトリヌクレオチドリピート伸長の評価は行いません。
カバレッジ
カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。
≥99% at 20x(読み取り深度20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。
検体
血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)
※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。
検査の限界
- 詳しくはこちら
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すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。
低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。
この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。
※遺伝子特異的な制限事項:ZIC2遺伝子については、現在の検査方法ではトリヌクレオチドリピート伸長の評価は行いません。
※この検査パネルでは、19の原因遺伝子のみを対象としています。全前脳胞症の約25~50%は染色体異常(13トリソミーなど)に伴って発症し、単一遺伝子変異が同定されるのは約20~25%程度です。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。染色体検査(G-band法、マイクロアレイ検査など)も併せてご検討ください。
結果が出るまでの期間
2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。
料金
税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)
よくあるご質問
- どのような場合に検査を受けるべきですか?
- 画像検査(MRIやCT)で全前脳胞症と診断された方、前脳の分離不全が疑われる方、眼間狭小や単一中切歯などの軽度の顔面正中部異常がある方におすすめします。また、全前脳胞症のお子さんがいる方で次の妊娠を考えている場合や、家族に全前脳胞症の方がいる場合も検査をご検討ください。
- 検査はどのように行いますか?
- 血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
- 全前脳胞症は遺伝しますか?
- 全前脳胞症の原因は多様で、染色体異常、単一遺伝子異常、環境要因、多因子遺伝などがあります。単一遺伝子変異による場合、多くは常染色体優性遺伝形式をとりますが、浸透率が低いため(約30~50%)、同じ変異を持っていても発症しない方や軽症の方もいらっしゃいます。遺伝子検査により原因を特定することで、より正確な再発リスクをお伝えできます。
- 全前脳胞症のお子さんがいる場合、次の子どもが発症する確率はどのくらいですか?
- 原因によって再発リスクは異なります。染色体異常(13トリソミーなど)の場合、再発リスクは一般的に1%程度です。単一遺伝子変異で常染色体優性遺伝の場合、理論上は50%ですが、浸透率が低いため実際の発症リスクはより低くなります。遺伝子検査により原因を特定することで、より正確な再発リスクをお伝えし、出生前診断などの選択肢についてもご相談いただけます。
- 検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
- この検査パネルでは19の原因遺伝子を対象としていますが、単一遺伝子変異が同定されるのは全前脳胞症の約20~25%程度です。約25~50%は染色体異常(13トリソミーなど)に伴って発症し、残りは環境要因や多因子遺伝、未知の遺伝子変異などが原因と考えられています。検査で病原性変異が検出されなくても、全前脳胞症の診断が否定されるわけではありません。染色体検査も併せてご検討ください。
- 染色体検査も必要ですか?
- はい、全前脳胞症の約25~50%は13トリソミー(パトー症候群)などの染色体異常に伴って発症します。単一遺伝子検査と染色体検査(G-band法、マイクロアレイ検査など)を組み合わせることで、より包括的な評価が可能になります。当院では染色体検査も実施しておりますので、ご相談ください。
- 軽症型でも検査を受けるべきですか?
- はい、軽症型(単一中切歯のみ、軽度の眼間狭小のみなど)でも遺伝子変異が見つかることがあります。同じ遺伝子変異でも症状の重症度は大きく異なり、軽症の方と重症の方が同じ家系内に存在することもあります。検査により原因を特定することで、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
- 保険は適用されますか?
- 当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
- 結果はどのように説明されますか?
- 検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、出生前診断や着床前診断などの選択肢について、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
- 全前脳胞症の治療はどのように行われますか?
- 現在のところ根本的な治療法はありませんが、症状に応じた対症療法が行われます。てんかんに対する抗てんかん薬、内分泌異常(尿崩症、下垂体機能不全など)に対するホルモン補充療法、水頭症に対するシャント手術、摂食障害に対する栄養管理などが行われます。重症度に応じて、リハビリテーション、療育、特別支援教育などの支援も重要です。
- 予後はどうですか?
- 予後は重症度により大きく異なります。無脳葉型の重症例では生後数ヶ月以内に死亡することが多いですが、脳葉型や軽症型では長期生存が可能で、中には知的発達がほぼ正常な方もいらっしゃいます。遺伝子検査により原因が特定されると、疾患の進行予測や長期的な管理計画の立案に役立ちます。
- 他の医療機関での検査との違いは何ですか?
- 当院では臨床的に重要な19の原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。
プロフィール
この記事の筆者:仲田洋美(医師)
ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。
仲田洋美のプロフィールはこちら