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ヘルマンスキー・パドラック症候群NGS遺伝子パネル検査|ミネルバクリニック

ヘルマンスキー・パドラック症候群NGS遺伝子パネル検査|ミネルバクリニック

ヘルマンスキー・パドラック症候群とは

ヘルマンスキー・パドラック症候群(Hermansky-Pudlak Syndrome: HPS)は、眼皮膚白皮症と出血傾向を特徴とする遺伝性疾患です。1959年にチェコの医師František HermanskýとPavel Pudlákによって初めて報告されました。本症候群は眼皮膚白皮症(指定難病164)の症候型の一つとして分類されており、常染色体劣性遺伝形式を示します。

本疾患は、メラノソーム(色素を作る細胞内小器官)、血小板濃染顆粒(δ顆粒)、リソソーム(細胞内の分解酵素を含む小器官)などのリソソーム関連小器官(Lysosome-Related Organelles: LROs)の形成と輸送の異常により引き起こされます。これらの小器官の機能不全が、本症候群の多彩な症状を引き起こします。

ヘルマンスキー・パドラック症候群は、世界的には50万~100万人に1人の頻度で発症する稀な疾患ですが、プエルトリコ北西部では1,800人に1人と高頻度で見られます。日本では100症例以下の報告があり、非常に稀な疾患とされていますが、眼皮膚白皮症患者の約10%がHPSであることが報告されています。現在までに9つの病型(HPS1~HPS9)が同定されており、それぞれ異なる遺伝子変異によって引き起こされます。

症状と病態

ヘルマンスキー・パドラック症候群の症状は多彩で、基本的な3つの症状(眼皮膚白皮症の症状)に加えて、HPS特有の全身症状が現れます。症状の強さは病型によって異なり、軽症型から重症型まで幅広いスペクトラムを示します。

基本的な3つの症状(眼皮膚白皮症の症状)

  • 眼症状:視力低下(通常20/50~20/400)、眼振、虹彩透光性を伴う虹彩色素減少、網膜色素減少、中心窩低形成、羞明(まぶしがること)、視神経交叉の増加
  • 皮膚症状:白色からオリーブ色の皮膚(通常は他の家族より色が薄い)、日光による紅斑(日焼けしやすい)、皮膚がん(特に扁平上皮癌や基底細胞癌)のリスク増加
  • 毛髪の症状:白色から茶色の毛髪、銀色の頭髪

HPS特有の全身症状

  • 出血傾向:血小板濃染顆粒(δ顆粒)の欠損により、血小板機能異常を呈します。小手術(抜歯、包茎手術など)後の遷延する出血、打撲傷、鼻出血、歯肉出血、分娩後出血、月経過多などが見られます。出血時間は概ね延長していますが、プロトロンビン時間、部分トロンボプラスチン時間、血小板数は通常正常範囲です
  • 肺線維症(間質性肺炎):特にHPS1、HPS2、HPS4型で高頻度に認められます。典型的には30~40代に発症し、拘束性肺疾患として進行性の呼吸機能低下をきたします。肺線維症は本症候群の生命予後を左右する最も重要な合併症で、発症から10年以内に死に至ることがあります
  • 肉芽腫性大腸炎:約15%の患者で認められ、重症例もあります。腹痛、下痢、下血などの症状を呈します
  • 免疫不全:主にHPS2(AP3B1遺伝子変異)とHPS9(AP3D1遺伝子変異)で認められ、好中球減少や免疫機能異常を伴います
  • 腎炎:比較的稀ですが、腎機能障害をきたすことがあります
  • 心筋症:一部の症例で報告されています

病型による特徴

ヘルマンスキー・パドラック症候群は病型によって症状の強さが異なります:

  • 症状の強いHPS(重症型):HPS1、HPS2、HPS4型では肺線維症の合併率が高く、30~40代で発症し、生命予後に影響します。HPS2とHPS9では免疫不全も合併します
  • 症状の弱いHPS(軽症型):HPS3、HPS5、HPS6、HPS7、HPS8型では、肺線維症の合併は稀か報告されておらず、主に眼皮膚白皮症と出血傾向のみを呈します

