InstagramInstagram

ヒルシュスプルング病(先天性巨大結腸症)NGS遺伝子検査|ミネルバクリニック

ヒルシュスプルング病(先天性巨大結腸症)NGS遺伝子検査|ミネルバクリニック

ヒルシュスプルング病とは

ヒルシュスプルング病(Hirschsprung disease)は、先天性巨大結腸症とも呼ばれる先天性の腸管無神経節症です。腸管の蠕動運動を司る神経叢(アウエルバッハ神経叢・マイスナー神経叢)が生まれつき欠如しているため、腸管が正常に動かず、便がうまく通過しない疾患です。

本疾患は新生児・乳児期より腸管拡張や腸閉塞の症状を呈します。日本では難病法による指定難病に含まれており、出生5,000人に1人の頻度でみられます。男児に多く、男女比は約4:1です。

無神経節腸管は必ず肛門から連続しており、その範囲によって病型が分類されます。約80%の患者さんは直腸・S状結腸に限局する短域型ですが、15-20%は長域型、約5%は全結腸型、まれに小腸型も存在します。無神経節腸管は正常な蠕動運動を欠いて狭小化し、口側の腸管が拡張することから「巨大結腸症」と呼ばれています。

症状と病態

ヒルシュスプルング病の主な症状は、腸管神経節細胞の欠如による機能的腸閉塞です。正常な状態であれば、ほぼすべての新生児で生後24時間以内に胎便(最初の排便とみなされる黒っぽい緑色の便)の排出がみられますが、本疾患では胎便排泄の遅延が特徴的です。

新生児期の症状

  • 生後48時間以内に胎便が排泄されない(最も特徴的な所見)
  • 腹部膨満
  • 胆汁性嘔吐(緑色の嘔吐)
  • 哺乳不良
  • 浣腸や直腸指診後に爆発的な排便や下痢

乳児期・幼児期の症状

新生児期に診断されるのは全体の約半数で、約1割は軽い便秘で見過ごされ、1歳以降に診断されることもあります。これは無神経節腸管の範囲によっても症状・経過が異なるためです。

  • 慢性的な便秘
  • 腹部膨満
  • 嘔吐(胆汁の色が付いた嘔吐)
  • 食欲不振・哺乳不良
  • 体重増加不良・発育障害
  • まれに下痢

ヒルシュスプルング関連腸炎(HAEC)

ヒルシュスプルング病の最も重篤な合併症の一つが、ヒルシュスプルング関連腸炎(Hirschsprung-associated enterocolitis: HAEC)です。患者さんの30-50%に発症し、適切な治療を受けないと生命を脅かす可能性があります。

ヒルシュスプルング関連腸炎の症状:

  • 突然の発熱
  • 腹部膨満の悪化
  • 嘔吐
  • 血性下痢
  • 直腸診後の爆発的なガスや便の排出
  • 敗血症への進展リスク

ヒルシュスプルング関連腸炎の症状がある場合は、直ちに医療機関を受診する必要があります。この合併症は術前・術後のいずれにも起こりうるため、長期的な注意が必要です。

診断方法

ヒルシュスプルング病の診断には、以下の検査を組み合わせて行います:

  • 注腸造影検査:無神経節腸管が細く、口側の腸管が拡張している様子を確認します
  • 肛門内圧検査:直腸肛門反射の有無を調べます。本疾患では正常な反射がみられません
  • 直腸粘膜吸引生検:アセチルコリンエステラーゼ陽性神経線維の有無を調べます
  • 直腸生検:腸管神経節細胞の欠如を組織学的に確認する確定診断となります

遺伝形式と原因遺伝子

ヒルシュスプルング病の原因遺伝子として既に10種類以上が同定されており、遺伝子異常で発症するタイプも明らかになっています。多くは散発性(家族歴のない孤発例)に発症しますが、全結腸型以上の症例では家族発生例を認め、遺伝子異常によるものが多いという報告があります。

遺伝形式

ヒルシュスプルング病は複雑な遺伝形式をとり、多遺伝子性の遺伝疾患です。孤発性ヒルシュスプルング病の約半数は特定の遺伝子変異と関連しており、約20%は家族内で発症します。

