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遺伝性球状赤血球症NGS遺伝子パネル検査|ミネルバクリニック

遺伝性球状赤血球症NGS遺伝子パネル検査|ミネルバクリニック

遺伝性球状赤血球症とは

遺伝性球状赤血球症(Hereditary Spherocytosis: HS)は、赤血球膜を構成するタンパク質の遺伝的異常により、赤血球が正常な両凹円盤状ではなく小型の球状に変形し、溶血性貧血を引き起こす遺伝性疾患です。日本における先天性溶血性貧血のうち約70%を遺伝性球状赤血球症が占めており、5~10万人に1人の頻度で発症すると推測されています。

正常な赤血球は中央がへこんだ円盤状をしており、この形状により狭い血管を通過する際に細胞が折りたたまれて変形し、損傷を受けずに流れることができます。しかし、遺伝性球状赤血球症では赤血球膜の細胞骨格を構成するタンパク質に異常があるため、赤血球が球状になり変形能が低下します。その結果、脾臓の微小循環を通過できず、脾臓で捕捉され破壊されてしまいます(血管外溶血)。

遺伝性球状赤血球症は常染色体優性(顕性)遺伝が最も多く約75%を占めますが、約25%は突然変異による孤発例です。常染色体劣性(潜性)遺伝の形式もあります。症状の程度には個人差が大きく、小児期に重度の貧血や黄疸で診断される重症例から、成人期まで診断されず検査で偶然発見される軽症例まで様々です。

症状と病態

遺伝性球状赤血球症の主な症状は、赤血球が脾臓で破壊されることによる貧血、黄疸、脾臓の腫大(脾腫)です。溶血により赤血球から放出されるビリルビンが増加するため、ビリルビン結石による胆石症を合併しやすいことも特徴です。

主要症状

  • 貧血(溶血による):疲労感、息切れ、めまい、動悸など
  • 黄疸:皮膚や眼球の白色部分が黄色くなる
  • 脾腫:脾臓の腫大、左上腹部の不快感や圧迫感
  • 胆石症:右上腹部痛、発熱(10歳以下で5%、20歳以上で50%以上が合併)
  • 新生児黄疸:約30%で新生児期から強い黄疸が出現し、光線療法が必要

貧血の程度と代償機構

多くの患者さんでは骨髄が活発に赤血球を産生することで貧血が代償されており、比較的軽症です。乳幼児期には約半数に軽度の貧血がみられますが、学童期以降は代償されて貧血を認めないことも多くあります。しかし、以下の状況では急激に貧血が悪化することがあります:

貧血の増悪因子

  • 無形成発作(aplastic crisis):ヒトパルボウイルスB19感染(伝染性紅斑・リンゴ病の原因ウイルス)により、骨髄での赤血球産生が一時的に停止し、急激に著しい貧血を生じます。赤血球輸血が必要となることがあり、注意が必要です
  • 溶血発作(hemolytic crisis):風邪などのウイルス感染により脾臓の機能が亢進し、溶血が盛んになることで症状が悪化します
  • 巨赤芽球性貧血:葉酸欠乏により赤血球産生が低下します

合併症

溶血により持続的にビリルビンが産生されるため、以下の合併症に注意が必要です:

  • 胆石症:ビリルビン結石が形成されやすく、10歳以下で5%、20歳を過ぎると50%以上が胆石を合併します。右上腹部痛や発熱などの症状が出現することがあります
  • 肝腫大:一部の患者さんで認められることがあります
  • 脾機能亢進症:脾臓の腫大により左上腹部に不快感を生じることがあります

新生児期の症状

約30%の患者さんで新生児期から強い黄疸が出現し、光線療法が必要となります。重症例では交換輸血が必要になる場合もあり、診断のきっかけとなることがあります。

遺伝形式と原因遺伝子

遺伝性球状赤血球症は、赤血球膜の細胞骨格タンパク質をコードする遺伝子の変異により発症します。現在までに5つの原因遺伝子が同定されており、これらの遺伝子のいずれかに変異があると、赤血球膜の脂質二重層と細胞骨格の結合(垂直方向の結合)が障害され、膜の表面積が減少して球状赤血球が形成されます。