セロイドリポフスチンの蓄積

リソソームにセロイド(蝋様物質)やリポフスチン(脂褐素)といった異常な脂肪タンパク質複合体が蓄積することが本症候群の特徴です。この蓄積は骨髄などの網内系細胞で認められ、肺線維症や大腸炎などの臓器障害の原因と考えられています。

遺伝形式と原因遺伝子

ヘルマンスキー・パドラック症候群は常染色体劣性遺伝形式を示します。現在までに9つの病型(HPS1~HPS9)が同定されており、それぞれ異なる遺伝子変異によって引き起こされます。これらの遺伝子はすべて、リソソーム関連小器官(LROs)の形成と輸送に関与するタンパク質をコードしています。

常染色体劣性遺伝とは

常染色体劣性遺伝では、両親がともに変異遺伝子の保因者(ヘテロ接合体)である場合、子どもが発症する確率は25%、保因者となる確率は50%、正常である確率は25%です。保因者は通常症状を示しませんが、発症者と同じ遺伝子変異を1コピー持っています。

主要な原因遺伝子

  • HPS1遺伝子:最も頻度の高い病型で、プエルトリコ北西部では約90%の症例を占めます。BLOC-3複合体の構成要素をコードし、肺線維症の合併率が高く(約80%)、30~40代で発症します
  • AP3B1遺伝子(HPS2):アダプタータンパク質複合体3(AP-3)のβ3Aサブユニットをコードします。肺線維症に加えて免疫不全(好中球減少)を伴うことが特徴です
  • HPS3遺伝子:BLOC-2複合体の構成要素をコードします。肺線維症の合併は稀とされています
  • HPS4遺伝子:BLOC-3複合体の構成要素をコードし、肺線維症の合併率が高い病型です
  • HPS5遺伝子:BLOC-2複合体の構成要素をコードします
  • HPS6遺伝子:BLOC-2複合体の構成要素をコードします
  • DTNBP1遺伝子(HPS7):ディストロブレビン結合タンパク質1(dysbindin)をコードし、BLOC-1複合体の構成要素です
  • BLOC1S3遺伝子(HPS8):BLOC-1複合体の構成要素をコードします
  • BLOC1S6遺伝子(HPS9):BLOC-1複合体の構成要素をコードします

BLOC複合体とAP-3複合体

HPS関連遺伝子産物の多くは、BLOC(Biogenesis of Lysosome-related Organelles Complex)複合体またはAP-3(Adaptor Protein-3)複合体を構成します。これらの複合体は、メラノソーム、血小板濃染顆粒、リソソームなどのリソソーム関連小器官の形成と輸送に必須の役割を果たしています。

当検査パネルでは、これらの原因遺伝子のうち、臨床的に重要な9遺伝子(AP3B1、BLOC1S3、BLOC1S6、DTNBP1、HPS1、HPS3、HPS4、HPS5、HPS6)を対象としています。これにより、ヘルマンスキー・パドラック症候群の主要な原因を効率的にスクリーニングすることが可能です。

ミネルバクリニックのヘルマンスキー・パドラック症候群遺伝子パネル検査の特徴

「ヘルマンスキー・パドラック症候群 NGSパネル検査」とは、現在ヘルマンスキー・パドラック症候群の原因として報告されている9つの遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。

従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。

何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、ヘルマンスキー・パドラック症候群に関連する9遺伝子を一度に調べられる「ヘルマンスキー・パドラック症候群 NGSパネル検査」を採用しています。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.費用がリーズナブル

一般的な医療機関でヘルマンスキー・パドラック症候群の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。

当院では、ヘルマンスキー・パドラック症候群に関係するとされる9つの遺伝子を一度に調べられる「ヘルマンスキー・パドラック症候群 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)

2.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行えるヘルマンスキー・パドラック症候群の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。

当院で行う「ヘルマンスキー・パドラック症候群 NGSパネル検査」の場合、9つの遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。

3.一気にまとめてできる

臨床症状からヘルマンスキー・パドラック症候群を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。

当院で行う「ヘルマンスキー・パドラック症候群 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な9つの原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。

オプション

塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)

検査内容

「ヘルマンスキー・パドラック症候群 NGSパネル検査」では、ヘルマンスキー・パドラック症候群に関係するとされる9種類の遺伝子(AP3B1、BLOC1S3、BLOC1S6、DTNBP1、HPS1、HPS3、HPS4、HPS5、HPS6)をまとめて検査します。

「ヘルマンスキー・パドラック症候群 NGSパネル検査」は、ヘルマンスキー・パドラック症候群の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。

どんな人が受けたらいいの?

