(更新日:2025/10/08)
ヘモクロマトーシス遺伝子検査(NGSパネル)|ミネルバクリニック
ヘモクロマトーシスとは
ヘモクロマトーシス(血色素症)は、体内に過剰な鉄が蓄積される遺伝性疾患です。正常な状態では、人体は食事から摂取する鉄の約10%を吸収し、必要量を維持していますが、ヘモクロマトーシスでは遺伝子変異により鉄代謝の調節機能に異常が生じ、腸管から過剰に鉄が吸収されます。
過剰な鉄は肝臓、膵臓、心臓、皮膚、関節、内分泌器官などの諸臓器に沈着し、組織障害を引き起こします。人体には過剰な鉄を自然に排出する機構がないため、鉄は徐々に蓄積し続け、未治療の場合には深刻な臓器障害や生命に関わる合併症を引き起こす可能性があります。
ヘモクロマトーシスは欧米では最も頻度の高い遺伝性疾患の一つで、特に北欧系の白人集団に多く見られます。日本を含むアジアでは比較的稀な疾患とされていますが、近年の遺伝子検査の普及により診断例が増加しています。早期診断と適切な治療により、臓器障害の進行を防ぎ、健康な生活を維持することが可能です。
症状と病態
ヘモクロマトーシスは遺伝子変異により出生時から存在しますが、症状は通常、中年期以降に顕在化します。鉄の蓄積は徐々に進行するため、初期段階では無症状であることが多く、定期的な血液検査や家族歴から偶然発見されることもあります。
主要症状
ヘモクロマトーシスの古典的な三主徴は、肝硬変、糖尿病、皮膚色素沈着です。さらに心不全を加えた四主徴が知られています。ただし、現在では遺伝子検査による早期診断が可能になったため、これらの古典的な症状が揃う前に診断されることが増えています。
慢性的な疲労感・倦怠感
関節痛・関節の腫脹(特に手指の第2・3指の中手指節関節)
皮膚の色素沈着(青銅色または灰色の皮膚)
腹痛・腹部不快感
性欲減退・勃起障害
無月経・月経不順
体重減少
心悸亢進・息切れ
臓器別の症状と合併症
肝臓: 鉄過剰の影響を最も受けやすい臓器です。初期には肝腫大や肝酵素の上昇が見られ、進行すると肝線維化、肝硬変へと進展します。肝硬変に至ると、黄疸、腹水、食道静脈瘤などが出現し、肝細胞癌のリスクが著しく高まります。肝硬変を有する患者では、肝細胞癌の発症リスクが一般人口の200倍以上になるとされています。
膵臓: 膵臓への鉄沈着により、インスリン分泌細胞が障害され糖尿病を発症します。ヘモクロマトーシスに伴う糖尿病は「ブロンズ糖尿病」とも呼ばれ、通常の糖尿病治療に加えて鉄除去療法が必要です。
心臓: 心筋への鉄沈着により、心筋症、不整脈、うっ血性心不全を引き起こします。若年性ヘモクロマトーシス(2型)では、心不全が主要な死因となることがあります。適切な治療により、心機能の改善が期待できます。
内分泌器官: 下垂体、甲状腺、副甲状腺、性腺などへの鉄沈着により、様々なホルモン異常が生じます。性腺機能低下症による性欲減退、勃起障害、無月経、不妊などが高頻度に見られます。また、甲状腺機能低下症、副甲状腺機能低下症なども認められます。
関節: 関節痛や関節の腫脹は、患者さんの最も一般的な訴えの一つです。特に手指の第2・3指の中手指節関節に特徴的な変形性関節症が認められ、軟骨石灰化症を伴うこともあります。
性別・年齢による違い
男性は女性に比べて約10倍発症しやすく、より若年で症状が出現する傾向があります。女性の場合、月経や妊娠により鉄が失われるため、症状の出現は通常閉経後となります。若年性ヘモクロマトーシス(2型)では、15~30歳で重症の鉄過剰症と肝臓・心臓疾患を引き起こします。
遺伝形式と原因遺伝子
遺伝性ヘモクロマトーシスには、変異した遺伝子に応じて複数の病型があります。すべての病型において、鉄吸収を抑制する身体の能力が損なわれ、鉄貯蔵が過剰になります。
1型ヘモクロマトーシス(HFE関連)
最も一般的な病型で、遺伝性ヘモクロマトーシスの約90%以上を占めます。第6染色体上のHFE遺伝子の変異によって引き起こされ、常染色体劣性遺伝形式をとります。
HFE遺伝子には主に2つの変異が知られています:
C282Y変異: 最も頻度の高い変異で、C282Yホモ接合体(両親から同じ変異を受け継いだ場合)の約70~80%がヘモクロマトーシスを発症します
H63D変異: C282Yよりも軽度の鉄過剰を引き起こします。H63Dホモ接合体では通常、臨床的に問題となる鉄過剰は生じませんが、C282Y/H63D複合ヘテロ接合体では軽度から中等度の鉄過剰が見られることがあります
HFE遺伝子は、腸管からの鉄吸収を調節するヘプシジンというホルモンの産生に関与しており、この遺伝子の機能異常により鉄吸収が過剰に亢進します。通常、中年期以降に症状が顕在化し、徐々に進行します。
2型ヘモクロマトーシス(若年性ヘモクロマトーシス)
若年性ヘモクロマトーシスとも呼ばれ、常染色体劣性遺伝形式をとります。以下の遺伝子変異が原因となります:
HJV遺伝子(ヘモジュベリン): ヘプシジンの調節に関与
HAMP遺伝子(ヘプシジン): 鉄代謝の中心的な調節因子
15~30歳の若年で重症の鉄過剰症を引き起こし、肝臓および心臓疾患が主要な症状となります。1型よりも急速に進行し、早期に適切な治療を行わないと予後不良となります。
3型ヘモクロマトーシス