遺伝形式

常染色体優性(顕性)遺伝:約75%を占め、最も一般的な遺伝形式です。ANK1、SPTB、SLC4A1遺伝子の変異が主な原因となります。患者さんの子どもが発症するリスクは50%です。

常染色体劣性(潜性)遺伝:SPTA1、EPB42、またはANK1遺伝子の複合ヘテロ接合変異により発症します。両親がともに保因者の場合、子どもが発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。

孤発例:約25%は家族歴がなく、新規変異(de novo mutation)により発症します。

原因遺伝子の頻度

原因遺伝子の頻度は人種や地域により異なりますが、一般的に以下の順で多いとされています:

  • ANK1遺伝子とSPTB遺伝子:最も頻度が高く、合わせて約60~75%を占めます
  • SLC4A1遺伝子:約15~25%を占めます
  • SPTA1遺伝子とEPB42遺伝子:比較的稀で、合わせて約5~10%程度です

原因遺伝子と赤血球膜タンパク質

赤血球膜の細胞骨格は、α-スペクトリンとβ-スペクトリンが二量体を形成し、それらが頭-頭で会合して四量体を構成することで骨格網を形成しています。この骨格網は、アンキリン、プロテイン4.2、バンド3タンパク質などの錨タンパク質を介して脂質膜に結合しています。遺伝性球状赤血球症では、これらのタンパク質のいずれかに欠損または機能異常が生じることで、膜の安定性が失われます。

  • ANK1遺伝子:アンキリンをコードし、膜骨格と膜の結合に重要な役割を果たします
  • SPTB遺伝子:β-スペクトリンをコードし、膜骨格の主要構成要素です
  • SPTA1遺伝子:α-スペクトリンをコードし、膜骨格の形成に必須です
  • SLC4A1遺伝子:バンド3タンパク質(陰イオン交換体1)をコードし、膜の錨として機能します
  • EPB42遺伝子:プロテイン4.2をコードし、バンド3とアンキリンの結合を安定化します

ミネルバクリニックの遺伝性球状赤血球症遺伝子パネル検査の特徴

「遺伝性球状赤血球症 NGSパネル検査」とは、現在遺伝性球状赤血球症の原因として報告されている5つの遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。

従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。

何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、遺伝性球状赤血球症に関連する5遺伝子を一度に調べられる「遺伝性球状赤血球症 NGSパネル検査」を採用しています。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.費用がリーズナブル

一般的な医療機関で遺伝性球状赤血球症の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。

当院では、遺伝性球状赤血球症に関係するとされる5つの遺伝子を一度に調べられる「遺伝性球状赤血球症 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)

2.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行える遺伝性球状赤血球症の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。

当院で行う「遺伝性球状赤血球症 NGSパネル検査」の場合、5つの遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。

3.一気にまとめてできる

臨床症状から遺伝性球状赤血球症を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。

当院で行う「遺伝性球状赤血球症 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な5つの原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。

オプション

塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)

検査内容

「遺伝性球状赤血球症 NGSパネル検査」では、遺伝性球状赤血球症に関係するとされる5種類の遺伝子(ANK1、EPB42、SLC4A1、SPTA1、SPTB)をまとめて検査します。

「遺伝性球状赤血球症 NGSパネル検査」は、遺伝性球状赤血球症の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。

どんな人が受けたらいいの?