  • 常染色体優性遺伝:一部の症例で認められます
  • 常染色体劣性遺伝:特に重症型で多く見られます
  • 多因子遺伝:複数の遺伝子と環境要因が関与します

家族の再発リスク:
正常な両親から1人のヒルシュスプルング病の子どもが生まれた場合、次の子どもが発症するリスクは約4%です。患者さんが男児の場合、女児が次に発症するリスクは約7~10%と高くなります。

主要な原因遺伝子

ヒルシュスプルング病の原因として、以下の遺伝子が重要な役割を果たしています:

  • RET遺伝子:最も頻度の高い原因遺伝子で、家族性・孤発性の両方で変異が認められます。神経堤細胞の移動に関与するタンパク質をコードしており、広範囲に変異が散在しています。ダウン症候群にも関連があります
  • EDNRB遺伝子:エンドセリン受容体Bをコードし、神経細胞を腸管に接続する役割を果たします。ホモ接合体変異でワーデンブルグ症候群4型を呈することがあります
  • EDN3遺伝子:エンドセリン3をコードし、EDNRBと協調して機能します
  • GDNF遺伝子:グリア細胞由来神経栄養因子をコードし、神経細胞の生存と成長に重要です
  • ECE1遺伝子:エンドセリン変換酵素1をコードし、エンドセリンの活性化に関与します

合併症候群

ヒルシュスプルング病は単独で発症することもあれば、他の先天異常や症候群の一部として現れることもあります。約30%の患者さんで他の先天異常を合併します。

主な合併症候群:

  • ダウン症候群:ヒルシュスプルング病患者の約2%がダウン症候群を合併
  • ワーデンブルグ症候群4型:難聴、色素異常(虹彩異色症、まだら症)を伴います
  • モワット・ウィルソン症候群:知的障害、特徴的顔貌、小頭症を呈し、41-71%にヒルシュスプルング病を合併
  • バルデー・ビードル症候群:網膜色素変性症、肥満、多指症などを呈し、約2%にヒルシュスプルング病を合併
  • 多発性内分泌腫瘍症2型(MEN2):RET遺伝子変異による

ミネルバクリニックのヒルシュスプルング病遺伝子パネル検査の特徴

「ヒルシュスプルング病 NGSパネル検査」とは、現在ヒルシュスプルング病の原因として報告されている5つの主要遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。

従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。

何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、ヒルシュスプルング病に関連する5つの主要遺伝子を一度に調べられる「ヒルシュスプルング病 NGSパネル検査」を採用しています。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.費用がリーズナブル

一般的な医療機関でヒルシュスプルング病の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。

当院では、ヒルシュスプルング病に関係するとされる5つの主要遺伝子を一度に調べられる「ヒルシュスプルング病 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)

2.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行えるヒルシュスプルング病の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。

当院で行う「ヒルシュスプルング病 NGSパネル検査」の場合、5つの遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。

3.一気にまとめてできる

臨床症状からヒルシュスプルング病を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。

当院で行う「ヒルシュスプルング病 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な5つの原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。

オプション

塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)

検査内容

「ヒルシュスプルング病 NGSパネル検査」では、ヒルシュスプルング病に関係するとされる5種類の主要遺伝子(ECE1、EDN3、EDNRB、GDNF、RET)をまとめて検査します。

「ヒルシュスプルング病 NGSパネル検査」は、ヒルシュスプルング病の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。

どんな人が受けたらいいの?

【ヒルシュスプルング病の個人歴または家族歴のある方】に
「ヒルシュスプルング病 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。

この検査は以下のような方に適しています:
・生後48時間以内に胎便が排泄されなかった方
・新生児期に腹部膨満や胆汁性嘔吐があった方
・慢性的な便秘症状がある方
・腸閉塞症状を繰り返す方
・注腸造影検査で移行帯(狭小化した腸管とその口側の拡張腸管)が認められた方
・肛門内圧検査で直腸肛門反射が欠如している方
・直腸生検で腸管神経節細胞の欠如が疑われる方
・ヒルシュスプルング病と診断された方で原因遺伝子を知りたい方
・ヒルシュスプルング病の家族歴がある方
・ダウン症候群やワーデンブルグ症候群などの合併症候群がある方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方

このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

遺伝子検査により原因が判明すると、ヒルシュスプルング病の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切な手術計画、術後管理、長期フォローアップを行うことができます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・病型(短域型、長域型、全結腸型など)の予測
・適切な手術計画の立案
・術後の排便機能予後の推定
・ヒルシュスプルング関連腸炎のリスク評価
・合併症候群(ダウン症候群、ワーデンブルグ症候群、MEN2など)のスクリーニング
・心臓、腎臓、その他の臓器の先天異常の早期発見
・疾患の進行予測と長期的な管理計画の立案
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供

患者さんで病原性変異が同定された場合、遺伝形式に応じて家族の発症リスクが異なります。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。正常な両親から1人のヒルシュスプルング病の子どもが生まれた場合、次の子どもが発症するリスクは約4%です。

対象遺伝子

詳しくはこちら

ECE1, EDN3, EDNRB, GDNF, RET ( 5遺伝子 )

各遺伝子の詳細:
・ECE1遺伝子:
エンドセリン変換酵素1(Endothelin Converting Enzyme 1)をコードする遺伝子です。エンドセリンは血管収縮作用を持つペプチドで、ECE1はエンドセリン前駆体を活性型エンドセリンに変換する酵素です。腸管神経堤細胞の発生と移動に重要な役割を果たしており、この遺伝子の変異はヒルシュスプルング病の発症に関与します。

・EDN3遺伝子:
エンドセリン3(Endothelin 3)をコードする遺伝子です。エンドセリン3は神経堤細胞の増殖、移動、分化に重要なシグナル分子として機能します。腸管への神経節細胞の移動と発達に不可欠であり、この遺伝子の変異はヒルシュスプルング病やワーデンブルグ症候群4型の原因となります。EDN3遺伝子のホモ接合体変異またはヘテロ接合体変異で発症することがあります。

・EDNRB遺伝子:
エンドセリン受容体B(Endothelin Receptor Type B)をコードする遺伝子です。この受容体はエンドセリン3の受容体として機能し、神経堤由来の細胞が腸管に接続する過程で重要な役割を果たします。EDNRB遺伝子のホモ接合体変異ではワーデンブルグ症候群4型を呈することがありますが、ヘテロ接合体変異では他の特徴を持たない孤発性ヒルシュスプルング病を呈することがあります。ただし、この相関は常にみられるわけではありません。

・GDNF遺伝子:
グリア細胞由来神経栄養因子(Glial cell line-Derived Neurotrophic Factor)をコードする遺伝子です。GDNFはRET受容体のリガンドの一つであり、腸管神経節細胞の生存、成長、分化に重要な栄養因子として機能します。神経堤細胞の腸管への移動と、移動後の神経節細胞の維持に必須の役割を果たしており、この遺伝子の変異はヒルシュスプルング病の発症に関与します。

・RET遺伝子:
RETプロトオンコジーン(REarranged during Transfection proto-oncogene)をコードする遺伝子で、ヒルシュスプルング病の最も頻度の高い原因遺伝子です。RET遺伝子は受容体チロシンキナーゼをコードしており、胚発生期における神経堤細胞の腸管への移動を助けるタンパク質を産生します。家族性および孤発性の両方の症例で変異が認められ、遺伝子の全コード領域に広範囲に変異が散在しています。RET遺伝子はダウン症候群とも関連があり、ダウン症候群を合併するヒルシュスプルング病患者の2%にみられます。また、RET遺伝子の活性化変異は多発性内分泌腫瘍症2型(MEN2)の原因となります。RET遺伝子変異によるヒルシュスプルング病の遺伝形式は複雑で、常染色体優性遺伝のパターンを示すこともあれば、不完全浸透度や可変的表現度を示すこともあります。

カバレッジ

カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。

≥99% at 20x(読み取り深度20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
 検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