TFR2遺伝子(トランスフェリン受容体2)の変異によって引き起こされ、常染色体劣性遺伝形式をとります。臨床症状は1型に類似していますが、やや軽度であることが多いです。
4型ヘモクロマトーシス(フェロポルチン病)
SLC40A1遺伝子(フェロポルチン)の変異によって引き起こされます。常染色体優性遺伝形式をとる唯一の病型です。
フェロポルチンは細胞から血液中への鉄の輸送を担うタンパク質で、この遺伝子の変異により2つの異なる病態が生じます:
4A型: 細胞内への鉄の取り込みが障害され、マクロファージに鉄が蓄積します。トランスフェリン飽和度は正常または低値です
4B型: ヘプシジン抵抗性により鉄が過剰に放出され、実質細胞に鉄が蓄積します。臨床像は他の病型に類似しています
その他の関連遺伝子
BMP2(骨形成タンパク質2)やFTH1(フェリチン重鎖)の変異も、稀にヘモクロマトーシスの原因となることが報告されています。
当検査パネルでは、これらの病型に関与する臨床的に重要な7遺伝子(BMP2、FTH1、HAMP、HFE、HJV、SLC40A1、TFR2)を対象としています。これにより、遺伝性ヘモクロマトーシスの主要な原因を効率的にスクリーニングすることが可能です。
ミネルバクリニックのヘモクロマトーシス遺伝子パネル検査の特徴
「ヘモクロマトーシス NGSパネル検査」とは、現在ヘモクロマトーシスの原因として報告されている7つの遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。
従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。
何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、ヘモクロマトーシスに関連する7遺伝子を一度に調べられる「ヘモクロマトーシス NGSパネル検査」を採用しています。
一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページ をご覧ください。
1.費用がリーズナブル
一般的な医療機関でヘモクロマトーシスの遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。
当院では、ヘモクロマトーシスに関係するとされる7つの遺伝子を一度に調べられる「ヘモクロマトーシス NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)
2.結果が出るまでがはやい
一般的な医療機関で行えるヘモクロマトーシスの遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。
当院で行う「ヘモクロマトーシス NGSパネル検査」の場合、7つの遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。
3.一気にまとめてできる
臨床症状や血液検査からヘモクロマトーシスを疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。
当院で行う「ヘモクロマトーシス NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な7つの原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。
オプション
塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)
検査内容
「ヘモクロマトーシス NGSパネル検査」では、ヘモクロマトーシスに関係するとされる7種類の遺伝子(BMP2、FTH1、HAMP、HFE、HJV、SLC40A1、TFR2)をまとめて検査します。
「ヘモクロマトーシス NGSパネル検査」は、ヘモクロマトーシスの遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。
どんな人が受けたらいいの?
【ヘモクロマトーシスの個人歴または家族歴のある方】に
「ヘモクロマトーシス NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。
この検査は以下のような方に適しています:
・血液検査で血清フェリチン値やトランスフェリン飽和度が高値の方
・原因不明の肝機能障害がある方
・肝硬変と診断された方
・糖尿病を発症した方(特に肝疾患を伴う場合)
・慢性的な疲労感や倦怠感がある方
・関節痛や関節の腫脹がある方(特に手指の中手指節関節)
・皮膚の色素沈着(青銅色または灰色)が見られる方
・心筋症や不整脈がある方
・性欲減退、勃起障害、無月経などの内分泌症状がある方
・ヘモクロマトーシスの家族歴がある方
・ヘモクロマトーシス患者の第1度近親者(両親、兄弟姉妹、子ども)の方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方
このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。
検査で得られる患者さんの潜在的利益は?