【ヘルマンスキー・パドラック症候群の個人歴または家族歴のある方】に
「ヘルマンスキー・パドラック症候群 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。

この検査は以下のような方に適しています:
・眼皮膚白皮症(色素の薄い皮膚・毛髪・眼)がある方
・視力低下、眼振、羞明(まぶしがること)などの眼症状がある方
・出血傾向(鼻出血、歯肉出血、打撲傷、月経過多、抜歯後の遷延する出血など)がある方
・血小板機能異常(血小板凝集能検査で二次凝集反応の障害)を指摘された方
・全載電子顕微鏡法で血小板濃染顆粒(δ顆粒)の欠損を指摘された方
・間質性肺炎・肺線維症を合併している方
・肉芽腫性大腸炎の症状がある方
・免疫不全(好中球減少など)を伴う方
・ヘルマンスキー・パドラック症候群または眼皮膚白皮症の家族歴がある方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方

このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

遺伝子検査により原因が判明すると、ヘルマンスキー・パドラック症候群の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、紫外線対策、定期的な肺機能検査、出血への注意、適切なモニタリングを行うことができます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・他の眼皮膚白皮症や出血性疾患との鑑別
・病型の特定による予後予測(肺線維症のリスク評価)
・紫外線対策と皮膚がんスクリーニングの重要性の認識
・肺線維症の早期発見のための定期的な肺機能検査の実施
・出血傾向への対策(手術前の適切な準備、デスモプレシンの使用検討など)
・肉芽腫性大腸炎や免疫不全のリスク評価
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供

患者さんで病原性変異が同定された場合、常染色体劣性遺伝形式のため、同じ両親から生まれる次の子どもが発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。

対象遺伝子

詳しくはこちら

AP3B1, BLOC1S3, BLOC1S6, DTNBP1, HPS1, HPS3, HPS4, HPS5, HPS6 ( 9遺伝子 )

各遺伝子の詳細:
・AP3B1遺伝子(HPS2):
アダプタータンパク質複合体3(AP-3)のβ3Aサブユニットをコードする遺伝子。AP-3複合体は、リソソーム関連小器官への小胞輸送に関与します。AP3B1遺伝子変異によるHPS2では、肺線維症に加えて免疫不全(好中球減少、NK細胞機能低下)を伴うことが特徴です。

・BLOC1S3遺伝子(HPS8):
BLOC-1複合体のサブユニットをコードする遺伝子。BLOC-1複合体は8つのサブユニットから構成され、メラノソームや血小板濃染顆粒などのリソソーム関連小器官の形成に関与します。HPS8は比較的稀な病型です。

・BLOC1S6遺伝子(HPS9):
BLOC-1複合体のパルノピリン(pallidin)をコードする遺伝子。HPS9では免疫不全を伴うことが報告されています。

・DTNBP1遺伝子(HPS7):
ディストロブレビン結合タンパク質1(dysbindin、ダイスビンディン)をコードする遺伝子。BLOC-1複合体の構成要素で、統合失調症との関連も示唆されています。HPS7は比較的軽症の病型とされています。

・HPS1遺伝子(HPS1):
BLOC-3複合体の構成要素をコードする遺伝子。最も頻度の高い病型で、プエルトリコ北西部では約90%の症例を占め、創始者効果によって高頻度となっています。肺線維症の合併率が非常に高く(約80%)、30~40代で発症し、生命予後を左右します。日本人眼皮膚白皮症患者においてもHPS1変異が確認されています。

・HPS3遺伝子(HPS3):
BLOC-2複合体の構成要素をコードする遺伝子。中央プエルトリコやアシュケナージ系ユダヤ人に比較的多く見られます。肺線維症の合併は稀とされています。