【遺伝性球状赤血球症の個人歴または家族歴のある方】に
「遺伝性球状赤血球症 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。

この検査は以下のような方に適しています:
・慢性的な溶血性貧血がある方
・黄疸(皮膚や眼球の白色部分が黄色くなる)が繰り返し出現する方
・脾腫(脾臓の腫大)が認められる方
・血液検査で小型球状赤血球が認められる方
・赤血球浸透圧抵抗試験で抵抗性の低下が認められた方
・新生児期に重度の黄疸があり光線療法や交換輸血を受けた方
・胆石症(特にビリルビン結石)を若年で発症した方
・ヒトパルボウイルスB19感染時に急激な貧血悪化を経験した方
・遺伝性球状赤血球症の家族歴がある方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方

このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

遺伝子検査により原因が判明すると、遺伝性球状赤血球症の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切な経過観察、支持療法、必要に応じた脾臓摘出術の検討を行うことができます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・他の溶血性貧血疾患との鑑別
・疾患の重症度予測と長期的な管理計画の立案
・葉酸補充療法などの支持療法の適切な実施
・脾臓摘出術の適応判断とタイミングの決定
・胆石症などの合併症リスクの評価と早期発見
・無形成発作や溶血発作への適切な対応
・感染症(特にヒトパルボウイルスB19)への注意喚起
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供

患者さんで病原性変異が同定された場合、遺伝形式に応じて家族の発症リスクが異なります。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症するリスクは50%、常染色体劣性遺伝の場合は兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。

対象遺伝子

詳しくはこちら

ANK1, EPB42, SLC4A1, SPTA1, SPTB ( 5遺伝子 )

各遺伝子の詳細:
・ANK1遺伝子:
アンキリン-1をコードする遺伝子で、染色体8p11.21に位置します。アンキリンは赤血球膜骨格と脂質膜を結合させる重要な錨タンパク質であり、バンド3タンパク質とスペクトリンを連結します。ANK1遺伝子の変異は遺伝性球状赤血球症の最も頻度の高い原因の一つで、約40~65%の症例で認められます。常染色体優性遺伝が多いですが、劣性遺伝や孤発例もあります。変異により機能的なアンキリンが減少すると、膜の安定性が損なわれ球状赤血球が形成されます。

・EPB42遺伝子:
プロテイン4.2をコードする遺伝子で、染色体15q15.2に位置します。プロテイン4.2は赤血球膜の細胞骨格タンパク質で、バンド3タンパク質とアンキリンの複合体に結合し、膜の安定性を維持します。EPB42遺伝子の変異は遺伝性球状赤血球症の比較的稀な原因で、約5%未満の症例で認められます。常染色体劣性遺伝が多く、日本人を含むアジア人集団でより高頻度に認められます。両親がともに保因者の場合、子どもが発症するリスクは25%です。

・SLC4A1遺伝子:
バンド3タンパク質(陰イオン交換体1、AE1)をコードする遺伝子で、染色体17q21.31に位置します。バンド3タンパク質は赤血球膜で最も豊富な膜貫通タンパク質で、重炭酸イオンと塩化物イオンの交換を担うとともに、アンキリンを介して膜骨格と結合する錨としての機能を持ちます。SLC4A1遺伝子の変異は約15~25%の遺伝性球状赤血球症症例で認められます。常染色体優性遺伝が多く、変異により膜の安定性が低下します。なお、SLC4A1遺伝子の異なる変異は遠位尿細管性アシドーシスの原因にもなります。

・SPTA1遺伝子:
α-スペクトリンをコードする遺伝子で、染色体1q23.1に位置します。α-スペクトリンは赤血球膜骨格の主要構成要素で、β-スペクトリンと二量体を形成し、さらに四量体を構成して膜骨格網を形成します。正常な赤血球ではα-スペクトリンは過剰に産生されるため、SPTA1遺伝子の変異による遺伝性球状赤血球症は比較的稀で、約5%未満の症例で認められます。重症型の遺伝性球状赤血球症は、両方のアレルから正常なα-スペクトリンの発現が著しく低下する複合ヘテロ接合変異または両アレルホモ接合変異により発症します。常染色体劣性遺伝が多く、胎児水腫を呈する最重症例も報告されています。