遺伝子検査により原因が判明すると、ヘモクロマトーシスの診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、早期から瀉血療法などの鉄除去治療を開始することで、臓器障害の進行を予防できます。
遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・他の鉄過剰症との鑑別
・瀉血療法(定期的な採血による鉄除去)の適応判断
・鉄キレート療法の適応評価
・肝硬変や肝細胞癌のリスク評価と定期的なスクリーニング
・心機能障害のリスク評価と管理
・糖尿病などの内分泌合併症の早期発見と管理
・関節症状の適切な評価と対応
・疾患の進行予測と長期的な管理計画の立案
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供
患者さんで病原性変異が同定された場合、遺伝形式に応じて家族の発症リスクが異なります。常染色体劣性遺伝(1型、2型、3型)の場合、患者さんの兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。常染色体優性遺伝(4型)の場合、子どもが変異を受け継ぐリスクは50%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。
特に、HFE遺伝子のC282Yホモ接合体が同定された第1度近親者は、症状の有無にかかわらず遺伝子検査とスクリーニングを受けることが推奨されます。
対象遺伝子
詳しくはこちら
BMP2, FTH1, HAMP, HFE, HJV, SLC40A1, TFR2 ( 7遺伝子 )
各遺伝子の詳細:
・BMP2遺伝子(Bone Morphogenetic Protein 2):
骨形成タンパク質2をコードする遺伝子。ヘプシジンの発現調節に関与し、鉄代謝の制御に重要な役割を果たします。稀にヘモクロマトーシスの原因となることが報告されています。
・FTH1遺伝子(Ferritin Heavy Chain 1):
フェリチン重鎖をコードする遺伝子。フェリチンは細胞内で鉄を貯蔵するタンパク質で、この遺伝子の変異により鉄代謝異常を引き起こすことがあります。常染色体優性遺伝形式をとる稀な病型の原因となります。
・HAMP遺伝子(Hepcidin Antimicrobial Peptide):
ヘプシジンをコードする遺伝子。ヘプシジンは肝臓で産生される鉄代謝の中心的な調節因子で、腸管からの鉄吸収と細胞からの鉄放出を抑制します。この遺伝子の変異は、2型ヘモクロマトーシス(若年性ヘモクロマトーシス)の原因となり、常染色体劣性遺伝形式をとります。15~30歳で重症の鉄過剰症、肝臓および心臓疾患を引き起こします。
・HFE遺伝子(Human Homeostatic Iron Regulator):
最も頻度の高いヘモクロマトーシスの原因遺伝子で、1型ヘモクロマトーシスの原因となります。第6染色体上に位置し、常染色体劣性遺伝形式をとります。主な変異はC282YとH63Dで、C282Yホモ接合体が最も高い発症リスクを持ちます。HFEタンパク質はヘプシジンの発現調節に関与し、腸管からの鉄吸収を制御しています。欧米では最も一般的な遺伝性疾患の一つです。
・HJV遺伝子(Hemojuvelin BMP Co-receptor):
ヘモジュベリンをコードする遺伝子。ヘモジュベリンはBMPシグナル伝達の補助受容体として機能し、ヘプシジンの発現を調節します。この遺伝子の変異は、2型ヘモクロマトーシス(若年性ヘモクロマトーシス)の最も頻度の高い原因で、常染色体劣性遺伝形式をとります。HAMP遺伝子変異と同様、若年で重症の鉄過剰症を引き起こします。
・SLC40A1遺伝子(Solute Carrier Family 40 Member 1):
フェロポルチンをコードする遺伝子。フェロポルチンは細胞から血液中への鉄の輸送を担う唯一の鉄輸出タンパク質です。この遺伝子の変異は、4型ヘモクロマトーシス(フェロポルチン病)の原因となり、常染色体優性遺伝形式をとる唯一の病型です。変異のタイプにより、4A型(マクロファージへの鉄蓄積)と4B型(実質細胞への鉄蓄積)の2つの異なる病態を示します。
・TFR2遺伝子(Transferrin Receptor 2):
トランスフェリン受容体2をコードする遺伝子。肝臓でのヘプシジン発現調節に関与します。この遺伝子の変異は、3型ヘモクロマトーシスの原因となり、常染色体劣性遺伝形式をとります。臨床症状は1型に類似していますが、やや軽度であることが多いです。
カバレッジ
カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。
≥99% at 20x(読み取り深度平均20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。
検体
血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)
※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能 です。
ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。
検査の限界
詳しくはこちら
すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。
低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。
この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。