・HPS4遺伝子(HPS4):
BLOC-3複合体の構成要素をコードする遺伝子。HPS1と同じくBLOC-3複合体を形成し、肺線維症の合併率が高い病型です。

・HPS5遺伝子(HPS5):
BLOC-2複合体の構成要素をコードする遺伝子。比較的軽症の病型で、肺線維症の合併は稀とされています。

・HPS6遺伝子(HPS6):
BLOC-2複合体の構成要素をコードする遺伝子。比較的軽症の病型とされています。

カバレッジ

カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。

≥99% at 20x(読み取り深度20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
 検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

検査の限界

詳しくはこちら

すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。

低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。

この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。

※この検査パネルでは、9つの原因遺伝子のみを対象としています。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。臨床診断は眼皮膚白皮症の所見と全載電子顕微鏡法による血小板濃染顆粒(δ顆粒)の欠損の確認によって行われます。

結果が出るまでの期間

2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。

料金

税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
眼皮膚白皮症(色素の薄い皮膚・毛髪・眼、視力低下、眼振)があり、出血傾向(鼻出血、歯肉出血、打撲傷、月経過多、抜歯後の遷延する出血など)を伴う方におすすめします。特に血小板機能異常を指摘された方、全載電子顕微鏡法で血小板濃染顆粒(δ顆粒)の欠損を指摘された方は検査をご検討ください。また、間質性肺炎や肉芽腫性大腸炎を合併している場合、家族に同様の症状がある場合も検査の適応となります。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
他の眼皮膚白皮症との違いは何ですか?
ヘルマンスキー・パドラック症候群は眼皮膚白皮症の症候型の一つで、眼皮膚白皮症の症状に加えて、出血傾向(血小板濃染顆粒の欠損)、セロイドリポフスチンの蓄積を特徴とします。さらに病型によっては肺線維症、肉芽腫性大腸炎、免疫不全などの全身症状を伴います。遺伝子検査により原因遺伝子を特定することで、病型を確定し、将来の合併症リスクを評価できます。
肺線維症のリスクはどのくらいですか?
病型によってリスクが大きく異なります。HPS1とHPS4では肺線維症の合併率が非常に高く(HPS1では約80%)、典型的には30~40代で発症します。HPS2でも肺線維症のリスクがあります。一方、HPS3、HPS5、HPS6、HPS7、HPS8では肺線維症の合併は稀か報告されていません。遺伝子検査により病型を特定することで、肺線維症のリスクを予測し、定期的な肺機能検査などの適切なモニタリングを行うことができます。
家族も検査を受ける必要がありますか?
常染色体劣性遺伝形式のため、患者さんの両親は通常保因者(ヘテロ接合体)です。同じ両親から生まれる兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。臨床診断は眼皮膚白皮症の所見と全載電子顕微鏡法による血小板濃染顆粒(δ顆粒)の欠損の確認によって行われます。また、当検査パネルに含まれていない他の稀な原因遺伝子の可能性もあります。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。病型の特定、今後の対応(紫外線対策、肺機能検査の必要性、出血への注意など)、ご家族への影響、将来の家族計画などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
常染色体劣性遺伝のため、患者さんとパートナーの両方が変異を持つ場合、子どもが発症する確率は25%、保因者となる確率は50%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
ヘルマンスキー・パドラック症候群の治療はどのように行われますか?
現在のところ根本的な治療法はありませんが、症状に対する対症療法が行われます。紫外線対策(サングラス、日焼け止め、防護服)、定期的な皮膚がんスクリーニング、視力低下に対する補助具、出血傾向への対策(手術前のデスモプレシン投与、血小板輸血など)、肺線維症に対する抗線維化薬(ピルフェニドンなど)や肺移植、大腸炎に対する治療などが行われます。
予後はどうですか?
予後は病型によって大きく異なります。肺線維症を合併しないHPS3、HPS5、HPS6、HPS7、HPS8では、適切な紫外線対策と出血への注意により、比較的良好な予後が期待できます。一方、HPS1、HPS2、HPS4では肺線維症が生命予後を左右する最も重要な合併症で、発症から10年以内に呼吸不全に至ることがあります。早期からの定期的な肺機能検査と適切な管理が重要です。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では臨床的に重要な9つの原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。


プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

仲田洋美のプロフィールはこちら