・SPTB遺伝子:
β-スペクトリンをコードする遺伝子で、染色体14q23.3に位置します。β-スペクトリンはα-スペクトリンと二量体を形成し、赤血球膜骨格の基本構造を構成します。SPTB遺伝子の変異は遺伝性球状赤血球症の主要な原因の一つで、約15~30%の症例で認められます。常染色体優性遺伝が多く、ナンセンス変異やフレームシフト変異により機能的なβ-スペクトリンが減少すると、膜骨格の形成が障害され球状赤血球が生じます。中国、韓国、北ヨーロッパ、ブラジルなどの集団で高頻度に認められることが報告されています。

カバレッジ

カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。

≥99% at 20x(読み取り深度平均20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
 検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

検査の限界

詳しくはこちら

すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。

低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。

この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。

※この検査パネルでは、5つの主要原因遺伝子のみを対象としています。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。稀な遺伝子変異や未同定の遺伝子が原因の可能性もあります。

結果が出るまでの期間

2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。

料金

税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
慢性的な溶血性貧血、繰り返す黄疸、脾腫がある方におすすめします。また、血液検査で小型球状赤血球が認められた方、赤血球浸透圧抵抗試験で異常が認められた方、新生児期に重度の黄疸があった方、若年で胆石症を発症した方も検査をご検討ください。家族に同様の症状がある場合も重要な情報となります。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
遺伝性球状赤血球症は遺伝しますか?
遺伝性球状赤血球症は約75%が常染色体優性(顕性)遺伝で、患者さんの子どもが発症するリスクは50%です。約25%は新規変異による孤発例で家族歴がありません。また、常染色体劣性(潜性)遺伝の形式もあり、この場合は両親がともに保因者であれば子どもが発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。
家族も検査を受ける必要がありますか?
遺伝形式によって家族の発症リスクが異なります。患者さんで病原性変異が同定された場合、ご家族の検査により発症リスクや保因者状態を明らかにすることができます。将来の家族計画に重要な情報を提供できますので、ご家族の検査もご検討ください。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
この検査パネルでは5つの主要原因遺伝子を対象としていますが、検査で病原性変異が検出されなくても疾患を完全に否定することはできません。稀な遺伝子変異や未同定の遺伝子が原因の可能性もあります。臨床症状と血液検査所見に基づいた診断と管理が引き続き重要です。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
遺伝形式によって子どもへの影響が異なります。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症する確率は50%、常染色体劣性遺伝の場合は保因者同士のカップルで子どもが発症する確率は25%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
遺伝性球状赤血球症の治療はどのように行われますか?
軽症例では葉酸補充療法などの支持療法で経過観察を行います。中等症以上で症状がある場合や、頻回の溶血発作、胆石症などの合併症がある場合は、脾臓摘出術が有効な治療法となります。脾臓摘出により溶血が軽減し、貧血や黄疸が改善します。ただし、幼少期の脾臓摘出は感染症のリスクが高まるため、通常は5歳以降に実施されます。摘出前には肺炎球菌、インフルエンザ菌、髄膜炎菌のワクチン接種が必要です。
無形成発作とは何ですか?
ヒトパルボウイルスB19(伝染性紅斑・リンゴ病の原因ウイルス)に感染すると、一時的に骨髄での赤血球産生が停止し、急激に著しい貧血を生じることがあります。これを無形成発作と呼びます。重症の場合は赤血球輸血が必要となるため、注意が必要です。発熱、全身倦怠感、顔面紅斑などの症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診してください。
予後はどうですか?
軽症例では支持療法のみで正常な生活を送ることができます。中等症以上の場合も、適切な時期に脾臓摘出術を受けることで溶血が軽減し、多くの患者さんは良好な予後が期待できます。ただし、脾臓摘出後は感染症のリスクが高まるため、適切なワクチン接種と感染予防が重要です。また、胆石症などの合併症に対する定期的な経過観察も必要です。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では臨床的に重要な5つの原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。


プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

仲田洋美のプロフィールはこちら