※この検査パネルでは、7つの原因遺伝子のみを対象としています。まれに、既知の遺伝子以外の変異によってヘモクロマトーシス様の症状を呈することがあります。また、HFE遺伝子のC282Y変異を持つ人のすべてが臨床症状を発症するわけではなく(浸透率の問題)、環境要因や他の遺伝的要因も発症に影響を与えます。検査で病原性変異が検出されなくても、ヘモクロマトーシスを完全に否定することはできません。
※二次性(続発性)ヘモクロマトーシスは、この検査では検出できません。頻回の輸血、鉄剤の過剰投与、再生不良性貧血、肝疾患などによる二次性ヘモクロマトーシスの診断には、臨床的評価が必要です。
結果が出るまでの期間
2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。
料金
税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)
よくあるご質問
どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
血液検査で血清フェリチン値が高値(男性で300ng/mL以上、女性で200ng/mL以上)、トランスフェリン飽和度が45%以上の方、原因不明の肝機能障害がある方、糖尿病を発症した方(特に肝疾患を伴う場合)におすすめします。また、慢性的な疲労感、関節痛(特に手指の中手指節関節)、皮膚の色素沈着が見られる方や、ヘモクロマトーシスの家族歴がある方も検査をご検討ください。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
ヘモクロマトーシスは治療できますか?
はい、早期に診断されれば効果的に治療できます。主な治療法は瀉血療法(定期的な採血)で、体内の過剰な鉄を除去します。通常、毎週または2週間おきに500mLの採血を行い、血清フェリチン値が50~100ng/mLになるまで続けます。その後は維持療法として数ヶ月に1回の採血を継続します。早期治療により、臓器障害の進行を防ぎ、健康な生活を維持できます。
家族も検査を受ける必要がありますか?
遺伝形式によって家族の発症リスクが異なります。最も頻度の高い1型ヘモクロマトーシス(HFE遺伝子変異、常染色体劣性遺伝)の場合、患者さんの兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。4型ヘモクロマトーシス(SLC40A1遺伝子変異、常染色体優性遺伝)の場合、子どもが変異を受け継ぐリスクは50%です。HFE遺伝子のC282Yホモ接合体が同定された場合、第1度近親者(両親、兄弟姉妹、子ども)の遺伝子検査とスクリーニングが推奨されます。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
この検査では7つの主要な原因遺伝子を調べますが、稀に他の遺伝子変異や環境要因によってヘモクロマトーシス様の症状を呈することがあります。検査で病原性変異が検出されなくても、血液検査で鉄過剰が認められる場合は、二次性(続発性)ヘモクロマトーシスの可能性を含めた臨床的評価が引き続き重要です。また、定期的な血清フェリチン値とトランスフェリン飽和度のモニタリングが推奨されます。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。病原性変異が見つかった場合は、瀉血療法などの治療計画や、肝臓・心臓などの定期的なモニタリングの必要性についてもご説明します。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
遺伝形式によって子どもへの影響が異なります。最も頻度の高い1型ヘモクロマトーシス(常染色体劣性遺伝)の場合、患者さんの子どもは必ず保因者となりますが、配偶者が保因者でなければ発症しません。4型ヘモクロマトーシス(常染色体優性遺伝)の場合は、子どもが変異を受け継ぐ確率は50%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
HFE遺伝子の変異を持っていても必ず発症しますか?
HFE遺伝子のC282Yホモ接合体の浸透率は完全ではなく、約70~80%が臨床的に問題となる鉄過剰を発症します。男性の方が女性より発症しやすく、より若年で症状が出現します。女性の場合、月経や妊娠により鉄が失われるため、症状の出現は通常閉経後となります。また、環境要因(アルコール摂取、ビタミンC過剰摂取など)や他の遺伝的要因も発症に影響を与えます。
予後はどうですか?
早期診断と適切な治療により、予後は良好です。臓器障害が進行する前に瀉血療法を開始した場合、正常な平均余命が期待できます。しかし、肝硬変が確立した後に診断された場合、肝細胞癌のリスクが著しく高まるため、定期的なスクリーニングが必要です。心不全や糖尿病などの合併症が進行した場合も予後に影響を与えますが、適切な管理により多くの患者さんは健康な生活を維持できます。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では臨床的に重要な7つの原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。
プロフィール
この記事の筆者:仲田洋美(医師)
ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得 して以来、のべ10万人以上 のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。
仲田洋美のプロフィールはこちら