検査の限界

詳しくはこちら

すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。

低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。

この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。

※この検査パネルでは、5つの主要原因遺伝子のみを対象としています。ヒルシュスプルング病の原因遺伝子として10種類以上が同定されていますが、多くの症例では原因がいまなお不明です。孤発性ヒルシュスプルング病の約半数は特定の遺伝子変異と関連していますが、残りの症例では原因が明らかではありません。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。臨床診断は組織学的検査(直腸生検による神経節細胞の欠如の確認)に基づいて行われます。

結果が出るまでの期間

2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。

料金

税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
生後48時間以内に胎便が排泄されなかった方、新生児期に腹部膨満や胆汁性嘔吐があった方、慢性的な便秘症状がある方におすすめします。また、注腸造影検査で移行帯が認められた場合や、肛門内圧検査で直腸肛門反射が欠如している場合は、ヒルシュスプルング病の可能性が高くなります。直腸生検で腸管神経節細胞の欠如が確認され、すでにヒルシュスプルング病と診断されている方で原因遺伝子を知りたい場合も検査をご検討ください。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
ヒルシュスプルング病は遺伝しますか?
ヒルシュスプルング病は複雑な遺伝形式をとる多遺伝子性の疾患です。多くは散発性(家族歴のない孤発例)に発症しますが、約20%は家族内で発症します。正常な両親から1人のヒルシュスプルング病の子どもが生まれた場合、次の子どもが発症するリスクは約4%です。原因遺伝子によっては常染色体優性遺伝や常染色体劣性遺伝のパターンを示すこともあります。
家族も検査を受ける必要がありますか?
患者さんで病原性変異が同定された場合、遺伝形式に応じてご家族の発症リスクを評価することができます。特に将来子どもを持つことを考えている場合、遺伝カウンセリングにより家族計画に重要な情報を提供できます。ご家族の検査により、出生前診断や着床前診断などの選択肢についてもご相談いただけます。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
この検査パネルでは5つの主要原因遺伝子のみを対象としています。ヒルシュスプルング病の原因遺伝子として10種類以上が同定されていますが、多くの症例では原因がいまなお不明です。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。ヒルシュスプルング病の確定診断は、直腸生検による腸管神経節細胞の欠如の組織学的確認に基づいて行われます。
この検査で合併症候群も分かりますか?
RET遺伝子の変異は多発性内分泌腫瘍症2型(MEN2)の原因となることがあります。また、EDNRB遺伝子やEDN3遺伝子の変異はワーデンブルグ症候群4型と関連することがあります。検査結果により、これらの合併症候群のリスク評価や追加のスクリーニングが必要かどうかを判断できます。
ヒルシュスプルング病の治療はどのように行われますか?
ヒルシュスプルング病の根治的治療は手術です。無神経節腸管を切除し、正常な腸管を肛門に吻合する「プルスルー手術」が標準的な治療となります。短域型の場合は生後1ヶ月以降、体重が4kg以上になれば根治術が可能です。長域型や全結腸型の場合は、一時的に人工肛門を造設することもあります。近年では腹腔鏡補助下の低侵襲手術も行われています。
ヒルシュスプルング関連腸炎とは何ですか?
ヒルシュスプルング関連腸炎(HAEC)は、ヒルシュスプルング病の最も重篤な合併症の一つで、患者さんの30-50%に発症します。突然の発熱、腹部膨満の悪化、嘔吐、血性下痢などの症状を呈し、敗血症に進展すると生命を脅かす可能性があります。術前・術後のいずれにも起こりうるため、これらの症状がある場合は直ちに医療機関を受診する必要があります。
術後の予後はどうですか?
短域型ヒルシュスプルング病や長域型の場合、適切な手術治療により全般的に良好な生存率と機能的予後が期待できます。ただし、術後も便秘や便失禁などの排便機能障害が残ることがあります。全結腸型以上の広範囲無神経節症では、術後も栄養吸収障害や水分管理の問題が残ることがあり、重症例では腸管不全に進展し腸移植が必要になることもあります。長期的なフォローアップが重要です。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。なお、ヒルシュスプルング病(全結腸型または小腸型)は指定難病291に認定されており、一定の基準を満たす場合は医療費助成の対象となります。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢、合併症候群のリスクなどについて、臨床遺伝専門医が専門的な観点から分かりやすくお伝えします。


プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

仲田洋美のプロフィールはこちら